特集 2017年5月28日
 

書き出し小説大賞 第123回秀作発表

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書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)
雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。 著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。

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カールの東日本販売終了が受け入れられずにいる。食べたあとも歯クソとして残り、驚異的な余韻がつづくカール。湿気ったときの『ふにゃっ』とした食感もまた一興のカール。これが(いい意味での)販売終了詐欺であることを期待しつつ、今回もめくるめく書き出しの世界へご招待しょう!

書き出し自由部門

星が降ってきそうな夜だった。あの日、私は18歳で生まれた。
来瞳
角を取ったのに負けた、みたいな気分だ。
あや幹部
霧の町。時計台が3回鳴り、角砂糖がコーヒーの茶色を吸い込む。探偵は立ち上がった。
七世
思い切り尻を掻く。どこかで、その音を聴かせている。
義ん母
カニみそだけを残したところでスプリンクラーが作動した。
ウチボリ
失意のなか,ヒロシは焼きたてのパンを買いにいった。
後頭部の刺青を見ているうちに法事は終わった。
井沢
ぼくらの魔法陣に、おじさんが立ちションしている。
けー
組織のがんは早期発見されても居座り続ける。
東ことり
右手の罪を左脳だけが知っていた。
らい麦。
いちいち家畜を哀れむな、綺麗事だぞ。
もろみじょうゆ
掻いた背の、痒みが腰へ逃げてゆく。
豚バラ
寸評●来瞳氏「星が振ってきそうな〜」物語にすっと入って行ける素直な書き出し。長く連載をやっているとこういう初心を思い出す作品にはっとさせられる。●あや幹部氏「角を取ったのに〜」オセロにはわざと角を取らせる戦法もあるらしい。●七世氏「霧の街〜」こちらも書き出しらしい書き出し。情景をフォーカスしていくことでミステリらしい雰囲気を出している。けー氏「ぼくらの魔法陣〜」実は悪魔の出現を未然に防ぐ、天使なのかもしれない。●らい麦氏「右手の罪〜」セックスは右脳的。マスターベーションは左脳的。●豚バラ氏「掻いた背の〜」何気に七五調。たしかに痒みって逃げるよね。

続いては規定部門。今回は網戸祭り!見事審査の網の目をくぐった秀作をご覧下さい!

書き出し規定部門・モチーフ「網戸」

網戸越しのキスは夏の味がした。
あひる
「網戸くらい買いなよ」内股をパシンと叩いて道子が言った。
正夢の3人目
またレールから外れた。俺の人生みたいに。
タクタクさん
網戸師は双眼鏡越しに各家庭の網戸をくまなくチェックする。
茂具田
今年も網戸にヤモリが来た。
ヘリコプター
網ドンをしようとしたら、網ごと床ドンをしてしまった。
八王寺義昭
「言い寄ってくる男は虫ケラ、それ以外は空気」「網戸かよ」
Mch
網戸ごと、彼女がぼくの胸へ。
xissa
アマテラスは岩戸を少し開け、網戸越しに踊りを見た。
morin
ジュリエットはロミオとの愛の言葉を網戸越しに交わした。
g-udon
マイケルが網戸を開け、ファンに対して手を振った。
g-udon
網戸越しに鶴が恩返しをはじめた。
Yves Saint Lauにゃん
防弾網戸は風を通す。
ビールおかわり
網戸が家主に恋をした。
いがそ君
その年、ウィンブルドンのセンターコートに立ったのは、網戸を構えた日本人選手だった。
ヨーヨー大会
ステージの巨大な網戸が開き、AMD48のコンサートが始まった。
くのゐち
網戸越しに、網タイツの父がモアレを起こしている。
morin
鍵付きの網戸だということを翔子は何度も自慢してくる。
七世
網戸に口紅で書かれた『愛してる』は、きれいなドット字だった。
松っこ
網戸越しにクリアファイルにある離婚届を見つけた。
ヨットハーバー
おばあちゃんの昔話の中でぼくが特に気に入っているのは、「アミド」という不思議な窓の話だ。
Mch
真新しい網戸みたいな人というハルキ的表現が褒め言葉なのかどうか、いまだ確認できないでいる。
紀野珍
網戸泥棒は走りにくそうに逃げている。
ろっさん
網戸の影で、君が鱗姫になる。
あや幹部
冬の海に投げ出され、藁をも掴む思いでしがみついたのは網戸。流れ着いたは遥かカリフォルニア。
木乃机
ダメージ網戸、いりませんか?
トミ子
襲来した蚊の大群は、人の形になって網戸を開けた。
ぴすとる
東京に来るまでは、網戸にぶつけて湯切りするのが普通だと思っていました。
もずく酢
あいつと母がケンカするあいだ、僕は網戸の目を数えていた。
ミミズグチュグチュ
スペイン語では「アミード!」と陽気に発音する。
タクタクさん
壮大な三部作の最後のシーンは、網戸で幕を閉じた。
魚子
網戸であったため、まずまずの密室殺人事件だった。
Yves Saint Lauにゃん
死骸はない。小さな脚だけが残っていた。
義ん母
網戸についた蜂蜜をチンパンジーが大口を開けて舐め取っている。
prefab
網戸ごしに、地球が見えた。
大伴
ふと、サッシの隙間にひじきがあったのを思い出した。
やまといも
こういうときは、社長室の網戸を三度ノックする。
きつね
「網戸がどうかしたんですか?」と障子がふすまに微笑む。
くーみん
襲来した蚊の大群は、人の形になって網戸を開けた。
ぴすとる
網の目を極限まで小さくした結果、戸になった。
あひる
本当はこんなものどうだっていい。
哲ロマ
今回はかなりニッチなお題でどんな結果になるか不安だったが、ご覧の通りの豊作だった。よくも網戸だけでこれだけのアイデアが!テレビなら四時間くらいの特番が組めそうな勢いである。 それでは寸評。●あひる氏「網戸越しのキス〜」埃のぶん苦い味がしそう。●茂具田氏「網戸師〜」こっそり忍び込んで外れた網戸を直してくれそう。●ヘリコプター氏「今年も網戸にヤモリ〜」軒先のつばめ的な。●Mch氏「言い寄ってくる〜」上手いこと言う!●g-udon氏「マイケルが〜」網戸を開けて赤ん坊を落とすふりも。●ヨーヨー大会氏「その年〜」予選を勝ち上がってきたところがすごい。●morin氏「網戸越しに〜」超視覚的な作品。●松っこ氏「網戸に口紅で〜」こちらもシュールな設定ながら細部まで画が浮かぶ。●ろっさん氏「網戸泥棒〜」たしかに走りにくそう。●魚子氏「壮大な三部作〜」網戸に流れるスタッフロール。●やまといも氏「ふと、サッシの隙間に〜」サッシの隙間にひじきを見たことのない私でも、たしかにあった気がする不思議な作品。●哲ロマ氏「本当は〜」網戸マスター哲ロマ氏の結論がこれでした。

それでは次回のお題を発表する。
次回モチーフ
「ガリガリ君」
ご存じ定番アイス、ガリガリ君を次回のテーマにする。アイスそのものをテーマにしてもいいし、あのキャラクターを主人公に据えてもよい。赤城乳業と一方的にコラボレーションするつもりで書いて欲しい。締め切りは6月9日正午、発表は11日を予定している。下記の投稿フォームから部門を選択し応募いただきたい。力作待ってます!
最終選考通過者

terayo/ぐるりん/にら将軍ハルナ/風馬牛/えむ毛/kwsk/住民パワー/suzukishika/イワモト/うぃけっと/ねもっ血風クン/よしおう/たこフェリー/くずきり/
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