特集 2017年8月8日
 

そろそろ街によくあるでかい彫刻の見方をわかっておきたい

でかい公共彫刻界の大物イサム・ノグチ

――次に見るのはイサム・ノグチという作家のものなんですが企画の発端になったんですよ。イサム・ノグチって名前はよく聞くけどなんなの?と思って調べてみたら「あー、おれはこういうでかい彫刻を公園でよく見てきたけど全くわかってない!」と思って
背後にスペースがなく、写真におさまりきってないんですが(イサム・ノグチ / 門 “GATE”)
背後にスペースがなく、写真におさまりきってないんですが(イサム・ノグチ / 門 “GATE”)

色の位置関係

「これ2色で使われてるからギューンとした前後感がありますよね。黒が奥にいって赤だからバーンと前に見えてくる。色のついた彫刻には三次元の位置関係にどう影響するのかを観察してみる楽しみ方もありますね」
色の効果で赤は前に、黒は奥にいく。ふたつはまっすぐに配置されていない
色の効果で赤は前に、黒は奥にいく。ふたつはまっすぐに配置されていない

調べるとレゴであることがわかった

「あとこれはね実はレゴブロック的な作品なんですよ。

この作品の制作年が1969年なんですよね。1964年に東京オリンピックありましたよね。あの時に高速道路建築ラッシュがあったんですよ。その時に生産された高速道路用の梁と桁なんですってこれ。

形の決まったものを組み合わせて作品を作ったっていうのがレゴブロック的。そういった既製品を使っているからこそちょっと組み合わせるだけでおかしげなイメージになるっていうか。

それは現代美術の方法論の1つであるんです。レディメイドっていって20世紀の美術の大きなテーマだったので。その流れも組んでいるんだなぁってのは味わい深いですね」

既製品の便器を持ち出して「泉!」とマルセル・デュシャンが言ったのが1917年。あれは一発芸などではなく、ちゃんと「おかしげなイメージになる」という美術の方法論であり、その証拠に50年後のイサム・ノグチにまで受け継がれているのである。
――イサム・ノグチは意味込める系ですか? 塚田「どっちかなあ。さっきの純粋な色・形・質感という話したじゃないですか。本当に純粋であろうとすると何も手は加えないんですね。ミニマルアートっていうんですけど。でもこれは前後感ついてたり、なんか普通じゃつまんないなっていうのを感じる。僕はこれ普通にイサム・ノグチがレゴブロックで遊んだんじゃないかと」イサムよ、でかいレゴをしたもんよのう…
――イサム・ノグチは意味込める系ですか? 塚田「どっちかなあ。さっきの純粋な色・形・質感という話したじゃないですか。本当に純粋であろうとすると何も手は加えないんですね。ミニマルアートっていうんですけど。でもこれは前後感ついてたり、なんか普通じゃつまんないなっていうのを感じる。僕はこれ普通にイサム・ノグチがレゴブロックで遊んだんじゃないかと」イサムよ、でかいレゴをしたもんよのう…

イサム・ノグチと野口英世

――イサム・ノグチは日本の人なんですか?

「ほぼアメリカの人ですね。調べて初めて知ったんですけど。日本人のお父さんが渡米した先の彼女の子供。イサム・ノグチはアメリカの大学の医学部に入学したんですけど、でも自分は芸術のほうに行きたいなって。その肩を押したのがその医学部で先生をやっていた野口英世らしいです」

――「へえ、あんたも野口って言うんだ…」ってあったかもしれないですよね

「そうですね、NANAですね、NANA」

ノグチと野口! でかい彫刻から完全に外れてくやしいがそのNANAは読んでみたい。
「へえ、あんたも野口っていうんだ…」と野口英世とイサム・ノグチが
「へえ、あんたも野口っていうんだ…」と野口英世とイサム・ノグチが
こういう石の大きな作品が公園の中にあるなあと(速水史朗 / からみ合った柱 “Embracing Columns”)
こういう石の大きな作品が公園の中にあるなあと(速水史朗 / からみ合った柱 “Embracing Columns”)

祈りが込められてるタイプ

「これはさっき言った彫刻の歴史でいう土偶的な感じ。プリミティブな感じがするじゃないですか」

――原始的ってことですよね。子供が土遊びしてる感じとかですか?

