特集 2017年7月28日
 

マンションポエム徹底分析!

1000以上のマンションポエムを徹底分析しました。そんなことしなくていいのに。
1000以上のマンションポエムを徹底分析しました。そんなことしなくていいのに。
マンションポエム。それはマンション広告にちりばめられた詩的キャッチコピー。

折り込みチラシや、駅や電車内の広告などでよく見かけると思う。「洗練の高台に、上質がそびえる」(「プラウドタワー白金台」野村不動産より)といったあの名調子のことだ。

このマンションポエム観察をライフワークにしているぼく。今回はさらに踏み込んだ分析をしてみよう。
もっぱら工場とか団地とかジャンクションを愛でています。著書に「工場萌え」「団地の見究」「ジャンクション」など。

前の記事:「アメリカの非常階段ってなんかすてき」
人気記事:「チェルノブイリは「ふつう」だった」

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マンションポエムとはこういうものです

ぼくは、これまで数度にわたってマンションポエムに関する記事をお届けしてきた(前回は「地元のマンションポエムがおもしろい」)。

十数年前に収集・観察し始めたときは「人生に、南麻布という贈り物」などのポエムに半笑いでいた。ぼくもまだ若かった。

それがいまやすっかり真顔で読み込んでいる。疲れた夜に「癒しの技法。安らぎのしつらえ。誇りに、住まう」などといったポエムにいやされることもしばしばである。成長なのか麻痺しちゃったのか。

