特集 2018年1月12日

理科室の水道の勢いは強いのか

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学生の時には気が付かなかった、「学校の設備」に関する疑問ってあるだろう。え、ない? 私にはある。「学生」というものを卒業してからかなり経つわけであるが、未だに気になっているのだ。
例えば……「理科室の水道って他に比べて勢いが強くなかった?」ということをずっと思っている。すごかったと思うんだよなあ、他の水道と同じ感覚でひねると、勢いよく出てくるので、周りに水が飛び散った記憶があるのだ。
ああ、在学中にそんな疑問を解消しておくべきだった。
生まれも育ちも横浜。大人げない大人を目指し、日夜くだらないことを考えています。ちぷたそ名義でも活動しています。(動画インタビュー

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もう叶わないけど一度学校の廊下を走って注意されてみたかった、というイメージ画像
もう叶わないけど一度学校の廊下を走って注意されてみたかった、というイメージ画像
私が、今さらに思っている学校の設備に関する疑問はいくつかある。これは、私の記憶をめぐる物語である。
・理科室の水道って水圧が強くなかった? そして、実際に水圧が強いなら、どんな意味があるんだろう。
水圧が強かったー、理科室の水道―(「卒業生のことば」みたいな感じで読んでください)
水圧が強かったー、理科室の水道―(「卒業生のことば」みたいな感じで読んでください)
理科室の水道って、他の水道と同じ感覚でひねるとめちゃくちゃ水圧が強くて慌てたという記憶がある。とはいえ、この記憶自体、自分が小学生だった二十年ちかく前になる記憶なので自信がない……! 本当に理科室の水道は強いのだろうか。
・理科室とか図工室の背もたれの無い椅子、あれにも意味があるの?
背もたれが無かった、技術室の椅子
背もたれが無かった、技術室の椅子
教室の椅子と違って、理科室や図工室の椅子は木製の背もたれの無い箱椅子と呼ばれるものだった記憶がある。そういう教室では、どうして背もたれの無い椅子が採用されているんだろう?
・理科室の机って燃えないって本当? 家庭科室にはそういう処理されていないの?
燃えなかった、理科室の机>
燃えなかった、理科室の机
理科室の机って燃えないようになっていると聞いたことがある。でも、椅子とかは木製だったけどそれはいいのだろうか。あと、火を使うという点であれば家庭科室も不燃加工してあってもいいと思うけど、自分の記憶ではそうじゃなかった……。
・技術室のコンセントが上からついている意味。そして技術室ってじめじめした、教室から離れた場所にあるのは何故?
上からぶら下がっていた、技術室のコンセント
上からぶら下がっていた、技術室のコンセント
これは中学校の記憶だが、技術室のコンセントが上についている意味。なんで上にあるんだろうと思っていた。下じゃダメなのか。そして技術室って、教室から離れた、ちょっとじめじめした場所にあったような記憶がある。この記憶にも意味があるのだろうか。
忘れていたという方も、思い出せない方もいるだろうが、考えてみるとめちゃくちゃ気になりませんか……???
そんなわけで、現役学校関係者と建設業界に携わる方にこちらの疑問について話を聞いてきた。

疑問に答えてくれる先生方です

加藤まさゆき先生:当サイトライターであり、現役中学校理科教師。大北さんの記事「学校の授業は大人になった今や最高のレジャー」でも教師として教壇に立ってくれている。今回は学校関係者として話を聞いてみた。
K先生(社会教諭):友人の奥様で現役中学校社会教諭のK先生。産休中のタイミングで話を聞かせてもらった。
エージェック株式会社作本社長:唯一の建築に携わる立場である作本社長は、「コンストラクションマネジメント」という建物を建てる際に発注者側に立ってゼネコンと交渉するコンサルタントだ。日本ではまだ馴染みが少ないが欧米では一般的なコンサルタントであるという。学校設備に関しては小学校や中学校はいままで携わったことがないということだったが、わかる範囲で話を伺った。
以上の3人に学校の設備に関する疑問を聞いてみることにする。

技術室ってじめじめした、教室から離れた場所にあるのは何故?

技術室ってじめじめした場所にあったイメージなんですよねえ……(イメージ画像)
技術室ってじめじめした場所にあったイメージなんですよねえ……(イメージ画像)
ジメジメした場所に敢えてしているのではなく、作業をする場所に日当たりは不要で、音の問題などで離れた場所にすると、結果的にジメジメした場所になりがち、というのが正解だと思います。
下に教室があったら作業している際にうるさいですから。なので、一般教室から離した結果、「ちょっとじめじめした場所にある」という記憶が残ったのかもしれません。
木工室も金工室も大きな音が出る機械(電動のこぎりなど)を使うので、一般教室からは離れているのだと思います。勤務先の学校ではおそらく防音のために、技術室(木工室と金工室)は鉄扉になっています。
記憶の中で「技術室ってなんかじめじめした場所にあるな」と思っていたわけだったが、音や振動の問題から一般教室から離した結果、「技術室はじめじめした場所に配置されがち」ということがわかった。やっぱり意味があったんだな!

理科室の水道って水圧が強かった気がする。そして、実際に水圧が強いのなら、どんな意味があるの?

