特集 2017年8月16日

新歓するけど、誰も来ない・・・(デジタルリマスター版)

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春だ。新歓の季節だ。

高校生時代から帰宅部であり、大学に入ってもサークルや部活に入ることなく過ごしてきた僕には新入生歓迎会、通称「新歓」というものに縁がない。しかし、はたから見ていて、新しい季節に新しい仲間と新しい関係を築こうと瞳を輝かせている彼らを見ると、素直に「うらやましい」と思うこともなくはない。なくはない、というか、ある。楽しそうで、うらやましい。

そんなわけで、楽しそうな新入生歓迎会、開催してみることにした。

※2006年4月に掲載された記事の写真画像を大きくして再掲載したものです。
1986年埼玉生まれ、埼玉育ち。大学ではコミュニケーション論を学ぶ。しかし社会に出るためのコミュニケーション力は養えず悲しむ。インドに行ったことがある。NHKのドラマに出たことがある(エキストラで)。(動画インタビュー)

前の記事:ただティッシュを配りたい(デジタルリマスター版)

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新入生歓迎会って、なんだ

新入生歓迎会をやってみようといっても、これまでそういったものに縁のなかった(というか脊髄反射で避けてきた)ので、どういうイベントなのかよくわからない。

高校のときは、学校行事として「新入生歓迎マラソン」というものがあったが、あれは多分、違うものだと思う。「1年生はスタート時に一番前だよ」って、別に歓迎されてるわけじゃないと思う。

あらためて記憶の底を探っていくと、「駅前で、大学生と思しき人がサークルの看板を持っている」というイメージが浮かんできた。そうだ、あれをやればいいのか。

あれをやれば来るんでしょ? 新入生。
こんな感じで新入生を待ってるような。
こんな感じで新入生を待ってるような。
これで新入生を集めてるんだよ!!(きっと)
これで新入生を集めてるんだよ!!(きっと)

約束の地、新宿駅へ。そして看板の製作。

サークルや部活の新歓というのは、日本中のあらゆる場所で行われていると思う。そこで具体的にどこで実施するかを考えた結果、人がたくさんいそうな新宿駅の東口にしてみた。

実際行ってみると、ちらほらサークルの新歓の関係者らしき人を見ることができた。

というわけで、早速新入生が歓迎会に来られるように、看板をつくる。まだ見ぬ新入生に期待を膨らませ、筆を運ぶ。
楽しみだな~、新入生~♪
楽しみだな~、新入生~♪
看板をつくるにあたってサークル名は、
・カタカナ
・フレンドリーで開いてる感じ
という点を重視した。

また、人ごみの中でも目立つように装飾を施して、看板は完成だ。

普通ならサークルの為に看板があるわけだが、今回は看板の為にサークル名を作ったりして本末が転倒している。指摘されなくてもわかってますけども。

というわけで、

できたのが

こちらになります。
ども、関東国際大学工学部文学科2年の藤原です。
ども、関東国際大学工学部文学科2年の藤原です。
サークル名は、ゆるい感じで「ジョイナス(Join us!)」にした。フレンドリーな調子で読んで欲しい。あ、今考えるとusって複数形だ、一人しかいないのに。関東国際大学は千葉の海と山の間にある。という設定。

さあ、待つぞ、新入生。
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いきなり不安になる

新入生を待ち始めた。まだ時間が早いので、待ち合わせをしている人はいない。歩き、過ぎ行く人々をじっと見ていると、だんだん人を待つ僕の孤独が浮き立ってくる。心細い。
超孤独
超孤独
ここでひとつ不安になることがあった。

「関東国際大学って本当に実在しないだろうか?」

いや、多分無いだろうが、この新宿駅前の人ごみの中、まさに「孤立」しているとあらゆることが不安になってくるのだ。もし本当に存在して、在学生、あるいはOB等に話しかけられたら、もうお詫びのしようがない。

