みじかい記事 2017年5月12日
 

缶酎ハイ持ち込み自由のお寿司屋さんに行ってみた

回らないお寿司屋さんといえば僕のような若輩者にとって、おいそれとは足を踏み入れられない緊張感漂う場所です。
ところがそんな寿司屋に全然似つかわしくない、「缶酎ハイ持ち込み自由」を謳うお店を見つけたので、バカ正直に缶酎ハイを持って行ってみました。
1978年東京生まれ。酒場ライター、他。酒カルチャー雑誌「酒場人」監修をはじめ、いろいろとやらせてもらってます。

先日、西東京の「東久留米」という街を歩いていたら、とある寿司屋にふと目がとまりました。
「二葉鮨」
「二葉鮨」
一見何の変哲もない普通の寿司屋ですが、よ〜く目を凝らして見てください。
ある違和感に気づくはず……
「缶酎ハイ持ち込み自由」!!!
「缶酎ハイ持ち込み自由」!!!
なんということでしょう!
寿司屋に限らず、一般的な飲食店ならばこっびどく叱られたあとに追い出されてしまう「缶酎ハイの持ち込み」行為を「自由」と宣言しているのです!

本当かな?
なんだか七面倒くさいルールとかがあって、逆に高くついてしまうような、そういう落とし穴がある可能性も……えーい! あれこれ考えてたってしょうがない、とにかく入ってやれ!

さっそく最寄りのコンビニで缶酎ハイを買い込み、ガラス戸を蹴破る勢いでお店に突撃!
……と言いたいところですが、僕はそこまで肝が座っていないので、一度ランチタイムに普通にお邪魔し、大将にお話を伺ってみたところ、「本当に何でも持ち込んでいいよ」ということだったので、後日あらためて来店することに。

アットホームで素敵なお寿司屋さん

カウンター6席のみの小さなお店
カウンター6席のみの小さなお店
高級店のような威圧感はなく、いかにも家庭的で落ち着ける雰囲気ですね。
壁のメニューを見てみると、
うんうん、自分にも手が出る範囲のお手頃価格だ
うんうん、自分にも手が出る範囲のお手頃価格だ
そしてやっぱり、
店内でも堂々と宣言
店内でも堂々と宣言
何度確認しても、缶酎ハイは持ち込み自由のようです。
では早速ではありますが、持ち込ませていただきました缶酎ハイの方を、
開けさせてもらいたいと、
開けさせてもらいたいと、
思います!
思います!
……ふぅ〜、さらっと書いたけど、現場では違和感と罪悪感がすごい!
頭では大丈夫とわかっていても、体の方が「こんなとんでもない行為が許されるはずがない!」と拒否しています。
そんな逆境に耐え抜いて注いだ缶酎ハイが寿司屋のカウンターに乗っている光景の、ま〜珍しいこと。

すぐに大将が、
「どんどん使ってね〜」
「どんどん使ってね〜」
と氷をサービスしてくださり、恐縮するとともにずいぶん罪悪感も薄れ、ちびりちびりと酎ハイに口をつけはじめることができました。

大将が聞かせてくれたいろいろなお話

大将の神谷茂雄さん
大将の神谷茂雄さん
大将の神谷さんはとっても話好きで、人生訓のようなありがたいお話から、下世話なネタまで、聞けばオールマイティーに何でも答えてくれます。
そういう会話を楽しみながらの食事ってすごく楽しいし、料理のお値段以上の価値があるものですよね。
まさに地元にあってほしいお店です。

ここで、いろいろと聞かせてもらったお話の一部を抜粋。

大将は現在70代で、お仕事歴はなんと62年!
戦争でご両親を亡くされ、学校にも行けず、兄弟みんなで働くしかないという状況で、魚屋さんのお手伝いからスタートし、やがて料理人の道へ。
まだ周囲に畑しかなかったこの場所にお店を構えたのは40年前。
以来寿司職人一筋で、子供たちを育てあげ、今やお孫さんもたくさんいらっしゃるそう。
「今春休みでしょ? 孫が一日中家にいて、『じいちゃんお腹すいた〜』なんて言ってくるもんで大変ですよ」と語る笑顔が嬉しそう。

