特集 2017年9月5日

暑い夏を乗り越えるには北海道で服を凍らせるしかないと思った

試される大地、北海道で試されてきました。
試される大地、北海道で試されてきました。
暑がりである。人が涼しいときには暑いと言い、暑いという時には冷房を23℃にする。しかし、エアコンを一日中つけているわけにも行かず、保冷剤などをタオルで巻いて首に当てたりしていたが、それでも暑い。なので、Tシャツを凍らせることにした。
1988年神奈川県生まれ。普通の会社員です。運だけで何とか生きてきました。好きな言葉は「半熟卵はトッピングしますか?」です。もちろんトッピングします。(動画インタビュー)

前の記事:本当に効果のある痛い健康サンダルを作りたい


家の冷凍庫で凍らせてみる

もし、身近なところで成功すれば世界中の暑がりたちが幸せに暮らすことできる平和な世界ができるだろう。この記事の締めは「ぜひ、家の冷凍庫でも試してみて下さいね!」に今、決めた。成功すれば。
凍らせるTシャツはケチャップのTシャツ。冷凍ケチャップ。
凍らせるTシャツはケチャップのTシャツ。冷凍ケチャップ。
ウェブマスターの林さんからアメリカ土産でいただいたTシャツを凍らせることにした。人からいただいたTシャツなので多少「これは本当に凍らせていいものだろうか。人から頂いた物を凍らせることは社会人としてNGなのではないか」と躊躇したが、暑いのが悪いので冷凍庫に入れることにした。
濡らして、
濡らして、
ジップロックに入れて、冷凍庫へ。
ジップロックに入れて、冷凍庫へ。
午前中に冷凍庫へ入れて、夕方ぐらいに取り出そう。ちなみにこの記事、あまり情報が出てこないと思うので「凍らせる」で検索して出てきたお役立ち情報を書いておく。
濡れた本や紙などをジップロックに入れて閉めないで冷凍庫にいれると復活するらしい。以上、役に立つ情報でした。

外に出かけて、家に戻ってきたらちょうど夕方だったので、Tシャツの様子を見ようと冷凍庫を見たら入ってない。どこだ。
正解は外でした。
正解は外でした。
探したら家のベランダに置かれていた。母に聞いたところ「邪魔だったから」らしい。邪魔ならしょうがない。もちろん、とけていた。

後日、許可を取りもう一度やってみたが、たたんで凍らせてしまうと布がくっついてしまい着ることができなかった。そのままの形で凍らせなければならない。どうすればいいのか。
冷蔵庫に入っているヨーグルトを食べて考えたが、1日分の鉄分が取れただけで何も思いつかなかった。
冷蔵庫に入っているヨーグルトを食べて考えたが、1日分の鉄分が取れただけで何も思いつかなかった。

旅行前日にカメラが壊れた

話は変わるが、今年の夏休み、北海道へ旅行に行くことにした。うまいものを食べて、自然に触れたりしながら、取材をしようとそれはもう楽しみに仕事をしてきた。前日、あんなことが起こるまでは。
カメラが壊れました。
カメラが壊れました。
充電をしようとプラグを差したら充電口が中に入ってしまい、それを取り出そうとしてピンセットでやろうとしたら中で線が切れたときには笑った。ブチって音がした。前日に起こるのか。

パニックである。頭の中で「わー」と叫びながら河川敷を全力疾走している自分がいる。そんなことをしてもどうにもならないので、旅行当日にカメラを買って出かけることにした。波乱の幕開けである。そして、これはこれから起こることの序章でしかなかった。
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日本一寒い場所で凍らせる

カメラが壊れたショックを引きずりながらも目的地のある北海道旭川市に着いた。旭川は1902年1月25日に-41.0℃を観測された日本一寒い場所であり、それを体験できる施設があるらしい。そこでTシャツを凍らせようと思う。
旭川駅から電車で1時間20分にある上川駅にその場所はある。
旭川駅から電車で1時間20分にある上川駅にその場所はある。
関係ないが、さすが北海道、木彫りのクマが駅にいた。そして、横を見ると、
ライオンもいた。
ライオンもいた。
駅から歩いて30分ほどで目的のアイスパビリオンという施設が見えてきた。
雪だるまが目印のアイスパビリオン。
雪だるまが目印のアイスパビリオン。
施設内には特産品のショップやトイレの美術館などがある。トイレの美術館は行こうとしたが、この後に起こる事件で心が折れたので行けなかった。その事件の詳細は後ほど書くとして、まずは体温を上げよう。
カレーそばを食べる。初めてそばにカレーをかけた人、きっと食いしん坊だろうな。
カレーそばを食べる。初めてそばにカレーをかけた人、きっと食いしん坊だろうな。
売店でカレーそばを食べる。普段と違う場所で食べるカレーそばはおいしい。素朴な味で心も体も温まったので行こう。
食べているときに撮れた写真。人ってこんなに直角になるのか。
食べているときに撮れた写真。人ってこんなに直角になるのか。

