特集 2017年9月27日
 

手作りイカダでどこまでいけるのか

手作りのペットボトルいかだに乗れました
手作りのペットボトルいかだに乗れました
SUPという乗り物を知っているだろうか。のちのち説明するので知らなくてもいいのだけど、
水面の乗り物なのだ。あれに乗りたい。

でも買えなかったので、イカダをつくった。

そしたらイカダにものすごくはまってしまった。

手作りのイカダってどこまでいけるものなのだろうか。
写真から、乗ることができたところまではお分かりいただけたと思う。
1994年愛知生まれ。大学であいまいな学部に入ったらあいまいな人間になった。いまわかっていることは、自分はけっこうひげが伸びるタイプだということ。

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それ以上のことってできるだろうか。たとえば漕いで移動するとか。

SUPとは

イカダをつくるきっかけになったのは「SUP」である。SUPとかいてサップと読む。
SUPは水の乗りもの
SUPは水の乗りもの
夜もきれいでいい
夜もきれいでいい
SUPは「Stand Up Paddle」の略称で、ようはサーフィンみたいなものである。違うのはパドルという漕ぐ道具を使うことで、波に乗らないでも楽しめる。なのでおだやかな川でもできるのだ。
サーフィンのようにオラついた雰囲気もないのでやりやすい。日焼けしてない人もたくさんやっている。
そのSUPに乗った
そのSUPに乗った
名古屋の真ん中を流れる「堀川」という川でSUPの体験会をやっていて、そこでSUPに初めて乗った。

残念ながら堀川という川は汚いしくさい。遊んで帰ったらお母さんに怒られる川である。

僕もまさかこの川で遊ぶことになるとは思っていなかったのだが、SUPはそんな川の汚さが気にならないくらいに楽しい。これに好きなだけ乗りたい。マイSUPが欲しい。
これがイカダ
これがイカダ
そしてここでイカダである。

なぜSUPではなくイカダなのかというと、SUPがけっこうな値段だったからだ。一式揃えると6〜10万円ほどする。僕はなにかを買いたい時に普段の浪費を抑えてお金を捻出するタイプなのだけど、これだとファミチキを500個くらい我慢しないといけないので無理なのだ。

イカダは僕の手作りなので安い。ぜんぶで4,000円ほどである。ファミチキでいうと23個。

イカダの作り方

イカダの浮力にはペットボトルを利用した。

このイカダの構造はどんぶりである。つまりペットボトルは米で木の板がうなぎということだ。
 知り合いを訪ねてあつめたペットボトル
知り合いを訪ねてあつめたペットボトル
ペットボトルは500mlのものを140本と、2Lのものを30本用意した。浮力はペットボトル1Lでだいたい1kg分らしい。計算が楽だ。この量だと130kg分で、僕の体重なら余裕である。しかし曙太郎だと体重250kgなのでまったくかなわない。


曙がイカダを作ろうとするとペットボトルを集めるのが大変なので、曙はイカダを作りたくならないほうがいい。
イカダの裏側
イカダの裏側
板を先に作ってそこにペットボトルをひもで結びつければ完成する。この作業はとくかく時間がかかった。手にもたくさんのマメができた。

これは時間のかかる作業なのだけど、でもこの時期たまたまパイレーツオブカリビアンを見て海賊になりたい気分だったので、苦しくはなかった。

イカダでどこまでいけたか

結果から言おう。最終的にイカダは1ヶ月で3艇作れた。これが小学生の夏休みだったら9月1日に褒められそうだが、23歳だとそんなことはない。

そして、1つ目のイカダと3つ目のイカダは合体するのだ。それぞれのイカダでは不可能だった2人乗りが合体することで可能となる。

それから、イカダの水上での移動能力はというと、SUPで1時間の距離に5時間もかかった。つまり手作りイカダはものすごく遅いのだ。どれくらい遅いかというと、最寄り駅まで自転車ではなくカメに乗って行くくらい遅い。
最終的にはこうなった
最終的にはこうなった
ここに至るまでにはなんども試作をして実験もした。その経緯を時間をさかのぼって説明したい。

出航1回目

名古屋のとある橋の下のにごった水面にて
名古屋のとある橋の下のにごった水面にて
2017年8月9日、イカダを組み上げてから初めての出航で成功してしまった。うまく浮けなくてひっくり返る予定であったがそんなドラマはなかった。


ただ、この段階ではまだ「ただ浮いているもの」で、パドル(漕ぐやつ)も竹を半分に割っただけのものだ。栗きんとんで言えばまだ栗の状態である。(そのまま食ってもうまい。)

出航2回目

名古屋ではない愛知県の田舎の川にて
名古屋ではない愛知県の田舎の川にて
イカダがまっすぐ進むように、2回目は舵をつけてみた。うしろの部分に平たい板をつけただけでもけっこう進み具合が変わる。

きっと無人島から脱出するようなときにはこの板きれが運命を左右したりするのだ。平たいのにすごいアイテムである。ほかにすごい板きれと言えばブラックカードだけど、その次くらいにすごいと言ってもいい。
海賊の乗ってるでかい船とかで、ハンドルみたいなのを回して動く部分
海賊の乗ってるでかい船とかで、ハンドルみたいなのを回して動く部分
そしてちゃっかりパドルも新しくした。流木を削って作ってある。
なんとか立つこともできた。スタンドアップパドル!
なんとか立つこともできた。スタンドアップパドル!