酒もタバコもギャンブルもやらない真面目な方で、ちょうど取材の前日、半年ぶりに1日お休みを取られたんだそう。
午前中はゴロゴロして、午後はずっと近所の川で釣りをしていたそうで、きっと何か体を動かしていないと落ち着かない性分なんでしょうね。

朝はもちろん仕入れに行き、11:30〜23:00まで、中休みもなくここで働く。
なんでそんなにお仕事に打ち込めるのか伺ったところ、仕事をしていればひとつ仕入れを間違えるだけでお客さんに迷惑がかかるし、ボケている暇がない。
それに、この小さな店で、のんびりマイペースにTVを見ながら寿司を握って、みんなに喜んでもらうのが一番楽しいから、だそうです。

なんたる学ぶべき姿勢!

僕がここに来るきっかけとなった「缶酎ハイ持ち込み自由」システムも、大将のサービス精神から生まれたものだったんですね。
大将はお酒を飲まれないので、基本的なものは置いてるけど、お客さんの好みに合わせていろいろ揃えるのは、わからないし大変。
ならば、地元の人や若者が、900円のお寿司でも食べて、好きなお酒を一緒に飲んで、満足してもらえたらそれが一番、とおっしゃられていました。

あぁ……なんというか、やっぱり飲食店や酒場って「人」だよなぁと、しみじみと温かい気持ちになってしまいました。

おっと、しんみりしてる場合じゃなかった!
肝心のお寿司を頂かなくては!
大将、お願いします!

お寿司を頂きます。缶酎ハイとともに

にぎりは「楓」の900円から「特選」の2600円まで4種類。
僕が「ここは思い切って特選か、う〜ん……」と迷いに迷っていると、「特上あたりでもじゅうぶん満足できると思いますよ」とご提案。
きっと僕がまだまだ特選には見合わない男であることを商売人の勘で見抜かれたのでしょう。
ありがたい助言に従います。
にぎり鮨 特上(2250円)
にぎり鮨 特上(2250円)
わー……違う……いつも行ってる回転寿司やスーパーのと、あきらかに……。
左から赤貝、大トロ、イカ、もういっちょ大トロ、玉子、お漬物各種。
店が店ならここだけで4〜5000円しそう……
店が店ならここだけで4〜5000円しそう……
はたして頂いたお寿司たちは、甘味と歯ごたえがたまらない肉厚の赤貝、トロリと溶けるような食感が衝撃的なイカ、本物のマグロの旨味が脳天に突き抜ける大トロと、それはもう幸福なお味でした……。
自家製の玉子はダシがたっぷり!
自家製の玉子はダシがたっぷり!
さらに! 特上寿司はまだ終わらない!
とんでもない大きさと厚みの海老!
とんでもない大きさと厚みの海老!
海の宝石箱代表、イクラ!
海の宝石箱代表、イクラ!
手の込んだ巻き方の鉄火巻!
手の込んだ巻き方の鉄火巻!
と続き、もう、大満足なんてもんじゃないです。
そうだ、何か自分に褒美をあげたい時はまたここに来て、特上寿司をお願いしよう。
それ以外の時は、900円の楓で。


あ、ちなみに、お酒は缶酎ハイだけじゃなく、基本何でもいいと伺っていたので、さらに寿司屋のカウンターには似つかわしくないコイツも持ってきてたんでした。
ワンカップ大関のジャンボ
ワンカップ大関のジャンボ
大トロ寿司とのコントラストが意味不明ですね!
大将は、地元の少年野球の監督としても大活躍されていたよう
大将は、地元の少年野球の監督としても大活躍されていたよう
このあともいろいろなお話を伺いながら、ガリの一切れも残さずつまみにワンカップを空け、すっかりほろ酔いになったところでお会計をお願いしたところ「2250円です!」と大将。
いや、値段は知ってたんですけど、この満足感の中であらためて聞くと信じられません……。

ちなみに持ち込んだお酒は、お店近くのスーパーで買った缶酎ハイ(149円)と、ワンカップ(189円)なので、今日の合計は締めて、2588円!
あれだけの寿司食べて? あんだけいい気持ちになって? 実は僕、いまだに信じてません。

インパクトだけじゃない、心温まる名店でした

ちなみに、まず初めに様子を見に行った時に頂いた、通常1300円の「穴子重」。
ランチタイムなら900円とお得なんですが、もうふっわふわで、これまた最高に美味しかったです!
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