特集 2018年3月27日
 

日本一高かった建物めぐり

歴代の日本一は今でも頑張っています!
歴代の日本一は今でも頑張っています!
人間は高い所にのぼりたがる生き物だ。日本でも競うように高い建物が建てられ、その度に日本一が更新されていく。建設当時は圧倒的な高さで注目を浴びていた建物も、やがては新たな建物に日本一の称号を明け渡さなければならない。

しかし日本一の座を奪われたからといってその建物は壊されるわけではなく、そこに存在し続ける。日本一の高さというバリューを失ったからといって逃げることも隠れることも出来ないのが建物の辛いところだ。そんな健気に存在し続ける建物にもう一度注目してあげたい。「あの人は今」ならぬ「あの建物は今」である。過去に日本一高かったことのある建物の生き様、いや「建ち様」を見て回ろう。
1992年東京生まれ。普段は商品についてくるオマケとかを考えている会社員。好きな食べ物はちくわです。最近子どもが生まれたので「人間ってすごい」と本気で感じています。

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現存しない高層建築黎明期

今回は近代建築の文化が広まった明治期以降の建築物を見ていきたい。建築物なので、電波塔や煙突といった構造物は含まない。構造物まで入れてしまうと東京タワーが54年間も日本一の座に君臨してしまい記事が成り立たないからだ。54年間トップって、アフリカの小国の政権か。

早速見て回りたいのだが、残念ながら明治期の高層建築物は現存していない。この時期には◯◯閣と名付けられた、展望を主な目的とした建物が相次いで作られており、まさに日本の高層建築の夜明けだと言えるだろう。

■眺望閣 1888年竣工 5階建て31m
通称「ミナミの5階」(Wikipediaより)
通称「ミナミの5階」(Wikipediaより)
■凌雲閣(大阪府) 1889年竣工 9階建て39m
東京に出来る1年前に大阪にも凌雲閣が作られた(Wikipediaより)
東京に出来る1年前に大阪にも凌雲閣が作られた(Wikipediaより)
■凌雲閣(東京都) 1890年竣工 12階建て52m
先日、遺構らしきものが出土して速攻で取材していた西村さんの記事より。凌雲閣が現存していたらこんな感じ。
先日、遺構らしきものが出土して速攻で取材していた西村さんの記事より。凌雲閣が現存していたらこんな感じ。
凌雲閣が関東大震災で半壊し解体されると、それまで国内二番目の高さだった■第一相互館 1921年竣工 7階建て45mが日本一の高さとなるが、こちらの建物も現在は相互館110タワーとして建て替えられており当時の姿はとどめていない。

あの建物もかつては日本一高かった

おいおい高層建築物現存しなさすぎだろ、と思い始めた頃かもしれないが、安心してほしい。この後に出てくる建物は全て現存している。そろそろ現存していてくれないと記事的にも困るのでありがたい。I LOVE現存だ。

凌雲閣の解体でなし崩し的に日本一の高さとなった第一相互館だが、高層志向が落ち着いたのかこれを上回る建築物はなかなか現れず、約12年間もトップの座を維持し続ける。そんな第一相互館を追い抜いたのは、今でも日本橋に店を構える三越本店である。

■三越本店 1935年竣工 7階建て60m
増築工事を経て日本一の高さとなったこの建物は重要文化財にも指定されている
増築工事を経て日本一の高さとなったこの建物は重要文化財にも指定されている
現在、三越本店の周辺には高層ビルが乱立し、この建物が日本一高い建物であった面影は残されていない。当時の日本一の高さを実感すべく屋上へ向かったが、改修工事中で入ることが出来なかった。ダメ元で探してみると3年前に屋上で写真を撮っていた。
しかしなぜか画角が正方形。別にインスタ映えはしない。
しかしなぜか画角が正方形。別にインスタ映えはしない。
今では見えるのはビルばかりだが、当時は皇居や富士山も見えたかもしれない。屋上には三囲神社があるが、かなり見晴らしの良い神社であったことだろう。改修工事後には屋上で当時の景色を楽しめるVR三越本店in1935をやったほうがいい。

建物の高さは埋もれてしまったが、それと反比例するように増していくのが重厚感だ。歴史の長さが建物に威厳を与えている。その証拠に三越本店は日本でも有数のお金持ちが集まるデパートである。売られているものも高級品ばかり。そう、三越本店の「高さ」は今でも健在なのだ。

うっかりうまいことを言っていたら長くなってしまったが、どんどんいきたい。1935年に日本一の高さとなった三越本店だが、翌年1936年には早くも王座から陥落してしまう。代わりに王座へついたのはなんと国会議事堂である。

■国会議事堂 1936年竣工 9階建て65m
逆光で撮ったら神殿感が半端ない
逆光で撮ったら神殿感が半端ない
横に長いせいか、国会議事堂に「高い建物」というイメージはなかったのだが、改めて正面から見てみると確かにけっこう高い。前を歩く人と比べると大きさがよく分かる。

また中央のピラミッド型の屋根の中には大広間があり、そこからさらに螺旋階段で東京中が一望できる展望室へ行くことができるという。展望室から景色を見る政治家はさながら城の天守閣から城下を眺める大名のような気分だったに違いない。いわば国の中枢とも言える建物として「日本一の高さ」は大切な要素だったのだろう。
周りの雑木林越しに写真を撮ったら完全に古代遺跡のような趣になった。
周りの雑木林越しに写真を撮ったら完全に古代遺跡のような趣になった。
日本一の高さではなくなった今でも景観についての規定が設けられており、背後に高層ビルや奇抜な色彩のビルを建てることが禁じられている。さすが国会議事堂、国を挙げて建物の高さが演出されている。建物自体の威圧感も相まって、「日本一高かった」という誇りを今でも感じられる建物であることは間違いない。

国会議事堂の首位は戦後もしばらくつづき、次に記録が更新されるのは東京オリンピック直前の1964年。大挙するであろう外国人対策として建てられたホテルによってであった。

■ホテルニューオータニ ザ・メイン 1964年竣工 17階建て72.1m
最上階の回転ラウンジが特徴的な建物
最上階の回転ラウンジが特徴的な建物
今では周りをもっと高いビルに囲まれているホテルニューオータニだが、そのニューオータニらしさは全く損なわれていない。今でもニューオータニのような建物は他になく、唯一無二の存在感を放っているのだ。さすが、いつまでもニューと名乗り続けるだけのことはある。

ここまでを振り返ると、現存する建物としては三越本店→国会議事堂→ホテルニューオータニと、いわゆるオフィスビルではない施設ばかりだ。使われ方自体に特徴があることで、日本一の看板を譲ったあともそれぞれが独自のポジションを確立し、どの建物も歴史の長さを武器に今でも威厳を保ち続けていた。

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