特集 2018年3月27日

楽器は弾けないけどバンドを組みたい

バンドを組みました。全員、楽器は弾けません。
バンドを組みました。全員、楽器は弾けません。
バンドはかっこいい。演奏している姿もかっこいいが、その生き様が特にかっこいい。若いバンドマンが売れるために夢へと努力していく姿に憧れる。

音楽は一切できないが、演奏しているような写真を撮ってバンドの雰囲気だけでも味わいたい。そこで知り合いたちとバンドを組んだ。全員、楽器はできないけど。
1988年神奈川県生まれ。普通の会社員です。運だけで何とか生きてきました。好きな言葉は「半熟卵はトッピングしますか?」です。もちろんトッピングします。(動画インタビュー)

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ファミレスでバンドの方向性を決める

演奏するだけでは、バンドの一体感が出ない。そこでバンドの方向性を決めようと思う。
ファミレスでメンバーたちと話し合うことにした。バンドを組んでいる人のイメージとして深夜のファミレスでドリンクバーを頼みながら色々なことを決めたり、談笑しながら朝を迎えるイメージがある。そのような青春を一切して来なかった。学生時代は10時には寝ていたから。
バンドメンバーは左からプープーテレビのヒロエさん、ライターのトルーさん、井口さん、筆者だ。
バンドメンバーは左からプープーテレビのヒロエさん、ライターのトルーさん、井口さん、筆者だ。
この中で音楽をきちんとやったことあるのはトルーさんだけだ。バイオリンをやっていたそうだ。ほぼ未経験のバンドが西新宿のバーミヤンから生まれる瞬間である。
誰一人、ドリンクバーを頼むことなく豪華なテーブルになった。家族の夕食くらい頼んだ。
誰一人、ドリンクバーを頼むことなく豪華なテーブルになった。家族の夕食くらい頼んだ。
餃子や梅レタスチャーハンなどを食べながらバンドの方向性を決める。もし、決まらなかったら「今、熱いファミレスはバーミヤンだ!」の記事になる可能性があるので真剣に考えていきたい。

まずはバンド名だ。バンドの顔となる大事な部分である。
15個くらい出た。
15個くらい出た。
最近のバンド名を調べながら考えていたが、「ヤバイTシャツ屋さん」「水曜日のカンパネラ」など文章のようなバンド名が多い。地名を混ぜたり、~ズとしたいと盛り上がったのだが、その中で出た「下等生物」という案。急に怖いやつが来た。

井口さんが出した案なのだが「6年前くらいに自分で組むならこういうバンド名をつけたいとツイッターで書き込んでいたときがあって、思い出したら「下等生物」でした。組んで解散してみたかった」
怖くて詳細を聞けなかった。
怖くて詳細を聞けなかった。
その後も色々と出たがそろそろ決めたい。どれがいいか投票をしてもらい決まったバンド名が「土曜日のバーミヤン」だ。家族連れでにぎわいそうなグループ名になった。
ほぼパクリだ。
ほぼパクリだ。
由来は土曜日のバーミヤンで決めたからというシンプルな理由である。高校生が文化祭でバンドをやるときに決めたバンド名っぽいと思ったが、民主主義で決まったのでこれです。
それぞれの名字を一文字ずつ取って「広北江ノ井(ひろきたえのい)」もよかった。
それぞれの名字を一文字ずつ取って「広北江ノ井(ひろきたえのい)」もよかった。

結成のきっかけとキャッチコピーを決める

よく音楽番組などで「結成のきっかけは?」と聞かれることがある。「バンド募集のお知らせを見て」「学生の頃から縁で」など色々とあるが、せっかくなら素敵に答えたい。

話し合いで出た結成のきっかけは下記の通りだ。

・たまたま行ったオーディションで1人で参加するつもりがグループでしか参加できないと当日知り、急遽、声をかけて組んだのがきっかけ。

・ライブハウスでたまたま知り合って、

・元々バイトが一緒で仲がよく、久しぶりに会ったときに一緒にやってみることになった。
「テレアポのバイトは、服装や髪型が自由なところが多いので、芸人やミュージシャンが多い」とテレアポ経験者のヒロエさんの豆知識が出た。白飯を食べているときに。
「テレアポのバイトは、服装や髪型が自由なところが多いので、芸人やミュージシャンが多い」とテレアポ経験者のヒロエさんの豆知識が出た。白飯を食べているときに。
色々と出たが結成のきっかけは次に決まった。
最初、このメンバーにもう1人の4人グループやっていたが、その1人が実家の仏壇屋を継ぐことになり、1人抜けてしまった。
最初、このメンバーにもう1人の4人グループやっていたが、その1人が実家の仏壇屋を継ぐことになり、1人抜けてしまった。
途方に暮れているところで、よく行くバーのマスターが「1人知っているよ」と紹介されたのがこの男である。
途方に暮れているところで、よく行くバーのマスターが「1人知っているよ」と紹介されたのがこの男である。
メンバーたちと食べた梅レタスチャーハンの味は忘れられない。
メンバーたちと食べた梅レタスチャーハンの味は忘れられない。
バーのマスターに紹介されての部分がかっこいいポイントだ。

