特集 2017年5月22日
 

東北新幹線で売っているアレ以外のほや珍味を求めて

いろいろあったよ、ほやの加工品。これでもまだ一部です。
いろいろあったよ、ほやの加工品。これでもまだ一部です。
「ほや」といえば、東北新幹線で売っている箱入りの珍味を思い出す人は多いと思う。車内販売以外ではほとんど見かけないあのほやは、どういう経緯で売られるようになったのだろうか。

そしてほやの本場である宮城県にいけば、もっといろんなほやの珍味があるのではということで、ほやの加工会社を3社訪ねてみた。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。
> 個人サイト 私的標本 趣味の製麺

ほやといえば新幹線のアレですよね

東北新幹線の利用者にしか伝わらない話で恐縮だが、車内販売で必ずほやの珍味が売られている。

お土産などでもらうことも多いと思うので、「ああ、あれね!」と思う人も多いはずだ。正式名称は「ほや酔明」。
寝過ごすと北海道までいってしまう新幹線の車内にて。
寝過ごすと北海道までいってしまう新幹線の車内にて。
キャラメルを思わせるレトロなパッケージ、缶ビールをプシュッとやりたくなる磯の味、これぞ大人の遠足に最適なおやつである。

生のほやは無理だけど、これなら食べられるという人も多いだろう。

細切りにされたほやを箱に入っている爪楊枝でチビチビと食べれば、行きの新幹線なら旅への気持ちが盛り上がり、帰りなら思い出がエンドロールのように流れてくる。
ウニやカラスミを思わせる風味がいいんですよ。歯に詰まったけど爪楊枝があって助かった。あれ、この爪楊枝ってそのために入っているの?
ウニやカラスミを思わせる風味がいいんですよ。歯に詰まったけど爪楊枝があって助かった。あれ、この爪楊枝ってそのために入っているの?
それにしても、ほやである。ツイッターでアンケートを取ってみたら(こちら)、好きが33%、嫌いが13%、食べたことないという人が54%だった。

ほや好きの私がアンケートの発信元だからこの割合だけど、実際はもっと嫌いが多いかもしれない。
ほや酔明ではなく、ほやそのものの好き嫌いについてです。
ほや酔明ではなく、ほやそのものの好き嫌いについてです。
好きな人がマイノリティであるほやが、なぜ新幹線の車内販売という限りのある特等席を、長年に渡って守り続けているのだろうか。

このほや酔明を作っているのは、宮城県石巻市の水月堂物産という会社らしい。そこにいけば、新幹線で売られている謎が解け、さらには未知なるほや珍味も手に入るかもしれない。
ほやとはこれのことです。東北以外では極端に馴染みが薄い海産物。
ほやとはこれのことです。東北以外では極端に馴染みが薄い海産物。

石巻の水月堂へとやってきた

新幹線でほやを食べながら北上し、仙台から在来線に乗って石巻駅までやってきた。

石巻といえば石巻章太郎、じゃなかった石ノ森章太郎さんの石ノ森萬画館がある街(出身は隣の現・登米市)としても有名だ。

サイボーグ009のコスチュームが、ほやに似ているなと毎回思う。
石巻駅にて。ほら、ほやっぽい。
石巻駅にて。ほら、ほやっぽい。
石巻駅からレンタカーを借りて、海沿いに建つ水月堂物産へと到着。

この運転があったので、新幹線ではほや酔明をつまみに一杯できなかった。
震災前に本社があった場所は津波ですべて流されたので、海水処理場があったここに再建したそうです。
震災前に本社があった場所は津波ですべて流されたので、海水処理場があったここに再建したそうです。
万石浦という入り江だったので津波の被害は免れたが、地盤沈下があったので嵩上げ作業中。
万石浦という入り江だったので津波の被害は免れたが、地盤沈下があったので嵩上げ作業中。
お話を伺ったのは、ほや酔明の生みの親である社長の阿部芳寛さんと、常務の阿部壮達さん。

