特集 2017年10月4日
 

みんなの親指の付け根が鳴ることを知ってほしい

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関節をパキポキと鳴らしながら暮らしている。

「趣味です」くらいに言ってもいい。指、首、ヒザに股関節、日々のトライ・アンド・エラーによって、あらゆる関節を鳴らせる身体になってしまった。

そんな話を誰かにしたときに気づいたのか、世間には意外と鳴ることが知られていないある関節が存在すると知った。今こそその関節を鳴らして回り、ひとりでも多くの人に驚きを与えたい!…が、最後にプロの人から「諸説あるけど鳴らしちゃダメだ」と叱られたので、この記事は反省の弁で終わります。
1984年大阪出まれ、2011年からベトナム暮らし。日本から3600km離れた土地で、ダチョウに乗ったり、ドナルドのコスプレをしたり、札束風呂に入ったりしている。

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聴こう!舟状骨のコンという音

ここを、
ここを、
押し込むと「コン!」って鳴るんです!
押し込むと「コン!」って鳴るんです!
このあたりにある骨は、舟の形状をしているから舟状骨(しゅうじょうこつ)、割とそのまんまの名前の骨は、調べてみるとYouTubeにあったいくつかの動画でも「実は鳴る!」「鳴らすと世界一気持ち良い」といった感じで紹介されていた。おぉ、同志はいるもんだ。インターネット社会万歳。

世界一かどうかはともかく、親指の付け根は個人的にも関節の中で一番好きだ。何がいいって、まずはその音の丸っこさ。指のようなパキ!という綱渡りのような音ではなく、肉に覆われているからか、コン!という丸っこい音が鳴る。まるで「ポイント獲得!」みたいな。あとはその場所だろう、付け根であるがゆえに、よく分からないけどホームポジション!オン!という感じがする。伝わってくれ、この思い。
YouTubeにあったいくつかの動画でも「実は鳴る!」「鳴らすと世界一気持ち良い」といった感じで紹介されていた(検索結果こちら)。
そして何より好きな理由が、「意外と鳴る事実を知られていない」ということ。ときどき他人の親指の付け根を鳴らすと、みんな「え!」とビックリする。鳴らそうとする私の行為にではない(ちゃんと断った上でやってるから)、そんなところが鳴るものなのか!という驚きで。

いざ!親指の付け根を鳴らす布教の旅へ

そんな驚きの表情をもっと見たい、と思うことは極々自然かつ純粋な気持ちではないだろうか。親指の付け根が鳴る事実を、みんなにもっと気づいてもっと驚いてほしい。気分は次の街の子どもを思う移動式サーカスのピエロ、あるいはまだ見ぬ信者を思う宣教師だ!早速、友人たちに声を掛けた。
親指の付け根を今から鳴らさせていただく友人たち。
親指の付け根を今から鳴らさせていただく友人たち。
まぁ、うーん、別にいいけど、と了承を得た。持つべきものは自分の仕事を理解してくれる友人たちだ。
「いきますよー」
「いきますよー」
「コン!」「えっ!」
「コン!」「えっ!」
「こっちもだ〜!」「コン!」「わっ!」
「こっちもだ〜!」「コン!」「わっ!」
「とりゃとりゃ〜!」「コン!」「おっ!」「コン!」「なんで!」
「とりゃとりゃ〜!」「コン!」「おっ!」「コン!」「なんで!」
はいもう楽しい!驚きのリアクションに幸せ感じる!ピエロ!わしゃ手元から花を咲かせ驚かせるピエロや!
「さーて最後に…ん?」
「さーて最後に…ん?」
グイグイ
人によっては鳴らない場合もある。
人によっては鳴らない場合もある。
友人「あ、第一関節がぷるんぷるんするやつ知ってる?」
全員「なにそれなにそれ」
「これこれ」
「第二・三関節を折り曲げて力を入れて…」
「すごーい!」
「すごーい!」
そのあとは友人が第二・三関節を折り曲げて力を入れると「第一関節の腱がたわみ指先がぷるんぷるんするやつ」を披露し、親指の付け根から人体にまつわる話題に広がってひとしきり盛り上がった。
それから人体にまつわる話題で盛り上がる、思い返すと取材というかふつうの飲み会だった。
思い返すと取材というかふつうの飲み会だった。
それから二週間ほどは、「取材だから」と称して他人の親指の付け根を鳴らしつづけた。確かに取材は取材だが、他人の親指の付け根を鳴らす名目を得て充実する日々。もしかしたら今まで意識していなかっただけで、人と話している間ずっと心のどこかで「親指の付け根を鳴らしたいなぁ」と思っていたのかもしれない。

