特集 2018年6月10日

松本商店の美味しい干物レシピ(デジタルリマスター版)

松本流みりん干し。色と照りが良い。みりん干しは良いものだ。
松本流みりん干し。色と照りが良い。みりん干しは良いものだ。
10年前に書いたナマコの記事で書きましたが、実家の干物屋(松本商店)が父の死去を機に廃業することになりました。でも折角美味しい干物が作れるのにもったいない。だけど店は続けられない。

そこで、干物作りのレシピを公開しようと思います。

四代、120年続いた干物屋のレシピ。営業上の秘密も含めて洗いざらい書いちゃいます。みんな、これを読んだら干物は買わずに自分で作ったら良いと思うよ。自分で食べる分を作るくらいなら簡単だから。

2008年10月に掲載された記事の写真画像を大きくして再掲載したものです。
あばよ涙、よろしく勇気、こんにちは松本です。

1976年千葉県鴨川市(内浦)生まれ。システムエンジニアなどやってましたが、2010年にライター兼アプリ作家として自由業化。iPhoneアプリはDIY GPS、速攻乗換案内、立体録音部、Here.info、雨かしら?などを開発しました。著書は「チェーン店B級グルメ メニュー別ガチンコ食べ比べ」「30日間マクドナルド生活」の2冊。買ってくだされ。(動画インタビュー)

前の記事:十万石まんじゅうを3D化するまでのお話

> 個人サイト keiziweb DIY GPS 速攻乗換案内

実家に帰ったついでに干物作りを習った

今回干物作りを教えてくるのは、母。松本商店のしょこたん。写真を撮りながら、

「この写真、インターネットに載せても良い?」

と聞いたら、

「絶対ダメ」

と言われたので後ろ姿で失礼します。

 母は元々東京でOLさんをやったり病院の事務をやったりする普通の女性だった。話を聞くと結構ナウなヤングだったりして、若干驚いた。みんなのお母さんやお父さんもナウなヤングだった時期があるだろうから、話を聞いてみるといい。
母の後ろ姿。こんなに小さかったっけか。
母の後ろ姿。こんなに小さかったっけか。
そんな彼女がケガをして小湊(松本商店がある港町)にあった接骨院に通っていたのを父が見つけた。父が母のことを気に入って見合いを申し込んだのだそうだ。

 当初、母は乗り気じゃなく一度断ったそうだ。でも一度会ってみたら悪い人じゃなさそうだと言うことで乗り気に。しかし母の母、つまり祖母(既に他界)はその縁談に反対していたそうだ。

「あんた、生の肉も触れないじゃない。干物屋なんて無理よ」

 そう、母は昔魚はおろか、生肉さえ手で触れなかったのだった。それでも、割りと楽天的な母は「どうにかなるでしょ」と結婚を決定。以後、35年以上に渡って干物屋、松本商店を支える柱の1本として頑張ってきた。

当然、今では干物作りのエキスパートだ。

今回は、そんな母を師匠に干物作りを習う。
魚をさばくための包丁。研ぐと目印に刃先を赤く塗ります。
魚をさばくための包丁。研ぐと目印に刃先を赤く塗ります。

素材を買います

当然干物作りには魚が必要だ。営業していた頃は水産会社から魚を買ったり、漁港の入札に参加して競り落としたりしていた。安い時は材料の魚を1トン数百円で買えたりしたらしい。

 その大量の魚を加工するには人手がいる。しかも、並外れた生産量を持つ人手が。それを失った今となっては、例え設備があっても営業を続けるのは困難なのだ。故の閉店。

と、話が逸れた。

 魚は鴨川市のベイシアで買ってきた。小湊は過疎が進みすぎて鮮魚を買う店すら無い。鴨川産のアジ、サンマ、鯖を買った。イカはどこ産か不明。ついでにブリの切り身も買った。

美味しい干物になるだろうか?
アジがたくさん売ってた。1匹90円くらいかな。
アジがたくさん売ってた。1匹90円くらいかな。
真アジ。アジは干物の王道だよね。
真アジ。アジは干物の王道だよね。
サンマ。1尾68円。そりゃ漁師もストやるわ、って値段。
サンマ。1尾68円。そりゃ漁師もストやるわ、って値段。
鯖。丸まるしてます。258円。
鯖。丸まるしてます。258円。
ブリの切り身。みりん干しにしようかと思って。
ブリの切り身。みりん干しにしようかと思って。

