特集 2017年8月21日
 

イカを握った手を砂利浜に突っ込んでミミズハゼを捕りたい

砂利浜に潜むミミズハゼという魚を、信じられない方法で捕ってきました。
砂利浜に潜むミミズハゼという魚を、信じられない方法で捕ってきました。
富山県在住の友人達が、地元で「あぶらぎっちょ」とか「ベント」と呼ばれるドジョウみたいな魚、ミミズハゼをすごい方法で捕まえているのが羨ましくて仕方がない。

その方法とは、砂ではなく砂利の海岸の波打ち際で、手の平にイカのゲソを握って、そのこぶしを砂利にねじり込むというもの。すると指の隙間から、ミミズハゼが入り込んでくるらしいのだ。

とても羨ましいので、鳥取の海岸で挑戦してきた。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。

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富山のミミズハゼ捕りが羨ましい

どうなってるんだ、富山の海よ。砂利浜にミミズハゼという魚が潜んでいるのも知らなかったし、それがイカゲソを握ったこぶしで捕れるなんて。本当に日本の出来事なのかというくらいびっくりだ。

開高健や中島らもの本で、ブラジルのアマゾン川には狂暴でニョロニョロしたカンディルというナマズがいて、人間の穴に入り込んでしまうという話を読んだことはあるけど、まさか富山にも似たような魚がいるなんて。
2009年に訪れた富山の海岸。こういう砂利浜に潜んでいるらしい。
2009年に訪れた富山の海岸。こういう砂利浜に潜んでいるらしい。
似てるといっても、その弱々しそうな名前通り、ミミズハゼに危険性はない。富山におけるミミズハゼ捕りは、夏になるとテレビで流れるローカルニュースの定番であり、地元の子供にとっては上級生から代々受け継がれている遊びのようだ。なんでも生きたまま丸のみすると泳ぎがうまくなるのだとか。

富山にはホタルイカを網で掬いにいったことがあるけれど(こちらの記事参照)、ミミズハゼなんていうゆるキャラもいるなんて。もっと早く知りたかったよ。

こういった地元では当たり前のことだけど、少し場所がずれると全く知られていないという、生物を捕まえる文化が大好きだ。これを体験しない訳にはいかないだろう。

あえて鳥取で挑戦してみよう

ミミズハゼが捕れるであろう海岸の調べはついているし、富山在住の友人に案内してもらうことだって可能だ。家からちょっと遠いけれど、行けばまず間違いなく捕れるだろう。

いやでもちょっとまて。その前に鳥取へ行く用事がある。富山と鳥取は東京と愛知くらい離れているようだが、どちらも日本海側に違いはない。ホタルイカの産地という共通点だってある。

ミミズハゼを捕まえて遊ぶ文化は富山だけかもしれないが(あとで知ったけど日本各地にちょこちょこあるらしいよ)、ミミズハゼ自体は全国に分布しているのだから、鳥取にだっているはずだ。よし、まずは情報ゼロの土地で挑戦してみよう。
鳥取の西寄りにある大山町のスーパーで必要な道具を買い揃えた。
鳥取の西寄りにある大山町のスーパーで必要な道具を買い揃えた。
そんなこんなで鳥取でミミズハゼ捕りにチャレンジすることにしたのだが、地元の方にいくら聞いても、それ知っているよという人が誰もいない。漁師さんに訪ねても、そんな魚は見たことがないという。

おやおやおや。このあたりに生息していないから誰も知らないのか、ただ見る機会がないだけなのか。砂利の中に潜む魚なので、後者なのだと信じたいが、さてどう転がるか。

できることなら、手に汗握る展開からの、手に(ミミズ)ハゼ握る結末を期待したい。
エサに買ったシロイカ。高級品であるケンサキイカのことらしい。
エサに買ったシロイカ。高級品であるケンサキイカのことらしい。

適当な海岸へとやってきた

ミミズハゼを捕るにあたって一番肝心なのは、適度な大きさの石で構成された砂利浜の海岸を見つけることだろう。

お世話になった地元の方の話だと、なんでも鳥取県西部の大山町周辺はゴロゴロとした石の海岸ばかりで、東の鳥取方面にいくと砂の海岸が増えるらしい。
まずは大山町の御来屋漁港の脇からスタート。
まずは大山町の御来屋漁港の脇からスタート。
とりあえず宿から近い海岸へと降りてみると、漬物石みたいな角の取れた丸っこい石が一面に転がっていた。波は穏やかで、海中の石には緑色の藻が生えている。

ミミズハゼが潜むには石が大きすぎるような気もするが、とりあえずここからスタートしてみようか。
望んでいる砂利浜とはちょっと違うかな。
望んでいる砂利浜とはちょっと違うかな。
近所のスーパーで買ってきたイカのゲソを握って、波打ち際へと前進する。

ここにミミズハゼはいるのだろうか。いるような気もするし、いないような気もする。

いたらいいなという気もするし、もうちょっと探しまわりたい気もする。
緊張の第一手。
緊張の第一手。
イメージだとこぶしをグイグイっと埋め込む感じなのだが、この石の大きさではそうもいかない。

藻で滑る大きな石と石の間に、そっとグーにした手を押し付ける。

この海からどんな反応が返ってくるのか、全く読めない。どのくらい待てばいいのか、どんな感触が伝わってくるのか、握る力加減はどれほどが正しいのか。

イカゲソを握ったこぶしに全神経を集中しているため、気が付けば手を水に入れた瞬間から息を止めていた。当たり前だが顔は水面より上なのだが、なぜか素潜りをしている気分になってしまうのだ。
息を止めて手を突っ込む。
息を止めて手を突っ込む。
プハー。息が続くまで手を沈めたが、まったく反応が返ってこなかった。

そりゃこんな浅い波打ち際で、人間の手の中にあるエサにアタックしてくる強気の魚なんて日本の海にいないだろという気になってくる。

こりゃダメかと思いつつも、一応何か所か場所を変えてみると、手にカサカサと何者かが触れてくる感じが伝わってきた。なにかいるね。

そいつは指の隙間に入り込もうとしているようだ。見えない場所で俺の手に何かが寄ってくるという、ちょっとした恐怖体験。

しかしこれは身に覚えのある感覚だ。お目当てのミミズハゼではなく、カニがエサに寄ってきたのだろうと判断したところで、遠慮気味に指の肉を挟まれた。

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