キャッチコピーも作った。「西新宿系バンド」である。

「高層のオフィスビルが建ち並ぶ西新宿。そこで個人が埋もれることなく、存在していることを社会に向けて叫び続ける、生きる全ての人たちを応援するような曲を世に出し続けるバンド」という意味だ。コンビニの店内放送で流れるバンド紹介をイメージした。
夢は武道館でライブ。
夢は武道館でライブ。
最後にリーダーは企画の発案者である私こと江ノ島に決まったところで、バンドの方向性が完成した。ここからが本番である。
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初めての音楽スタジオ

バンド未経験の我々だがそれっぽい写真を撮りたい。そこで音楽スタジオを借りた。
楽器だ!
楽器だ!
スタジオに入ると当たり前だが楽器がある。そして、演奏している姿を確認するためか、鏡張りになっている。こいつは初めて演奏するのにぴったりなおしゃれさだぜ。

さて担当楽器だが楽器を借りるのに予約が必要だったので、先に聞いておいた。
まず、ベース担当のトルーさん。うちのバンドのベースは肩掛けひもの短さに定評がある。
まず、ベース担当のトルーさん。うちのバンドのベースは肩掛けひもの短さに定評がある。
ドラム担当のヒロエさん。うちのドラムは行儀がいいのでひざに手を乗せてちょこんと座る。
ドラム担当のヒロエさん。うちのドラムは行儀がいいのでひざに手を乗せてちょこんと座る。
DJ担当、井口さん。ボタンやスイッチやら何が何だがわからない。
DJ担当、井口さん。ボタンやスイッチやら何が何だがわからない。
三味線担当江ノ島。この撮影が終わる最後までズボンのチャックが空いていた。ヒロエさんは(ずっと空いてるな)と思ったそうだ。言ってほしい。
三味線担当江ノ島。この撮影が終わる最後までズボンのチャックが空いていた。ヒロエさんは(ずっと空いてるな)と思ったそうだ。言ってほしい。
ちなみに三味線だけ自分の私物である。どうしてもやりたくて買ったがこの日初めて触った。
そんなベース、三味線、ドラム、DJの変則的バンド、土曜日のバーミヤンです。
そんなベース、三味線、ドラム、DJの変則的バンド、土曜日のバーミヤンです。
全員初めて触るので演奏の仕方がわからないが、新しい音楽が生まれそうな雰囲気がある。ここから試行錯誤を行って、まるでライブをしているような写真たちを撮ることができたので見てほしい。

俺たちのライブが今、始まる

DJがレコードをセットし、準備はOK。伝説の幕開けである。
緊張が張り詰める空間に機械音だけが聞こえる。
緊張が張り詰める空間に機械音だけが聞こえる。
レコードがゆっくりと回り出した。DJのアイコンタクトを受けて、ドラムが声を上げる。「ワンツースリーフォー!」と言いながらスティック同士で軽やかなスタートのリズムを刻む。演奏が始まった。
力強い迫力のあるビートを刻むドラム、
力強い迫力のあるビートを刻むドラム、
しびれるベースラインがバンドの音楽を盛り上げ、
しびれるベースラインがバンドの音楽を盛り上げ、
三味線の心に響くサウンド、ボーカルの歌声に会場から歓声が止まらない。
三味線の心に響くサウンド、ボーカルの歌声に会場から歓声が止まらない。
サビが近づくにつれ、熱気と盛り上がりは最高潮に。
サビが近づくにつれ、熱気と盛り上がりは最高潮に。
この曲も終わりに近づいてきた。
この曲も終わりに近づいてきた。
ドラムの合図とともにメンバーたちと観客たちがジャンプ、
ドラムの合図とともにメンバーたちと観客たちがジャンプ、
ジャーン。どうもありがとう!
ジャーン。どうもありがとう!
応援よろしくお願いします。(ノーミュージック、ノーライフ的なアーティスト写真も撮った。)
応援よろしくお願いします。(ノーミュージック、ノーライフ的なアーティスト写真も撮った。)
背中を合わせての演奏は実際にやってみると(これはどこに盛り上がる要素があるのか。お客さんは求めているのか?)と不安になることがわかった。
背中を合わせての演奏は実際にやってみると(これはどこに盛り上がる要素があるのか。お客さんは求めているのか?)と不安になることがわかった。
バンドを演奏しているような写真が撮れたので満足しているがせっかくスタジオを借りたのだ。一度くらい演奏して帰りたい。
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YouTubeで学ぶエイトビート

