特集 2017年10月10日

ここで食べましたみたいな写真は下品なのか

「ここで踏みました、みたいなラップは下品」だという。ラップ以外ではどうか
「ここで踏みました、みたいなラップは下品」だという。ラップ以外ではどうか
即興でラップするテレビ番組をよく見ている。そこで最近やけに耳にするのが「ここで(韻を)踏みましたみたいなラップやめろ、下品だ」という言説である。

なるほど下品かもしれない。しかし今や「ここで食べました」と写真をSNSに上げる時代である。あれも下品なんだろうか。ラップ以外の「ここでやりました」を検証したい。
2006年より参加。興味対象がユーモアにあり動画を作ったり明日のアーという舞台を作ったり。

前の記事:デイリーポータルZの動画コーナーがしたコメ大賞2017グランプリの快挙!

> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

ここで踏みました感を少なくしてみた。比べると、冒頭のは過剰であることがわかる
ここで踏みました感を少なくしてみた。比べると、冒頭のは過剰であることがわかる

ことさら強調するなということ

もちろん言いたいことはわかる。「ここで(韻を)踏みましたみたいなラップ」というのは記事でいうとここおもしろいですよと太字にしたり下線部を引いたりするようなことだろう。

つまり「功績をことさら強調するな」ということだ。

文字じゃなくとも会話でいうと、たとえばタレントの雨上がり決死隊の宮迫博之は「ちょっといいですか」や「先輩やけど言わせてもらっていいですか」と会話の流れを止めてから「アホか」とツッコむ。

もちろん人によるだろうが、個人的には毎回(待たせておいてそれか…)となり疲れてしまう。過剰な表現はこちらも疲弊するし、それが下品だというのもわかる。
しかし「ここで食べました」写真のSNS投稿は今や当たり前
しかし「ここで食べました」写真のSNS投稿は今や当たり前

「ここで食べました」の時代

しかし今や時代は"インスタ映え"である。「ここで食べました」や「ここで遊びました」の写真を投稿してコミュニケーションをはかっている。あれももしかしたら下品なのかもしれない。そうすると大変だ。私たちは相当な下品を重ねたのだろうか。

はたして本当に下品なのか。さまざまな「ここでやりました」を見ていきたい。まずは「ここで食べました」である。
「ここで食べました」感の少ない写真。ファミレスの前。いわばビフォアである
「ここで食べました」感の少ない写真。ファミレスの前。いわばビフォアである
アフター。ここでケーキを食べたのだろう。下品だろうか。下品かもしれない。だが私にはそれ以上の何かを感じる
アフター。ここでケーキを食べたのだろう。下品だろうか。下品かもしれない。だが私にはそれ以上の何かを感じる
こんなにわかりやすい人大丈夫なんだろうか。お腹がすいたら「グ~」となりだしそうだし、目にうずまきを作って倒れそうだ。この人が心配になる
こんなにわかりやすい人大丈夫なんだろうか。お腹がすいたら「グ~」となりだしそうだし、目にうずまきを作って倒れそうだ。この人が心配になる

