特集 2017年6月26日

スマホが盗まれた時のために訓練をしよう(iPhone/Android対応)

あ!スマホ泥棒だ!
あ!スマホ泥棒だ!
先日iPhoneを盗まれた。そして、その日のうちに取り戻した。

いったいどうやったの? と聞かれるので、実際に再現しようと思う。避難訓練ならぬ、スマホ盗難訓練だ。
1975年宮城県生まれ。元SEでフリーライターというインドア経歴だが、人前でしゃべる場面で緊張しない生態を持つ。主な賞罰はケータイ大喜利レジェンド。路線図が好き。(動画インタビュー)

前の記事:ブランコに乗って新幹線を体で感じる公園

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デイリーの撮影中にiPhoneを盗まれた

この記事のために、駅のトイレの貼り紙を調査していたときのことだ。JR池袋駅のトイレにiPhoneを置き忘れた。用を足すために手に持っていたiPhoneとメモ帳を置き、メモ帳だけ持って外に出てしまったのだ。
現場となったJR池袋駅のトイレ。人のマークがでけぇな!とトイレに入る前にiPhoneで撮ってた
現場となったJR池袋駅のトイレ。人のマークがでけぇな!とトイレに入る前にiPhoneで撮ってた
ホームまで階段をのぼったところで「あ!」と気がつきトイレに戻ったら、無い。この間たった2,3分。

最寄りの改札にも遺失物取り扱い窓口にも届いていない。公衆電話から自分のiPhoneに電話をかけるが、電源が切られている。誰かが持ち去ったらしい。

すぐに持っていたMacで公衆Wi-Fiのワンデープランを契約し、「iPhoneを探す」で追跡する。
実際に「iPhoneを探す」で追跡した様子。盗まれたiPhoneの電源が入ったのは2時間後。iPhoneは新大久保にいた。そして山手線で再び池袋に戻ってくる。謎の移動。
実際に「iPhoneを探す」で追跡した様子。盗まれたiPhoneの電源が入ったのは2時間後。iPhoneは新大久保にいた。そして山手線で再び池袋に戻ってくる。謎の移動。
「iPhoneを探す」は、地図上でiPhoneの位置を表示させるだけでなく、端末をロックし、ホーム画面に任意のメッセージを表示できる。

地図で位置を把握しながら「新大久保駅の駅員に届けてください」「もうすぐ池袋に着きますね。駅に届けてください」とメッセージを表示し続け、同時に遠隔で警告音も鳴らした。

やがて池袋駅でiPhoneの動きが止まった。地下鉄に乗ったかと冷や冷やしたが、30分経ってもそのままだ。再び盗まれたトイレ近くの改札に問い合わせる。僕のiPhoneが届いていた。トイレに置かれていたものを50代男性が届けたという。戻ってきたのだ。

よしださんのほうがプロだった

この話を他の人にすると「iPhoneを探すってそんなことできるの」「やったことないなー」と言われる。じゃぁどうなるか実際に試してみる機会を作ろう。iPhoneとAndroidを用意して、追跡チームと泥棒チームに分かれよう。

「スマホ盗難訓練」と銘打っているが、やることはテクノロジーを無駄使いしたケードロである。
「踊る大捜査線」の織田裕二を意識して赤いネクタイにしました。渋い顔はWi-Fiが繋がらなくて困っているだけ
「踊る大捜査線」の織田裕二を意識して赤いネクタイにしました。渋い顔はWi-Fiが繋がらなくて困っているだけ
ヘッドセットも用意したが、これだとイーデザイン損保のほうの織田裕二だ
ヘッドセットも用意したが、これだとイーデザイン損保のほうの織田裕二だ
訓練には編集部の古賀さん&藤原さんに加え、テクノ手芸部のよしだともふみさんに参加してもらった。よしださんは「iPhoneを無くしがち」ということでキャスティングされている。
「訓練中にまたなくなったりしないですよね……?」と怖がるテクノ手芸部よしださん。事前にチャットで「念のためバックアップを……」とお願いしたら「こわい!」とだけ返ってきた。
「訓練中にまたなくなったりしないですよね……?」と怖がるテクノ手芸部よしださん。事前にチャットで「念のためバックアップを……」とお願いしたら「こわい!」とだけ返ってきた。
よしださんの「携帯無くし歴」をギュッとまとめるとこうだ。

1999年:ラーメン屋でガラケーをうっかりトイレに流す
2016年:フランクフルト空港のレストランで、テーブルに置いていたiPhoneが盗まれる
2017年:北陸新幹線にて、寝ている間にテーブルに置いていたiPhoneが盗まれる

僕なんかよりよほど盗難に遭っている。しかも新幹線で盗まれた時は「iPhoneを探す」で追跡したそうだ。よしださんのiPhoneは途中の駅で降り、一般道に消えていったという。

「新幹線は意外と泥棒が乗っているからテーブルに置いたままにするのは危険」と身をもって警告するよしださん。もうよしださんの講話で終えたほうがためになるのではないか。自分のiPhoneが戻ってきたのはミラクルだったのだ。身が引き締まる。

