特集 2017年7月3日
 

なんでも展開図にできる!「りぼん」組み立て紙ふろくの設計者

ふろくの設計者による展示会へ行ってきた。「りぼん」のふろくが並ぶ。
ふろくの設計者による展示会へ行ってきた。「りぼん」のふろくが並ぶ。
子供のころ、雑誌に付いてきたふろくを組み立ててよく使っていた。当時は考えたこともなかったが、毎月アイデアを練ってた作り手が存在する。昔は当然コンピューターなんかは使わず、全部手描きで設計されていた。

そのふろくの設計者による展示会へ行ってきた。本人に話を聞いてみると、「平面の紙から立体を作る仕事をしすぎて、最近では乗用車が目に入って通り過ぎる前に展開図が出てくる」みたいな話も飛び出し、ええええー! 詳しく知りたい。
島根県生まれ。毛糸を自在に操れる人になりたい。地元に戻ったり上京したりを繰り返してるため、一体どこにいるのか分からないと言われることが多い。プログラマーっぽい仕事が本業。

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紙の組み立てふろくってどんなもの?

十数年前まで、女児向け雑誌についてきたふろくといえば、厚紙を組み立てるタイプのふろくが多かった。
これはハンカチ収納用のボックス。女子の生活の一部に入り込むようなタイプのふろくが多い。
これはハンカチ収納用のボックス。女子の生活の一部に入り込むようなタイプのふろくが多い。
少女マンガ雑誌「りぼん」の場合は、創刊から62年。時代ごとにふろくも変わってきた。ここ十数年は文具やポーチなど、お店で買えるような既製品がふろくとなっているが、紙製のふろくが何点か(80〜90年代だと5〜10点ぐらい)ついてくる時代が長かった。

というのも昔は「国鉄輸送の際に、ふろくの運賃が免除されるのはおかしい」という声により、「ふろくの素材は紙のみ」と規制されていた。国鉄が民営化されたあともこの規制はしばらく続いたが、01年に規制が緩和。なのでその頃を境に既製品の「ものふろく」へと変わっていったのだった。
届いた手紙を入れるポスト型のボックスや、ソーイングセットを入れる引き出しも実用品として使える「紙ふろく」
届いた手紙を入れるポスト型のボックスや、ソーイングセットを入れる引き出しも実用品として使える「紙ふろく」
今年は、冒頭で紹介したのとは別の展覧会も京都・東京で開催された。京都国際マンガミュージアムと京都精華大学国際マンガ研究センター主催の「りぼんのふろく展」だ。

紙製の組み立てふろくは、懐かしい文化として振り返るようなものになってきたのか。
左が「京都国際マンガミュージアム」の展示の一角。右が東京の「明治大学 米沢嘉博記念図書館」の展示。「紙ふろく」を中心に、およそ2000点が展示された。(いずれも終了してる)
左が「京都国際マンガミュージアム」の展示の一角。右が東京の「明治大学 米沢嘉博記念図書館」の展示。「紙ふろく」を中心に、およそ2000点が展示された。(いずれも終了してる)
よく女子同士で「りぼん派? なかよし派?」と質問しあったりするが、私は執念深いほどにりぼん派。

やめどきが分からず15年買い続け、買ったものは捨てずにすべて保管、いまだに古いものを探しては追加で買い漁ってる。
!
そんななので、この展示にはもちろん張り切って行った。1泊で行った京都旅行は、2日間とも展示を見に行き、東京の展示にも3回行った。その会期中に開催されたトークショーで、ある人の存在を知った。

1970年代半ばからおよそ18年間、手描きで毎月ふろくの設計をおこなってた一人の男性だ。
高橋孝一さん 77歳。個人事務所を設立し、少女雑誌は「りぼん」、「なかよし」、「ひとみ」など。少年雑誌は「冒険王」のふろくに携わった。
高橋孝一さん 77歳。個人事務所を設立し、少女雑誌は「りぼん」、「なかよし」、「ひとみ」など。少年雑誌は「冒険王」のふろくに携わった。
ペーパークラフトなどの紙の立体物の構造デザイナーである高橋さんが手掛けてきたのは、ふろくだけではない。スーパーの店頭にある立体POPやファーストフード店の持ち帰り箱、化粧品の販売コーナーにある紙の陳列台など、あらゆる紙の組み立て物のデザインに約60年ものあいだ携わってこられた。

専門学校の教科書やデザイン事務所の専門書にもなった「紙による立体POP―役立つPOPづくりの技法と実例」という本も出されてる。

そんな高橋さんが、今回「りぼんのふろく」に限定した展示会を開催されたのでお邪魔した。
事務所の中おこなわれた展示会「付録の構造」。一般公開はされていない。
事務所の中おこなわれた展示会「付録の構造」。一般公開はされていない。
今回は80年代に高橋さんが手掛けられたものが並んでいる
今回は80年代に高橋さんが手掛けられたものが並んでいる
それにしても「ふろくの設計」とは、いったいなんだろう。

