とくべつ企画「〇〇放題」 2018年6月3日
 

わざとラフな地図を描いてもらって道迷い放題

こういう地図で目的地を目指すと、1時間半、道に迷えます。
こういう地図で目的地を目指すと、1時間半、道に迷えます。
もし時間に余裕があって、人との待ち合わせとかでなければ、「道に迷う」って結構楽しい娯楽になるのではないか。

わざと神社へのラフな地図を描いてもらって「道迷い放題」をやってみた。

※この記事はとくべつ企画「〇〇放題」のうちの1本です。
1987年東京出身。会社員。ハンバーグやカレーやチキンライスなどが好物なので、舌が子供すぎやしないかと心配になるときがある。だがコーヒーはブラックでも飲める。

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道に迷うの、嫌いじゃない

道に迷うことがそれほど嫌いではない。知らない土地で自分が今どこにいるのか分からなくなった時の、あの妙な浮遊感である。

これで人を待たせていたりすると焦ってすごく早歩きになってしまったりする。焦るのは良くない。

しかし時間に余裕があったり、人との待ち合わせでなかったりすると妙に気持ちが大きくなるのだ。勘や推測だけで道をずんずん進んでいくのが気持ちいい。標識などを手がかりに目的地を探すというゲーム性もある。もちろん無事到着した時はとても嬉しい。
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ということで、道に迷うことのメリットだけをうまく享受できる「道迷い放題」をやってみることにした。

ラフな地図を描いてもらおう

思う存分に道に迷うには、まず人に迷惑をかけないことである。待ち合わせなどはしない方がいいだろう。しかし知らない街をただうろうろするのではなく、何か目的地があった方がいい。目的地がなくてはただの散歩である。色々考えた末、このような条件でやってみることにした。
神社を探して道に迷うというのが初夏らしくていいと思ったので、目的地は神社。
神社を探して道に迷うというのが初夏らしくていいと思ったので、目的地は神社。
神社に詳しいライターの井口エリさんに目的地を設定してもらった。
神社に詳しいライターの井口エリさんに目的地を設定してもらった。
井口さんに連絡を取り、娯楽として道に迷いたいのでちょうどいい神社と、そこまでのラフな地図を描いて欲しいとお願いする。後日送ってもらった地図がこちらである。
なんて趣旨を理解した地図なんだ…!
なんて趣旨を理解した地図なんだ…!
「別の駅からも行けるので念のため描いておきますね」ということでもらった2枚目の地図。親切だ。迷いそうな地図をもう1枚追加するという親切。
「別の駅からも行けるので念のため描いておきますね」ということでもらった2枚目の地図。親切だ。迷いそうな地図をもう1枚追加するという親切。
クオリティから紙質まで、子供が描いた宝の地図みたいだ。そう、こういうのが欲しかったのだ。目的地は上神明天祖神社(かみしんめいてんそじんじゃ)というところ。駅から遠かったのと、参拝して楽しかった記憶があるということでお勧めしてくれた。しかしこの地図である。こんなの絶対道に迷う。ぞくぞくしてきた。

1時間半迷った

結論から言うと、持てる情報をすべて使ってたっぷり1時間半道に迷うことになった。歩いた経路がこちらである。
迷っている。これぞ迷い放題である。
迷っている。これぞ迷い放題である。迷っている。これぞ迷い放題である。
「この経路を歩いている人はどんな状況でしょうか」と100人に聞いたら100人が「道に迷っている」と答えるだろう。歩いた経路の鑑定士がいたら虫眼鏡を覗きながら「迷ってますねー」と唸るところである。

この味わい深い経路であるが、動き方にすべて理由がある。ただふらふらしているわけではないのだ。ここからその理由をひとつずつ振り返っていきたい。道迷い放題のハイライトである。

