特集 2017年8月11日

布団で睡眠エブリウェア(デジタルリマスター版)

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春ということもあってか、最近とにかく眠い。

いや、春のせいにしてしまったが、実を言えば別に最近に限らず眠い。季節なんか関係なく、駅や外出先でも、ついうとうとしてしまう。

そんな束の間のうたた寝をしながらいつも思うのは、「ああ、布団があればなあ」ということだ。

寝たいと思う気持ちに場所は関係ない。いつだって布団でちゃんと寝たい。そう思ったのでやってみました。

※2005年4月に掲載された記事の写真画像を大きくして再掲載したものです。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

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ルールを忘れて眠りたい

もう疲れた。寝たい。不思議なことに朝の起き抜けからそんな風に思っているからすごい。眠った意味がない。

そんな気持ちが自分を寝る衝動に駆り立てる。ただ、そうは言っても昼間のうちは誰しもそれぞれやることがあるだろう。ならば帰宅したらすぐに寝てしまえばいいのではないだろうか。
ああ、今日も疲れた
ああ、今日も疲れた
よっこらせ
よっこらせ
本気でそう思うなら、玄関を入ったところに布団を用意しておけばいい。寝室という概念に捕われる必要はない。
おやすみー
おやすみー
やってしまえば簡単なことだろう。食事とか風呂とか着替えとか、そんな手続きなど忘れて布団をしいてしまえばいい。
ここまでやってしまえばいつもの感じ
ここまでやってしまえばいつもの感じ
この写真はなんなんだと自分でも思う。原始的な欲求のままに行動すると人間としてはダメになるという実例か。

しかし、やってみる前はおそらく違和感があるのではないかと思っていたが、布団に入ってしまえばそうしたものは感じなくなっていた。布団に挟まれて目をつぶれば、そこはいつものあたたかい眠りの国だ。

これはいける。案外いいぞ。

玄関で寝るのもいいが、ちょうど季節は春。あたたかい陽気が人を外に出るようにと手招きする頃でもある。
春だし
春だし
せっかく春が来たというのにその解釈を間違っているような気もするが、自宅の脇に布団をしいてみた。アスファルトの上に布団を広げるという新鮮な感覚。
うん、いいよいいよ
うん、いいよいいよ
すぴー
すぴー
愚かな者の頬であっても、春の風は分け隔てなくやさしくなでる。しき始めの違和感を乗り越え、布団をかぶってしまいさえすればかなり寝れる。

実際、ピクニックなどに行ってついビニールシートの上で眠りそうになることがあるが、春とはいえ眠ってしまうには涼し過ぎる。

そんな微妙な気候でも、布団があれば快適に眠ることができる。敷布団はアスファルトの冷たさを通しはしないし、掛布団は自分の体温を逃がさずにいてくれる。

やっぱり外で寝るのは気持ちいい。もっとオープンな場所にも繰り出してみよう。
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オープンマインドでエニウェア睡眠

自慢げに春
自慢げに春
筆者の住む千葉県・南房総は現在菜の花が見ごろ。適当にぶらぶらしているだけでも、そこかしこで黄色く咲き誇る様子が目に入る。春というのはこんなにも輝かしいものだっただろうか。

うん、寝てみたい。自然の愛で方がいつもと違っているが、これが自分流のネイチャーライフだ。
よっこいせ
よっこいせ
あー…
あー…
アウトドア雑誌には載っていないやり方で自然と一体化。バーベキューセットやテントは必要ない溶け込み方。いつもの布団があればそれでいい。
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目を閉じればいつもの布団の空気。目を開ければきれいな菜の花。やってることはむちゃくちゃだが、もたらされている結果だけは夢の世界のようにすばらしい。

布団の国からこんにちは

続いて訪れたのは、丘一面にヤギを放し飼いにしている施設。
ヤギゾーンには自由に入れる
ヤギゾーンには自由に入れる
メーメー言ってます
メーメー言ってます
かわいい。いつも眠そうにうつろな目にも共感を覚える。「中にはいってヤギと遊ぼう!!」と言ってくれているが、遊ぶ元気はあんまりない。とにかく寝たいのだ。
失礼します
失礼します
布団を敷き始めると、ヤギたちは少しあとずさりしたように見えたが、それほど動じている風でもない。悪意のないことはわかってくれているだろうか。
微妙に距離を置くヤギたち
微妙に距離を置くヤギたち
目をつぶれば牧草のにおいが心地よい。耳をすますと遠くに聞こえるヤギの声。

いや、耳をすまさなくてもヤギの声ははっきり聞こえる。
ヤギ「あいつ変だよ」
ヤギ「あいつ変だよ」
ヤギ「絶対やばいって」
ヤギ「絶対やばいって」
ヤギが布団の中の僕を見ている。夢か。いや、まだ眠りについたわけでもないのに、夢など見るはずもない。

間違った自然の満喫のしかた

次にやってきたのは山あいにある棚田。段々になった土地に規則正しく田んぼが並ぶ様子は、不思議な雄大さと美しさがある。
すばらしい景色
すばらしい景色
こんにちは
こんにちは
あまりにも美しい絵を見ると、その中に入ってみたいと思うことはないだろうか。個人的にはそういう経験は今までないが、ここではそんな私でも風景の中に入ってしまうことができる。
まちがい探しのような一枚
まちがい探しのような一枚
雄大な景色の中に布団をしいて寝転ぶと、心まで大きくなったような気がする。しかし、心が大きくなったところで、やってることは寝てるだけだ。