出航3回目

2艇目のイカダは竹
2艇目のイカダは竹

ペットボトルのイカダがうまくいったので、調子に乗って竹でイカダを作って乗ったらくるぶしくらいまで足が沈んだ。
びっくり映像100連発みたいな番組だとこのあと落ちる(実際は落ちてない)
びっくり映像100連発みたいな番組だとこのあと落ちる(実際は落ちてない)
切ったばかりの乾いていない竹を一部に使ったのでイカダ自体がかなり重くなってしまったのだ。ちゃんと乾かさないとだめみたいである。これでは不安定でイカダに乗れない。

漫画などの物語だと無人島に漂着したときにすぐイカダを完成させて脱出を試みていないだろうか。たまには木材を乾燥させている間に餓死して終わってしまう展開があってもいい。

出航4回目

3艇目のイカダ
3艇目のイカダ
また新しくイカダをつくった。こんどは海に落ちていた浮きを利用したら、バランスがよくなかったのでペットボトルで補った。

先端部分(画像左)の部分にイカダどうしを連結する機構を用意してある。壊れると僕が泣いてしまう部分だ。(暑い中がんばったから)

このパーツのおかげで、水面でばらばらに漕いでいるイカダがそのままドッキングする。戦隊ヒーローで見た合体ロボットである。

イカダ作りを通してちびっこの夢がすべてかなっているのではないか。(海賊になる、合体ロボットを操縦する)

僕はもうちびっこではないけど。
初の長距離移動に挑戦した
初の長距離移動に挑戦した
そしてこの4回目で長い距離を漕いでみることにしたのだ。

イカダを作ろうと決めてからちょうど1ヶ月経ったこの日は、SUPと一緒に名古屋城の北側から出発して納屋橋というところまで約3kmの航行を楽しむつもりだった。

SUPの人が1時間くらいでいけると言ってたので「そんなもんかな」と思っていたのがあまかった。イカダは思っていたよりぜんぜん進まないのだ。

1時間だと思って5時間なんて精神と時の部屋である。しかも5時間漕ぎっぱなしで(休むと川の流れで戻される)、修行と思わなければやってられなかった。やってることまで孫悟空みたいである。
15時ごろの、まだ出発して間もないころ
15時ごろの、まだ出発して間もないころ
ほんとうはSUPのようにゆったりと川の景色と揺れを楽しみたかったのに、漕ぐのに必死だったせいで部活の練習のようだった。護岸にカニがいても「わー!」という気分ではまったくない。

そういえば僕は大学1年生のときに部活をやっていたけど、やめたくなったときにはっきりと「やめます」と言わずにしれっと消えたのだった。いつ思い出しても気まずくなる。でもイカダの上では気まずくならなかった。
それはイカダを漕いでいるときにノスタルジーではなくトランスだったことを意味している。トリップである。
ゴールまでまだ半分くらいのところ。すでにまっくらでメンタルめちゃめちゃ
ゴールまでまだ半分くらいのところ。すでにまっくらでメンタルめちゃめちゃ
15時に出発して着いたのは20時過ぎ。おやつのつもりが残業になった。一緒に乗っていた人との会話もほとんどなく、序盤にスタート地点へ戻るかどうかでハードにもめたことくらいであった。

ゴールしたときには達成感があったたけど、もう二度と自作のイカダには乗りたくないと思った。

水面でフリーハグ

自作イカダはもう漕ぎたくないけど、浮かぶだけなら話は別である。最後に一例だけ、自作イカダの活用法を紹介したい。

イカダがあれば水面に立てるので、そこでフリーハグができる。
川でフリーハグをやってみた
川でフリーハグをやってみた
正直だれもこないだろうなと思ってやっている。だって川である。まずそこにいくまでがフリーではないのだ。ハグだけがフリーでも困る。

これは自分はイカダを持っているので川でフリー(自由)ですよ、という自慢の企画なのだ。イカダっていいだろう。
おもりを使って流されないようにして、ずっと一箇所にとどまった
おもりを使って流されないようにして、ずっと一箇所にとどまった
だれもハグしにこないという前提のこのフリーハグが生み出すものは、感動ではなく笑いである。

これが路上だったらただのかわいそうな人だけど、水上ではそれがおもしろさになっているだろう。やってることはまったく同じなのに、シチュエーションが違うだけでここまでコメディになる。日本の作品がハリウッドに行ってへんな映画になるみたいだ。

もし実際に泳いでハグしにくる人が来たりしてしまったらそれはそれで少し感動するかもしれない。でもちょっと照れくさい。
橋の上から見ている人はいる
橋の上から見ている人はいる
あとから聞いた話だと、橋の上ではどうやら「遭難した外国人」だと思われていたらしい。

僕はこの日は1時間以上イカダにだまって立ってじっとしていただけだったけど、本当に遭難しているのならばだいぶのんきである。助けてほしいという気がまったくない。まるでプロの遭難者である(何度も遭難してもう慣れっこということ)。
たしかに遭難者に見えないことはない
たしかに遭難者に見えないことはない
いつも何もない川に人がいるという光景、僕も見てみたい
いつも何もない川に人がいるという光景、僕も見てみたい
最後に一人だけSUPの人がきてくれた
最後に一人だけSUPの人がきてくれた
暗くなってきたころに一人だけハグしにきてくれた。まさか本当に人が来るとは。もしかしたら普段からここでSUPをしている人なのかもしれないけど。

やっぱりすこし照れくさかった。

自作イカダは浮けるけど漕ぐのは大変

イカダはSUPみたいに優雅に水面を楽しめるものではないけど(漕ぐだけで必死だから)、浮くことはできる。

浮けるということを利用して、SUPとは違った楽しみ方をしていこうと思う。
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