弾けないながらも演奏するために努力したそれぞれの様子を見ていきたい。まずはドラムのヒロエさん。ドラムはもちろん触ったことはなく、どんなリズムで叩けばいいのかわからないようだ。最初、適当に叩いていたが静かになったと思い、ドラムの方を見ると、
熱心にスマホを見ているので近づく、
熱心にスマホを見ているので近づく、
エイトビートをYouTubeで学んでいた。
エイトビートをYouTubeで学んでいた。
エイトビートというドラムの基本のリズムがあるらしく、それをYouTubeでその動画を見ながら練習していた。うちのメンバーのドラムは真面目だ。道草とかしないでまっすぐ帰るタイプのドラム。
余談だが、三味線を持ってもらったところ演奏歴15年くらいのベテラン感が出た。
余談だが、三味線を持ってもらったところ演奏歴15年くらいのベテラン感が出た。

DJ、鈴になる

井口さんはDJ担当である。今回、DJセットを借りるときにスタジオの人から「ターンテーブルですか? CDJですか?」と聞かれたが、2つの選択肢で2つとも知らない言葉だ。

「ターンテーブルって、ビートマニア(ゲームセンターに置いてあるDJのように音楽を演奏する体験型ゲーム)みたいなやつですか?」と言いかけたが、そんな初心者丸出しの質問など恥ずかしくて言えず、「詳しい人に確認してみます」と言ったが詳しい人は誰もいない。全員未経験だから。
とりあえずターンテーブルにしようということになった。
とりあえずターンテーブルにしようということになった。
こういうときは気持ちで負けてはいけない。初心者だと悟られないように「俺、知ってますよ」と言う雰囲気を出しながら「ターンテーブルをお願いします」と受付に伝え、セッティングしてもらう。

さあ使おう、となったが意味のわからないボタンがたくさんある。早くも挫折した。気持ちでどうにもできない部分だ。
電源の入れ方すらわからず、ただ眺める時間があった。
電源の入れ方すらわからず、ただ眺める時間があった。
色々と操作した結果、井口さんが電源の入れ方を発見し、なんとかレコード部分が回りだした。
小さな歓声がわいた。
小さな歓声がわいた。
回ったのはいいが、ターンテーブルはレコードがないと音楽を流すことができないというのをこのとき初めて知った。実際に体験しないとわからないことはまだまだ世の中にはたくさんあるなーと思いながら回り続けるターンテーブル。このままだと井口さんが手拍子での参加になってしまう。そんなバンドいるのか。
結果、井口さんが持参してきた神社の鈴で演奏することに。異色さが増した。
結果、井口さんが持参してきた神社の鈴で演奏することに。異色さが増した。

天才ベーシスト現る

多くのメンバーが苦戦をする中、バイオリン経験者のトルーさんは少し触っただけで簡単な曲を弾いていた。
最初はアンプのコードをどこに差すかのすらわかなかったのに、演奏する姿が様になっている。
最初はアンプのコードをどこに差すかのすらわかなかったのに、演奏する姿が様になっている。
ベースでチャルメラ。あまりのロックさに思わず「ロッケンロール!」と言いそうになったが耐えた。
ベースとギターの違いが全然わからない話をしている中で弾いた笑点のテーマ
これが音楽経験者と未経験の違いか。
これが音楽経験者と未経験の違いか。
この後も三味線で笑点のテーマを引いたり、ベースで曲を弾いたりと演奏技術が抜きん出ていた。天才を誘ってよかった。メジャーデビューも時間の問題である。
こう見えて三味線だけでなく、鈴も入ってきて和の要素が想定外の50%まで増加したので動揺してます。
こう見えて三味線だけでなく、鈴も入ってきて和の要素が想定外の50%まで増加したので動揺してます。
色々とあったが担当の楽器が決まり演奏した動画がこちらだ。
インストバンドです。
探りつつの演奏だったが、気持ちはきっと表現できたと思う。これが伝説の1ページとなることを我々はまだ知らない。(続かない。)

音楽スタジオは楽しい

初めて音楽スタジオを借りたが、廊下を歩いていると他のスタジオから歌が漏れて聞こえてくる。ここで新しい音楽たちが生まれていると思うと感慨深い。あと、思いっきり楽器を弾けるのが楽しい。今度、三味線が弾けるようになったらまた来たい。
武道館で撮影したら背景と合わさって、卒業式で目立とうとする大学生になった。
武道館で撮影したら背景と合わさって、卒業式で目立とうとする大学生になった。
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