特集 2017年6月30日
 

素粒子物理学をうまいことたとえる

これを分かりやすく説明しよう
これを分かりやすく説明しよう
ライターの力はたとえ話で決まる。

そう思っている。難しい話を身近なできごとに置き換えて分かりやすく伝える。
ものごとの構造を見抜く力と幅広い知識、それをつなぐ飛躍が必要になる。
我々もたとえ話のスキルを磨いていかなければならない。

そこで、まずはライターにわかりにくい話に触れてもらい、それを分かりやすくたとえるという力試し企画を行った。
1971年東京生まれ。ニフティ株式会社勤務。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと新宿区で活動。 編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。

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たとえる話はこれ

加速器
加速器
測定器
測定器
ここはつくばにある高エネルギー加速器研究機構(KEK)。素粒子物理学の実験をしているところである。今回の企画は素粒子物理学を分かりやすくたとえるという企画なのだ。

ギャ!素粒子物理学!と思ったひとも大丈夫。きっとデイリーポータルZのライターがうまいことたとえてくれるはずだ。

そんな楽観主義に導かれて物理の総本山みたいなところに来てしまった。
うっかり来たデイリーポータルZ関係者、右手前はKEK広報の大津珠子さん
うっかり来たデイリーポータルZ関係者、右手前はKEK広報の大津珠子さん
今回の流れは以下の通りである。

1. KEKを見学させてもらいつつ説明を聞く
2. 聞いた話をたとえ話にして披露
3. 「そのたとえ話は思いつかなかった!」と褒められる(予定)

ではまずは見学である。最初の見学場所に移動する車に乗ろうとしたところでライター西村さんが声を上げた。
「あ、これは!」声を上げるライター西村さん
「あ、これは!」声を上げるライター西村さん
「珍しいアリが列をなしています」。そしてアリについていこうとしていた
「珍しいアリが列をなしています」。そしてアリについていこうとしていた
こういう純粋な好奇心が褒められるのは未就学児までである。
このときに感じた「あ、この企画やばいかな」という小さな不安はこのあとどんどん大きくなることになる。

一周3キロのパイプで加速させている

今回見学する施設では粒子をぐるぐる回してぶつける実験を行っている。で、ぶつけたときにさらに小さい粒子が出てくるのでそれを観察する。

名前はBelle II実験。2018年2月から開始するためにいま絶賛準備中である。
加速器はこれぐらいでかい(https://www2.kek.jp/accl/topics/topics100830.html の図を一部改変)
加速器はこれぐらいでかい(https://www2.kek.jp/accl/topics/topics100830.html の図を一部改変)
ぐるぐる回す部分が加速器、ぶつかったときに飛び散る素粒子を調べる部分が測定器である。加速器は一周3キロメートル、測定器も縦横高さ8メートルある。

素粒子というのは原子とか分子よりももっと小さい、万物のもとになっている粒である。
石原さとみもニンテンドースイッチも泥もすべて素粒子でできている。

まずは加速器 SuperKEKBを見る

一周3キロメートルの加速器は円周状のトンネルのなかにある。
ふたつのパイプの中をそれぞれ電子と陽電子が通る。光速に近い速度で通る
ふたつのパイプの中をそれぞれ電子と陽電子が通る。光速に近い速度で通る
駅の出口のように案内が貼ってあった
駅の出口のように案内が貼ってあった
パイプのなかの電子を曲げるための電磁石
パイプのなかの電子を曲げるための電磁石
パイプのなかを電子が光速に近いスピードで通過する。電磁石でその方向を変える。
説明はわかるのだが、目に見えないので雲をつかむような話である。でも、これはよくわかった。
N極とS極
N極とS極
インドで日本語を話す人に出会えたような嬉しさである。

で、パイプを通る電子と陽電子は塊(ビーム)になって通過している。
「ビームは平べったくてきしめんのような形です」と、加速器研究施設の飯田直子さん。
飯田直子さん。加速器のパラメータを少しずつ変えてチューニングするのが楽しいと話していた。
飯田直子さん。加速器のパラメータを少しずつ変えてチューニングするのが楽しいと話していた。
「いや、わたしはハッピーターンと説明しています」とは素粒子原子核研究所の中山浩幸さん。
ふたりとも博士だが白衣は着ていない。ヘルメットである。
ふたりとも博士だが白衣は着ていない。ヘルメットである。
これらの説明に対する我々の返事は「へー」である。7人が「へー」でハモっている。
困り顔の者、フリーズする者、しょんぼりする者
困り顔の者、フリーズする者、しょんぼりする者
KEKの研究者はたとえ話に慣れているのだ。きしめんとかハッピーターンとか面白いじゃないか。これよりうまいたとえができるだろうか。

鑑賞しよう

電子が通るパイプにはところどころ裸のコイルが巻いてあった。
これを巻くことで加速器の性能が上がったそうだ
これを巻くことで加速器の性能が上がったそうだ
ただしパイプを組んだあとにその効果がわかったので、パイプの横で研究者が巻いたとのこと。ものすごい手作りである。左側は結束バンドが巻いてある。

ここの加速器も測定器もすべて効率のために作られている。実用重視なのにかっこいいのが不思議である。
珍しい毛虫みたいなこれとか
珍しい毛虫みたいなこれとか
オブジェだったら「無題」ってつけられちゃいそうなやつとか
オブジェだったら「無題」ってつけられちゃいそうなやつとか
狙ってないようで実は狙ってるということもなく、素なのだ。芸能人がインスタグラムに披露するすっぴんとは違う。
ウイスキーを作ってるような円筒状のこれもかっこいい
ウイスキーを作ってるような円筒状のこれもかっこいい
メカ・マンドラゴラ。思わず命名
メカ・マンドラゴラ。思わず命名
この精密だけど巨大な加速器はとてもデリケートで、「ほぼなまもの」(飯田さん談)だそうだ。

・天気によってビームの性能が違うので調べたら外を通っているケーブルに直射日光があたって膨張しているのが原因だった。ケーブルに屋根を付けたら変動が消えた
・ゴールデンウイークは調子がいい。電力が安定しているからかも。
・スマトラの地震や潮の満ち引きで性能が変わる。トンネルの形が変わるのが原因

潮の満ち引きで変わるトンネルってコンニャク製かよ、と思うがそんなこともなく、コンクリートがほんのわずか変形しているのだ。それでも影響を受けてしまう。
全体図。研究棟の名前が旅館の部屋のようだった
全体図。研究棟の名前が旅館の部屋のようだった

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