実際にやってみよう

さて「スマホ盗難訓練」である。泥棒役の2名がスマホを持ち去り、追跡役の2名がスマホの機能を使って追跡する。iPhoneは「iPhoneを探す」、Androidは「Androidデバイスマネージャー」を使う。

最初の泥棒役は古賀さん&藤原さん、盗まれるのはよしださんのiPhoneである。
「泥棒っぽいポーズ」を要求され戸惑う古賀さんと藤原さん
「泥棒っぽいポーズ」を要求され戸惑う古賀さんと藤原さん
「Twitterに夢中でiPhoneを放置してますぜ!」「しめしめ、いただいちゃいちゃいますかね~」
「Twitterに夢中でiPhoneを放置してますぜ!」「しめしめ、いただいちゃいちゃいますかね~」
そぉ~~~~
そぉ~~~~
「よし!ずらかれ!」
「よし!ずらかれ!」
「気がついたら無くなっていたんです……!」「ほぅほぅ」
「気がついたら無くなっていたんです……!」「ほぅほぅ」
この日、僕はよしださんと初対面だったのだけど、ご挨拶から20分でiPhoneを奪ってしまった。失礼千万である。よしださんの懐は海よりも深いことを覚えておこう。
よしださんのApple Watch。iPhoneが持ち去れ、通信が切れたのがわかる。もはやスマートではないただのウオッチ
よしださんのApple Watch。iPhoneが持ち去れ、通信が切れたのがわかる。もはやスマートではないただのウオッチ
一方そのころ、スマホ泥棒はニフティ社屋から新宿の街へ逃亡……!
一方そのころ、スマホ泥棒はニフティ社屋から新宿の街へ逃亡……!

「iPhoneを探す」で追跡だ

泥棒が新宿の街に放たれたところで、いざ追跡だ。よしださんのiPhoneを取り戻そう。ちなみに、事前の準備として、iPhoneの設定から「iPhoneを探す」をオンにしておく必要があるので注意。
「きぃ~!許せん!!」
「きぃ~!許せん!!」
ブラウザからiCloudにログインし、「iPhoneを探す」に接続する。追跡対象のiPhoneを選択すると、地図上にiPhoneの場所が表示された。ニフティ本社から東へ向かっているのがわかる。
「iPhoneを探す」で位置情報を表示。まだ遠くには行っていない
「iPhoneを探す」で位置情報を表示。まだ遠くには行っていない
ここからiPhoneを遠隔で操作できるアクションは3つ。「サウンドを再生」「紛失モード」「iPhoneの消去」だ。
するっと「iPhoneの消去」が並んでいるのが怖い
するっと「iPhoneの消去」が並んでいるのが怖い
「iPhoneの消去」を実行すると遠隔操作でデータを全て消去できる。タイムボカンシリーズで言うところの自爆スイッチだ。

データを消去すると追跡もできなくなるので、本当に最後の手段である。ゴミ箱のマークなんて穏便すぎる。ドクロのマークであってほしい。

ともあれ、ここで最初に行うのは「紛失モード」のオン。端末がロックされ、iPhoneに着信や通知がいかなくなる。泥棒にメールやLINEの通知を見られずに済むのだ。

その代わり、こちらから泥棒宛にメッセージを表示することができる。
「おや、なにか出たぞ」
「おや、なにか出たぞ」
「このiPhoneは紛失したものです……?ふぅん……」
「このiPhoneは紛失したものです……?ふぅん……」
ちなみに、メッセージと一緒に電話番号も表示でき、そのまま通話することもできる(指定した電話番号以外にはかけられない)。心ある人から「拾いました」と連絡をもらうこともできるわけだ。

ただ泥棒だった場合、自宅の電話番号といった個人情報を知られるのは怖い。僕が盗まれたときも電話番号の表示はしなかった。出すならどこの電話番号だったらいいのかなぁ。職場の代表電話とか?
「今度はなんか音が鳴ったぞ。うるさいな……!」
「今度はなんか音が鳴ったぞ。うるさいな……!」
「な、なぜ新宿駅に向かっているとわかる……!」(A.地図で見ているから)
「な、なぜ新宿駅に向かっているとわかる……!」(A.地図で見ているから)
紛失モードからメッセージを表示するとき、LINEみたいに着信音は鳴らない。ふっ……と静かに出る。つまり、拾得者がメッセージの表示に気づかない可能性もある。

そこで「サウンドを再生」だ。実行すると警告音が鳴り響く(なんらかのボタンを押すと止まる)。メッセージを表示したあと一度鳴らすと、着信音の代わりになる。

ただ、あまりしつこく鳴らすと、うっとうしくなってその辺にiPhoneを捨てられるかもしれない。メッセージも警告音も「ここぞ」という時だけにしたい。
自首をうながすメッセージも送れる
自首をうながすメッセージも送れる
「自首か……」
「自首か……」
さてここまで泥棒チームがどう動いたか、地図で見てみると……
なんとなく右下の新宿駅に向かっている
なんとなく右下の新宿駅に向かっている
地図上で「新宿警察署のそばだな」と思ってメッセージを送ったとき、泥棒サイドは実際に新宿警察署のそばにいたそうだ。位置の表示にタイムラグはほぼない。