水月堂物産の創業者は芳寛さんのお父さんで、春は小女子、夏はほや、冬は牡蠣と、地元の食材にこだわる水産加工会社だ。
右が阿部芳寛さん、左が阿部壮達さん。壮達さんは二男で、三男は芳寛さんと一緒に商品開発をしている。
右が阿部芳寛さん、左が阿部壮達さん。壮達さんは二男で、三男は芳寛さんと一緒に商品開発をしている。

ほや酔明は初代社長の命令で誕生した

以下のインタビューを読む前に、宮城県はほやの生産量が圧倒的に日本一であること、震災で養殖場は壊滅したが復活を遂げたこと、そして震災前は生産したほやの7割以上を輸出していた韓国が、原発事故の影響で宮城県からの輸入を今も禁止していることを、なんとなく踏まえておいてください。
さっそくですが、ほや酔明が誕生した経緯を教えてください。
両親が岩手へ旅行したときに、こんなのがあるぞとほやの珍味を買ってきて、おまえ作ってみろと。正直あまりよろしいものではなかったので、私も売れるとは思っていなかったのですが、乾燥させる機械を買ってきて、おまえやれと。
なかなか強引なお父さんですが、ほやの珍味に可能性を感じたんでしょうね。
試行錯誤して作ってはみたんですけど、なにも味をつけないで乾させると、何を食べているかわからない。物足りなさを感じてしまうから、ほやの味をそのままバランスよく補ってやって、今の味になりました。だから何味なのっていわれると、ほや味なんです。
ほや味!確かに!
ほやの味には、甘味・塩味・酸味・苦味・旨味がすべて含まれていると言われており、そのバランスを崩さずに味をつけてから干すことで、ほやをそのまま干したよりも、ほやっぽい味の乾物になるのだ。
姉妹品の「新婚ほやほや」という新商品は、新婚だけに甘酸っぱい味付けだそうです。結婚式のプチギフトに最適。
姉妹品の「新婚ほやほや」という新商品は、新婚だけに甘酸っぱい味付けだそうです。結婚式のプチギフトに最適。
東北新幹線が開業する3年前から、竹林(ちくりん)という名前で袋詰めにして作っていましたが、なかなか売れない。それで東北新幹線ができるのだから東北の珍味も置いてもらおうと、車内販売を担当する日本食堂(現在の日本レストランエンタプライズ)へ売り込みにいったんです。
ほやって好き嫌いが別れるから、新幹線みたいな場所だと難しそうですけど。
仙台の支社から新宿の本部を紹介をしていただき、部長さんに「こういうものはいかがでしょうか」と。すると社長にみてもらいますとなったんですが、これは後から聞いた話ですけど、そこの社長が左利き(酒好き)でして。本部の向かいにあった二幸というデパートで殻付きのほやをよく買って食べていたという。
強烈な追い風が吹きましたね。
こちらの社長もかなりの左利き。
こちらの社長もかなりの左利き。

キャラメルみたいなパッケージになった理由とは

それで気に入ってもらえたんですが、ビニール袋じゃだめだから、入れ物を作ってくださいと言われましてね。社長の考えでは、キャラメルの箱なんだと。残ったらポケットに入れられる容器を作ってみてくれと。
あのパッケージは販売側の要望だったんですか。
それでチョコレートの箱なんかを参考にしてデザインして持っていったんです。向こうも3種類用意していたんですが、私の案が選ばれて、1982年の開業から置いてもらっています。今の箱も当時からほとんど変わっていません。
ネーミングもその時に変えたんですか?
左利きの社長さんが、カツオの塩辛で酒盗ってあるじゃないか、そんな名前をつけろと。じゃあこれを食べながら一杯やったら明るく酔えるんじゃないの?明るくなるまで酔えるんじゃない?みたいな発想で、ほや酔明とつけました。
せっかくのネーミングですが、ちょっと小さめですね。
まずはほやを強調したいから、名前は小さくしたんですよ。ほやを知らない人が多いだろうと。
ちなみに燻製じゃなくて魚介類乾製品です。
ちなみに燻製じゃなくて魚介類乾製品です。

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