みじかい記事 2017年5月24日
 

加計呂麻島 筒がある暮らし

南国の獅子おどしかと思った。
南国の獅子おどしかと思った。
奄美大島の南西に浮かぶ加計呂麻島の集落、家の前には筒がぶら下がっていた。いったい誰が、何の為に筒を。
1975年神奈川県生まれ。毒ライター。 普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。 最近バレンチノ収集を始めました。

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島唄かよ!

瀬戸内町の古仁屋からフェリーに載って30分程で加計呂麻島に着く。
のぼらない、のぼるなよ。歌謡曲になりそう。
のぼらない、のぼるなよ。歌謡曲になりそう。
奄美大島の南西に熊手のように広がるわりと大きい島だが人口はわずか1300人ほど。
「男はつらいよ」のロケ地にもなっている。
「男はつらいよ」のロケ地にもなっている。
なんの計画もなく島に渡り、とりあえずレンタサイクルでブラブラしていた。
地図(で確認しながら計画を立てて進む甲斐性)のない旅だ!
地図(で確認しながら計画を立てて進む甲斐性)のない旅だ!
でいごの木にはわざとらしいくらい真っ赤な花が咲いていた。
枝ぶりに妖怪味のあるでいご並木。
枝ぶりに妖怪味のあるでいご並木。
地元の人によればこんなに咲いたのは久しぶりとのこと。
地元の人によればこんなに咲いたのは久しぶりとのこと。
でいごはきれいだなあ、まるで島唄だ。でいごの花が咲いたらどうなるんだっけ、ああそうだ、風を呼び嵐が来たんだね。
で、風が吹き嵐が来ました。
で、風が吹き嵐が来ました。
雨合羽にばつんばつんぶち当たる雨の圧を感じながらじゃあせめて届けておくれ私の愛をと安脚場戦跡公園などを散策。
旧日本海軍が泊地としていた大島海峡を防衛するための施設が置かれていたところ。こちらは弾薬庫跡。
旧日本海軍が泊地としていた大島海峡を防衛するための施設が置かれていたところ。こちらは弾薬庫跡。
そうこうしているうちに海沿いの集落へたどりついた。

筒に首ったけ

渡連(どれん)集落。江戸時代、役人の個人的な貸し借りのもめごとから発展し、薩摩藩による奄美への圧政のきっかけを作ったといわれる大事件「文仁演くずれ」の発端の地である。
渡連(どれん)集落。江戸時代、役人の個人的な貸し借りのもめごとから発展し、薩摩藩による奄美への圧政のきっかけを作ったといわれる大事件「文仁演くずれ」の発端の地である。
この雨のせいか人通りもほとんどない。
この雨のせいか人通りもほとんどない。
かなり広くて、立派な住宅の門や塀には魔除けのクモガイやバテイラの貝がらが供えられている。これは奄美大島の家でもよく見かけた光景だ。
ヤドカリが持っていったりしないのだろうか。
ヤドカリが持っていったりしないのだろうか。
シン・ゴジラの第二形態のようなかっこいい流木も乗っている。
シン・ゴジラの第二形態のようなかっこいい流木も乗っている。
引っ越しのサカイも勉強して魔除けになっていた。
引っ越しのサカイも勉強して魔除けになっていた。
そんな中で、明らかに、奄美大島にはなかったものがさりげなく存在をアッピールしていた。
なんだチミは。
なんだチミは。
なんだチミはってか。
なんだチミはってか。
直径10cmほどの筒が透かしブロックにくくり付けられてこちらを向いている。魔除けというよりは何かを迎え入れる装置に見える。
なんだろう、新聞でも丸めて入れるのかな。
なんか守備力が高そうな塀の中央にもある。トーチカだろうか。
なんか守備力が高そうな塀の中央にもある。トーチカだろうか。
城を攻めてきた軍勢やハブを一斉射撃するのだ。
城を攻めてきた軍勢やハブを一斉射撃するのだ。
塀に付いていないスタンドアローン型。
塀に付いていないスタンドアローン型。
のぞいてみても何かが見えるわけでもない。実に筒である。
のぞいてみても何かが見えるわけでもない。実に筒である。
真実を確かめたいと思ってもとにかく人が歩いていない。そりゃそうだ。旅先だから雨カモン、濡れの不快感カモンとハイテンションで観光を敢行しているが、私だって自分の家にいたらこの雨で外出なんかしないだろう。
後ろに蓋をしているタイプ。塀に筒が乗ってるだけなのになぜ心をとらえて離さないのか。
後ろに蓋をしているタイプ。塀に筒が乗ってるだけなのになぜ心をとらえて離さないのか。
とある路地をうろうろしていると、「この雨で大変だねえ」と家の中から住民の方に話しかけられた。えへへ、でもこの激しい雨が俺の魂を洗うんすよーとリアクションもそこそこに以下の問いをぶつけた。
「あの、プラスチックとかの筒付けてる家ありますよね。あれ、何なんですかね」

「あーあれね、新聞よ、新聞」
あ、予想当たっちゃったよ。こういう旅先で未知の風習を見つけた時に「あーなんだそうだったのかー」って感銘で終わる結末は好事家冥利につきるというものだがそうもいかない時もある。
なんか入ってるの発見!
なんか入ってるの発見!
ほんとだ入ってる!新聞!なんで興奮してんだ。
ほんとだ入ってる!新聞!なんで興奮してんだ。
いや、しかし、なんで新聞用の筒がいちいち配備されているのか。
この集落は新聞社の支配下にあり、そこに新聞を突っ込まないと家の鍵が開かないとか。
「ここはバスの運転手さんが新聞を配るからね。バスを降りないでそのまま配れるように筒をつけてるのよ。他のところはお兄さんみたいに自転車乗ってる人が配ってんでしょう」
加計呂麻バス!港でみたあれか。
加計呂麻バス!港でみたあれか。
言われてみれば筒は全て路地に面し、車の窓から手を伸ばして届く高さに設置されている。すごい。これを工夫と呼ばずして何と呼ぶのだ、筒か。

新聞店や宅配業者のないこの島では、島内唯一の路線バスである加計呂麻バスの運転手が新聞や宅配物を引き取って配達しているという。そのライフラインの一端が可視化された筒の姿にすっかり魅せられた。これは他の集落の筒も集めねばなるまい。結局帰るまで雨は止まなかった。
モイスチャーな感じで帰ります。
モイスチャーな感じで帰ります。

実は加計呂麻島にはハブを探しにきていた。ハブは見つからなかった
(死体は見た)が特に探していなかった筒がいっぱい見つかった。そして今、筒の事を書きながら筒のために再訪したいと思っている。いやあ、旅っていいですよね。
筒の他にキノボリトカゲの子がかわいくてやばかった。
筒の他にキノボリトカゲの子がかわいくてやばかった。
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