特集 2017年5月13日

4月の記事ベスト5&「原稿は1時間、下調べは1ヶ月」

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石川です。この記事は4月の総集編なんですが、ゴールデンウィークを挟んだおかげでずいぶん昔の話に思えますね。ゴールデンウィーク前とゴールデンウィーク後、戦前と戦後くらいの開きがあるように思います。あるいは明治維新前と後。そんな過去の遺産を振り返りつつ、我々の手で新しい時代を作っていきましょう!

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PVランキング

アクセス数のランキングです。今月は爆破結婚写真の威力が強すぎて、ランキング2つとも1位独占です。先日サイト紹介用のカードを作りなおしたのですが、その際にこの記事の写真を表面にバーンと載せたところ、きだてさんの結婚報告カードみたいになってしまったのでボツになりました。
特撮ヒーローものでよくある爆破シーン。あれをバックに結婚写真を撮ってきた。
本当に船を食い荒らすフナクイムシ。食べてみると濃厚なアミノ酸のうまみと淡い磯の香りだった。
だんだんと数が減ってきたという東京の真っ黒い汁のうどん。さがしてみたら本気の黒さがすごかった。
温水洗浄便座には水の勢いを「強」より更に強くする裏技がある。独自の測定装置を作ってその勢いを確かめてみたい。
オフィスでのランチ生活が劇的に変わる食材を紹介しよう。早ゆでミニパスタである。

SNSランキング

TwitterやFacebookなどのシェア数のランキングです。西村さんのエイプリルフールネタが2位に!エイプリルフールなのに嘘じゃない(しかしライターのキャラが嘘)というトリッキーな記事ですが、情報的価値が高すぎてランクイン。このあとインタビューもご用意しております。
特撮ヒーローものでよくある爆破シーン。あれをバックに結婚写真を撮ってきた。
大政奉還の年に芽生え、今年で150歳になったわしが見てきた銀行合併史を皆さんにお話ししようかのう。
レシートプリンタとiPhoneを組み合わせて、低画質で使いにくいチェキを作った。
本当に船を食い荒らすフナクイムシ。食べてみると濃厚なアミノ酸のうまみと淡い磯の香りだった。
おれより辞書を持ってるやつに会いに行く。蔵書150冊の国語辞典ファンが6,000冊の主をたずねた。
次はライター斎藤公輔さんへのインタビューです。
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レシートプリンタとiPhoneを組み合わせて、低画質で使いにくいチェキを作った。

家の中の生活が、屋外に浸食している

林「いきなり細かいところですが、サンプルで撮っている室内の棚にある押しボタン、あれどうしたんですか?」

斎藤「あれは実は、昔ヤフオクで買いました。押しボタンがかわいいと前から思ってまして…。最近、信号機のガチャが流行ってるので、押しボタンを載せてたら誰か反応してくれるのではないかとw」

林「あれは欲しくなりますね。あの装置ほど、ボタンが存在感をだしてるものないですよね。」

斎藤「ちゃんと動作するはずなので、あれを使っていずれ何か工作をしたいという野望を抱いてます。信号機の方も手に入れないといけないんじゃないかと最近思っています」

林「信号機は家にあると相当でかいでしょうね。LEDタイプに置き換えられているので、出回る可能性ありますね。」

斎藤「そうですね。置く場所があればトライしてみたいところです」

林「押しボタン式の信号でもりもり信号かえ放題。ものすごく遠かったりするとおかしいですね。」

斎藤「街にある「遠い押しボタン」も実は密かに集めてまして、こういうやつです」
林「こんなのはじめて見ました!リプライで金原みわさんが紹介しているのもすごい」

斎藤「信号と横断歩道が微妙に離れてると、こんな風になるようです。金原さんもこれに目を付けていたらしくw
これもたまってきたそのうち記事にしたいです。まだ何年かかかりそうですが」


