特集 2017年8月9日

私の町では280円と290円でラーメンを出す店が通りを挟んで向かいあっている

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私が住む大阪の都島という町には一杯280円のラーメンを出す店がある。そして、その店の向かい側には一杯290円のラーメンを出す店がある。

今時280円のラーメンとはなかなか珍しい。290円のラーメンもかなり珍しい。それが、なぜか向かい合っているのである。ひっそりと競争しあった結果、このような事態になったのだろうか。

ずっと気になりつつも今まで行く機会がなかった都島の2つの激安ラーメンを食べ比べてみることにした。
大阪在住のフリーライター。酒場めぐりと平日昼間の散歩が趣味。1,000円以内で楽しめることはだいたい大好きです。テクノラップバンド「チミドロ」のリーダーとしても活動しています。(動画インタビュー)

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これはもう「都島激安ラーメンストリート」と呼んでもいいのでは?

大阪には驚くほど安い食べ物が数多く存在する。例えば15個100円、7個50円のたこ焼き。
ふにゃふにゃして柔らかい家庭的なたこ焼きだった。
ふにゃふにゃして柔らかい家庭的なたこ焼きだった。
こんな風に安くて美味しいものがあふれる大阪にあっても、今回紹介する280円、290円のラーメンというのは破格の部類である。

大阪・梅田の東側に位置する都島区。南部には京橋という一大歓楽街があるが、京橋から北に向かっては閑静な住宅街が広がるエリアになっている。都島区の中心部に位置する地下鉄・都島駅から都島通という大通りを東へ進んでいくとこんな光景が見えてくる。
ささやかな値段をでっかくアピール。
ささやかな値段をでっかくアピール。
ラーメンとやきめしが290円で本格スープが自慢で年中無休で深夜料金はいただかない福々亭である、という情報が一気に流れ込んでくる。「もうちょっと、ゆっくりお願いします」と言いたくなる。

そしてこの位置からぐるっと体をひねると、こうである。
うわ!そっちにも!?
うわ!そっちにも!?
こちらも、「とにかく一番伝えたいのはラーメンが280円であること」という感じである

2つの店の間を通る都島通は片側2車線の道路なので距離的には少し離れているのだが、このように向かい合っている。
つかずはなれず、絶妙な距離感である。
つかずはなれず、絶妙な距離感である。
反対側から見た方が分かりやすいか。
お互いの視線は絶対に感じているであろう。いじらしい感じもする。
お互いの視線は絶対に感じているであろう。いじらしい感じもする。
通りを挟んで両サイドに激安のラーメン店があるんだから「都島激安ラーメンストリート」と呼んだって良いだろう。賛同が得られなければ、これから私の心の中だけで呼んで行こうと思う。

まずは「福々亭」の290円ラーメンを食べる

さて、実際にそれぞれの店でラーメンを食べてみたいと思う。まず、「福々亭」にやってきた。
人間よりでかい290円の文字。
人間よりでかい290円の文字。
少し見えにくいが、ラーメンにライスとキムチがついたラーメン定食が390円らしい。
少し見えにくいが、ラーメンにライスとキムチがついたラーメン定食が390円らしい。
入店し、メニューを見ると、塩、しょうゆ、みそ、しょうゆ、とんこつの4種類のラーメンがすべて290円のようである。“塩”がメニューの一番上にきていて、一番のおすすめなのかな?と思いつつも、無難に “しょうゆ”をチョイス。運ばれてきたのがこちら。
予想に反してちゃんとしたラーメン!
予想に反してちゃんとしたラーメン!
予想に反して、なんて言うと失礼だが、290円という低価格からどんなものが出てきても文句はないと思っていたが、これはもう完全にお店のラーメンだ。
麺の量もたっぷり。
麺の量もたっぷり。
チャーシューも2枚入っている。
チャーシューも2枚入っている。
ゆで玉子が半玉入っているのも嬉しい。
ゆで玉子が半玉入っているのも嬉しい。
もやしとネギが入っていて、食べ応えじゅうぶんである。スープの味は、どこかで食べたことがあるようなオーソドックスなものだが、なんの文句も出ない味わい。きっと誰が食べても「これで290円なら安い」と感じるはずだ。お客さんの多くはラーメン単品ではなく390円のラーメン定食をオーダーしているようだった。

昼時ということもあって、店内は大変な混雑ぶり。私の席も相席となり他のお客さんも座っているので急いで食べて店を出た。ちなみにお会計はきっかり290円。税込み価格だ。