私の記憶の中ではネットに入った石鹸がぶら下がっている
私の記憶の中ではネットに入った石鹸がぶら下がっている
そもそも理科室の水道は細いんですよね。細いから、水圧が強く感じるのかもしれません。水圧自体、特別に強いってことはないと思いますね。

水道が細いというのはなぜですか?
実験器具をつなぐためです! 実験で、ゴム管とかをつなぐので。ちなみに水の勢いで空気を抜くような、水圧を利用する実験もやりますよ。
確かに記憶の中でも理科室の水道にはホースとかついていた
確かに記憶の中でも理科室の水道にはホースとかついていた
こちらの設問について、回答が得られたのは現役理科教師の加藤先生のみだった。そうか、実験器具を繋ぐために理科室の水道は細くなっていて、そのために水圧がすごく感じられたのか……!

技術室のコンセントが上にあるのは?

技術室の天井からのコンセントは、床にコンセントを這わすと危ないので、移動の自由度を利かすには上からが利便性が良いからだと思います。
下だと生徒が足を引っ掛けて転んだりしますし、上からじゃないと作業の邪魔になります。それは技術室に限らず、いろんな作業所とかもそうです。
勤務先の学校はコンセントは壁についており、上からついている状態を見たことがありません……。
K先生の勤務先ではコンセントは上ではなく壁についているのだそうだ。ただ、共通して上の方にコンセントがあるのは、安全性や利便性からという理由があった。

理科室の机って燃えないって本当?

理科室の机と椅子。小学生時代、コンセントにピンセット差し込んで感電していた生徒がいたんだよなー(無事だった)
理科室の机と椅子。小学生時代、コンセントにピンセット差し込んで感電していた生徒がいたんだよなー(無事だった)
理科室の机に関しては安全面の話で、机は火を使うことがあるので、不燃材料を使わないと燃えてしまいます。
確かに理科室の机は塗装されているので、燃えない(万が一焦げたとしても燃え広がらない)ように思います。家庭科室(調理室)はガスバーナーのように移動式の火元を使わないから塗装していないのかもしれません。
燃えないです。机には不燃性の塗料が塗ってあります。
机は不燃性の処理がされているんですね。でも、椅子は(私の時代は)木製だったんですよねぇ……。何かあった場合、椅子は普通に燃えてしまいますけど、それはいいんでしょうか。
椅子の上では実験をしないじゃないですか。それに最近では、木の椅子じゃない「Z型椅子」というものも採用されていて、今はそれが主流ですね。
今は木の椅子以外が主流と聞いて驚いた。ちなみに、自分で聞いておいて聞いておいてなんだが、そういえば私は小学生の頃、理科の実験の時にマッチを擦って、燃える火にテンパってしまって火をそのまま机に押し付けたことがあったことを思い出した。火は消えた。こういう生徒がいるから、やっぱり不燃性の机というのは大事なんだろうな……。

理科室とか図工室の背もたれの無い椅子、あれにも意味があるの?

背もたれのない椅子の疑問が解決する時が来てしまったか
背もたれのない椅子の疑問が解決する時が来てしまったか
純粋に作業場なので、背もたれがあると邪魔。作業があるところについては背もたれがない箱椅子が採用されます。歩き回ったりしやすいから。
背もたれの無い椅子は作業のしやすさもですし、危険なことがあった際にすぐに後方に逃げられるようにだと思います。
はっきりとはわかりません。ただ、家庭科室(被服室、調理室)もタイプは違いますが背もたれのない椅子が置かれているため、生徒が立って作業をすることの多い教室は背もたれのない椅子を設置するのかもしれません。(ちなみに本校だと、同じような特別教室でも、音楽室とパソコン室、図書室には背もたれのある椅子が設置されています)
作業をする場では作業のしやすさ、それに安全面から背もたれの無い椅子が採用されているということに気づくことができた。図工とか家庭科とか、他の班の様子を見にいったりした記憶があるが、背もたれがあったらそういうこともしにくそうだ。
理科教師、社会教師、建築に携わるコンサルタントと、それぞれ違う立場の人に聞いてみて、在学中から漠然と持っていた疑問が約二十年越しになんとなく解決してしまった……!

そして久しぶりに学生時代を思い返して、テストの裏に夢を書いた答案で紙飛行機作って明日に投げたくなったわけなんですが、実際に学生時代にやったら校内で車に轢かれて発見されて、翌日担任にそのテストをみんなの前で渡されるという恥ずかしい経験をしたことがあるから現役学生の人は決してやらないで欲しい。答案はタイヤの跡がついてボロボロだった。

疑問が解決するのは気持ちがいい

在学中、勉強はそんなに好きではなかったけど、疑問が解決してスッキリするのは気持ちがいい。学校には、生徒の立場では気が付けないようないろんな工夫がちりばめられていたのだ。
今も黒板が使われているのには理由があった
今も黒板が使われているのには理由があった

ちなみに学校で黒板が採用されているのは、後ろの席からでも見えやすいから。教師の立場からも、図などを書くときにチョークで濃淡を表したりなど、使い勝手が良いんだとか。
ちなみに黒板の後方に光源があってもいけなくて、それは「学校教育法」で決まっているんだそうだ。おお、「学校教育法」というものがあったんですね。
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