まず手描きでささっと製図する。この作業が30分から1時間ぐらい。
ささっと……?
ささっと……?
道具も見せていただいた。厚紙に線を引き、とがった金具に金づちを打ち付けてカットする。
道具も見せていただいた。厚紙に線を引き、とがった金具に金づちを打ち付けてカットする。
つぎに形を作って、着色や絵付け。サンプルなので、過去のふろくの絵をコピーして貼り付ける。体裁を整えてプレゼンに出す。
サンプルとして作られた、この世に存在しない幻のふろく
サンプルとして作られた、この世に存在しない幻のふろく
そして案が通ってはじめて「どの作家さんが絵を担当するか」が決められる。

なので、形や使い方のアイデアは完全に高橋さん発信だ。

組み立ての難易度と仕掛け

ふろくには組み立ては、簡単なものもあるが、難しいものはかなり難しい。仕掛けも凝っている。この「カギ付きボックス」なんて、開かないようにほんとにカギがかかる。
紙箱のくせにカギがかかる! 「カギつきないしょボックス」
紙箱のくせにカギがかかる! 「カギつきないしょボックス」
私が高橋さんを知るきっかけとなったトークショーの中で、企画された学芸員さんが「カギ付きボックス」の思い出について話される場面があった。

「小学生のころ組み立てられず、大人になってリベンジしたくてオークションで複数買ったけど組み立てられなかった」と。(この方は「工作苦手なんで」とも言われてはいたが。)

それに対し、会場におられた高橋さんが「これ作ったの僕です。すみませんでした。」と謝罪。まさか四半世紀の時を経て、製作者と当時の子供のこんなやり取りを目の当たりにすることになろうとは。

この箱、具体的にはどんな仕掛けがあるかというと……
カギと差込口のパーツ
カギと差込口のパーツ
回転させて、この引っ掛かりを
回転させて、この引っ掛かりを
カギを回転させて穴に引っ掛けると、蓋が開かなくなる
カギを回転させて穴に引っ掛けると、蓋が開かなくなる
時にはかなり組み立ての難易度が高くなることもあるが、一番の理想は「説明図を見なくても、できることならワンタッチで作れるように」。

これなんかちょっと触っただけで出来る。
このボックスの場合、2つのパーツを広げてはめ込めばすぐに完成。このぐらいの簡単さが理想。
このボックスの場合、2つのパーツを広げてはめ込めばすぐに完成。このぐらいの簡単さが理想。
このように、ふろくはものによって難易度差がかなりある。

「今月はいくらなんでも難しすぎる……」みたいなのを判断する人はいるんだろうか。
ふろくの難易度を判定するモニターさんが居たりはしないんですか?
モニターはかけてないですね。雑誌の編集部の方が試しに作ってみる程度で。
難しすぎて誰も組み立てられなかった……みたいな場合もあり得ますかね。
それは組み立て説明の方の絵の描き方、伝え方にもかかってますよね。「組み立てられない人」を考慮しすぎた設計にしてしまうと、あまりいいものができないんですよ。
カギ付きのは、作られたものの中でもかなり難しい部類に入るんですよね?
難しさで言うと、ベスト3に入ります。けど、子供が作るのには難しすぎた。作れなかった方がいると聞いて、申し訳ないことをしたなと。なので、「カギ付きボックス」は私は評価してません。欠陥ふろくです。
今もう一度取り組めば、もうちょっと簡単な方法でつくるやり方で出来ると思います。
ほどよく難しいものを、苦労して完成させれば思い出にも残る。その「ほどよく」加減も考えられてるのだ。
説明書きを描く人も毎回苦労してそう
説明書きを描く人も毎回苦労してそう
さっきの簡単なほうのボックスもちょっとした仕掛けがある。蓋を閉じるときに、マグネットがホワイトボードに吸い付くときのような、紙箱らしからぬ音を立てる。これも不思議だ。
「この長さによって音が鳴らないんです」と説明されてもまるで分からない。「このでっぱりを利用できるという直感はあったが、音が鳴ったのは偶然」とのこと。
「この長さによって音が鳴らないんです」と説明されてもまるで分からない。「このでっぱりを利用できるという直感はあったが、音が鳴ったのは偶然」とのこと。
こんな組み立てものを、毎月3点ずつを数社に必ず提案する。そうなると、作る種類も頻度も多い。

どうやって発想してるんだろう。どうやって技術を磨いたんだろう。

いや、それよりなんでこんなに女子が喜びそうなものが分かるんだろう。

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