特集 2018年1月10日
 

路線図の聖地ロンドンで、路線図マニアと路線図について語る

貴重な路線図を見せてください

ところで、オーブンデンさんは、世界各国の路線図をいろいろと所有されているが、なかでも貴重なものを見せてくださるというので見せてもらった。

先ず見せてもらったのが、ロンドン地下鉄1925年の路線図。
いちばん古いものですね
いちばん古いものですね
これは……
これは……
――これは、ハリー・ベックさん以前のものですね……。すごい。

ハリー・ベック氏は、現在でも使われている地下鉄路線図の元となった路線図をデザインしたという路線図業界の中では手塚治虫に匹敵するレジェントの人物である。

元々、電気技師をしていたハリー・ベック氏が、電気回路をヒントにデザインしたのが、今の実際の地形を無視した地下鉄路線図のはしりである。

上に見せてもらった路線図は、実際の線路の線形にそって路線図がえがかれている、つまり、ハリー・ベック氏登場前のものなのだ。

続いて見せてもらった路線図がこちら。
先程の路線図とくらべてほしい、急にシュッとした
先程の路線図とくらべてほしい、急にシュッとした
ハリー・ベック氏が1930年代にデザインしたものだ。

現在の地下鉄路線図のテイストがほぼ完成している。オーブンデンさんによると、この路線図の初版だと価値は1000ポンドほどになるという。日本円で15万円ほどだ。
ひーっ
ひーっ
すげえ、すげえけれども、頑張れば買えないこともない……。

そんなボーダーライン上の価値をもつハリー・ベック氏の路線図はさまざまな工夫を少しずつ加えられ、改良されて行く。
郊外がグラデーションとして表現されているもの
郊外がグラデーションとして表現されているもの
オーブンデンさん「これはグラデーションの印刷技術が、当時はとても難しかったと思いますが、ロンドン中心部を白く抜くことによってわかりやすくしていますね」
表現方法がコロコロかわる
表現方法がコロコロかわる

オーブンデンさん「これは第二次大戦中の路線図ですが、乗り換え部分をリングの重なりで表現しているものはこれだけです。これもとてもめずらしい」

パリの路線図は電話帳っぽい

オーブンデンさん「こちらもぜひご覧いただきたい、昔のパリの路線図です」
古びた本が出てきた
古びた本が出てきた
路線図?
路線図?
――これは、路線図というより、電話帳っぽいですが……。

オーブンデンさん「これは、どの駅で降りたら、なんという通りに近いのかが書いてある路線図なんです」

――あぁ、なるほど、通りの名前から最寄りの駅を検索できるんですね。

イギリス、フランスをはじめ、欧米などでは道路に通り名をつけて、その両側の建物にひとつずつ番号をふって住所としている。したがって、どんな小さな道にも必ず名前がついていて、通り名を頼りに地図を検索する場合はまず、その通りが地図の中のどのあたりにあるのかを見当つけなければいけない。
そのため、ヨーロッパの都市地図は膨大な量の通り名検索ページがついている。

日本だと、住所さえわかれば、座標をつめていく感覚で場所を特定することができるので大違いだ。

住居表示もストリート方式も、どっちがいいとか悪いではなく、どちらもそれぞれ長所と短所があるのだ。

つい住所の話になってしまったが、パリの路線図である。
パリのメトロも昔からカラフルだが、今とは色と路線が違う
パリのメトロも昔からカラフルだが、今とは色と路線が違う

東京の路線図、メトロと都営どっちがいい?

さて、最後に東京の地下鉄路線図についてちょっときいてみたい。

東京の地下鉄路線図は二種類ある。東京メトロ公式の路線図と、都営地下鉄公式の路線図だ。
メトロ公式路線図
メトロ公式路線図
都営地下鉄公式路線図
都営地下鉄公式路線図
このふたつの路線図のうち、オーブンデンさんはどっちがお好みだろうか? 聞いてみた。

オーブンデンさん「そうですね……線が細いのはメトロの方がいいですが、まとまっていて見やすいのは都営地下鉄の方でしょうか。都営地下鉄の方が、スッキリして見やすいですね、メトロの方はちょっとゴチャゴチャした印象がありますね」

――なるほど、大江戸線が丸く描かれているので、スッキリしてみえるんでしょうね。私、この都営地下鉄の路線図をデザインした方にインタビューをしたことがあります。

オーブンデンさん「オォ!」

――その方は、やはり大江戸線を丸く表現するのがものすごく難しかったといってました。

オーブンデンさん「そうでしょう……東京メトロの路線図は、このサークルライン(大江戸線)が見づらいですね、いちばんいいのはこのふたつのハイブリッドがいいですね」

――あぁ、東京の地下鉄は運営会社がふたつあって、料金もそれぞれ別料金なんです。東京メトロの方は、商売敵の都営地下鉄の路線を細くかくので、見づらいんですよ。都営地下鉄の方もメトロの路線は細くはなってるんですが、もともとが太いのでそんなに見づらくはないんですね……。

東京の事情をまったく知らない人の素直な指摘で、東京の地下鉄路線図の気づきにくかったところに気づけたようなきがする。人の意見ってだいじだ。

路線図で異文化交流

オーブンデンさんのインタビューでわかったのだが「好きなものが同じだけど、言葉や文化や考え方が違う外国人」と対話するのはめちゃめちゃおもしろい。

その発想は無かった。と感じるところもあれば、考えることは一緒だなあ。と感じることもあり、でも、好きなものが同じなので、安心して対話できる。脳みそを、もみほぐされるような対話ができて本当におもしろい。

確かにこれは、向こう(イギリス)の話ももっと聞きたい、となるし、逆にこちら(日本)のこともしっかり伝えなければという、誰にも頼まれてない責任感が勝手に芽生えてきそうだ。
オーブンデンさんを取材したその日の夜、たまたまオーブンデンさんが出演するテレビ番組が放送されていた。ロンドンの地下鉄で使われるアルファベットの書体についてのテレビ番組だった。オーブンデンさん、実は「もじ鉄」でもあるらしい。
オーブンデンさんを取材したその日の夜、たまたまオーブンデンさんが出演するテレビ番組が放送されていた。ロンドンの地下鉄で使われるアルファベットの書体についてのテレビ番組だった。オーブンデンさん、実は「もじ鉄」でもあるらしい。

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