まずはつけ汁作り

干物を作るのに必要不可欠な物は魚ともう一つ、つけ汁。今回は普通の干物とみりん干しの2種類を作るので、それらのレシピを公開していきたい。まずは普通の干物。
■本当の材料
・塩分濃度8度の塩水(タル一杯)
・どこのご家庭にもあるトレハロース(1カップ)
・どこのご家庭にもあるシーフレッシュ(400g)
・どこのご家庭にもあるだししるべ昆布味(1kg)
作業場にあったつけ汁の材料。
作業場にあったつけ汁の材料。
いや、大体どこのご家庭にも無い材料だ。どれも普通の食品添加物だが、まぁ、要するに濃いめの塩水と旨味調味料があれば良い。例えば本だし昆布味とか。

と言うわけで、今回はレシピのスケールを変えて作った。
■今回の材料
・水1リットル
・塩80g
・みりん大さじ1杯
・昆布茶小さじ1杯
トレハロースやシーフレッシュは無くてもOK。商品として売らないならいらない。だししるべは直接味をみたら、要するにみりんと昆布ダシの味だったので代用した。

このつけ汁に開いた魚を漬ける。厳密には季節や魚の種類によって塩分濃度や漬ける時間が変わる。一部を紹介するとこんな感じ。
塩分計で計りながらの作業。
塩分計で計りながらの作業。
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主に水温、魚の大きさ、身の質で条件が変わる。そういえば作った干物を食べて、「もう少ししょっぱくて良いな」なんて家族でやってたのを思い出した。試行錯誤の結果が上の表って訳だ。
いつもはこういうタルで干物を漬ける。100リットルくらいか。
いつもはこういうタルで干物を漬ける。100リットルくらいか。

次はみりん干しのつけ汁

次はみりん干し用のつけ汁だ。これもまずは通常レシピから紹介しよう。
■本当の材料
・醤油(1.8リットル)
・砂糖(2.5kg)
・みりん(カップ1杯)
材料はどこのご家庭にもあると思うが、スケールがちょっとだけ大きい。これだと多すぎるので、1/6スケールにしてみた。
■今回の材料
・醤油(300ml)
・砂糖(416g)
・みりん(大さじ2)
主に醤油と砂糖です。
主に醤油と砂糖です。
みりん干しなのにみりんはほんのちょっとしか使わない。母に聞くと、「そうよ、甘味は大体砂糖なのよ。」とサラッと言った。混ぜると結構ドロドロである。っていうか砂糖を入れながら、「こんなに入れるのかよ・・・。」と軽く引いた。お菓子を作ってる時と似た心境だ。

松本商店の干物が好きだった人が読んだら引かないか心配だが、あの味の秘密はこのレシピなのだから仕方ない。

次のページで魚を開いて漬けて干します

いよいよ開き工程に入る。長くなってきたので次のページへ。
最終的にはこんな干物が出来ます。
最終的にはこんな干物が出来ます。
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最初は基本、アジの開き方

では早速各種魚を開いていこう。まずはアジだ。先生、お願いします。

1.アジの頭を右、お腹を手前に置いて左手で押さえる。
2.のど元から包丁を入れ、お腹を開く。
3.えらを切り離し、内臓と一緒に取り出す。
4.中骨に沿って包丁を入れ、背中の皮を残して切る。
5.頭を割って身を開く。
6.お腹に付いている血合い(動脈)を包丁で除く

 文章で読んでも判りにくいだろうから、ムービーに撮ってみた。若干血や内臓が映るので苦手な人は注意して見て下さい。
速いと判らないのでゆっくり開いてもらいました。
速いと判らないのでゆっくり開いてもらいました。

ムービーで見るアジの開き方

流石ですな

あんまり身内のやる事を賞賛するのもどうかと思うが、流石35年の腕前だ。ちゃっちゃと開いてしまった。しかも断面が綺麗。

「速いね。」

「まぁ、開くのはそんなに大変じゃないからね。大変なのは干し網に並べて干して、干し上がったのを取り込んで製品に仕上げる工程なのよ」

 なるほど、製品として大量に作る苦労の、これはほんの入り口に過ぎないのだ。それでも自分でやってみると到底上手くは出来なかった。
断面が綺麗なアジの開き。果たしてうまく出来るか、自分。
断面が綺麗なアジの開き。果たしてうまく出来るか、自分。