今回は長年のマンションポエム歴をほこるぼくならではの一歩踏み込んだ分析をお聞かせする。が、まずはともあれ、コレクションの中から威勢の良いポエムをいくつか蔵出ししよう。いずれもマンションウェブサイトのキャプチャである。
高崎での日常は、オーラを放つ歌姫であるとのこと。このポエム、かなり気に入っている。ちょっと字が小さいが全部読んでみてほしい。(タカラレーベン「レーベン高崎GRADIA」)
高崎での日常は、オーラを放つ歌姫であるとのこと。このポエム、かなり気に入っている。ちょっと字が小さいが全部読んでみてほしい。(タカラレーベン「レーベン高崎GRADIA」)
世田谷の詩は全般的にハイブロウな傾向にあるが、これは中でもかなりのブロウブロウ。貴人。(住友不動産「シティハウス用賀砧公園」)
世田谷の詩は全般的にハイブロウな傾向にあるが、これは中でもかなりのブロウブロウ。貴人。(住友不動産「シティハウス用賀砧公園」)
見るたびにタワーマンションがにょきにょき増えている印象のある武蔵小杉。多摩川のほとりにあって、東京都心との距離感をこのように表現してきた。巧みだ。あと字がへたくそでいい。(三井不動産レジデンシャル「パークシティ武蔵小杉 ザ ガーデン」)
見るたびにタワーマンションがにょきにょき増えている印象のある武蔵小杉。多摩川のほとりにあって、東京都心との距離感をこのように表現してきた。巧みだ。あと字がへたくそでいい。(三井不動産レジデンシャル「パークシティ武蔵小杉 ザ ガーデン」)
時として真理はごく当たり前のことを言っただけだったりする。「愛は尊い」とか。それと同じだ。たぶん(住友不動産「シティタワー武蔵小杉」)
時として真理はごく当たり前のことを言っただけだったりする。「愛は尊い」とか。それと同じだ。たぶん(住友不動産「シティタワー武蔵小杉」)
10年代以降のマンションポエムはカタカナがあまり使われなくなったのだが、ときどきこのような往年のバブル調とでも言うべき詩が聴けることもある。スタイリッシュ、アクティブ、ハイセンス、アーバニスト。伝統芸能の域である。大事にしたい(プレサンスコーポレーション「プレサンス レジェンド 堺筋本町タワー」)
10年代以降のマンションポエムはカタカナがあまり使われなくなったのだが、ときどきこのような往年のバブル調とでも言うべき詩が聴けることもある。スタイリッシュ、アクティブ、ハイセンス、アーバニスト。伝統芸能の域である。大事にしたい(プレサンスコーポレーション「プレサンス レジェンド 堺筋本町タワー」)
夫婦の週末のひとこまをむずむずする感じで描いた名作。スコッチときたか。長い夜になりそうだ(ダイワハウス「プレミスト円山表参道」)
夫婦の週末のひとこまをむずむずする感じで描いた名作。スコッチときたか。長い夜になりそうだ(ダイワハウス「プレミスト円山表参道」)
妻がときどき冗談でぼくの故郷である千葉をおちょくる。彼女は横浜市出身だ。日本で一二を争うブランドである。千葉に勝ち目はない。ただ、横浜市といっても上大岡なのだ。海ないじゃん! あんなの横浜じゃない! といって反撃するのだが「横浜市のほとんどは山だ。これだから千葉っ子は……」と言い返されてしまう。そんな時にこのポエムで反撃したい。(東急不動産「ブランズ横浜」)
妻がときどき冗談でぼくの故郷である千葉をおちょくる。彼女は横浜市出身だ。日本で一二を争うブランドである。千葉に勝ち目はない。ただ、横浜市といっても上大岡なのだ。海ないじゃん! あんなの横浜じゃない! といって反撃するのだが「横浜市のほとんどは山だ。これだから千葉っ子は……」と言い返されてしまう。そんな時にこのポエムで反撃したい。(東急不動産「ブランズ横浜」)
アプローズ。はじめてきいた。マンションポエムは勉強になる。これもじっくり読んでほしい。「このまちに住まうことを決めた暮らしのスタイリストたちへのアプローズ(喝采)」。なんど読んでもいい。(伊藤忠都市開発株式会社・東急不動産株式会社「クレヴィアタワー神戸ハーバーランド」)
アプローズ。はじめてきいた。マンションポエムは勉強になる。これもじっくり読んでほしい。「このまちに住まうことを決めた暮らしのスタイリストたちへのアプローズ(喝采)」。なんど読んでもいい。(伊藤忠都市開発株式会社・東急不動産株式会社「クレヴィアタワー神戸ハーバーランド」)
数年前に安倍首相が使ったコピーを彷彿とさせる。思えば政権公約はときにポエム調になる。(三井不動産レジデンシャル「桜上水ガーデンズ」)
数年前に安倍首相が使ったコピーを彷彿とさせる。思えば政権公約はときにポエム調になる。(三井不動産レジデンシャル「桜上水ガーデンズ」)
「ポエムずれ」したぼくも、さすがにこれにはおどろいた。代官山のロミオ&ジュリエット。さいご二人とも死んじゃうけどだいじょうぶか(アパホーム株式会社「THE CONOE〈代官山〉」)
「ポエムずれ」したぼくも、さすがにこれにはおどろいた。代官山のロミオ&ジュリエット。さいご二人とも死んじゃうけどだいじょうぶか(アパホーム株式会社「THE CONOE〈代官山〉」)
マンションポエムの世界は基本的にスノッブだ。だから主語が「俺」なのに驚いた。膨大な数のポエムを見てきたが、おそらく「俺」が語る作品はこれ以外にはない。(住友不動産「シティハウス中目黒ステーションコート」)
マンションポエムの世界は基本的にスノッブだ。だから主語が「俺」なのに驚いた。膨大な数のポエムを見てきたが、おそらく「俺」が語る作品はこれ以外にはない。(住友不動産「シティハウス中目黒ステーションコート」)
上のポエムは中目黒の物件のものなのだが、ここに描かれているナカメ像に、隔世の感があってしみじみしてしまった。「俺」とは。そして「今宵も」ということは、毎晩のように最高潮なのだろう。

ぼくが学生のころの中目黒は輸入家具・雑貨とカフェ文化でならしていたものだが、気がつけばいまやEXILE関係のとドンキの街である。どうやら「俺」の人物像が明らかになってきたようだ。すっかりマッチョ。かつての文化の正反対といってもいい。

