特集 2018年1月15日
 

「関ヶ原の合戦」「大山倍達対30人」をコンピュータ将棋でやったらこうなった

実際の配陣などにならって、駒を並べて戦う
実際の配陣などにならって、駒を並べて戦う
そもそも将棋は戦争好きの王様に戦争をやめさせるための「戦いを模したゲーム」のチャトランガが原型と言われる。

9×9のマス上で、血を流さずにして戦いを再現できるボードゲームであり、ある種の「シミュレータ」だ。

ならば、世にあるあらゆる「戦い」を将棋にしてみれば、白黒ハッキリつかなかった命題に決着をつけることができるはず。

永遠のライバル関係に、今日終止符が打たれる。そんな歴史的将棋バトルをやってみた。
ライター、番組リサーチャー。打率210 本塁打0 打点3ぐらいの人生ですが、いつかはホームランを打ちたい。好きな即席麺はサッポロ一番みそラーメン。そのほか卓球、競馬、ローカルフードが好き。

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いきなり世紀の対決のリターンマッチ

なお対局は将棋棋譜管理ソフトの「Kifu for Windows」で自由に駒を並べ、コンピュータ将棋対局ソフトの「ShogiGUI」でまったく同じ実力のCOMソフト同士で戦わせ、純粋に駒組みで決着がつくようにした。

まず実現するのはいきなり「関が原の合戦」である。1600年に行われ、東軍と西軍に分かれて戦った天下分け目の戦いだ。
今回、わざわざ将棋の聖地・千駄ヶ谷で色々撮影。こちらは将棋会館
今回、わざわざ将棋の聖地・千駄ヶ谷で色々撮影。こちらは将棋会館

小早川が裏切らなかったらどうなる?

史実では、下馬評では西軍有利とも言われていたものの、小早川秀秋らが東軍に寝返り、結果東軍が勝利。そして幕府が江戸(今の東京)に開かれた。

ならば、「小早川秀秋が東軍に寝返らなかったら」という命題で関が原の合戦リターンマッチを行ってみよう。実際の戦争が不可能でも、将棋ならできるのだ。

配陣図そのままに駒組みを行う

(画像出典:戦国のすべて)
(画像出典:戦国のすべて
将棋の駒組みは、「配陣図」をそのままに並べる。まず東西の大将的な存在だった徳川家康の軍勢と、毛利秀元の軍勢に王将と玉将を割り振る。

(西軍の大将は石田三成かと思っていたが、実は毛利輝元らしいので、彼が派遣した毛利秀元を大将扱いする)

なお家康の軍勢は敵側の王の毛利より1万5000人多いので、兵力の差を再現するため、別で「家康軍」として角を割り振った。

そしてその他は、単純に数の多い軍勢に強い駒を割り振っていく。たとえば1万7000人の兵を持つ宇喜多秀家が飛車、5400人の兵の黒田長政が金、という形だ。

そして、将棋盤にぜんぶ並べたのがこちら!

将棋盤の上に、関が原の合戦の配陣が再現

いきなりこんな並びからスタート
いきなりこんな並びからスタート
大駒を3枚持っている西軍と、細々とした駒が多くある東軍。通常の将棋ではまずありえない並びからのスタートなので、どんな展開になるかがサッパリわからない。

それでは、418年後に行う関ヶ原リターンマッチ、対局開始!

いきなりドッカンドッカン激しいバトル

14手目。もはや序盤ではない、激しい駒の取り合い
14手目。もはや序盤ではない、激しい駒の取り合い
1手目でいきなり敵陣へぶっ飛んでいく小早川秀秋(飛)。史実では東軍に寝返ろうと動かずウダウダ考えていたのに、エラい違いだ。

通常、将棋では最初は相手の出方を伺いつつ、守りを固めてから攻めにいくのが通例だが、お互いの駒がむき出しで近接しあっているので、いきなりとんでもないドンパチがはじまっている。

石田三成(銀)、細川忠興(金)、黒田長政(金)らの名だたる武将がいきなり壮絶な潰し合いである。こんな将棋の展開見たこと無いや。

西軍、また負けてしまうのか

26手目、東軍の攻めが連なる
26手目、東軍の攻めが連なる
両方の王将がいる右側は、東軍の方が駒の層が厚い。これを利して、20手目やそこらの段階から一気に下方の西軍陣内へ攻め込む東軍。

家康軍(角)が先頭に、西軍大将・毛利(玉)に迫っていく。このまま西軍は、418年後のリターンマッチも負けてしまうのか…?