ハイライト(1) 木が茂っていると神社がありそうな気がする

井口さんの地図によると、「中延駅入口」という交差点が最初のランドマークのようだ。
地図中央にある「中延駅入口」交差点
地図中央にある「中延駅入口」交差点
これはわりとすぐに見つかった。
これはわりとすぐに見つかった。
地図の「でかいどうろ」はこれだ。
地図の「でかいどうろ」はこれだ。
駅を出て何となくあたりを見渡したらあった。幸先がいい。
そしてこの路地に入っていけばいいのだ。この写真は街頭がやけに奥まった場所に隠れているなと思って撮った。
そしてこの路地に入っていけばいいのだ。この写真は街頭がやけに奥まった場所に隠れているなと思って撮った。
見たことない飲み物があったので買った。Cの嵐!
見たことない飲み物があったので買った。Cの嵐!
地図によると、2つ十字路を通りすぎて右に入るらしい。でもこういう路地って歩いてみると横道がいっぱいあって、どれが地図にある道なのか分からない。
どこかで右、ということだけは分かる。
どこかで右、ということだけは分かる。
右手に小学校があるはずなんだよなとふらふら歩いてると、木が茂っている一角が見えた。
茂っている。
茂っている。
あれ神社なんじゃないか。小学校は通り過ぎてしまったが目的地の神社の、敷地の一角が見えてるんじゃないか。
近づいたら民家だった。
近づいたら民家だった。
もう全然民家のお庭だった。
木が茂っている場所を見に行って戻ってきた。ハイライト(1)である。
木が茂っている場所を見に行って戻ってきた。ハイライト(1)である。
一度当てが外れると自分がどこにいるのか分からなくなる。次にどっちに進めばいいのだろう。ここで足もとがふわっとした。そう、この感覚である。
道に迷いました!
道に迷いました!

ハイライト(2) 神社に通じる商店街

もと来た道を戻るか進むか考えて、進んでみることにした。

知らない土地で「この道まっすぐ行けば着くから」と言われたけど、進めども進めども着かなくて不安になった経験はないだろうか。

知らない土地では不安な気持ちから、距離の感覚がかさ増しされてしまうのだ。だからもう少し進んでも大丈夫なはず。
進んでみよう。
進んでみよう。
しかし、そろそろ右手に何か現れてもいいんじゃないか、と思う気持ちに抗えずに右に曲がってしまう。でも何もなくて次の角も適当に曲がる、ということをやっているといよいよ自分がどこにいるのか分からなくなってきた。
初めて見るタイプの「ご自由にお取り下さい」
初めて見るタイプの「ご自由にお取り下さい」
空だった。人気である。
空だった。人気である。
あとこれは、飲食店の脇にあった装飾。
あとこれは、飲食店の脇にあった装飾。
瓦の中にドクロがいた。妙な小ささだった。
瓦の中にドクロがいた。妙な小ささだった。
このように、だいぶ気が散ってきたその時、
ふと目に入った商店街の街灯の装飾。巫女さんだった。
ふと目に入った商店街の街灯の装飾。巫女さんだった。
巫女さんである。巫女さんといえば神社だ。もうこれはもらったなと思った。この巫女さんをたどっていけば神社に着くのだ。
奥まで続いている。この先に神社があるのだ。
奥まで続いている。この先に神社があるのだ。
うつぶせのもあった。こういうお祭りがあるんだろうか。
うつぶせのもあった。こういうお祭りがあるんだろうか。
巫女さんの街頭は左右の通りどちらにも続いていたが、ここはもう勘で左へ行ってみる。
しばらくすると、巫女さんがどんぐりに変わった。どんぐり?
しばらくすると、巫女さんがどんぐりに変わった。どんぐり?
なんだそれは。なんだどんぐりって。
そして聞きなれない駅の名前。
そして聞きなれない駅の名前。
いけないいけないと思って引き返し、通りの反対側を進んだが、すぐに巫女さんは途切れてしまった。
これがハイライト(2) あの商店街はなんだったのか。
これがハイライト(2) あの商店街はなんだったのか。

ハイライト(3) コンビ二があったので近づく

また手がかりがなくなるとここで一旦気持ちがパーッとなってしまって、セブンイレブンを見つけたので駆け寄って入った。
アメリカンドッグ買った。
アメリカンドッグ買った。
道に迷って遅れてきた人間がアメリカンドッグをかじっていたら、しばらく口をきいてもらえなくなるんじゃないか、という破壊力があるが、目的地は神社なのだ。のんびり向かっても大丈夫だろう。もう地図のどの辺にいるのかも分からなくなってしまったので、好きな道を好きなように歩くことにした。
また茂みを見つけたので行ってみることにする。神社かもしれない。
また茂みを見つけたので行ってみることにする。神社かもしれない。
伊藤博文の公墓所だった。伊藤博文の公墓所!
伊藤博文の公墓所だった。伊藤博文の公墓所!
木が茂っていたので神社かと思って近づいたら伊藤博文の公墓所だった。品川区の指定文化財にもなっている観光スポットらしい。依然道には迷っているがいいところに来れたのでうれしい。
隣の公園のベンチに座って空を見上げる。いかにも道に迷っている感じの写真が撮れた。
隣の公園のベンチに座って空を見上げる。いかにも道に迷っている感じの写真が撮れた。
途方にくれながら道迷い放題を楽しむハイライト(3)
途方にくれながら道迷い放題を楽しむハイライト(3)
ちなみに、この時点でスタートから1時間以上経過している。人は、1時間も道に迷うと目的を忘れて楽しみ始めちゃうようだ。

