
建築家はどうやって選んでいる?
カタログを見ていて思ったことがある。これ、建物を設計する人はどうやって木の種類を選んでいるんだろう?
本当の木を使うなら、選ぶポイントはいくつもあることが想像できる。見た目のほか、コスト、重さ、加工のしやすさ、香りなどなどいっぱいあるだろう。一方、印刷の場合は見た目が10割で選ぶことになりはしないか。
どうやって選ぶのか
そこで、建築家の知り合いに聞いてみました。
まずは、本当の木を使うときの選び方から。図鑑だけでも185種類もあるなかから、どうやって選ぶのか。
「まずはどういう雰囲気を出したいかですね。たとえば和風にしたいのか洋風にしたいのか」
なるほど、まずは雰囲気が大事。
「和風にしても、数寄屋風にヒノキとかで白っぽい生成りにしたいとか、同じヒノキでも古民家風ならいぶされた黒いのを使うかとか」
ヒノキ
「洋風にしても、北欧風に白木のさわやかなモダンな感じにするか、昔の社長室みたいに赤黒い重い木を使って高級感を出すか」
「あとは世界観ですね。たとえば寿司屋なら和風の木、洋食なら洋風を、とか」
出したい雰囲気に合わせて、木の種類を選ぶと。では、印刷されたフィルムの場合はどうなんでしょう?
「フィルムを使うのは、簡単にいうとお金がないときですね。本当の木は輸出制限があって高かったりします」
なるほど、やっぱり費用が大きいんですね。だとすると、お金さえあればできればいつでも本当の木を使いたいんだろうか?
「そうとも言えません。たとえば飲食店で使うテーブルの天板の場合、本物の木だと汚れを拭き取るのが大変だったりします。そういう用途にはデコラとかアイカっていう定番がありますね」
デコラは住友ベークライトの商品名、アイカは建材メーカーの名前だそうだ。
ぼくの職場のテーブルも木目の印刷だ。その証拠にテカってるし、道管の模様はあるのに凹凸が全くない。たぶんウォルナットかな?
「あとは、内装制限というものがあって、例えば大きな建物の通路では燃えにくい素材を使わなければいけないといったルールがあるんです。そういう場合、木は使いにくい」
火事への対策があるから、木は使いにくいと。ただ、本当の木を燃えにくくするような処理をして使うというのを聞いたことがある。ケースとしては少ないんだろうか。
「確かに、世の中的には木材を使いましょうという機運はあります。そういう法律もあります」
公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律というものがあって、国や自治体が作るような建築では基本的に木を使おう、というルールがあるそうだ。
「ただし、難燃化処理にもコストがかかるし、緑色がかってしまうことがあるという難点があります。それに商業施設は燃えにくいようにより厳しいルールになっているので、なかなか木でということは少ないんです」
まとめるとこうだろうか。まずは、雰囲気を重視して木材の種類を選ぶ。次に、コストや状況に応じて本物なのか印刷なのかを選ぶ、と。
カタログギフトみたいに何がいいか選ぶ感じを想像していたんだけど、そうじゃなくて、目的の樹種が先にあって、それをカタログから選ぶっていうことなんですね。当たり前か。
たとえば、マクドナルドのこの木の部分は、ハンバーガーなんだから洋風の木ということになるだろうか。
拡大したところ。何の木だろう・・。ぼくにはまだ分かりません。
「それからこれは余談なんですが、本来は上等な木材がフィルムになっていたのに、安い木材がフィルムで使われるケースがあって、面白いですね」
「たとえば、ぼろぼろになった古材風の壁紙とか、コンクリート打ちっぱなし風の壁紙なんかもあります」
打ちっぱなし風のフィルムについては聞いたことがある。ゲンロンカフェというところで、当サイトライターの
大山さん含む4人で行われたトークショーで、三井祐介さんという建築家の人が紹介していた。
木のふりをした印刷がとても多い、それにはダイノックフィルムというものが使われている、ということ自体もそこで初めて聞いた。そのときの衝撃は大きかった。いつかダイノックフィルムの樹種を見分けられるようになりたいと思ったのだ。
木の見わけ方が少し分かった、かも?
印刷の木にかぎらず、何かに似せたものを使う、というパターンは多い。その理由はさまざまで、とても面白いと思う。
これを調べはじめてから、オフィスの机を見ても「道管があるから広葉樹だな」とか「たぶんウォールナットだな」と思えるようになってきた。
いまのところ自己流なのでなんとも怪しいけど、新木場に「
木材・合板博物館」というのがあるそうなので、とりあえずここに行きたい。