林「斎藤さん、そういうの多そうですね。」

斎藤「いろいろありますね。駐車場の白線とかは気に入っています」
止めにくい駐車場シリーズ
止めにくい駐車場シリーズ
林「かなり強引ですね」

斎藤「普通に線を引くと駐車できる台数が少なすぎるので、むりやりやってる感じがあって好きです。なので「よくばり駐車場」と勝手に呼んでいます」

林「木の横の37番、なんでしょうね。大人が真面目に考えたのにおかしなことになっているのはたまらないですね。」

斎藤「あとは「路上メタルラック」とかもあります。屋外で使われているメタルラックを探してます。」
林「ありますねえ。これは大阪が多そうだなあ。近所にも植木を引っ掛ける什器をめいっぱい使ってガードレールを花壇にしている家があります。」

斎藤「ああ、ありますねえ。たしかにそういうのも大阪に多い気がします、何となくですが家の中の生活が、屋外に浸食しているみたいな気がして、そういうのが面白く感じますね。外にあるのに、家の中みたいな雰囲気が良いです。」

林「駅って駅員が手作りのポスターやらオブジェを置いちゃうじゃないですか。あれも公共の場所を社内の感覚でデコっちゃう感じがありますね。」

斎藤「たしかに。こういう路上写真系の話は山ほどあるので、そのうちまとまったら記事にしようと思いつつ、どんどん溜まっていっています」

林「いま手作りナンバープレート、はちょっと違いますかね。」

謎の感動

林「レシートカメラ、技術的には高度なことをしていますよね。ユカイ工学のkonashiはテクノ手芸部が使っているのを見ました。」

斎藤「konashiはかなり簡単に使えるようになっているので、自分で組んだプログラムは極わずかです。ちょうど2、3年前から、趣味でiPhoneアプリを作り始めたんです。konashiもかなり使い込んでいたので、そういう過去の経験があって出来た感じですね」

林「このレシートカメラ、販売しようかなとどこかで書いてませんでしたか」

斎藤「これもまだ趣味なんですが、知り合いと家電開発のようなことをやっていまして。その次期製品化案としてレシートプリンタを考えてます」

林「家電開発!cerevoじゃないですか。」

斎藤「cerevoと比べるのも恐れ多いですが、まだベンチャーの卵の卵みたいな感じです
とはいえ、売り物にするにはまだいろいろと障壁が高いのですが……。
そのメンバで作った家電第一弾が、即売会向けのミニレジ「レジプラ」です」
林「コミケって計算間違えますよね。冊子とグッズがあって、しかも委託があったりすると値段がバラバラですからね。」

斎藤「そうなんですよ。とりあえず自分たちの経験から、自分たちが欲しいものを作った感じなんですが、ありがたいことにいろんな方に使ってもらっています」

林「その作り方は間違えない感じがしますね。でも、レシートカメラはニッチかな。いや、写ルンですがこれだけ流行っているのでありかも。」

斎藤「自分もそうだったんですが、実際に触ってみると謎の感動があるんです。感覚に訴えるというか。ただ検索してみると海外で同じことをやってる方が何人かいて、そことの差別化が難しいなあといま企画を練っているところです」

林「本格的だ!」

斎藤「実際に商品として売り出せるかはまだ分かりませんが、ネタ自体は暖めていますので、そのうち何らかの形で出したいですね」

林「斎藤さんの作るものって、室外機のミニチュアにしてもレシートカメラにしても、ざらっとした手触りありますね。低解像度のエロさというか。」

斎藤「何で面白いのかよく分からないけど、とりあえず作ってみて確かめてみよう、というところがありますね」

林「説明できない面白さっていいですよね。レシートっていい音しますよね。」

斎藤「そうなんですよ。あの音と、あとはレシートをちぎるときの音も最高です。ビリビリビリっていう。
元々は「レシートプリンタっていいなあ」というところから始まって、それありきで、これを生かして何か作りたいと思って、作りました」