ある日は中華料理店でー、
「若者たちよ、親指の付け根が鳴ることを知っているか」「なんですかそれ」
「若者たちよ、親指の付け根が鳴ることを知っているか」「なんですかそれ」
「とりゃとりゃ〜!」「コン!」「おっ!」「コン!」「なんで!」
「とりゃとりゃ〜!」「コン!」「おっ!」「コン!」「なんで!」
友人「あ、第一関節がぷるんぷるんするやつ知ってる?」
全員「なにそれなにそれ」
  「あ、本当だ!」「まーたやってる!」
「あ、本当だ!」「まーたやってる!」
またある日はカフェでー、
「こうして親指の付け根をですね…」
「こうして親指の付け根をですね…」
「第一関節がぷるんぷるんするやつ…」「さっきからやめてくれよ!」
「第一関節がぷるんぷるんするやつ…」「さっきからやめてくれよ!」
そしてめくるめく関節鳴らしの日々…!
そしてめくるめく関節鳴らしの日々…!
おおよそ10人くらいの親指の付け根を鳴らした結果、

・3/4くらいの人が鳴る
・リアクション自体は素晴らしい
・だけど感想を聞くと「意外と地味」
・別にこれから自発的に鳴らす気にはならない
・ベトナム人でもふだんから鳴らしている人がいた
ということが分かった。

正直、反応はいまいちだった。あんなに驚いておきながらなんでよ!?ひとり、手首を日常的に慣らしている友人がいたので「親指の付け根は鳴らしたくならないのか?」と聞くと、「手首はズレてるものを直すという感覚だが、親指の付け根はもともと気にしてなかったから鳴ったところでどうでもいい」ということだった。

これはまさしく「クセ」ではないか。「へー、鳴るんだ!」と驚きはするものの、普段から鳴らしている訳でもなければ気にならない。きっと、おもしろがってなんとなく鳴らしているうちにクセになる…私がそうだったんだろう。猿がバナナをもらえるからタバコを吸っているうちに、ニコチン中毒になってしまいバナナがもらえなくてもタバコを吸いつづけた…という実験を教科書で見たことがある。理屈としては、そういうことなのかもしれない。

だが!もしかしたら良い効果もあるかもしれないじゃないか。良くない、いややっぱり良い、というどちらの話も聞いたことはあるが、満を持してプロフェッショナルの方に話を聞いてみよう、そこで太鼓判を押してもらえれば、この取材を終えても「健康にいいから」という名目で親指の付け根を鳴らせるぞー!ビバ舟状骨!

柔道整復師の先生に聞いた

柔道整復師の福地さんに話を聞いた。
柔道整復師の福地さんに話を聞いた。
福地さん「オススメしませんね
私「なんですって?
■福地さんのお話まとめ
・関節が鳴るメカニズムは諸説ある。
・有力説としては、骨と骨を包む関節包というものがあり、それが伸びて発生する炭素が音を鳴らせる。
・関節は骨や筋肉と違って自己修復が行われないため、損傷はそのままということになってしまう。
・心理的快感は得られるかもしれないが、関節包を損傷させることは身体的負担以外の何物でもない。
私「で…でも、整体って、関節をバキバキさせません?そのバキバキをさせちゃダメってことですか??」
福地さん「整体はいわゆる整体師と呼ばれる方がやるもので柔道整復師とは違うのですが…柔道整復師であっても関節を意図的に鳴らす方もいらっしゃいますね」
私「なるほど!だったらやはりー??」
福地さん「が、お伝えしたように諸説あり、これは柔道整復師によって解釈も異なる話なんです。少なくとも私自身の治療では鳴らさないようにしていますし、水嶋さんが患者さんなら『やめてください』って言いますね」
私「…」
福地さん「鳴らしちゃダメです」
私「じゃあ、他人の関節を鳴らすのは?
福地さん「『もっとやめてください』って言います」

叱られて反省して終わった

正直、「良くないところもあるけど心理的なリラックス効果もあるよ!」くらいに落ち着くと思ってたから、ビックリした。親指の付け根を鳴らされてないのにビックリした。解釈はいろいろという話だったが、プロに真正面から「やめてください」と言われては、もう他人のものはおろか、自分の親指の付け根も鳴らせない…!というより、なんか、今回鳴らした人もすみませんでした。もう親指の付け根を鳴らしたいなんて言わないよ絶対。

「さて、これから我慢できるかなー」と思いながら、頭の後ろで両手を組んでパキポキ!と鳴らした…鳴らして…しまってるじゃないか!早々に。中学生の頃からつづけてきたこのクセを、止められるだろうか。この原稿を書き終えたら寝るつもりなんだけど、翌朝起きたら絶対無意識にパキポキ鳴らしてるよ。自信あるよ俺。
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