特集 2017年10月29日
 

書き出し小説大賞第133回秀作発表

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書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)
雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。 著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。

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最近、ソフトバンクのCMがあやしい雰囲気を出している。10年を節目におなじみの白戸家が一新されるのか、それとも継続するのか、結論をぼやかしながらも新たな展開を予感させるつくりになっている。ただ個人的にはCMが煽るほど白戸家に関心があるわけではない。変わるならさっさと変わって欲しい。ファブリーズ一家はその点潔い。それでは今回もめくるめく書き出しの世界へご案内しょう。

書き出し自由部門

私のお土産が、私の席にまわってきた。
大伴
生き残りみたいに缶の中にコーンが一つ。
あや幹部
スキニー刑事のパンツに銃の形が浮き出ている。
terayo
恋を蒸留した。嘘しか残らなかった。
morin
彼岸花、爆ぜた。私、泣いた。父は気にも留めなかった。
nemuuko sleepy
社会人になった今も塾のリュックは重宝している。
xissa
みんなと蛇口から直接水を飲むような表情でプリクラを撮ったり、角材を切ったりした。
ヘリコプター
サバンナにも「同期」という概念がある。
くのゐち
上がりはじめた観覧車の中から、指名手配犯を見つけた。
紀野珍
龍の背中から見渡す地獄は、幼い頃来た廃れた遊園地に似ていた。
けー
関取たちと私を乗せたジェットコースターが、頂上まで上れないでいる。
五捨六入
フロントガラスだけが、少しだけ雨降ったことを教えてくれていた。
人馬一体勘
雨は十字架になって湖に降りそそいでいる。
もんぜん
地下アイドルはダンジョンを正確に記憶していた。
住民パワー
蟻地獄にて心尽くしのおもてなしを受けてきた。
茂具田
めっぽう、その頃。
にら将軍ハルナ
寸評。

●大伴氏「私のお土産が〜」間抜けなエピソードが人生を象徴するときもある。
●terayo氏「スキニー刑事の〜」浮かび上がったのは尻の銃か、股間の銃か?
●nemuuko sleepy氏「彼岸花、爆ぜた〜」リズムと父は〜からの切り返し。小気味よく美しい。
● ヘリコプター氏「みんなの蛇口から〜」最後の「角材を切ったりした」で「みんな」のバカ加減が一気にレベルアップした。
●もんぜん氏「雨は十字架となって〜」雨が十字架となって、はイメージしずらいがそれが湖に降りそそぐことによってイメージを越えた心象風景として成立している。
●にら将軍ハルナ氏「めっぽう、その頃」一方より勢いを感じる。なにやらとんでもないことが起こってそう。

続いては規定部門、今回のモチーフは「ラーメン」だった。書きたての一杯をどうぞ!

規定部門・モチーフ『ラーメン』

汁まで飲み切ってから犯人を追った。
g-udon
ダメ元で無料と書いてある替玉だけを注文した。
哲ロマ
透き通ったスープの底に、指輪が沈んでいるのが見えた。
うわのそら
別れてほしいの。その麺が伸びる前に。
Mch
土曜の昼に食べるインスタントラーメンが、僕は死ぬほど恋しいんだよ。
トミ子
大将の湯切りは、もはや求愛行動と言っても過言ではない。
君と僕と雨
ラーメン屋みたいな位置に、テレビを置いた。
大伴
陳さんが辞めた。店長と喧嘩したらしい。もう冷やし中華は始まらない。
紀野珍
レンゲがスープに沈むと、丼鉢サイズの女神が現れた。
紀野珍
博多ではよく聞く話だが、小指に結ばれた細麺の先に運命のラーメン屋があるという。
九官鳥級艦長
この世の物質は醤油、豚骨、味噌、塩の四元素でできている。
いそかぜ
靴の裏が床にくっつく。姫はそれさえも楽しかった。
七世
タクシー配車室でカップ麺をすする。日本人形のガラスケースがくもる。
七世
スープの決め手となったのは、獄中からの一通の手紙だった。
マークパン助
カップ麺のフタを、寝ているおじいちゃんの手で押さえた。
ぴすとる
夜のプール、優しい月明かり、誰かの湯切り音。
薬指のペンだ子
行列店の隣が弊社です。
井沢
3人の影絵師により、濃厚豚骨ラーメン全部のせが再現された。
morin
世界滅亡の時刻に合わせて作ったカップラーメンの味は、ふやけて酷いものだった。
珠四季
寸評。

●g-udon氏「汁まで飲みきって〜」ついでに丼を上げ、軽くカウンターを拭いていって欲しい。
●哲ロマ氏「ダメ元で〜」即刻店から叩き出されて欲しい。
●トミ子氏「土曜の昼に〜」むかし土曜日は半ドンで、昼のインスタント麺はごちそうだった。具のない「素ラーメン」でじゅうぶんだった。
●君と僕と雨氏「大将の湯切りは〜」元ヤンの大将。湯切りに技の名前とかつけてそう。
●七世氏「タクシー配送室で〜」タクシードライバーの待機室みたいなところだろう。いかにも年代物の日本人形が置いてそう。すごくリアリティがある。
●マークパン助氏「スープの決め手と〜」深夜のラジオなんかで泣ける話として紹介されそう。
●ぴすとる氏「カップ麺のフタを〜」入れ歯でいいのに。
●morin氏「3人の影絵師により〜」もうひとり、湯気役がいればさらに完成度が上がるのでは?

それでは次回のモチーフを発表する。
次回モチーフ
「児童向け」
次回は児童向けの書き出し作品を募集したい。昔話風、メルヘン風、最近の児童書ではキャラものも人気がある。(ただしキャラもので書くときはオリジナルで)想定する読者は小学生。子供の心をガッチリつかむ書き出しを考えて欲しい。締め切りは11月10日正午。発表は11月12日を予定している。下の投稿フォームから部門を選択して送っていただきたい。力作待ってます!
最終選考通過者
反骨心のアップリケ/ミミズグチュグチュ/suzukishika/稲荷/正夢の3人目/hys/魚子/なおピー/ぼら〜にょ/たこフェリー/ビールおかわり/ねもっ血風クン/あだんそん/
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