特集 2018年1月11日
 

琵琶湖疏水の船下り試乗会に参加した

歴史的な土木遺産を眺めつつ蹴上へ

さて、船下りもそろそろ終盤である。山科西部から蹴上にかけては明治の建造物が集中して残っており、いずれも近代土木遺産として高く評価されている。
引き続き、紅葉を楽しみながら疏水を下っていく
引き続き、紅葉を楽しみながら疏水を下っていく
やがて差し掛かったのが「山ノ谷橋」だ
やがて差し掛かったのが「山ノ谷橋」だ
この緩やかなアーチが特徴的なコンクリート橋は「10号橋」とも呼ばれ、明治37年(1904年)に築かれたものである。今も谷奥に鎮座する永興寺への参道として現役なのだから凄いものだ。
その奥には第二トンネルが我々を待ち受けている
その奥には第二トンネルが我々を待ち受けている
第一トンネルと同様、第二トンネルの洞門にも扁額が掲げられている。大臣を務めていた井上馨による揮毫で、「仁以山悦智為水歓(じんはやまをもってよろこび、ちはみずのためによろこぶ)」と縦書きで刻まれている。その意味は「仁者は動かない山によろこび、智者は流れゆく水によろこぶ」とのこと。山を見るのも川を見るのも好きな私はどうなのだろうか。

第二トンネルの長さは124m。短め目のトンネルなので、入ったと思ったらあっという間に出口となった。
出口は上部が尖った尖頭アーチとなっており、まるでゴシック建築のようだ
出口は上部が尖った尖頭アーチとなっており、まるでゴシック建築のようだ
右手には日ノ岡取水場という水道施設が現れた
右手には日ノ岡取水場という水道施設が現れた
この取水場は琵琶湖疏水の水を約4km南の新山科浄水所へ送る為の施設である。といっても、この船で下っている水路から取水しているのではなく、もう一本の琵琶湖疏水から取水している。

実は琵琶湖疏水は二本存在し、船で下っているこの水路は第一疏水である。日ノ岡取水場が取水しているのは、第一疏水に並走する第二疏水からだ。

第二疏水は明治41年(1908年)から明治45年(1912年)にかけて築かれたもので、その全域がトンネルおよび暗渠となっている。地上に露出しているのは取水口と蹴上の合流地点だけだ。同じ明治時代の疏水であっても、前期と後期では土木技術に差があるものである。
日ノ岡取水場を過ぎたところには「日ノ岡橋」と第三トンネルの洞門が
日ノ岡取水場を過ぎたところには「日ノ岡橋」と第三トンネルの洞門が
この橋は「10号橋」とも呼ばれている。なんとも質素な感じであるが、実は明治36年(1903年)に築かれた、日本初の鉄筋コンクリート橋だというから凄いものだ。現在は鉄製の補強と手摺が設けられているが、目の粗いザラっとした質感のコンクリートには確かな歴史が感じられる。
その側には「本邦最初鐵筋混凝土橋」と刻まれた石碑が立つ。コンクリートを“混凝土”と書くとは、コンクリートの本質に沿った実にセンスある当て字である
その側には「本邦最初鐵筋混凝土橋」と刻まれた石碑が立つ。コンクリートを“混凝土”と書くとは、コンクリートの本質に沿った実にセンスある当て字である
そんなことに感心しつつ、ボートは第三トンネルへと入っていく
そんなことに感心しつつ、ボートは第三トンネルへと入っていく
ちなみに第三トンネルの扁額は、やはり大臣を務めていた松方正義による揮毫で「過雨看松色(かうしょうしょくをみる)」と刻まれている。その意味は「時雨が過ぎると、いちだんと鮮やかな松の緑をみることができる」とのことだ。なるほど、という感想である。
第三トンネルの長さは850m。内部の様子は他のトンネルとあまり変わらない
第三トンネルの長さは850m。内部の様子は他のトンネルとあまり変わらない
トンネルを抜けると、そこは蹴上の下船場だ
トンネルを抜けると、そこは蹴上の下船場だ
名残惜しいが、船下りはこれにて終了である。大津から約50分の船旅であった
名残惜しいが、船下りはこれにて終了である。大津から約50分の船旅であった
ボートが下船場である九条山浄水場に接岸し、ガイドさんと操縦士さんにお礼を述べて下船する。しかしお楽しみはこれで終わりではない。この下船場にも、まだ見るべきものが残っているのである。
それは明治45年(1912年)建造の「旧御所水道ポンプ室」である
それは明治45年(1912年)建造の「旧御所水道ポンプ室」である
旧東宮御所などの設計で著名な片山東熊によって築かれた水道施設だ
旧東宮御所などの設計で著名な片山東熊によって築かれた水道施設だ
ぐへぐへと奇声を発しながら、隅から隅まで堪能させて頂きました
ぐへぐへと奇声を発しながら、隅から隅まで堪能させて頂きました
近くには、同時代に築かれたと思われる建物(休憩室?)も残る
近くには、同時代に築かれたと思われる建物(休憩室?)も残る
乗船場であった大津閘門と同様、下船場の九条山浄水場もまた普段は立ち入れない場所である。琵琶湖疏水を全力で体感できるのみならず、いつもは遠目で見るだけであった片山東熊の建築をこうして間近で見ることができるとは。まさに一粒で二度おいしい、大満足な船下りツアーであった。

桜の季節にまた乗りたい

以前より、いつか琵琶湖疏水を船で下ってみたいと夢想していたものであるが、まさか本当に実現する日が来るとは思ってもいなかった。しかも想像していたより遥かに楽しく、見所も豊富で実に感無量である。

奇しくも2018年は明治150年にあたり、明治時代に築かれた琵琶湖疏水にも注目が集まることだろう。船下りは琵琶湖疏水を丸ごと体感できるアトラクションとしてオススメだ。

いよいよ本格的に実施される琵琶湖疏水の船下り事業であるが、本番も今回の試乗会と同様の大津から蹴上に下るコースの他、蹴上から大津への上りコースもあるようだ。実施時期は通年ではなく春と秋を中心に年間82日営業とのこと。桜や紅葉の時期、ゴールデンウィークには毎日運航される予定らしい。詳しくは下記リンクをご参照ください。

琵琶湖疏水通船復活
蹴上から京都駅に向かう途中、京都市営地下鉄にも「琵琶湖疏水通船復活」の広告が出ていた
蹴上から京都駅に向かう途中、京都市営地下鉄にも「琵琶湖疏水通船復活」の広告が出ていた

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