ハイライト(4) スーパー丸正で記念撮影

少し前からおかしいなとは思っていたのだが、前方に線路が見える。西大井駅が近いみたいだ。
線路だ。
線路だ。
つまりこの地図を見て神社を探していたはずが、
つまりこの地図を見て神社を探していたはずが、
今、完全にこっちの地図の領域にいるのだ。
今、完全にこっちの地図の領域にいるのだ。
ということは、西大井駅が把握できれば、2枚目の地図から再スタートできるのだ。井口さんから2枚地図をもらっておいてよかった。

駅の位置を確認しながら、今度は丸正というスーパーがある通りを探す。結果的にぐるっと回って来た道を戻ることになったが、一本ずれて今まで歩いていない通りに行ってみる。
商店街に出た。そしてまた神社を連想させるキャラクターの旗。
商店街に出た。そしてまた神社を連想させるキャラクターの旗。
神社っぽいキャラクターだ。しかしさっきそれで痛い目を見ている。この先に何もなかったら次はどうしようかなあと思いながらぶらぶら歩く。すると、
息を飲んだ。
息を飲んだ。
「MARUSHO」とある…!スーパー丸正だ!
MARUSHO!
MARUSHO!
記念写真を撮った。
記念写真を撮った。
スーパーを見つけてこんなに嬉しかったことはない。見つけた瞬間心臓が「キュン」となったのだ。すぐに通り過ぎてしまうのがもったいない気がして、写真を撮って店内をしばらくうろうろした。
ハイライト(4) 丸正が見つかってうれしかったです。
ハイライト(4) 丸正が見つかってうれしかったです。

ゴール!

丸正さえ確認できればこちらのものである。右手に注意して歩くとすぐに上神明天祖神社があった。神社の旗を見てすごく安心した。「これこれ〜!」というやつだ。
着いた…!
着いた…!
着きました!
着きました!
「着いてよかった」という気持ちで噛みしめるように参拝した。探し続けてやっと見つけた神社はありがたさが格段に違う感じがした。

上神明天祖神社は心願成就の白蛇さまが祀られている神社だそうだ。境内は参拝者への気配りが色々なところに見られてとてもうれしかったのを覚えている。
お茶をいただける。
お茶をいただける。
弁財天のスタンプが押せる。
弁財天のスタンプが押せる。
初めて御朱印を頂いてみた。
初めて御朱印を頂いてみた。

ちょうどいいエンターテインメントだ

神社を堪能して駅に戻ろうと時計を見ると、スタートからちょうど2時間経っていた。神社に30分くらいいたので道に迷っていたのは90分ということになる。

道迷い放題、すごくちょうどいい。食べ放題と同じくらいの時間を楽しんでいたのだ。

これ以上道に迷うとちょっと泣きたくなっていたかもしれないし、かと言ってこれより短いと物足りなかっただろう。十分に道に迷った時のスリルと開放感を味わうことができた。

ちなみに後で調べたら、スタート地点の中延駅から上神明天祖神社までは徒歩7分の距離であった。13倍の時間楽しめたらそれはお得だろう。

なんとなく行き詰まっているから気分転換したい、という時にやってみるといいかもしれない。道迷い放題。
アジサイがきれいでした。
アジサイがきれいでした。

記事中に載せた神社の鳥居の前での写真だが、セルフタイマーを失敗し続けて7回撮った。かろうじて成功した7回目も今考えるとそこまで載せる必要のある写真ではなかったが、せっかくなので載せた。1回目から6回目もここに載せておきます。
記事中の地図のデータは、OpenStreetMapのものを利用しました。
“© OpenStreetMap contributors”
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