大体、心が大きくなったような気がしているだけで、別に大きくなんかなってない。錯覚もはなはだしい。

しかし、錯覚だなとわかっていてもこれまでにない形でスケールの大きい風景を満喫。次は街の方にも繰り出してみよう。
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こじんまりと区切られて

街の中には寝るための場所ではないのに寝てみたくなる場所がある。私の場合、それは駐車場だった。
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ちょうどいい感じに区切っている線を見ると、なんだか布団をしいてみたくなる。いや、言ってることがおかしくないか。まだ夢からさめないままでいるのか。
すばやくしくのも慣れてきました
すばやくしくのも慣れてきました
うーん…
うーん…
四角い枠にきれいにおさまったつもりだったのだが、なんだか落ち着かない。自然の中で寝てきたような安らかさがない。

それはやはり、寝ている場所が駐車場だからだと思う。

実用的などこでも睡眠

これまで無為にいろいろなところで寝てきてしまったが、そこで寝ることが実用的な場所というのもあるだろう。例えば朝、目覚めた場所が駅のホームだったらとても便利だ。そのまま電車に乗って通勤してしまえばいい。

そんなシミュレーションをしたいと思って立ち寄ったのは無人駅。中に入ってみると、次の列車が来るまで小一時間あることもあってか、客らしき影もない。
黄色い線の内側にしく
黄色い線の内側にしく
う、うーん…
う、うーん…
あんまりうれしくないな
あんまりうれしくないな
これまでとは違いそこで寝る目的がはっきりしていた実践だが、どうもしっくりこない。あんまり落ち着けない。それはやはり、寝ている場所が駅のホームだからだと思う。

便利さを追求するあまり、大事な何かを忘れてしまっていたのかもしれない。

もう一度原点に戻って、僕は海を目指した。

布団でビーチタイム

次にやってきたのは外房の浜。ちょっとした入り江のようになっているところで、浜になっている距離こそごく短いが、そのためなのか波も穏やか。寝るのにはちょうどいい。
心洗われるような景色
心洗われるような景色
キャンプってほどでもないよな
キャンプってほどでもないよな
もっと気候があたたかくなればここにもビーチで寝転ぶ観光客が来るのかもしれないが、さすがにまだそうした人は見当たらない。仮にそういう季節になっても、布団持ってくる人はたぶんいない。

キャンプ禁止の看板が少々気になるが、布団に寝るというのはキャンプというのもまた違うと思う。
いろんな意味で最高
いろんな意味で最高
もう出たくない
もう出たくない
住んでしまいたい
住んでしまいたい
この実践のはじめの頃に感じた違和感はもうない。布団ってすばらしい、その中にいる自分を楽しむことができる。やってしまえばなんてことはない。

エクストリームな睡眠へのどうでもいいパッション

続いて訪れたのはちょっとした崖の下。自然との一体化はいいが、だんだんむきになってきている自分がいる。
日当たりのいいところを選んで
日当たりのいいところを選んで
吹きすさぶ風にもめげず
吹きすさぶ風にもめげず
何もそんなところで寝なくても
何もそんなところで寝なくても
風が強いこともあって、あんまり安らかじゃない。ただ、布団にもぐってしまえばそんなシチュエーションも全て無効化できる。石が転がる地面のゴツゴツも布団のクッションがやわらげてくれる。

やっぱり布団ってすごい。かなりの極限状態でも中にもぐって目をつぶれば、そこはいつものあたたかい国だ。

布団ファイナルバトル

崖の下でもその包容力を発揮した布団。そのポテンシャルには驚かされるばかりだが、ならばその限界を知りたくなるというのもまた人の心。
なんでこんなところにいるんだ
なんでこんなところにいるんだ
水平線が丸く見える
水平線が丸く見える
やってきたのはさっきとは別の崖の上。海の青さとはこんなに深い色だったか。あと、下を見ると結構高いぞ。
ちょっと腰も引けますが
ちょっと腰も引けますが
とにかくしきます。何が自分をそうさせるのかはわからない。
あとから写真を見て思ったよりやばいと思った
あとから写真を見て思ったよりやばいと思った
安らげない。ちっとも安らげない。

自然の中にいるのに、さすがにここでは布団の包容パワーよりもびびる気持ちの方が先に立つ。そういう危機を感じる力がないと、人間としてもまずいと思う。

この状況では自然に抱かれているとは言えない。変に寝入ってしまって、寝返りでも打とうものなら非常にまずいことになる。

ほんといいですよ、布団

やっぱりこのくらいが落ち着く
やっぱりこのくらいが落ち着く
実際、布団の「その場を別の世界に変える力」というのは予想以上にすごかった。心の中にある常識を捨ててその中で目をつぶれば、いつもの布団ワールドだ。

持ち運ぶのが大変ということを度外視すれば、布団がいつもそこにあるというのはすばらしいことだと思う。でも、布団の大きさは度外視できないので現実には難しいことだとも思う。

ひきこもっているのかアウトドアなのかよくわからないまま、どこでも布団プロジェクトのレポートとしたい。
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