もう少しじっくりとあのラーメンを味わってみたかったなーと思い、夜、また行ってみることにした。

今度は塩ラーメン。一日にラーメンを2回食べても580円である。普通、一回でもっとする。
こちらも文句のない一杯。
こちらも文句のない一杯。
ドリンクメニューを見ると酎ハイが290円だ。
ドリンクメニューを見ると酎ハイが290円だ。
ラーメンと同じ価格だと思うといつもよりありがたい気がするライム酎ハイ。
ラーメンと同じ価格だと思うといつもよりありがたい気がするライム酎ハイ。
夜22時頃に来たのだが、夜は夜でゆっくりお酒を飲みつつ食事をするお客さんでにぎわっていた。
終始忙しい厨房。
終始忙しい厨房。
会計を済ませ、お店の方と少しお話しを。「安くて美味しいです!」と言うと「そうでしょう。忙しくてねー」とのこと。「うちには初めていらしたんですか?」と聞かれたので「はい。でも今日の昼も来たんです」と返すと「えー!あらぁ」と驚かれた。「また食べに来てくださいねー!」と優しく微笑まれつつ店を後に。

対岸の280円ラーメンを食べる。

翌日、今度は通りの向かいにある「格安王将」へ。
あくまで「餃子の王将」とは関係のない店だそう。インスパイア系というか。
あくまで「餃子の王将」とは関係のない店だそう。インスパイア系というか。
お店の外観をパシャパシャ撮っているとちょうどお店から出てきた方に「何屋さんですかー?」と声をかけられた。「ライターで、ラーメンが好きなんです」とわけのわからない返答になってしまった。聞いてみると常連さんらしく、「このお店はボリュームがあるからいいのよ」と教えてくれた。

メニューを見てみると、とんこつ、醤油、の2種類のラーメンが280円らしい。
23時以降は100円値上がりするようだ。
23時以降は100円値上がりするようだ。
シャリシャリの氷と麦茶がうれしい。
シャリシャリの氷と麦茶がうれしい。
醤油ラーメンと、壁のメニューにあったチューハイレモンをオーダー。
チューハイは300円。
チューハイは300円。
とうとうラーメンとチューハイの価値が逆転した。
とうとうラーメンとチューハイの価値が逆転した。
醤油ラーメンが運ばれてきた。
こちらもしっかり普通にラーメン。
こちらもしっかり普通にラーメン。
スープは豚骨がベースになっていて、一瞬「間違って豚骨ラーメンが出てきたのかな?」と思ったが伝票にはちゃんと「しょうゆうラーメン」とある。「豚骨しょうゆラーメン」ということか。
チューハイが高く思えてくるから人間って贅沢。
チューハイが高く思えてくるから人間って贅沢。
麺の量も申し分なし。
麺の量も申し分なし。
厚めのチャーシューも入ってます。
厚めのチャーシューも入ってます。
具材は他に、もやし、ネギ、きくらげ。これが280円とは、心の底からありがたい。
「格安王将」の店内は、天井が高く、照明もおさえめで落ち着いた雰囲気。
「格安王将」の店内は、天井が高く、照明もおさえめで落ち着いた雰囲気。
ハーフサイズのおつまみメニューが充実していたので、お酒を飲みながらゆっくり食事するのにも向いている感じだ。
酒飲みにはうれしいハーフサイズメニュー。
酒飲みにはうれしいハーフサイズメニュー。
お会計時、失礼かとは思いつつ「向かいのお店は……ライバルなんですか?」と聞いてみた。すると「いえいえ、そんな。でも、どっちも安いでしょう?」とのお返事であった。その口調から、2つの店はきっと商売敵というよりは共存関係なんだなということが伝わってきた。「よかったらまたいらしてくださいね」と、こちらのお店の方もすごく優しい。

どっちのお店のラーメンもお値段以上の満足感を与えてくれるものだった。そりゃまあ、一杯800円のラーメンの美味しさには負けるけど、財布の中身が寂しい時にもそばにいてくれる味。この値段であれば、他のメニューにサイドメニューとしてプラスするのもありだろう。こんなお店が家の近所にあるなんて幸せ者だ。

今回はラーメンに焦点を当てたが、どちらのお店でも他のお客さんが食べている定食のボリュームがすごかった。安い値段でとにかくたらふく食べさせてくれる店。庶民派な値段で営業を続ける2店に心から感謝したい。「都島激安ラーメンストリート」がある!と思えばくじけそうな時でも乗り越えていけそうな気がする。
とはいえ、大阪にはまだまだ強い店がある!
とはいえ、大阪にはまだまだ強い店がある!
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