しかし同時に、“裏切り者”なはずの小早川秀秋(飛)が東軍陣内を突破して「龍」に成り込み、さらには石田三成が家康のふところまで迫っていく。

ここまで、史実ではまるで見られなかったおどろきのダイナミック展開である。

石田三成、家康のクビに迫る王手

37手目。一気に形勢逆転。東軍陣内で西軍の駒が暴れる
37手目。一気に形勢逆転。東軍陣内で西軍の駒が暴れる
しかし東軍の攻め手が無くなりかけたところで、西軍が一気に反撃開始。いままで玉将・毛利の後ろで鳴りを潜めていた長宗我部(角)がダッシュで戦線に参加する。

さらに西軍の手に渡った家康軍(角)が、まるで西軍に寝返るような形で家康の背後に迫る(将棋は取った駒を使えるのだ)。

そして石田三成が家康のクビに迫るがごとくの王手! さらに左には西軍の宇喜多秀家(飛)、さらには小早川秀秋(飛)まで虎視眈々と家康を狙っている。明らかに西軍の攻勢になってきた。

西軍、歴史を変える激勝

49手目を持って東軍の投了。家康のクビを取ったのはまさかの小早川
49手目を持って東軍の投了。家康のクビを取ったのはまさかの小早川
その後も西軍の攻勢は止まらない。家康軍(馬)、長宗我部(馬)、細川などの強い駒を活かして一気呵成である。

さらにはとうとう真打登場、小早川秀秋(龍)の出番だ。一気にタテヨコへ移動できる躍動っぷりを前に家康軍の苦し紛れの守り駒連打もむなしく、家康はついに49手目を持って投了した。

日本歴史上・最高の裏切り者と言われた小早川が従順に戦い、そして東軍にトドメをさし、家康のクビをとった……

小早川が裏切らなければ、日本の首都は大阪だったかも

将棋は一種の戦いシミュレータである。小早川秀秋さえ裏切らなかったら、こんな決着を迎え、幕府は大阪に開かれ、日本の首都は大阪だったのかも知れない(?)。
こちらが対局の早送りGIF画像。関が原の合戦を空から見たら、こんな風に見えるかも
こちらが対局の早送りGIF画像。関が原の合戦を空から見たら、こんな風に見えるかも

恐れ多くも「大山倍達伝説」を将棋にしてみる

極真空手の創始者・大山倍達。全盛期は途方もなく強かったと言われ、「武蔵野大決戦」なる戦いでは、なんと30人を相手に1人で勝ったという伝説がある。

しかも武道会が送り込んだその30人は、実戦派の沖縄空手の修練生十余人と、剣道のある一門の上位弟子八人、天覧試合で優勝した柔道家ら七人という猛者たちだったそうだ。
将棋会館近くの郵便局に貼られていた藤井四段ポスター
将棋会館近くの郵便局に貼られていた藤井四段ポスター

もはや涙しか出ない、絶望的な駒配置

しかしその伝説は、真偽が大いに疑われている。ならば、それを将棋で再現して判断するのが漢では無いか。ということで並べてみた。これだ。
未来が涙で見えない、絶望的な駒組み
未来が涙で見えない、絶望的な駒組み
どうみても大山倍達に勝ち目がない! なので、大山の強さを考慮し、先手の大山側の考慮時間を5秒、後手の刺客30人側の考慮時間を1秒に設定することで、少しでもゲームバランスを調整する。

そして……闘わせてみた。

大山倍達がかわいそうになる展開

しかしどう見ても攻め手を見いだせない大山倍達(玉)。それもそのはず、安易に突撃すればたちまち餌食となってしまう。様子を伺っているのか、奇妙な動きを繰り返す大山(玉)。
17手目。近づいては離れ…離れては近づき…挙動不審な大山倍達(玉)
17手目。近づいては離れ…離れては近づき…挙動不審な大山倍達(玉)
しかしその間に、大山倍達(玉)を狙う30人の刺客たちはジリッジリッと間合いを詰めていく。30人のあまりの圧力を前に、右往左往して困っているばかりの空手王。

大山、明日なき戦い

24手目。いきなり飛車が目の前に来て王手をされる悲劇
24手目。いきなり飛車が目の前に来て王手をされる悲劇
大山倍達(玉)がまるで攻撃への糸口が見いだせず謎のピストン運動を繰り返しているときも、30人の刺客の侵攻はとどまるところを知らない。24手目、ついに王手をくらう大山(玉)。

右側にはいつの間にか「角」がニラミを効かせているし、左側には歩が着々と「と金」になって強力化している。大山倍達、明日なき戦いである。

大山倍達(玉)、まったく何も出来ず降参

わずか32手目を持って大山(玉)の投了
わずか32手目を持って大山(玉)の投了
その後はもう大山倍達(玉)はズルズルと後退するばかりであった。敵に背中を見せてもはや逃げ惑うばかりの大山はついに逃げ場を失い、あえなく32手という秒殺劇にて屈した。

さすがに大山倍達(玉)も、30人の刺客を前にはまったくどうすることもできなかった……。終始おっかなびっくり、逃げ回る大山の姿に、「人は、数には勝てない」という哀しみを見た。