最新技術を追わなくてもいい分野

林「レシートプリンタみたいに今いいなあと思ってる装置ってあります?」

斎藤「駐車場の「空」と「満」だけ表示する装置とか、ああいう単機能なものに惹かれます。それしかできない、みたいな」

林「あれ、満腹と空腹でも使えるなとこの前思ってました。「満」と「空」って、車か腹しかないのでは、と思って。」

斎藤「ああなるほど…。そういう装置を作ってウェアラブルにしたらすごいですね」

林「あれもLEDのドット絵で文字を作っているのに、二文字しか出ないって贅沢ですね」

斎藤「そうですね。あれを消灯時に見たら結構おもしろいです。空と満を表示するためだけに生まれて来たのがよく分かります」
林「これは新しい漢字の誕生みたいですね。」

斎藤「最新技術を追わなくてもいい分野というのがあって、レシートとかもそうですけど、そういうのは素敵だと思います。空満も、液晶にする必要は全くないですし」

林「確かに。自動販売機のお釣りレバーとか。」

斎藤「ああ、そういうのです。そういえば最近は、コインパーキングの精算機を写真に撮りためています。何が面白いのかまだよく分かりませんが。さっきから駐車場周辺の話ばかりしてしまってますが」

林「外に野ざらしにされているあの装置、ノウハウありそうですね。堅牢にするための。」

斎藤「たしかにそうですね。自販機とかもその辺に無数にありますけど、あれも何気にすごいですよね」

林「そうですね。漏電してないですよね。」

斎藤「飲み物を買うのに特化した結果、ああいう形に落ち着いているわけで、生物の進化みたいな趣もあります」

林「ガコン!と落ちてきたり、ブロックでかさ上げしてあったり、特殊ですね。」

斎藤「しかもどのメーカーも同じような感じで、あれがデファクトになっているのが面白いです」

林「いろんな大陸で同じ形になった猿みたいです。」

斎藤「そう考えると深みが増しますね。ほかにもそういうのありそうです」

林「今後の記事の予定などは?」

斎藤「このまえ北海道を散歩してきたので、北国ならではの路上観察を紹介したいと思っています。灯油タンクとか、消火栓とか、そういうのが面白かったです」

林「どちらも写真を送ってもらってましたが、消火栓がまったく異文化でした。」

斎藤「雪が降らない地域は、ほとんどが地面の下にあるんですよ。でも北海道みたいな雪深い地域は、地上型がメインになっています。観察していて面白かったです」

林「雪国は生き物以外も環境に適応してますね。」

斎藤「そうですね。あとは街区表示板が白かったりと、他にも地域差がありました。また近いうちに紹介したいと思います」

林「ぜひ!」
つづいてはライターの西村さんのインタビューです。
いったん広告です
大政奉還の年に芽生え、今年で150歳になったわしが見てきた銀行合併史を皆さんにお話ししようかのう。

木の原稿だから

石川「『ごきげんいかがかな? 木じゃ。』で始まる」

古賀「今年のエイプリルフール、当サイトは「木の気持ちになって記事を書く」という謎企画だったんです。西村さんがちょうど別の仕事で銀行の統廃合にめちゃめちゃ詳しくなってて、それなら木になって統廃合の歴史を伝えようとなった。

説明しましたがやっぱり何がなにやらですね。」


西村「なりきって書くのって恥ずかしいですけど、エイプリル・フールならという気持ちでかきましたね。実際書いてみるとけっこう楽しい。これ、原稿1時間で書いたんですよ」

古賀「えっ、すごい」

西村「いつもダラダラ2日ぐらいかかるんですけど」

石川「なりきると自分の原稿じゃなくなるから気が楽ですよね。これは自分じゃなくて木の原稿だから。肩の力が抜けます。」

古賀「「木の原稿だから」」
木だから
木だから
西村「ただ、原稿は1時間でかけましたけど、それまでの下調べ1ヶ月かかってるんですよ。」

古賀「ですよね…
文字数に対する漢字の量がはんぱじゃない。」


石川「もともと何の仕事だったんですか?差し支えなければ」

西村「三大メガバンクの歴史の文庫本。歴史の部分担当したんです」

古賀「SAIKOU」

古賀「すみません、銀行すきすぎてSAIKOU出してしまいました」

石川「じゃあ木じゃなくて人間が書いたバージョンも出版されるんですね」

西村「そうです。本を買っていただければ、人間が話したバージョンでもうちょっと詳しいの読めます」

古賀「WEBが木で書籍が人間。ネットか紙かの論争にあらたな軸が。」

石川「ふつう紙が木だろうという気もしますが、なぜかネットが木」

西村「木としては仲間の死体に文章書くわけにはいかないので」

唯一、全都道府県に支店がある銀行

石川「西村さん的に合併史のグッと来たところというか、一番盛り上がるシーンどこですか?」

西村「みずほでですね、途中省略したところがあって。図で見ると日本勧業銀行に「農工」ってのが合流してると思うんですが、これ、実は各都道府県に農工銀行ってのがひとつづつあったんです。鳥取県農工銀行とか、千葉県農工銀行とか。」
みずほの合併史
みずほの合併史
古賀「ほほう」