急いで携帯を使い検索してみる。無かった。一安心。ついでに歓迎の「迎」という字が間違ってないか、「入」と「人」という小額1年生レベルの漢字が間違ってないかも確認しておいた。不安は募るばかりだ。
帽子で自分を盛り上げつつ、看板に隠れて携帯で検索する
帽子で自分を盛り上げつつ、看板に隠れて携帯で検索する

人が増え、言い争いが始まる

午後6時ごろ、人も増え始め駅前にも活気が出てきた。周りを見渡すと、サークルの新歓らしき集団を確認することができる。みんな楽しそうだ。こちらもアレに負けないようにしなければ、と思う。
「行くぞー」
「行くぞー」
「ついてこいよー」
「ついてこいよー」
人が増え始めたと同時に東口周辺で客引きをしていた人たちが、言い争いを始めた。聞いてみると、誰がどの客に声をかけるかでモメているようだ。

「じゃあ、今僕があの客に声かけてきていいわけですか」
「いや、そりゃあ、ダメだよ」
「ダメって、あなたがやったことじゃないですか」
「ああ、いいよ、じゃあいいよ」
「いや、いいとか悪いとかじゃなくて、ルールですから、スジ通さないと」

そんな言い争いより、目の前にいる僕に「2次会の場所、決まってますか?」と一言かけるべきではないかと思う。新歓の楽しい雰囲気も台無しである。新入生もげんなりだ。
いや、あの・・・
いや、あの・・・
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待てど暮らせど新入生は来ず…

はじめから分かっていたことだが、新入生が来ない。呼んでないもの。

それとは対照的に、周りのサークルの新入生歓迎会らしき集団にはぞくぞくと人が集まってくる。この差は一体何なんだ。サークルに対して新入生は、配給制とするべきだ。
ヘリでここに着陸したい。
ヘリでここに着陸したい。
とは言いつつ、新入生以外の人なら何人か来たりもしていた。

「大変ですね」と言う人、「趣味ですか?」と言う人、「高島屋はどこですか?」と尋ねる人、「ジョイナスの近くにいるー」と電話する人。まさか目印になるとは。僕はここにいてもいいんだ!

いつの間にか役に立ってるサークル、ジョイナス。
「関東国際大学ってどこにあるんですか?」「心の中に」「は?」
「関東国際大学ってどこにあるんですか?」「心の中に」「は?」
こんな人も来た
こんな人も来た
とうとう心が折れ始める。待ち合わせをしていたサークル新歓集団が、それぞれ店へと移動を開始したのだ。完全に引き際を失っているサークル「ジョイナス」としては一番見たくない光景だ。

「置いてかないで!」と言いたくなるが、確かに新歓というものは待ち合わせが目的ではない。これからあの集団は、未成年に違法な物質を摂取させるつもりなのだ。そうに違いない。悪いやつ!

・・・とか言っても空しい。良心などこの場においてはただのルサンチマンである。もう、何やってるんだろ、自分。
視線の先には
視線の先には
楽しそうなサークルが。
楽しそうなサークルが。
結局、彼ら彼女らのキラキラとした生命のパワーの毒気に当てられ、胸にモヤモヤを抱えたまま帰宅した。電車の中で「ああ、みんな、楽しくやってんのかな…」と想像すると、車窓に映る自分の顔はなんて情けないものかと感じられた

帰宅して思ったこと

家に帰って「クソッ、入学したときテニスサークルに入ってれば・・・」と思ったところで気がついた。そんなサークル入ってもすぐやめてる。冷静に考えたら、そうだ。

そもそも、この企画とか誰かに強制されたわけでもなく、自分でやろうと決めたことだ(いつもだけど)。彼らはサークルでやりたいことをやって、僕もこうやってやりたいことをやっている。そういう点ではどちらが正しいとか、勝ちとかは無いわけだ。そんな単純なことにようやく気づいた今日この頃です。
人生色々。
人生色々。
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