特集 2017年11月15日
 

ベトナムの「変顔アプリ」が世界で大ヒットしてた

キャプション!
顔。顔が潰れる、売れる、出る、と、さまざまな慣用句が存在するけど、「顔で踊る」はご存知だろうか?ご存知な訳がない、そんな慣用句はない。

暇つぶし大国・ベトナム(詳細は後述)から今年7月に出た、「FaceDance Challenge!」というゲームが世界中で大ヒット。直訳すると「顔が踊る挑戦!」。意味は分からんが、ヒットするならそれだけおもしろいのだろう。どういうもの?開発した会社も近所だったので訪ねてきた。
1984年大阪出まれ、2011年からベトナム暮らし。日本から3600km離れた土地で、ダチョウに乗ったり、ドナルドのコスプレをしたり、札束風呂に入ったりしている。

前の記事:「言うこと聞かない「家電の反乱」〜桑田佳祐だけに返事する〜」
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> 個人サイト べとまる

「顔で踊る」ゲームは「顔が痛くなる」ゲーム

ものを見せた方が話は早いよねってことで。
アプリのゲームです、賑やかな画面。
アプリのゲームです、賑やかな画面。
まずはカメラで自分の顔を認識させて…
まずはカメラで自分の顔を認識させて…
顔を、
顔を、
横に向けたり!上に向けたり!笑ったり!
横に向けたり!上に向けたり!笑ったり!
ウケ狙いでこんなことをやっているのではない。いや、ごめん、ちょっとくらいはあるけれど。いずれにしろ、このゲームをやるとこんな挙動になってしまう!それはどうして?
音ゲー経験者なら一見して分かるのでは。
音ゲー経験者なら一見して分かるのでは。
下から上へ次々と流れてくる顔のアイコン、上を向いたり、下を向いたり、笑ったり、目を閉じたり。それらが表示されている間に同じ表情をつくれば得点。つまり、指定された表情に合わせて顔を変えていくゲーム。
このマヌケ面が得点の瞬間です!
このマヌケ面が得点の瞬間です!
これ、20年前頃に流行った「ダンス・ダンス・レボリューション」を思い出す人もいませんか?私はします。ゲームセンターから流行った、床にある上下左右のボタン(パネル)を指定されたタイミングで足を使って踏むというゲーム。プレイするとまるで踊っているように見える。

とは言いながらも、こちらはBGMが流れてスクロールされるだけで、タイミング良く押すといった音ゲー要素はないんだけど。清々しいほどないんだけども。
友人たちにやってみてよとお願いしたが全員拒否。女の子だもんね、しょうがないよね。
友人たちにやってみてよとお願いしたが全員拒否。女の子だもんね、しょうがないよね。
で、たまたまネットニュースで知ったこのゲーム、記事をよく読むと「フーニャン区にある会社が開発し…」と書いてあった。これは近所じゃないか、行ってみよう。
フーニャンという地名といい、DiFFCATという社名といい、なにかと猫っぽいですが関係ありません。耳慣れしてるけど、「フーニャン」って子供向けアニメのキャラクター感すごいな。厳密には「フーニュアン」だけども。
フーニャンという地名といい、DiFFCATという社名といい、なにかと猫っぽいですが関係ありません。耳慣れしてるけど、「フーニャン」って子供向けアニメのキャラクター感すごいな。厳密には「フーニュアン」だけども。

ベトナムを「暇つぶし大国」と言ったワケ

このあとイケメン社長さんが出て来るのですが、冒頭で話した「暇つぶし大国」の背景について説明したい。実はベトナムは、アジアでYou Tube視聴時間が第1位。といっても2015年にGoogleが発表したデータなので今現在でも同じかどうかは分からないけど、とにもかくにもスマホ(アプリ)が大好き。