‐41℃の世界で心が折れた

入口を抜けて気づいた。
入口を抜けて気づいた。
これ、幼児向けの施設だな。
これ、幼児向けの施設だな。
行ったら子どもしかいないという場所がある。牧場での乳しぼりや動物園でのエサやりなどがそうだ。行かないとわからないことがあるが、大人だって-40℃の世界を体験したいだろう。
まだ、入ってもいないのだからもしかしたら、老若男女が楽しめる施設かもしれない。

そう思いチケットを買って案内されたが、どうやら入る前に何か説明があるらしく、家族連れが2組いる中に加わることになった。そして、ぬり絵をするように説明を受ける。
目の前にあるペンを適当に取ったら、黒と茶色だったが何も考えずにぬった。
目の前にあるペンを適当に取ったら、黒と茶色だったが何も考えずにぬった。
ぬった直後に施設内の説明が始まった。タオルを凍らせたり、ババナで釘を打てたり、氷のスライダーやアイス作りもできるらしい。
陽気でテンションが高いガイドの方々が説明してくれる。
陽気でテンションが高いガイドの方々が説明してくれる。
その際、説明のときに書いたぬり絵を紹介するコーナーが始まった。
そのときだった。自分へのおじさんの客いじりがやってきたのは。
「すごい色使い」「なんで全体的に黒いの?」「闇がある」「お兄ちゃんは、社会の波にもまれて疲れているのかな」

これはなんだ。苦笑いしかできない自分がいる。たまたま、前にあったペンを取ったらこの色だっただけなんだ。確かに他の子どもたちは子どもらしいカラフルだが、こんなぬり絵があってもいいじゃないか。そんな心の声はもちろん届かない。
55点の絵。
55点の絵。
花丸をもらったが55点。特殊なペンでぬったので温めるとこの絵が消える。悲しい思い出と共に。
温められたぬり絵から色は消えたが、55点はちょっとだけ残っていた。決して消えることのない過去。
温められたぬり絵から色は消えたが、55点はちょっとだけ残っていた。決して消えることのない過去。
ぬり絵が返却されたときおじさんは小声で言った。「過去はやり直せないんだよ」と。
Tシャツを凍らせに来ただけなのに人生の真理を言われた状態で中に入ることになった。そして、あまりの状況に混乱していたのだろう。水に濡らすのを忘れた。
防寒着と手袋、濡れたおしぼりと濡れていないTシャツを持って中に。
防寒着と手袋、濡れたおしぼりと濡れていないTシャツを持って中に。
中に入れば、各々で楽しみながら氷点下の幻想的な世界がひろがっていた。55点のことを考えながらゆっくりと芸術とはなにか、中学生のときに美術はあきらめろと担任に言われたことを思い出しながら、ゆっくりと歩いていたが、はしゃぐ子どもたちが後ろからせまってくるので急ぐ。
幻想的な空間を抜けると、
幻想的な空間を抜けると、
最低気温を体験できる場所があった。
最低気温を体験できる場所があった。
ボタンを押すと冷たい強風が吹き出してくる。子どもたちは「うわー耳が痛い!」と言っていた、私もやってみたが寒かった。体なのか、心なのかはわからない。
凍ったバナナで釘を打てるアトラクション。
凍ったバナナで釘を打てるアトラクション。
クマをぬった茶色と同じ色をしている。
クマをぬった茶色と同じ色をしている。
マイナスの世界ならではのアトラクションも魅力だが、氷を使った展示も魅力的である。
闇もなくにごっていない、きれいな氷の芸術品たち。
闇もなくにごっていない、きれいな氷の芸術品たち。
青ってきれいだな。青を使えばよかったな。
青ってきれいだな。青を使えばよかったな。
全てが心に響く光景である。これが生きてるってことなのだろう。あのおじさんはそのことを教えてくれたのだ。人生を一生懸命に生きていこう。明日からまた頑張ろう。出口を見たときそう思った。
おしぼりは凍ったが、
おしぼりは凍ったが、
Tシャツは凍らなかった。だって濡らしていないから。
Tシャツは凍らなかった。だって濡らしていないから。
Tシャツは凍らせることはできなかったが、僕らはみんな生きているそれでいいじゃないか。みんなで手を取り合い、素敵な世界を作っていければと思ってます。それが平和な世界だから。
-41℃の世界でレンズ内がくもった。また、カメラ壊れたかもしれない。
-41℃の世界でレンズ内がくもった。また、カメラ壊れたかもしれない。
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どうしても成功させたい

