特集 2017年9月5日
 

地球儀のトップメーカーで地球儀を見る

いま、国産地球儀の多くは草加市で作られている。
いま、国産地球儀の多くは草加市で作られている。
埼玉県草加市在住 の知人から、ちょっと面白い話を聞いた。
「草加市には、地球儀の日本トップシェアメーカーがある」というのだ。
草加市・地球儀・トップシェアで三題噺をやります、という設定でない限り、あまり組み合わせたことの無いセットである。
というか、そもそも地球儀ってどういうところで作ってるんだろう。
面白そうなので、見せてもらいに行ってきた。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。

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地球儀工場ってどんなところだ

草加駅からバスで15分ほどのところに、国産地球儀のトップメーカー『渡辺教具』さんはあった。
事前に地図を見ると、小さな工場と住宅が混じり合うように建て込んでいる地域だったので、もしかしたら迷うかな?と思っていたのだが、全く心配なかった。
絶対ここ。だって軒先に巨大地球儀があるから。
絶対ここ。だって軒先に巨大地球儀があるから。
まずは事務所にお邪魔すると、渡辺教具製の地球儀サンプルがあちこちに並べられている。
この会社の第一印象としては、丸い、だ。
丸いものがいっぱい並んでいる度合いでいうと、ボーリング場とタメを張るぐらい。
モノクロのおしゃれな地球儀とか、いろいろ丸い。
モノクロのおしゃれな地球儀とか、いろいろ丸い。
そして、地球儀をまじまじと見るのなんて子供のころ以来のような気がする。
そういえば小学校入学時に親戚から大きめの地球儀を買ってもらったはずだが、中学生になる時分にはいつの間にか部屋から消えていたように思う。あまり地理に興味の無い子だったのだ。
どこにいったんだろう、あの地球儀。

そして取材に同行してくれた編集藤原くんは「以前にプープーテレビで使う用に小さい地球儀を買ったのがマイファースト地球儀です」と、ここまでの道すがらに話してくれた。
不安だ。地理に強いライター西村さんあたりににお願いして同行してもらえば良かった。

まずは地球儀の基本から

…という旨を最初に告白すると、渡辺教具製作所社長の渡辺周さんは「じゃあまず基本から」とにこやかに地球儀を持ってきて説明をしてくれた。
若くてイケメンで地球儀メーカーの社長、と要素の多い渡辺さん。
若くてイケメンで地球儀メーカーの社長、と要素の多い渡辺さん。
渡辺 まず、地球儀や地図は大まかに分けて2種類あります。「行政型」と「地勢型」です。
行政型というのは、行政区分…地球儀の場合だと国を色分けして表示しているタイプですね。


なるほど、たしか小学生の時に買ってもらったやつはこんな感じでカラフルに色分けされてた気がする。

渡辺 そうですね。小学生用の地球儀は行政型が多いと思います。対して中学・高校で使う地球儀は地勢型が多いですね。砂漠とか山脈といった地形的な情報で色分けされています。
左が地勢型、右が行政型。確かに目に入ってくる情報がぜんぜん違う。
左が地勢型、右が行政型。確かに目に入ってくる情報がぜんぜん違う。
渡辺 行政型で見ると、中国ってすごい広大な土地だなーって思うじゃないですか。でも地勢型で見ると、その半分以上が山と砂漠なんですよ。
弊社の地球儀は地勢型が売れますね。


あー、なるほど。タイプによって分かる情報が全然違う。

渡辺 ちなみに、いまは「世界的な地理を学ぶ時は、地図ではなくできるだけ地球儀を使うように」と文科省の指導要綱に入っているんですよ。
うちの地勢型は等高線も精細でいいんですよー、と渡辺社長。
うちの地勢型は等高線も精細でいいんですよー、と渡辺社長。
渡辺 たとえばニューヨークに飛行機で行く時って、昔はアンカレッジ経由だったんですよね。

そういえばありました、アンカレッジ便。最近は全く聞かなくなったけど。

渡辺 あのルートをメルカトル図法の地図で見ると「なんでこんな遠回りしてるの?」って思いますよね。
アンカレッジはアラスカの都市。これは「直で行けや」と思う。
アンカレッジはアラスカの都市。これは「直で行けや」と思う。
メルカトル図法って久しぶりに聞いたけど、確かにこの地図で見る限りおかしなルートではある。

渡辺 ところが地球儀で見ると、ニューヨークと成田をズドンと直線でつないだど真ん中にアンカレッジがあるんですよ。
昔は飛行機の航続距離が短かったので、中間地点のアンカレッジで燃料補給してたんだな、と分かります。
地球儀で見ると、わりといい位置にあるアンカレッジ。
地球儀で見ると、わりといい位置にあるアンカレッジ。
渡辺 このように正しい距離感と位置関係を把握できるので、地球儀を使うように、と文科省は言ってるわけです。

地球儀って売れてるの?

取材前、藤原くんと僕という狭いサンプルを元に「最近は地球儀なんて売れてないんじゃないか」とか失礼なことを話していたのだ。
でも、文科省が「学校の教材で地球儀を使え」と言ってるわけだし、意外と売れてるのかも。

渡辺 うーん…実はちゃんとしたデータがないので私の個人的な感覚ですが、弊社だけで年間3〜4万個ぐらい売れてるのかな。

失礼ながら「へー、意外と売れてる!」って感じ。

渡辺 国内生産をしている地球儀メーカーはうちを入れて3社あるんですが、他にも台湾産・アメリカ産の地球儀が入ってきていますね。
渡辺教具製作所の特色としては、国境線が変わったり国名が変わったりというのに対して最新のデータを使っていること。最新のものだと分かるように、地球儀に製造年を入れてます。これは世界でもうちの地球儀だけです。
太平洋上に製造年の表記入り。
太平洋上に製造年の表記入り。
渡辺 もともと曾祖父が昭和12年に創業したんですが、その頃は主に官公庁に精細な地球儀を納めるメーカーだったんです。さすがにそれだけでは仕事にならないので、学校教材や文房具店などに卸すようになりました。
今は博物館やホテルなどに特注サイズのものを納めたりもしてますよ。


なるほど、情報がアップデートされるたびに、そういうところから買い替え需要があるのかもしれない。思ったより儲かるのかも、地球儀メーカー。

渡辺 そういえば最近、外務大臣の執務室がテレビのニュースで映ったんですが、うちの地球儀を置いていただいてましたね。

おお!外務大臣って、たぶん日本で一番ちゃんとした地球儀を持ってないといけない人のような気がする。
さすが業界トップメーカーの地球儀である。

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