月収くらいの価格だって、ローンを組んで最新スマホを買っちゃう人もいる。日本人はiPhone好きとも言われるが、経済的な入手難度を踏まえると、もしかしたらベトナムの方が欲望は強いんじゃないかと思う。
ベトナムの市場。大半の売り子は暇さえあればスマホをいじるよ。
ベトナムの市場。大半の売り子は暇さえあればスマホをいじるよ。
SNSも大好き。私が移住した6年前は社会主義国らしくFacebookを規制していたけれど、今では政府自身も公式ページを持っているし、利用者数は国民の3分の1もいると言われている。平均年齢が30歳前後だからとか、新しいもの好きだからとか、いろんな理由は考えられるけど、観光で市場に行けば直感的に分かってもらえるだろう。売り子が洩れなくほとんど!スマホをいじっているからです。

とは言っても、店員が客の前でスマホをいじっているくらいならタイや台湾でもよく見た光景なので、暇つぶし大国の明確な根拠はYou Tube視聴時間くらいか。今さら取って付けたようなフォローを入れると、真面目な人はもちろん真面目です。といっても、そもそもその概念が日本と違うとしか言いようがないのですが。

世界中で変化球なプレイ動画を次々とアップされ続出して大ヒット

話は戻り、そんな「FaceDance〜」の開発会社へ行ったのです。
話は戻り、そんな「FaceDance〜」の開発会社へ行ったのです。
十数人がデスクを突き合わせての開発真っただ中。
十数人がデスクを突き合わせての開発真っただ中。
DiFFCATの代表、ジャンさん。かなり若く見えるけど30歳。
DiFFCATの代表、ジャンさん。かなり若く見えるけど30歳。
ジャンさん「日本人か、6月に日本へ行って来たよ!」
私「え、そうなんですか?出張で?」
ジャンさん「旅行で!大阪、奈良、京都に東京!」
私「今聞くのもなんですが、それって儲かったから?」
ジャンさん「いやいや、関係なく!むしろスタッフが開発してる間にぼくだけ行って来たんだよ!」

これはツッコミ待ちなんだろうか、いやきっとただの世間話だな。
関係ないが眺めが良い(が、反射でよく分からない)。
関係ないが眺めが良い(が、反射でよく分からない)。
私「『顔が踊る』っておもしろい発想だなぁと思いました。フォーマットはダンス・ダンス・レボリューションみたいな音ゲーだけど、よく考えついたな!という」
ジャンさん「ダンス・ダンス・レボリューションってなに??」
私「え、ダンス・ダンス・レボリューション知らないんですか」
ジャンさん「知らないよ」
私「マジですか?じゃあ、どうやって思いついたんですか?」
ジャンさん「それは、You Tubeである動画を観てさ!」
中国の動画、顔に人の絵を描いて、表情を変えることで「踊って」いる。
私「あ〜、なるほど!なるほどなるほど!!こりゃ確かにダンスダンス〜は関係ないですね」
ジャンさん「うん。実際にやったらおもしろいんじゃない?ということで、それがきっかけだった」
タイでは腹に顔を描いてプレイしている動画も。トリッキーすぎる。
私「DiFFCATは設立してどれくらいで、FaceDanceの前には何本くらいのゲームをつくっていたんですか」
ジャンさん「設立からは1年経ったくらいで、ゲームは3〜4タイトルくらいだね」
私「まだ出来て日は浅いのにヒットしましたね〜」
ジャンさん「そうなんだよ〜、ホラ!」
見てくれよ!と言って会社資料を開いてくれた。
見てくれよ!と言って会社資料を開いてくれた。
この「FaceDance」、アップルストアのアジア地域で第1位を獲得。ベトナムはもちろん、タイ、フィリピン、台湾などで大ヒットしたのだそうです。欧米などでも10位以内の上位にランクイン。なんと夢がある話!

私「これだけ売れた理由は何だと思いますか?」
ジャンさん「動画に撮ってみんながアップして、それでさらに広がったということがよかったと思うね」
私「ですよね。さきほどから見せてもらっている動画もそうだけど、自分がプレイした動画そのものがコンテンツになるから、やればやるほどに見せたくなっちゃう。ルール通り変顔しても映えるし、トリッキーなプレイもある」
こちらは犬をエサで釣って顔の向きを変えてプレイしている。
アジアとそれ以外を二元論で語ることも雑だが、ベトナムに住む身としては前者の人達の方が「調子乗り」が多いと思う。おふざけ動画をノリでネットにアップすることに躊躇がないというか、自分のヴィジュアルで笑いを取ることに抵抗がない。気がする。