友人でライターの速水健朗は、そのうち中目黒駅は「EXILE TRIBE STATION」に改名され、HIROの出身地である横浜への列車は「Choo Choo TRAIN」になるだろうと自身の記事で語っていた。ありうる、そう思わせるマンションポエムである。
金町のタワーマンションの詩。ついに大気圏を脱出の勢いである。相当な高さだ。(住友不動産「シティタワー金町」)
金町のタワーマンションの詩。ついに大気圏を脱出の勢いである。相当な高さだ。(住友不動産「シティタワー金町」)
青山のそうとう高級な物件のポエム。値段が高ければ高いほど、詩は浮世離れしてくる。その見本のような作品だ。「それは布」て。(三井不動産レジデンシャル「パークコート青山ザタワー」)
青山のそうとう高級な物件のポエム。値段が高ければ高いほど、詩は浮世離れしてくる。その見本のような作品だ。「それは布」て。(三井不動産レジデンシャル「パークコート青山ザタワー」)
まだまだいくらでも楽しめるポエムはあるのだが、これぐらいにしておこう。以上のラインナップで、だいたい最近のポエム事情がおわかりいただけたと思う。つまり、あいかわらずである。

2004年ぐらいからポエム収集をやっているので、定期的に「もうぼくが驚くようなポエムは出てこないだろう」と思うのだが、そんな悲観的な観測を覆す逸品が毎年必ず出現する。業界のポエマーたちには敬意を表する。

自分でもひくぐらい本気の分析

さて、まだまだたくさんある、と言ったが、どれぐらいあるのか。こつこつと収集してきたポエムの数を調べてみた。
なんと千越えてた。
なんと千越えてた。
なんと1148物件であった。自分でもびっくりした。いったい、ぼくはどれだけの時間をマンションポエムに費やしたんだ、と思ってめまいがした。

で、上の画像にうっすらあるように、すべてテキスト起こしして、分析することで、さらに人生における貴重な時間をポエムに捧げようとしているのだ。
あまつさえマップにプロットし((c)OpenStreetMapへの協力者)
あまつさえマップにプロットし((c)OpenStreetMapへの協力者)
ちなみに北は札幌から南は那覇の物件まで網羅しております((c)OpenStreetMapへの協力者)
ちなみに北は札幌から南は那覇の物件まで網羅しております((c)OpenStreetMapへの協力者)
分析の主な目的は、ポエムにどのような語句が使われているかを調べること。「KH Coder」というテキストマイニングの世界でおなじみのソフトウェアを使っていく。な、本格的だろ?
まずは語句を抽出。1148物件のポエムに使われている語は10万7千943だそうです。
まずは語句を抽出。1148物件のポエムに使われている語は10万7千943だそうです。
ちなみにマンションウェブサイトの多くが、ポエムの文字を画像として載せているので、テキスト起こし自体がたいへんな労力であったことをアピールしておきたい。誰に頼まれたわけでもないのでアピールしたところでアレなんですが。

ともあれ、抽出された語句のなかから、「です」などどんな文章でもよく出てくる語除き、特徴的だと思われるものをカウントした結果が下だ。
これがマンションポエムに登場しがちな語句ランキングだ。
これがマンションポエムに登場しがちな語句ランキングだ。
このランキングを見て、ぼくは感動した。誇張ではなく、結果が表れた瞬間、鳥肌が立った。1位が「街」だって!

なぜ感動したのか。よく考えてみて欲しい。マンションポエムとは、マンションを売るためのコピーだ。つまり、商品はマンションだ。

なのに、もっぱら「街」のことが描写されているのだ。建築という商品そのものではなく、それが建つ場所について言葉と表現を費やされている。

2位以降をずっと見ていっても、建築物を表す語がほとんど出てこない。この単純な集計だけで、すでにマンションポエムの真髄というか奇妙さというかおもしろさがわかる。マンションポエム、それは土地の詩なのだ。

もうこの段階でぼくは大興奮である。みなさんにこの興奮が伝わるかどうかはかなり疑問ですが。

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