特集 2017年11月10日
 

鹿児島の黒酢メーカーの異世界っぽさがすごい

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鹿児島にしばらく滞在する機会があった。そしてその滞在中、霧島国分から鹿児島市方面に向かう際に車から見えて気になった建物があった。それが私と「長命ヘルシン酢醸造」との出合いだった。
1986年生。大人げない大人を目指し、日夜くだらないことを考えています。ちぷたそ名義でも活動しています。

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なんだこれ?
なんだこれ?
遠目に見て、山の中に鳥居や像らしきものが見て取れる。カラフルだし神社というか、なんかゲームのステージみたい。要所要所にポイントがあって、そこで敵とバトルするやつでは?  などと妄想を繰り広げたところで一体どんな場所なのかますます気になってきた。
近づいてみる
近づいてみる
周りを取り囲む壁の上にはずらりと並んだかめ壺。そして壁には何やらびっしり描かれている。
「仕事を趣味と思ったらこんな楽しいことはない」
「仕事を趣味と思ったらこんな楽しいことはない」
一度見たら忘れられない、目がきれいな西郷どん。西郷どんに鹿児島っぽさを感じる。本当にお土産から像から鹿児島ではあらゆる西郷どんに会うことができた。
「健康には」とくれば……?
「健康には」とくれば……?
「アミノサン」
「アミノサン」
「アミノサン」かぁー、そっかー。わからなかった。どうでもいいけどアミノ酸をアミノサンと書くと一気に人名っぽくなるね。
おばーちゃん
おばーちゃん
謎の「おばーちゃん」。えと……誰なんだろう。この場所が気になって調べたところこちらは黒酢の醸造をおこなっているのだそう。ここでどんな黒酢が作られているのかすっごく気になるよーーー助けてーーー! というわけで、工場の見学をさせてもらった。

長命ヘルシン酢醸造の見学へ

長命ヘルシン酢醸造の大嵩(オオタケ)さん
長命ヘルシン酢醸造の大嵩(オオタケ)さん
工場を案内してくれたのは長命ヘルシン酢醸造の大嵩(オオタケ)さん。大嵩さんが手に持っている長命ヘルシン酢醸造の看板商品である「黒酢ドリンク ヘルシン」は天然の玄米黒酢に鹿児島県産の純ハチミツを加えた黒酢ドリンクである。鹿児島は地名や人名など、一発では読めない漢字が多かった。大嵩さんの読みもそうだし、垂水で「たるみず」も読めなかったし姶良で「あいら」も読めなかった。
直売所、それに自動販売機(黒酢ドリンクの自販機もある)
直売所、それに自動販売機(黒酢ドリンクの自販機もある)
ここ長命ヘルシン酢醸造はかめ壺仕込みの純米黒酢を製造販売しているメーカーであり、工場と直売所、それに世界平和や健康長寿を祈願する参拝エリアの3つのゾーンからなる一大黒酢テーマパーク(これは今勝手に私が考えた)なのだ。
圧巻のかめ壺
圧巻のかめ壺
ずらっと並んだ圧巻のかめ壺。こちらにはかめ壺が1000個ほどあるのだそう。この中には玄米と麹が入っていて、自然発酵させて玄米黒酢になる。
かめ壺、フェトジェニックなのでは……
かめ壺、フェトジェニックなのでは……
ここにある黒酢は今年の4月に仕込みをしたもの。これを来年になったら取り上げて、綺麗に濾過して不純物を取りのぞき、大がめに移して寝かせるのだそうだ。寝かせる期間は黒酢の種類によって様々で、13年仕込んでいるものもあるのだとか。1000L入ってた大がめは1年に1回、移し替えて中をきれいに掃除して……お酢は全部澱が出るので、そういうものを取り除き綺麗にする。手間がかかっているのだ。
湧水が普通に蛇口から出るよ! すごい!
湧水が普通に蛇口から出るよ! すごい!
ここの黒酢は自然水の湧き水を使って仕込んでいる。その湧き水が、そのまま加工なしで飲めるということで飲んでみたらこれが甘かった。長命ヘルシン酢醸造の近くには桜島があり、工場のあるあたりは噴火の灰が何百年と溜まった層なのである。そして、この灰の層がフィルターの役割をしてくれるために、この土地ではきれいな水が出るのだという。
敷地内で飼われている鶏(強そう)
敷地内で飼われている鶏(強そう)
長命ヘルシン酢醸造、いろいろと徹底ぶりがすごい。麹に使う玄米は国産、主に鹿児島産を使用の上自社で作っている。敷地内で飼育されていたこの戦闘力の高そうな鶏にもちゃんと意味があって、この鶏の玉子を使ったおせんべいが売店で売られていた。(鹿児島には玉子や砂糖の入った甘い「せんべい」がある)。すごい! 自社で何でも作っちゃう!

長命ヘルシン酢醸造、なんかすごいぞ!

