とくべつ企画「激辛」 2018年2月28日
 

なんでもタイ料理に変えてしまうやばい調味料「緑の鼠の糞」

これが「緑の鼠の糞」
これが「緑の鼠の糞」
タイの青唐辛子「プリッキーヌ」。

日本語に訳すと「緑の鼠の糞」となるこの強烈な辛さの食べ物、これと氷入りのビールさえあれば一瞬でタイに行けることがわかりました。

調味料としてどんな食材に合わせてもタイに行けちゃいます。
1975年愛知県生まれ。行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。

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緑の鼠の糞

角田光代さんの短編小説「ロック母」に収録されているタイトル「緑の鼠の糞」という話が好きだ。
ロック母。収録されている話ぜんぶおもしろい。
おもしろい短編を集めた「ロック母」
たまに話の中身はあまり覚えていないのに、ある場面だけ強烈に残っている小説ってないだろうか。僕にとってこの「緑の鼠の糞」という話に出てくる主人公がタイで青唐辛子を食べるシーンがそれである。
「緑の鼠の糞」いいタイトルである。
「緑の鼠の糞」いいタイトルである。
文中、主人公がタイの屋台で調味料として置かれている「プリッキーヌ」という唐辛子をかじりながら氷の入ったビールを飲むシーンが出てくる。タイ語「プリッキーヌ」は日本語に訳すと「緑の鼠の糞」。小さな緑の唐辛子のその形が鼠の糞に似ているからだ。小説でも「世界一辛い鼠の糞」として紹介されている。

砂糖入りのナンプラーに漬かったプリッキーヌをつまようじで口に放り込む。それをかみ砕くと頭は脈を打ち体は熱を帯び、タイの夜の蒸し暑さと自分とが同化していく。空気と自分とを隔てる皮膚という壁が極限まで薄くなっていくのを感じながら、氷の入ったビールを一気に流し込む。

こんな感じの、最高に美味そうな描写が頭にこびりついて離れない。主人公はそのあとたしか差し歯が取れる。

そういえば前にタイへ行った時の写真を見返していたところ、その「プリッキーヌ」と思われるものが写っているカットがあった。
ライター地主くんとタイの道端でご飯を食べている写真。このときテーブルに載っているもののひとつがおそらく小説に出てくる「プリッキーヌ」じゃないかと思う。
これ。
これ。
この時はまだこの「緑の鼠の糞」の小説を読む前だったので、特に気にすることもなく美味しくご飯を食べて帰った。もしかしたらプリッキーヌにも手を付けたのかもしれないけれど、正直覚えていない。

日本にいながらタイ気分

どうしてもこの小説に出てくる辛い唐辛子が食べたい。そしてタイの空気と一体化した体に氷入りのビールを流し込みたい。

本当はタイまで行きたいところだけれど、それは夏休みにでもとっておくとして、今回は近所にあるアジアの料理に詳しいお店「クーカイ」さんにお願いしてタイの唐辛子と一緒にビールを飲ませてもらうことにした。
アジア料理全般に詳しいお店「クーカイ」。
アジア料理全般に詳しいお店「クーカイ」。
このお店はひとつひとつの料理へのこだわりがすごい。タイ料理の専門店ではないのだけれど、トムヤムクンなんかを作るときのためにタイの唐辛子の酢漬けを自家製で作っているのだという。

ぜひそれを食べさせてください。
こちらがタイの唐辛子の酢漬けです!
こちらがタイの唐辛子の酢漬けです!
小説に出てきた緑の鼠の糞とはちょっと違うが、タイの唐辛子をタイの穀物酢で漬けたものなのだとか。そういえば小説中、プリッキーヌの他にもテーブルに常備されている調味料として「大きめの唐辛子を酢漬けにしたもの」が出てくる。それがたぶんこれだろう。

瓶を開けると一瞬で東南アジアの屋台のにおいが広がった。そうそう、この感じである。
普段は調味料として使っているのでこうやって食べる人はいないそうです。タイビールがなかったのでベトナムビールで。
普段は調味料として使っているのでこうやって食べる人はいないそうです。タイビールがなかったのでベトナムビールで。
うおー、辛そう。
うおー、辛そう。
ここはタイではないので日本の冬の格好をしていて恐縮ですが、タイの川べりの屋台にいることを想像しながら、いただきたいと思います。
いただきます!
いただきます!
酢漬けなので油断するとむせる。

息を吐きながら噛みしめる。すると、彼方からタイが駆け足でやってくる。
かーーーっ、、、ら
かーーーっ、、、ら
このタイミングでビールだビールだ。
ビー。
ビー。
……うまい。

唐辛子の酢漬けは噛んだ瞬間に頭のてっぺんあたりがぼわっと「開く」感じがした。それが徐々に全身に広がっていき、もうどうしても耐えきれなくなったところに氷入りのビールを流し込む。氷ですこし薄まったビールはなんの抵抗もなく体にすっとしみこんでいく。

このヒリヒリした感じ。傷口にビールがしみこんでいく感じは確かに僕の記憶の中の「緑の鼠の糞」のイメージを彷彿させる。
ビールに氷を入れるだけで暑い国のビールの味になるから不思議。
ビールに氷を入れるだけで暑い国のビールの味になるから不思議。
体にいい飲み方ではないような気がするけれど、これほど鮮烈にビールを感じられるやり方もないだろう。味覚というより痛覚で味わう感じ。おかげであまり酔いが回ることもなく、スポーツのように一瞬でビールを2本開けてしまった。

でもこうなってくるとやはり「緑の鼠の糞」も気になる。自作してみたいと思う。

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