旅行から帰って我に返った。成功させないとダメだと。-41℃ではないが、神奈川県にも
-30℃を体験できる施設がある。横浜にあるコスモワールド内、アイスワールドという場所だ。
何か起こって心が折れても大丈夫なように援軍を呼んだ。
何か起こって心が折れても大丈夫なように援軍を呼んだ。
編集部の安藤さんに撮影を手伝ってもらった。長袖を来ていて暑そうだなとこのときは思ったが実はこの服装が正解だったと後で知ることになる。とりあえず、準備しよう。
水で濡らして、
水で濡らして、
行きましょう!
行きましょう!
Tシャツを凍らせたいという願いがついにかなう時が来た。快適さを手に入れるのだ。
入った直後は余裕だった。
入った直後は余裕だった。
入った直後は「少し寒いかなぐらい」だった。しかし、-30℃はすごい。3分後には「命の危機を感じる寒さだ!」と大人2人で大騒ぎして、このアトラクションを誰よりも楽しんでいた。
サンタクロースにカーディガンをお願いするぐらい寒い。
サンタクロースにカーディガンをお願いするぐらい寒い。
とにかく寒い。寒いしか言えないぐらい寒い。ずっと動いていないと寒さにやられそうな気がする。足ふみしまくりである。
ポケットに腕を入れてなんとか耐える。人生で一番、袖が欲しい瞬間だった。
ポケットに腕を入れてなんとか耐える。人生で一番、袖が欲しい瞬間だった。
撮影に付き合って頂いた安藤さんも「これ以上いたら、死んじゃうじゃないかな」としきりに言っていた。自分もそう思う。本末転倒ではあるが、今だけは暑い場所に行きたい。Tシャツ、早く凍ってくれ。
袖に手を入れてもしのげない寒さ。
袖に手を入れてもしのげない寒さ。
入ってから10分ほど経過した頃、Tシャツに変化がやってきた。
Tシャツに霜がついた。
Tシャツに霜がついた。
長い間(計算すると3日間)凍らせることができなかったあのケチャップのTシャツが凍った。しかも立った。きっと自分の子どもが生まれて初めて立ったとき、これぐらいうれしいのだろう。
凍ったTシャツと記念撮影。ここまで長かった…。
凍ったTシャツと記念撮影。ここまで長かった…。
余韻にひたりたいが、このままいると2人とも凍えてしまうので早く出よう。そして、着てみよう。最初、この空間で着る案もあったが、やったらダメだと思う。
髪の毛が凍りだした。安藤さんは「吉川晃司だ!」と言っていたが、吉川晃司ではないです。
髪の毛が凍りだした。安藤さんは「吉川晃司だ!」と言っていたが、吉川晃司ではないです。
早く!
早く!
もう、ダメだ! 限界!!
もう、ダメだ! 限界!!
出口を出たとき、「生きていてよかった」と心から思った。
出口を出たとき、「生きていてよかった」と心から思った。
外の暖かさを感じていたが、Tシャツが溶けだしてきたので早く着てみよう。凍らせたら快適になるのか。
凍った服は着にくい。
凍った服は着にくい。
首を通した瞬間から涼しいのがわかる。
首を通した瞬間から涼しいのがわかる。
秋の早朝のような全身にさわやかな空気が感じられる。ちなみにこの撮影をしたのは9月なので秋だ。
秋の早朝のような全身にさわやかな空気が感じられる。ちなみにこの撮影をしたのは9月なので秋だ。
毛細血管が多くある、首やわきだけではなく、全身を冷やせるので涼しい。この日25℃の夏日でそこそこ暑く、普通なら汗をかく気温だったが、このTシャツを着たところ汗をかくことはなかった。

残暑でまだまだ気温が高くなることもあるだろう。暑いとき、また凍らせてみよう。
いいな。
いいな。

夢は必ず叶う!

旭川で会ったガイドのおじさんが言っていた「過去はやり直せないんだよ」という言葉。もし、もう一度おじさんに会えるならこう言うんだ。「過去はやり直せないけどそのために未来があるんだよ」ってね。
全然関係ないが、コスモワールドの最寄り駅にあった立ち食いそばには青汁がある。
全然関係ないが、コスモワールドの最寄り駅にあった立ち食いそばには青汁がある。
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