「そうでありつつ何かの祈りとかが込められているものがプリミティブなもの。

ぼくはもうこれ子孫繁栄の祈りにしか見えないですけれど。突起物があることによってそれが確信に変わりました。

事前に写真で見て微妙にクネっとした感じが女性的だなぁとか思ってたんですが、実際に見たらもう完全に『あるやん』という。これは神様がいるタイプですね」

塚田さんが言わんとしてることはわかる。ここが女子校ならさわがしくて授業を中断するレベルで愛し合っている。この作品の三次元性はガンガン左脳に響いてくる。
クネッとした形が女性的。真ん中に接合部があって、子孫繁栄の祈りの作品ではないかと
クネッとした形が女性的。真ん中に接合部があって、子孫繁栄の祈りの作品ではないかと

なぜ神様ばかり込めてくるのか

――意味があるかどうかって話に、なぜすぐ神さまが出てくるんですか? 意味をこめるっていって、パンの意味とか込めないんですか?

「パンは……さっきのやつがギリギリじゃないですか」

――でもなんか美術だけ神様を込めがちじゃないですか。 F1マシンに神様込めないですよね?

「それはもう宗教画という一大ジャンルが存在してますから。

美術っていうのはさっきも大北さんが言ってたように、何か意味があるんじゃないかという勘ぐりをさせるじゃないですか。なんでそういう思考回路に僕たちがなったかっていうと美術っていう表現がまずどういう風にはじまったかにさかのぼるんですね。

美術って何かをコピーするものなんですよ。洞窟壁画なら牛が描かれているとか。

例えば18世紀のはじめての百科事典と呼ばれている百科全書というものに、絵画の起源は『愛する人のために落ちる影をかたどったもの』だと書かれているわけです。

つまり何か現実にあるものがコピーとして再現されているような気がする、そういう錯覚を美術という表現は起こすことができるんです。

だから本当はいないけれども神様の顔はこんな感じですよ、と仏像とか宗教画が作られる。

文字が行き渡るのは印刷物が出現する16世紀とかなので。文字が読めなくても何かを伝えることができる美術というのは、それ以前の宗教が力を持っていた世界の中ですごく重要なものとして扱われてきたという歴史があります。

美術と宗教が近いもののように感じるというのはそういった歴史的な経緯があるんじゃないのかなと」

なるほど、という言葉に税が課せられるとしたら国産の軽自動車1台分くらいはなるほど税を納めた。意味、意味いってるのは宗教と絵画の歴史からだ!!
塚田さんをして「あるやん」と言わしめた接合部。これが本当に必要だったのか、あごひげに手をやりながら考えたい
塚田さんをして「あるやん」と言わしめた接合部。これが本当に必要だったのか、あごひげに手をやりながら考えたい

言葉で理解したいから意味をきく

――そもそもずっと違和感があるんですけど「これ意味はなんですか?」とか「テーマはなんなんですか?」とか意味を聞きがちだなーと思うんですよ。おばちゃんは。おばちゃんは、というか世間というか僕もなんですけど

「やっぱりぼくたちは言葉の世界で生きているんでね。答えが欲しいという心情は分かりますけれども。

でもやっぱり彫刻あるいは作品を見ることはそういったことを一旦忘れてみる。一旦『この形ってなんだろう??』というところから始める。自分を今までの常識とかから外して、とりあえず生のままで単純に自分の目だけで向き合ってみる。

そこから始めて、もう一度現世に戻ってくる。そういった体験をさせてくれるのが『作品』と呼ばれるものなのかなと思いますけれど」

いったん原始人とか赤ちゃんになって作品と向き合ってから、またおばちゃんになって「意味なんやの!? 意味わからへんわ」と考えたり。なるほどなるほど。これは忙しくなってきた。

その見方でいいんだよと背中を押された気分

ある程度歳を重ねていくと、それなりに芸術作品というものの隣を通り過ぎる。そして自分なりの味わい方みたいなものもなんとなく身につける。

「意味わからんわとかおばはんは言うけど、芸術って多分そんな意味ないよなあ」とか「ありのまま楽しむって言っても、何も考えずにこの音楽に身を任せて踊ればいいのよ!ってのもなんか恥ずかしいよなあ」とか。

なんとなくこうかなという芸術の味わい方みたいなのが自分にあるのだが、はたしてこれが正しいのか自信がないのだ。

これは自分のトイレの仕方が正しいのかどうかという問題に似ている。

今回いろいろ話を聞くと、意味を考えるのも感覚で味わうのも「どっちも正しい」ようだった。

言葉にすると特別大したことではないし、今までが間違っていたわけでもない。しかし「それでいいんだよ」と言われたような安心感がある。

なんていうかトイレの仕方を「それでいいんだよ、そうだ、みんなそうしてるよ、便座に座るんだよ。そうそうそう、いいよ、便座に腰掛けて、そうだ、トイレットペーパーは三角に折られていてもひきちぎっていいんだ!」と認めてもらったようで気持ちがいい。
台座に「絆」って書いている箱根駅伝の銅像。台座は大事問題が再び
台座に「絆」って書いている箱根駅伝の銅像。台座は大事問題が再び

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