やってみる

今回用意したアジは3尾。1匹はお手本として切ってもらったので、残り2尾を自分で開くことにした。まずは魚の置き方から習う。そう、干物屋の二男として32年生きてきたが、実は開きを作ったことはないのだった。ガーン。

門前の小僧はただの小僧だった。
魚の置き方からして違うと指摘される。横に見本を並べてって、習字かと。
魚の置き方からして違うと指摘される。横に見本を並べてって、習字かと。
やってみると、これが難しい、なにが難しいかというと、えらがよく外れないのだ。そこを切って、なんて言われてもそこがどこか判らない。

なんとか開いたアジをお手本と並べてみたが、一目瞭然、どう見ても品質が悪い。オレ、干物屋無理だわ。
写真で見てこうも違うとは思わなかったな。断面の綺麗さが全然違うわ。
写真で見てこうも違うとは思わなかったな。断面の綺麗さが全然違うわ。
開いたアジは水で血を流してから塩汁に漬ける。
血を抜かないと生臭くなっちゃうのよ。つけ汁につける前に真水に漬けておきます。
血を抜かないと生臭くなっちゃうのよ。つけ汁につける前に真水に漬けておきます。
残り1尾のアジもなんとか開いた。よし、次はサンマとイカを開く様子を見ていただこう。

ムービーで見るサンマの開き方

サンマは背開きです

実はサンマはたまにさばいて食べるので、開くのは難しくなかった。内臓などもアジに比べて取りやすい。

1.サンマの頭を右、背中を手前に置いて左手で押さえる。
2.首の後ろに切れ目を入れる。
3.2で入れた切れ目から中骨に沿って包丁を入れる。
4.お腹側を切り抜かないように包丁を尾まで進める。
5.内臓、エラを取り除いて完成。
6.みりん干しの場合、頭を落として中骨も取り除く。

 6の中骨を取るとこは上手くやれる自信がなかったのでやってもらった。普通の干物風開き方なら簡単だ。
上手く開くコツは、左手で大胆に魚を押さえる事。
上手く開くコツは、左手で大胆に魚を押さえる事。

ムービーで見るイカの開き方

イカはサンマより簡単です

イカは構造が簡単だし赤い血が流れないので開くのは簡単だと思う。

1.エンペラを下にして置く。
2.胴のすその部分から包丁を入れ、先端まで開く。
3.内臓を取る。
4.目の間を2カ所ほど切って開く。
5.目玉、トンビを取り除く。

 買ってきたイカが、若干乾き気味の冷凍イカだったので、身が固くてやりにくかったが問題なかった。

イカったイカった。
肝は塩辛を作るのに使います。今回は塩辛は作れないけど。
肝は塩辛を作るのに使います。今回は塩辛は作れないけど。

最後に鯖

最後に残った鯖だが、開き方はアジと同じになる。ただし、身が大きいので血や内臓がかなり生々しい。という事であんまり詳しくは紹介しない。おおよそ、左の写真の表情で読み取っていただきたい。

 鯖も水につけて血抜きをして、開き工程終了。今度はそれぞれを付け汁に漬けて味を馴染ませる。では次のページ。食べるまではあと2ページかかります。
内臓がデカイ!血が多い!指が伸びる!
内臓がデカイ!血が多い!指が伸びる!
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つけ汁に1時間ほど漬け込みます

開いて血を抜いた魚を、今度は最初に作ったつけ汁に漬け込む。時間は、「まぁ、今日なら1時間でいいでしょ」という母の言葉に従って1時間。

 ほとんど言いなりで作ってるが、今までの人生でここまで母の言いなりに行動したことは無かったように思う。反抗の多い生き方をしてきた気がする。ごめんなさい。
塩汁に1時間漬け込む。冬なら長め、大きい魚の場合も長め。
塩汁に1時間漬け込む。冬なら長め、大きい魚の場合も長め。

みりん干し汁にも漬け込む

作りたてのみりん干し汁は濃いから漬け時間は短くていいらしい。特に、イカは味が染みやすい。

「魚を何度か漬けて少し薄くなった汁じゃないとイカのみりん干しは上手くできないのよ」

だそうだが、何度も漬け込むほど魚を用意してない。困ったが、「イカだけ少し漬ける時間を短くしたら?」との事なのでそのように作った。イカ以外は2時間、イカは1時間漬け込んだ。