西村「全都道府県に一つづつ農工銀行があったおかげで、みずほ銀行は今でも47都道府県すべてに支店があるんです。三大メガバンクで唯一全都道府県に支店がある」

古賀「へーっ!唯一なんだ!」

西村「そうなんです。鳥取に三菱東京UFJとか三井住友無いですから。たまに鳥取帰省したときに困るんですよね。」

古賀「地方行くと思い知らされますよね。ATMとか知らない銀行のがばんばんある。」

西村「銀行ってじつは結構ローカルな商売なんですよ。
そういえば、去年か一昨年、金沢行った時、バイクショップのおばちゃんがコンビニに銀行のATMあるの知らなかったんですよ」


石川「ほほう」

西村「地方都市の人って本当に銀行に行ってお金あずけたりおろしたりしてるんですよね」

「なにいってんの!?」ネームの銀行

石川「古賀さんぐっと来た場面あります?」

古賀「私はミーハーで恥ずかしいんですがやっぱりUFJの登場ですかね。「なにいってんの!?」という名前で新登場」

石川「UFJってなんでUFJなんですか?」

西村「ユナイテッドファイナンシャルジャパン? ユナイテッド? 違うか?」

古賀「「United Financial of Japan」の頭文字だそうです」

石川「United States of Americaのパロディみたいじゃないですか。ビデオ合衆国USVみたいな」

古賀「こらー!ですよ。なにやってんの!? みたいなうろたえすごかったです当時」

西村「古賀さん、トマト銀行はグッと来なかったですか?」

古賀「きたきた!
トマト銀行の動物村っぽさ本当どぎもを抜かれましたからね」


石川「あはは、動物村!トマト銀行はまだあるから記事には出てこないんですね」

西村「三大メガバンクの流れと別ですね。当時「面白い名前つけたなー」っていうニュースとして消費してすっかり忘れてましたけど、岡山行ったら本当にまだ営業してて「まだそのギャグやってんのかよ」って思いました。」

石川「出オチが真顔になっていく流れありますね」

ツイートがウケた

古賀「西村さんの銀行の記事、年間ランキングはいるレベルのヒットになっちゃいましたよね」

西村「Twitterで銀行名の画像がバズったんですよねー。」

古賀「このツイートだ」
古賀「みんなの銀行統合大好きさが爆発してました」

西村「これ、三和入れ忘れてますね。」

巡る合併史

西村「銀行の歴史を下調べするときに、編プロの人から資料のURLとして渡されたサイトがあるんですが、10数年まえのデイリーポータルの記事を参考にしてて。巡ってんなーって思いました」

石川「へー!どの記事ですか?」

西村「ちょっとまってください。…うーん、ぼくの記事が邪魔になって探しづらい……

これだ」
石川「あー、あった!超初期ですよ」

西村「2002年ってかいてある」

古賀「WeeklyPortal時代ですね。まだデイリーポータルになってないころだ

王貞治年表がついてるな」


西村「余計なもの足してるのがね、らしいですよね。王貞治の年表、最初の方は日露戦争とか満州事変になって、歴史のうねりの中の王貞治って感じがしていいですね」

石川「一人の人生と銀行統合のタイムスパンが比較できる図」

古賀「歴史のあらなみを生きた王貞治へ思いをはせて終わりにしましょうか」

お知らせと今後の予定

来週5/19~21のMaker Faire Bay Area(アメリカ)に、ヘボコンとデカ顔を出展。林、石川、橋田、べつやくの4名で渡米します!

それから5/27には前回大好評、チケットも即完だった水曜どうでしょう藤村DがデイリーポータルZにつっこむ会2回目を開催しますよ。チケットは本日10時に発売開始済。いそいで! さらなる最新情報はTwitterFacebookを御チェックのほどお願い申し上げます。
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