力強く語りかけてくる「世界人類は一つ心」
力強く語りかけてくる「世界人類は一つ心」
薄々気が付いていたんだけど、一見クセの強い珍スポット的な面白い工場なのかと思った(ごめんなさい)が実はこれがめちゃくちゃ真面目な工場だったのだ。その真面目な取り組みは県でも認められていて、長命ヘルシン酢醸造は大手デパートや百貨店での鹿児島物産展に呼ばれて全国に遠征している。なので、鹿児島は遠い……という皆さまでも、こちらの黒酢を手に入れる機会はちょいちょいあるのだ。感銘を受けたところで、あの謎の参拝エリアに行ってみることにする。
異世界っぽい
異世界っぽい
鳥居をくぐるときらびやかな仏像や神様の像。あえて宗教や宗派にこだわらなかったため、ごちゃ混ぜになった非日常観あふれる光景が目の前に広がる。異世界に迷い込んでしまったかのようだ。
「神」と記された像
「神」と記された像
この金ぴかの石碑の由緒はなんかすごいぞ! 「旧五月五日の端午の節句に児童などが夜中の二時ごろからちまきを藁(わら)づとに包んで背負い、『神功皇后三韓平』と書いた旗を押し立てほら貝を吹きながら2社の神社に参拝し、背負ったちまきをこの石碑に投げて解散する」という戦前まであった年中行事で使われていた石碑なのである。年中行事って「なんでそうなったの?」みたいなのがあるから面白い。
竜神様のお顔がドーーーン! 象「パオーン」
竜神様のお顔がドーーーン! 象「パオーン」
そして気になっていた「龍の神石」。こちらはまったく彫刻を行わず、東京の絵師さんに鹿児島まで来てもらい自然岩に彩色した迫力満点の竜神様なのだ! 竜神として奉る際には霧島神宮、明治神宮、北海道神宮といった名だたる神社に祈願して入魂している。なお、夜はライトアップされる。
遠景から岩竜神
遠景から岩竜神
はぁ〜すっごい不思議……。やっぱり、異世界に迷い込んだみたいな光景だ……。この竜神様には、世界平和への願いや参拝者の健康長寿、それにもともと竜神って水神なので、この地から湧き出るいい水を使って、いいものを作って、それを使った方々が健康になっていただけたら……という願いを込められているのだとか。なんというか、本当に黒酢に真面目なのだ。
売店で会長に会えます
売店で会長に会えます
そしてそんな願いを祈願した、創業者であり会長である山下芳文さんの姿は売店で見ることができた。

重ねて言うけど、すっごく「真面目」

こちらにもずらり
こちらにもずらり
反対側にも圧巻な量のかめ壺が並んでいた。私は、そこで大嵩さんに聞いた言葉が心に残っている。
かめ壺をチェックする大嵩さん
かめ壺をチェックする大嵩さん
「同じ条件で作っていても、出来の悪い酢というのが出るんですよ。同じように見えても酢にはそれぞれ顔がある。そういうものには別の「いい酢」を加えてあげる。そうすると元気になります。お酢は生き物で、それこそぬか床なんかと一緒。朝一にかき混ぜないといかんとです」

という言葉。同条件で作ってもいい酢・悪い酢はできる。人間と一緒だ……お酢に親近感をもつ日が来るとは。そして悪い酢だからってそれを規格外と切り捨てるのではなく、いい酢を加えて元気になるのをじっくり待つ。手間を惜しまず、お酢に愛情を持って、「いいものをつくっていこう」という気持ちをひしひしと感じる。そもそも長命ヘルシン酢醸造の黒酢は、日本酒が醗酵してできたもので、昔ながらの時間と原料代がかなりかかる手法で作られているのだ。
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そんな愛情と手間をかけて作られた黒酢は直売所だと通常よりも割安で手に入れることができる。ここには写っていないが看板商品の3年熟成の神命酢(900ml 3,456円/直売所価格)ははちみつを入れて薄めて飲んでもうまいし、「中華料理に最高」だそうだ。
黒酢ドリンク自販機おすすめ
黒酢ドリンク自販機おすすめ
そしてこちらに来たらぜひ利用してほしいのが、直売所の横にあるドリンクの自動販売機! 黒酢にはちみつを加えて飲みやすくアレンジした黒酢ドリンクの、いろいろなフレーバーが手に入る。
1本ずつ取りだす
1本ずつ取りだす
ドリンクの瓶もすべて自分たちでシールを貼っているということで、手作り感あふれているから購入の際はそこにも注目していただきたい。売店ではドリンクと黒酢の試飲もさせてもらったのだがお酢のツンとくる感じもなく、まろやかでおいしいドリンクだったのだ……。それこそごくごく飲める。
ドリンク10本のセットと「うめ」「ブルーベリー」「金柑」の3種の味を買った
ドリンク10本のセットと「うめ」「ブルーベリー」「金柑」の3種の味を買った
自販機ではれんげのはちみつを用いた通常の黒酢ドリンクのほか、「うめ」「ブルーベリー」「金柑」のそれぞれのフレーバーのものが手に入る。そして、ドリンクに使用しているブルーベリーや金柑にやはちみつなどもやっぱり自社で作っているという徹底したこだわりぶりなのだ。本当に、最初に工場が気になったのが商品そのものよりも「面白そうな工場があるな」というちょっと不純な気持ちだったことが申し訳なくなってきた……! だからといって推しているわけじゃないけど、これ本当においしかった。

眺めも最高だ

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ちなみに、岩竜神周辺からの眺めは最高だ。眼下には隼人道路に錦江湾。それに辺田小島などの隼人三島が見える。ちなみにこの隼人三島、今は無人島なんだと。こんなに市街地から近いところに無人島があるもんなのかと驚いた。
工場は日祝日はお休みになるが、岩竜神自体は参拝可能だそうなので、鹿児島の観光プランに加えよう。
傾斜すごい
傾斜すごい
あとどうでもいいけど、鳥居抜けた入口のところの傾斜すごくない? ほぼ脚色無しでこんな感じだった。

■取材協力
長命ヘルシン酢醸造
住所:鹿児島県霧島市隼人町野久美田670-2
電話:0120-512-727
営業時間:9:00〜17:00
定休日:日祝日(岩竜神は拝観可能)
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