下品であるというのもわかる

ここで食べましたという人を用意した。鼻の頭にクリームがついている。この人はジョナサンでケーキをたべたのだろうなという写真である。

これを見たらフリースタイルダンジョンのFORKさん(※)もとりあえずは「ここで(ケーキ)食べましたみたいな写真やめろ、下品だ」とラップでさとしてくるだろう。

しかしよく見るとそれ以上の何かを感じる。大丈夫なのかこの人は。こんなにわかりやすい人、大丈夫なんだろうか。

色々なところでだまされるんじゃないか。いろんな保証人になったりしてやしないだろうか。「ここで食べました」にはなぜか心配を感じてしまう結果となった。

※この言葉をよく言うかっこいいラッパー
スーパーの前であるが
スーパーの前であるが
「ここで買いましたみたいな袋の持ち方やめろ、下品だ」となるだろうか。スーパーを強調されてもな……という別の思いがわきあがる。今夜はすきやきなのだろうか…
「ここで買いましたみたいな袋の持ち方やめろ、下品だ」となるだろうか。スーパーを強調されてもな……という別の思いがわきあがる。今夜はすきやきなのだろうか…
「このミスターミニットで靴直しましたみたいなポーズやめろ、下品だ」はたしかに下品かもしれない。しかしうれしかったんだろうなという同情のような気持ちもあるし、自慢するもんじゃないぞという気もある。功績ではないものを強調した結果だ。
「このミスターミニットで靴直しましたみたいなポーズやめろ、下品だ」はたしかに下品かもしれない。しかしうれしかったんだろうなという同情のような気持ちもあるし、自慢するもんじゃないぞという気もある。功績ではないものを強調した結果だ。
板を持って立っている人である
板を持って立っている人である
「ここで板割りましたみたいな肘の差し方やめろ、下品だ」という言説にも同意できる。しかしそれ以上の何かを感じる。いい大人が板割ったことを強調してくることに対しての違和感である。一言で言うとシンプルに頭が悪そうだ。
「ここで板割りましたみたいな肘の差し方やめろ、下品だ」という言説にも同意できる。しかしそれ以上の何かを感じる。いい大人が板割ったことを強調してくることに対しての違和感である。一言で言うとシンプルに頭が悪そうだ。
こうしたふつうに座っている人であるが
こうしたふつうに座っている人であるが
「ここでブーブークッションにひっかかりましたみたいな持ち方やめろ、下品だ」はあてはまるだろうか。下品というにはかわいそうだ。いや、彼が引っかかったことに対してではなく、それをアピールしていることが憐憫を誘うのである。
「ここでブーブークッションにひっかかりましたみたいな持ち方やめろ、下品だ」はあてはまるだろうか。下品というにはかわいそうだ。いや、彼が引っかかったことに対してではなく、それをアピールしていることが憐憫を誘うのである。
「ここのカラオケ行きましたみたいな格好やめろ、下品だ」下品かもしれない。しかしなにかうれしかったのだろうなという気持ちはある。たとえばそれはオオカミに育てられた人間のはじめてのお誕生日会のような。
「ここのカラオケ行きましたみたいな格好やめろ、下品だ」下品かもしれない。しかしなにかうれしかったのだろうなという気持ちはある。たとえばそれはオオカミに育てられた人間のはじめてのお誕生日会のような。
このポーズだとまったく関係ないただの待ち合わせだが
このポーズだとまったく関係ないただの待ち合わせだが
比べてみると「おい、ここを卒業しましたみたいな感じやめろ、下品だ」となる。しかしもう品格の問題ではないような気もする。義務教育修了のアピールに我々は混乱し、哀れみと同情の気持ちがわきあがる。強く、強く生きてくれ
比べてみると「おい、ここを卒業しましたみたいな感じやめろ、下品だ」となる。しかしもう品格の問題ではないような気もする。義務教育修了のアピールに我々は混乱し、哀れみと同情の気持ちがわきあがる。強く、強く生きてくれ
「おい、ここでバイトしてましたみたいなのやめろ、下品だ」これが現役店員でないとしたら下品どころではないなにかの狂気を感じる。彼の過去の栄光がスタバのバイトだったのだろうか。何の思いもなければ、それはそれで怖い
「おい、ここでバイトしてましたみたいなのやめろ、下品だ」これが現役店員でないとしたら下品どころではないなにかの狂気を感じる。彼の過去の栄光がスタバのバイトだったのだろうか。何の思いもなければ、それはそれで怖い
ここで今から病院へ、という状況があったとして
ここで今から病院へ、という状況があったとして
「ここで出産に立ち会ってきましたみたいな格好やめろ、下品だ」となるだろうか。たしかにそれどころではないだろ、という気持ちにはなる。直立がとにかくやばい。
「ここで出産に立ち会ってきましたみたいな格好やめろ、下品だ」となるだろうか。たしかにそれどころではないだろ、という気持ちにはなる。直立がとにかくやばい。
「この車からバネ抜いてきましたみたいなのやめろ、下品だ」品がないというか、車にそんなバネ入ってたかなという謎、この人はなんのためにこんなことをという謎……謎の底なし沼に私たちは足を踏み入れる
「この車からバネ抜いてきましたみたいなのやめろ、下品だ」品がないというか、車にそんなバネ入ってたかなという謎、この人はなんのためにこんなことをという謎……謎の底なし沼に私たちは足を踏み入れる

ここでボケましたみたいな記事やめろ、下品だ

雨上がり決死隊の宮迫博之の「流れをいったん止めるツッコミ」について書かれたお笑い批評のブログを読んでいた。たしかにうんざりするが、それでも客席はウケるという。彼もサービスでやっているのだろう。

ここでラップしました、ここで食べました、を私達が欲しがっているのである。そうじゃないとわからないのだから。

はっきりとわからせるためにジョナサンから出てきたときに鼻にクリームがついているのである。下品もサービスであり、私達はどちらもうれしく受け止めていく心構えを用意しておく。

しかしこの試みで見てきた「ここでバイトしてました」や「ここのミスターミニットで靴直しました」など、そもそもが功績でもなんでもないのにアピールしてくるもの。それについては上品や下品でない、ただの狂気であったことは認めざるを得ない。

ライターからのお知らせ

主宰をしている明日のアーが今年も本公演をやります。

バンドのトリプルファイヤーの吉田くんと左右の二人が出て生演奏したりお芝居をします。デイリーからもスミマサノリさん、藤原浩一さん、古賀及子さん、土屋遊さんが出ます。13人も出ます。

チケットを発売しました。「あの人を好きだ」という気持ちがめぐりめぐって「炭火で焼肉が食べたい」という牛角の気持ちになっていたり、あんまり他にはないタイプのコントをやってます。

明日のアー第三回公演『日本の表面』w/左右
日時:11月3日19:00、4日15:00、19:00、5日15:00、19:00の計5回(開場は開演の30分前)
料金:前売2700円(+1drink500円)当日3000円(+1drink500円)
会場:VACANT(原宿)

http://t.livepocket.jp/t/nihonno
国旗がルンバになってるんですけど、ルンバって日本のじゃないらしいですね
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