特集 2018年2月25日
 

書き出し小説大賞第141回秀作発表

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書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)
雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。 著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。

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特報!! 第4回書き出し小説大賞授賞式がいよいよ今月末2月28日(水)に開催される。詳細はこちらをご覧いただきたい。イベントは約2年半ぶり、会場は渋谷と地方の方々には本当に申し訳ありませんが、参加可能の方はぜひお越し下さい。待っております!それでは今回もめくるめく書き出しの世界へご案内しましょう!

書き出し自由部門

通過駅の彼女を、今朝も一秒だけ見つめる。
大伴
この駅にバンドマンが降りた。
井沢
餃子ですら羽根がある・・・・・・彼女は油で汚れた蛍光灯を見上げた。
タクタクさん
涙を流す代わりに、君は小さなくしゃみをひとつした。
乾ききったフェルトペンの先を、カッターナイフで細かく刻んだ。
原少年の絶唱
夜9時、コーンフレークがボウルをジャラジャラと叩く。
helicoir
日本語に不馴れな店員が居眠りする中、イートインで死を賭けたゲームが始まった
正夢の3人目
凶弾に倒れてみて、はじめて冷蔵庫の下をまじまじと見た。
いつき
「さて、そろそろ産まれてやるか」ぼくは重い頭を下げた。
しずく
このビー玉の美しさは群を抜いており、玉ログでも4.1の高評価を得ている。
くのゐち
シュークリームの皮を破いて、中から一匹の沢蟹が出てきた。
prefab
悪の組織からも、なんか言ってやってくださいよ。
ウウタルレロ
カフェは古民家に戻った。
大伴
ばあちゃんのアルファベット表が出てきた。
xissa
寸評

大伴氏「通過駅の彼女〜」毎朝駅のホームで見掛ける設定はよくあるが、車窓から見掛ける彼女はさらに一瞬。そのぶん想いが凝縮される。井沢氏の「この駅にバンドマン〜」も駅モノ。こちらはミステリー調。バンドマンという幅をもった設定がさらに関心を誘う helicoir氏「夜9時〜」この時間に朝食をとる主人公、アウトローの気配。正夢の3人目氏「日本語に不馴れな〜」いつき氏「凶弾に倒れて〜」もハードボイルドな印象。イートイン、冷蔵庫の下とどちらも独特な場所を打ち出すことで雰囲気を出している。くのゐち氏「このビー玉〜」玉ログでぐんとこの作品の世界観が広がる。神は細部に宿るというように、書き出しにもどうディティールを盛り込むかが大切。

続いては規定部門。今回のテーマは『帯文』であった。既存の名作がさらに読みたくなるような帯の文句。ヒネリながらもストレート、笑える作品が集まりました。

規定部門・モチーフ『帯文』

この猫、名前募集中!『吾輩は猫である』
おーとん
空想は爆発だ。『檸檬』
ちやん
キングオブリア充。『リア王』
ろっさん
暇なう。『徒然草』
ジェングウ
ゼウス、無双。『ギリシア神話』
葱山紫蘇子
この言い訳がすごい!『ソクラテスの弁明』
suzukishika
今日から、虫。『変身』
xissa
未経験者歓迎!やりがいのある仕事です!『蟹工船』
ちやん
三分間だけ、お付き合い下さい。『ボッコちゃん』
パリジェンヌ
果たして食べることはできるのか!?『君の膵臓を食べたい』
もろみじょうゆ
先生を入れての数字なのか否か、刮目せよ! 『二十四の瞳』
むべんべ
この重さ! 全部載っていますね。『広辞苑』炎の文房具屋さん
元祖プラトニックの最高峰 『足長おじさん』
魚子
恋するキミにおまじない!『ドグラ・マグラ』
にら将軍ハルナ
不幸の宝石箱。『フランダースの犬』
住民パワー
それで? 『それから』
iahon
全員、犯人。『オリエント急行の殺人』
たこフェリー
桐島、出てこないってよ。『桐島、部活やめるってよ』
あひる
そろそろ読んでもいいかなとタイミングを推し量ってきたんだろう?『火花』
井沢
全裸待機せよ。『裸のランチ』
g-udon
あなたです『人間失格』
やべ
カンダタ! うしろ! うしろ!『蜘蛛の糸』
もんぜん
今年のハロウィンはスケキヨで決まり!『犬神家の一族』
ろっさん
そういうパンティ、いいよね。『限りなく透明に近いブルー』
カズマンヌ
寸評

さすがに普段書き出しで鍛えているだけあって、こういうネタものでも皆ハイレベル。誰もが知ってる名作では、世間がその作品にもっているぼんやりした印象をズバリ言い当てたものが面白い。ちやん氏の「空想は爆発だ」は『檸檬』のオチを知ってる人なら誰もが膝を打つだろう。ろっさん「キングオブリア充」ジェングウ氏「暇なう」は古典と現在を結ぶお手本のような帯文。葱山紫蘇子氏の「ゼウス、無双」suzukishika氏「この言い訳がすごい!」も最近よく見掛ける言葉をうまく連結させている。書店に並んでいても目を引くに違いない。もろみじょうゆ氏の『君の膵臓を食べたい』はたぶんそういう話じゃないだろうが、その無責任さが笑える。炎の文房具屋さんの『 広辞苑』は重さで来たか!という意外性。カズマンヌ氏の『限りなく透明に近いブルー』。いいと思います。

それでは次回のモチーフを発表する。
次回モチーフ
「方言」
次回は書き出しの中に方言、あるいは方言に関わるものを入れ込んで欲しい。関西弁、東北弁などなど地元の方言でもいいし、知人から聞いた方言でもいい。マニアックな方言でも文脈次第で面白く伝わるものがつくれそうだ。それに文中の方言ってなんだか可愛く思えませんか?締め切りは3月9日正午、発表は3月11日を予定している。下記の投稿フォームから部門を選んで送って欲しい。力作待ってます!
最終選考通過者
たちばな/morin/中山っぺ/ミミズグチュグチュ/伊勢崎おかめ/轍眼鏡/ゴロ/マークパン助/まじいい/もずく酢/ねもっ血風クン/
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