ただ、新宿の高層ビル群でGPSが乱れるのか、位置情報があらぬ方向へ飛んでしまうことがあった。地図上の追跡はあくまで「だいたいこっちに向かっている」がわかる程度と考えた方がよさそう。特に都心では、これを元に犯人を追いかけるぞ!という使い方には向かないかもしれない。

メッセージ大喜利のコーナー

だいたいやるべきことはやったので、ここからはメッセージで遊ぶコーナーである。もう写真から「訓練」の文字も取ろう。
『あなたは森の中を歩いています。一番最初に出会った動物はなんですか?』
『あなたは森の中を歩いています。一番最初に出会った動物はなんですか?』
「森か……」
「森か……」
心理テストだってできる。ただしメッセージは一方的に送りつけるものなので、回答を聞くことはできない。出題されたほうも何のテストかモヤモヤするだろう。HPを3くらい削る攻撃だ。
藤原さんが選んだのはウサギでした(心理分析は適当です)
藤原さんが選んだのはウサギでした(心理分析は適当です)
この調子でもっとダメージを与えよう。
乗っ取り
乗っ取り
目には目をである。

もうそろそろこのiPhoneを手に持っているのが怖くなるのではないか。いや、だからと言って道ばたに投げ捨てられては敵わない。優しさも見せなければ。
この日は夏日でした
この日は夏日でした
確かに喉が渇いていた!
確かに喉が渇いていた!
人間の体の約60%は水分でできている。泥棒だって人間、水分補給が欠かせない。緊急事態にも関わらず熱中症を気遣う優しさに触れ、己の振る舞いに罪悪感が芽生えるかもしれない。わずかな良心に賭けよう。
電気街でiPhoneを売るのを諦め、新宿駅西口交番に自首を決意するスマホ泥棒
電気街でiPhoneを売るのを諦め、新宿駅西口交番に自首を決意するスマホ泥棒
一方、僕がメッセージ大喜利で遊んでいるあいだ、よしださんは自分のiPhoneが返ってくるか気が気ではなかった
一方、僕がメッセージ大喜利で遊んでいるあいだ、よしださんは自分のiPhoneが返ってくるか気が気ではなかった

Androidは性善説なのかもしれない

これで「iPhoneを探す」の挙動を知ることができた。よしださんの元にも無事iPhoneが返ってきた。

これで過去にiPhoneを持ち去れたトラウマが「戻ってきた」で上書きされてほしい。余計に過去を思い出させただけかもしれないけど。
「ありがとうございます……!」「礼には及びません。仕事ですから」
「ありがとうございます……!」「礼には及びません。仕事ですから」
続いてAndroidの場合も見ておこう。今度はよしださん&藤原さんが古賀さんのAndroidを狙う。
軽装のせいか東南アジアの泥棒っぽさが出るよしださん
軽装のせいか東南アジアの泥棒っぽさが出るよしださん
「怪しい人を見たりとか……」「見てないんです!」「誰かに恨まれるようなことは……」「ととととんでもない!」
「怪しい人を見たりとか……」「見てないんです!」「誰かに恨まれるようなことは……」「ととととんでもない!」
ここで使うのは「Androidデバイスマネージャー」。あらかじめスマホ側で機能をオンにしておく。android.com/findにログインすれば、紛失したAndroidスマホの位置が地図上に表示される。

遠隔で可能な操作はサウンドの再生、端末ロック&メッセージの表示、そして消去。「iPhoneを探す」と大体同じだ。消去をうっかり押しそうなところまでそっくりである。そんなカジュアルなもんじゃなかろうに。
「おやおや、何か出ましたよ」
「おやおや、何か出ましたよ」
いきなりの全面降伏
いきなりの全面降伏
iPhoneと同様に、Androidの場合もメッセージを表示するときに着信音は鳴らない。

別途サウンドを再生することになるが、iPhoneが耳障りな警告音だったのに対し、Androidはなんだかポップな音が鳴る。あとで古賀さんに確認したら「普通に電話がかかってきたときの着信音」だった。

確かにGoogleのヘルプを見ると「端末の着信音を最大音量で5分間鳴らします」とある。iPhoneよりも盗まれた緊張感が無い……が、心ある人が拾ってくれたはずという性善説なのかもしれない。
壮大な物語の始まりを感じさせるメッセージ
壮大な物語の始まりを感じさせるメッセージ
「これいつまでやるの?」
「これいつまでやるの?」

当たり前を噛みしめよう

今この瞬間、地球上でスマホを無くしている人が何人いるだろうか。100人だろうか。1000人だろうか。水没を含めると悲しみに暮れている人はもっと増えるだろう。

今は平穏な暮らしをしていても、いつ自分がそちら側になるかわからない。スマホが手元にある喜びをじっと噛みしめようと思う。このiPhone、一回誰か知らない人が持って行ったんだよな、と思うとウワッとなるので、なるべく忘れながら。
彼氏と自首なう。 に使っていいよ
彼氏と自首なう。 に使っていいよ
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