特集 2018年5月9日
 

辞書にのっている七福神の挿し絵を見比べる

ただただ七福神を愛でます
ただただ七福神を愛でます
みなさまは、国語辞典の5冊や10冊は持っていらっしゃるのが普通だと思うが、挿し絵を見比べるということをしたことがあるだろうか。

よく見比べると、これがなかなかおもしろい。
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。

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(だいたい)どの辞書にものってる「七福神」

国語辞典は、その書物としての性格上、わりと正確な情報をのせなければ、粘着質な読者から怒られることが多い。
もちろんそれは挿し絵にかんしても同じことがいえるのだが、その挿し絵に注目して複数の辞書を見比べると、国語辞典の緊張の糸がゆるんだスキの部分が、ちょっとだけ見え隠れすることがある。

いま、みなさまのお手もとにある国語辞典の「しまだ」のページを開いていただきたい。「しまだまげ」の項目の近くに日本髪と盆栽っぽいもののイラストがのってないだろうか?

『三省堂国語辞典』(三省堂)
『三省堂国語辞典』(三省堂)
『新選国語辞典』(小学館)
『新選国語辞典』(小学館)
『旺文社国語辞典』(旺文社)
『旺文社国語辞典』(旺文社)
ぼくの手近にあった小型辞書をいくつかしらべてみたところ上の三種類の辞書にイラストがのっていた。出版社も著者も全く違う国語辞典なのに、なぜか「しまだまげ」と「しまだい」の似たようなイラストが収録されている。
『三省堂国語辞典』と『旺文社国語辞典』の島台が、鶴や人(尉・じょう、姥・うば、というらしい)などの配置や松の枝ぶりがそっくりであるものの、微妙に違っているところなどはじつに味わいぶかい。ぼくの個人的な好みで言うと『新選国語辞典』が、箱庭っぽくて好きだが。
島田髷は、『旺文社国語辞典』は、色が真っ黒に潰れてしまい、どのように結っているのかがわかりにくいが、その点『三省堂国語辞典』は髪の毛が線で表現してあるので、どのように結われているのかがわかりやすい。
『新選国語辞典』のコインランドリーで洗濯物が乾くのをまってるときのような虚無の表情もなかなかよい。

このように、国語辞典の挿し絵を見比べていると、わりとどの辞書にもよくのってる挿し絵というのが存在する。

そのひとつが「七福神」だ。

挿し絵の載っている辞書で「しちふくじん」を引いてみて欲しい、たぶん七福神の挿し絵が載っているはずだ。
『学習国語百科事典』(三省堂)
『学習国語百科事典』(三省堂)
「しちふくじん」の部分にのってない場合は「たからぶね」の項目に、船に乗った状態の七福神が掲載されていることもおおい。

とはいえ、必ずのっているというわけでもない。だいたい、挿し絵入りの国語辞典の8割ぐらいにはのっている印象がある。

ただただ七福神の挿し絵をみていきたい

というわけで、家にあった国語辞書の七福神を、ひたすらみていきたいとおもう。これ以降ははっきり言ってアカデミックな情報は一切ない。ただただ七福神の挿し絵があるだけなので覚悟してよんでほしい。

まずは『日本大辭林』明治27年の辞書だ。
『日本大辭林』江戸時代、正月になると、この宝船が描かれた紙を買ってきて、マクラの下に入れて初夢をみるという風習があったらしい
『日本大辭林』江戸時代、正月になると、この宝船が描かれた紙を買ってきて、マクラの下に入れて初夢をみるという風習があったらしい
たからぶねに乗る七福神。よさ、である。
七福神をさがせ
七福神をさがせ
神なのか、模様なのか判別しづらいぶぶんがあり、うっかり6人しかいないようにみえる。
『ことばの泉』
『ことばの泉』
『ことばの泉』の七福神。宝船にのっていないタイプの集合写真である。

寿老神が見えない。光学迷彩だろうか。目を凝らすと真ん中あたりに、一人だけ横を向いて座っている。集合写真のとき、かならず目をつむってしまうタイプだろうか。寿老神。

縦並びの七福神である。
『廣辭苑』
『廣辭苑』
並び方にMYOJO感がでてきた。
『MYOJO』
『MYOJO』
違和感ないな
違和感ないな
ここで、みなさんにうれしいお知らせ。
蛭子さん
蛭子さん
えべっさんの本名は、蛭子三郎らしい。