ジャンさん「ただ、アップする撮影の録画機能もそうだけど、音楽をどう組み込むといったいろんな機能を、安いスマホの処理能力でも実現できる範囲に収めることは苦労したよ」
私「技術的なことは分からないけど、動画ってめちゃくちゃバッテリー減りますもんね。そうかぁ、ただ考えたゲームを実現すれば終わりって訳じゃないもんな…」
日本人もYou Tuberもプレイ。ちなみにこの方は男性です。
プレイ中、「クレイジータイム」という時間があり、表情を変えるほど得点になる。盛り上がる仕掛け、よく仕組まれてるわ。
プレイ中、「クレイジータイム」という時間があり、表情を変えるほど得点になる。盛り上がる仕掛け、よく仕組まれてるわ。
取材の最後に、社員のみなさんといっしょにプレイしたいとお願いして、仕事中ながら協力してもらった。
が、おもいのほか地味な絵になりました。そうか、みんなスマホを見るから…。
が、おもいのほか地味な絵になりました。そうか、みんなスマホを見るから…。
全員で13ほど人いたスタッフのみなさん。実は開発当初はたったの3人、つまりこのゲームの大ヒットで社員数を4倍以上に増やしたそう。それも、リリースは今年の7月から11月までのたったの4ヶ月で。ちなみに収益は広告と「フィルター」の売り上げとのこと。
フィルターは、
フィルターは、
こういうデジタル衣装ね。
こういうデジタル衣装ね。
今後は、複数人がオンライン越しで同時プレイできる機能を準備中だという。あ、それ、にらめっこ的な妨害要素もあって、カオスになりそうでおもしろいだろうなー。

創造性がみなぎりはじめたかもしれないベトナム

日本のネットニュースなどでも報道されたのでご存知の方もいるかもしれないけど、4年ほど前にベトナムでつくられた「Flappy bird」というゲームがあった。マリオのようなドット絵とスクロールスタイルで、鳥のようなキャラクターを上下に動かすだけというシンプルな内容だが、これが世界中で大ヒット!一日で500万円を超える広告収入計算になるほど人気を得たという。

それから立て続けのヒット、というには間隔が空いているが、勝手ながら「やるじゃねーかベトナム」と思っている。というのも、現地で日本人の経営者などから多く聞かれる人材まわりのネガティブな話が、「(ベトナム人は)想像力が足りない」というものだからだ。
プレイ中のスクリーンショットははみ出がち。
プレイ中のスクリーンショットははみ出がち。
私見は別として、以前この国の「道徳」の教科書を見たことがあり、なんと選択式。たとえば、友人と仲直りをするときにどのセリフを選ぶかという問題で、「こちらこそごめん」といった正解らしい内容の横には、「うるせぇよ」といった選択肢も並ぶ!二人の間で何があったかも分からないのに!ギャルゲーか!と言いたくなる。

一方で日本は正解がなく話し合う。どちらがどうという話をするつもりはないが、少なくともその教育方針は、現場で言われている「想像力が足りない」という声とバチッと結びつくなぁと感じた。でもそれが今、若い世代から切り崩されはじめているんじゃないか。教育とは別に、小さい頃から、それこそYou Tubeなどを通して国内外の文化に触れて、想像力を養って、今こそ新しいものを生み出す黎明期にあるのかもしれない。

日本なら小顔になるってことで流行りそう

ずいぶん真面目にまとめてしまったけど、「FaceDance Challenge!」そのものは、見ての通り、かなりおバカなゲームです(人様がつくったものに言うのもなんなんですけど)。「いないいないばぁ」が、赤ちゃんを笑わせる常套手段であるように、変顔というものは意外と万人が出来る万人向けのコンテンツかもしれない。

ルールだからと半ば強制的に変顔にさせるこれは、ゲームという枠を越えて実はコミュニケーションにおいて大きな革命を起こしているのではないかしら。ちなみに表情筋フル稼働でプレイ後は顔面が熱くなるくらいなので、小顔になりたい人にはオススメです。
そんなときはこいつでバカになりましょう!
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