この将棋シミュレーション結果(?)を受けて、大山の「1対30」伝説は“ガセ”と勝手に判断したい。

しかし大山の名誉にかけて言うと、滅茶苦茶強かったのは本当らしい。その強さは、あのエリオ・グレイシーを破った木村政彦も「本当に強い」と認めているほど。

大山倍達先生、こんなことしてスイマセンでした……。土下座。
30人を前に、最後まで何も出来なかった空手王
30人を前に、最後まで何も出来なかった空手王

2018ワールドカップ 日本VSブラジルを将棋で再現

2018年最大のイベント、サッカー・ワールドカップ。我らが日本代表にとって最強の相手といえば、優勝候補筆頭のブラジルだろう。

名将チッチ監督により、堅い守備を構築して攻撃陣には自由を与えるサッカーで連戦連勝、ネイマールらの世界スターを武器に、最多6度目の優勝へ驀進するチームだ。

そんなブラジル代表とは、日本が奇跡的に勝ち上がっていった場合にベスト8で対戦する可能性がある。あまりにも高すぎるハードルだが、将棋で再現してシミュレーションしようじゃないか。
藤井四段がうどんを出前しまくることで知られる、「みろく庵」
藤井四段がうどんを出前しまくることで知られる、「みろく庵」
まずは両チームの選手たちを将棋の駒として並べてみよう。これだ。

日本が勝てる気がしない

並べた時点でどうにも絶望的
並べた時点でどうにも絶望的
日本は本田(金)、香川(銀)、岡崎(銀)らベテラン勢が全員レギュラーにカムバックしたと想定したスター勢揃いのメンツだが、世界のスーパースター軍団・ブラジル代表と比べればご覧の差だ。

ふつうDF陣はGKの前に置くべきだが、縦9マスしかない都合上、横に置いた。本物さながらに日本代表は4-2-3-1、ブラジル代表は4-1-2-3のフォーメーションを採用。

相当な駒のパワー差だが、アトランタ五輪の「マイアミの奇跡」の再現を期待しよう。日本代表の先手でキックオフ(対局開始)!

サイドバック(端っこの駒)がガンガン攻め上がる

9手目。超序盤から駒がビンビンに躍動する大味な展開に
9手目。超序盤から駒がビンビンに躍動する大味な展開に
はじまって早々にダニエル・アウベス(香)のオーバーラップ(後列の選手の攻め上がり)が炸裂し、日本のダイナモ・長友(香)が取られてしまう、前途多難の日本。

しかしこの後、日本は岡崎(銀)と原口(桂)のコンビプレーにより、コウチーニョ(角)を取るなど、日本側も試合の主導権を奪おうと必死だ。

そして試合(対局)は前半から大きく動く。

本田圭佑(金)、ブラジルに取られる

20手目で本田(金)がコウチーニョ(角)に取られる
20手目で本田(金)がコウチーニョ(角)に取られる
しかし、日本のエース本田圭佑(金)が、いつの間にかまたブラジル代表の手にわたったコウチーニョ(角)の鋭い突破の前に取られてしまう。

この後さらに、長谷部(金)らの中盤陣が根こそぎ取られてしまい、ゴールキーパー川島(玉)がまる裸になり、形勢が大きくブラジル代表に動く。

そしてどんどんガラ空きになる日本の陣内に、遠慮なくブラジルが攻め続ける地獄絵図に。

ネイマール(龍)が川島(玉)を追いかけ回す

34手目。とうとうネイマール(龍)が川島(玉)に牙をむく
34手目。とうとうネイマール(龍)が川島(玉)に牙をむく
そして、とうとう290億円男・ネイマール(龍)が動いた。もはやブラジルの軍門に下った本田(金)を従えて、逃げ惑うゴールキーパー川島(玉)をしつこく追い回す。

対してブラジル陣内は堅固なディフェンスが築かれており、もはや難攻不落だ。

ボロボロになった日本代表にトドメ

42手目、日本代表投了。コウチーニョ(角)がトドメ。
42手目、日本代表投了。コウチーニョ(角)がトドメ。
最後には本田(金)、香川(銀)、岡崎(銀)、長友(香)までもがブラジル代表に駒として使われ、日本代表不動のキャプテン・長谷部誠も持ち駒になってしまう有様に。もはやこれでは勝てるわけが無い。

最後はコウチーニョ(角)の一手で、ゴールキーパー川島(玉)が投了。日本のゴールに鮮やかなシュートが突き刺さった。

日本側のもともとの日本代表選手として生き残ったのは、川島(玉)、吉田(金)、昌子(銀)、酒井宏(香)のみである。しかも42手という早業。もはや清々しいほどのやられっぷりだった。

もしブラジル代表と対戦したとき、ハリルホジッチ監督はこの将棋を参考にして欲しい。きっと0.00000001ミクロンくらいは役に立つはずだ。
かわいそうなくらいブラジル代表に攻められる日本代表
かわいそうなくらいブラジル代表に攻められる日本代表

戦争の代わりに、こんな「将棋」をやろう

すべて“一応”の決着を見た
すべて“一応”の決着を見た
昔の王様の戦争を止めた「擬似戦争」である将棋。であれば、今の国家首脳たちの戦争も止められるのでは無いか。

「お互いの大統領と側近を駒に見立てた将棋」でバトルすることで、実際の戦争のガス抜きを100000000分の1ぐらいでもできたら、平和につながるだろう。

私には夢がある。あの米の国とあの北の国が、こんな将棋で楽しむときが来ることを。
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