よく、雑学本なんかでは、「七福神の中では唯一の日本の神様」といわれているが、本名まではしらなかった。
『集英社国語辞典』(集英社)
『集英社国語辞典』(集英社)
バンドっぽさ。
もうちょっと手をあげたり曲げたりしてればビートルズのHELPなのにと、ぶつけどころのないもどかしさを感じる。
『辭苑』(博文館)
『辭苑』(博文館)
楽しそうだ。

枠が四角いので、いまどきの写真ぽさがでている。
インスタ映えする七福神
インスタ映えする七福神
インスタだと、#最強のメンツ #最高の仲間 みたいなタグでアップされるやつだ。

どうでもいいけれど、寿老神が飲みすぎてる気がするので、なんとかしてあげてほしい。
具合が悪そうな寿老神
具合が悪そうな寿老神
言泉』(小学館)
言泉』(小学館)
小学館の『言泉』という辞書にのっている七福神。

え、吉祥天? となるが、どうやら、弁財天と吉祥天を入れるパターンもあるらしい。戦隊モノで、ピンクとイエローで女子二人体制になったときみたいなものだろう。

だが、よくみるともっとへんなところを発見。
え、違うくない?
え、違うくない?
頭が長い神様は、福禄寿だった気がするが……。
ややこしいな!
ややこしいな!
福禄寿と寿老神が同じなので、頭が長いのを寿老神にして、帽子みたいなのをかぶってる影の薄い福禄寿をリストラして吉祥天を入れてるらしい。
みんなぼんやりと思っていたかもしれないけれど、福禄寿はいまひとつピンとこないという事実が白日のもとに晒されてしまった。
『小学国語辞典』(青葉出版)
『小学国語辞典』(青葉出版)
宝船が小さい。大丈夫だろうか。
『学習国語辞典』(くもん出版)
『学習国語辞典』(くもん出版)
七福神の並びをよく見てほしい、今まで、雑誌の表紙とかCDのジャケみたいに、全員が「七福神です!」という体でうつっていたのが、なんかあって「集まってきた」みたいなかたちになっている。
しんみりしている
しんみりしている
蛭子三郎以外は、みんな困った顔である。毘沙門天にいたっては、自転車のオイル買ってきました、みたいにつったっている。どうしてこんなに不安なイラストなんだ。

ところで、ずっと気になっていたこれ。
エラそう
エラそう
布袋の袋。なにかに似ていると思ってたけれど、これだ。
無印良品の体にフィットするソファだ
無印良品の体にフィットするソファだ
ちなみに、布袋の袋は、貰ったお布施が入っているという説がある。これは、七福神の中で唯一、実在した人物が布袋で、布袋は禅僧だったからだ。

もう一人、大黒天の袋の中身は、かなりいろんな説がある。
七宝が入っている説、ネズミが入ってる説、子宮のメタファーだ説など、いろいろある。子宮のメタファーだ説に至っては中身の話ではなくなってる。

みんなが大好きなウィキペディアによると、大黒天は、ヒンズー教のマハーカーラという神様で、マハーは「大いなる」、カーラは「黒、暗闇、時間」という意味らしい。そこから、大黒と訳されたようだが、せっかく訳すなら「大いなる漆黒の時間」の方がよかった。

恵比寿、寿老神、福禄寿、毘沙門天、布袋、弁財天、大いなる漆黒の時間。

もし、大黒天が「大いなる漆黒の時間」だったら、袋の中身はブラックホールに違いない。

ダイバーシティ・七福神

七福神の神様の出身地は、インド、中国、日本と、実にグローバルである。

出自は問わず、さまざまな人種や性格の神様がひとつの船にのっているというのは、まさにダイバーシティの象徴といえる

そんな多様性の塊である七福神であるから、国語辞典での描かれ方も多種多様で、みていて飽きないのだ。

なんだか、うまくまとまった感じがするのでこの辺で終わりにしたい。

それではみなさん、さようなら。
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