 お気付きの方もいらっしゃると思うが、母はかなりいい加減な性格で、やることが大雑把だ。血液型はひどい事を言われる事が多いB型。僕もB型だ。母子揃ってB型だが、それは多分性格には関係ない。兄は割りと細かい性格だがやっぱりB型だから。
ほとんど砂糖醤油みたいなみりん干し汁に2時間。汁が濃い場合は短めに、何度か使って薄くなったら長めに漬ける。
ほとんど砂糖醤油みたいなみりん干し汁に2時間。汁が濃い場合は短めに、何度か使って薄くなったら長めに漬ける。
店番をしたり後かたづけをしたりしながら、待つこと1時間。
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いよいよ干し工程に入る。
見た目はあまり変わらない。そりゃそうか。干す前に真水で塩汁を流す。生臭みを取るんですな。
見た目はあまり変わらない。そりゃそうか。干す前に真水で塩汁を流す。生臭みを取るんですな。

天日で干すこと3時間半

この日は晴れ時々曇り。大体3時間半ほど干すと出来上がりという。店先に家でいつも使っている干し網(左の写真の青い網)をぶら下げてその中に干物を並べた。流石小さくて数枚並べただけで一杯になった。

 実家に住んでた頃、魚の開きを畳一畳ほどの大きさがある干し網に並べる手伝いをした事がある。一度に100枚とか200枚とかの干物を作る。中腰で延々、網に開きを並べる作業は腰に負担が掛かって大変な仕事だった。

松本商店の歴史の中で作られた何十万、何百万、もしかしたら何千万枚の干物に思いを馳せると気が遠くなる思いがする。
小さい干し網を店先に。この店、いつもこれで作ってると思われたらやだな、とか思った。
小さい干し網を店先に。この店、いつもこれで作ってると思われたらやだな、とか思った。

みりん干しも干す

普通の干物に遅れてみりん干しも味が染みた(前述の通りみりん干しは2時間漬け込んだ)。持参の干し網だとスペースとつけ汁の関係でいまいち干しにくかったので業務用の干し網を借りた(左の写真の黒い網)。

 これなら大体20~30枚くらいの干物を一気に干せる。みりん干し汁で汚れるのも「もう使わないし気にしなくて良いよ」との事だった。

 家庭用の干し網だと虫などはガードできるが、結構日光や風もカードしてしまう。沢山の干物を作るにはやはり業務用の網が最適だと思った。乾くのが早そうだ。
いいのかと、と思うくらい汁が下に垂れてたけどいいのらしい。
いいのかと、と思うくらい汁が下に垂れてたけどいいのらしい。

みりん干しにはゴマをふる

網に開きを並べたらゴマをふる。これはみりん干しだけの工程。食べた時ゴマの風味があるとみりん干しはグッと美味しくなる。量はお好みで、出来ればまんべんなく振りたい。ただしイカのみりん干しはゴマは無し。
イカ以外のみりん干しにはゴマを振り掛ける。量とかは結構適当。
イカ以外のみりん干しにはゴマを振り掛ける。量とかは結構適当。
あとは干物が乾くまで待つ。またしても店番をしながら待つこと3時間半。
なんだかんだで10時頃から始めて、完成まで6時間ほど。大変ですな。
なんだかんだで10時頃から始めて、完成まで6時間ほど。大変ですな。

干物が乾いた!

すっかり乾いた。みりん干しは若干汁が残ってべたつくが、これでいいのらしい。
すっかり乾いた。みりん干しは若干汁が残ってべたつくが、これでいいのらしい。
良い天気と干し網のお陰ですっかり干物が出来上がった。今回作ったのは計13枚。

・アジの干物 3枚
・サンマの干物 1枚
・鯖の干物半身 1枚
・サンマのみりん干し 2枚
・鯖のみりん干し 1枚
・イカのみりん干し 2枚
・ブリのみりん干し3枚

 乾いた干物は1枚1枚ラップで包んだ。干物の身は酸素に触れ続けると酸化してしてしまう。脂質が酸化すると独特の臭みが出てしまうのですぐに食べないのであればラップしてしまうと良い。または、冷凍。酸化防止にはラップか冷凍が効く。

こうしていくつかの工程を経てついに干物が完成した。果たしてその味は伝統を引き継げたのか?
結構な量になった。松本商店で売ったら全部で1500円くらいか。
結構な量になった。松本商店で売ったら全部で1500円くらいか。
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干物を持ち帰って焼いたよ編 まずはサンマ

サンマの干物。元は1尾68円のサンマ。脂が美味しそう過ぎる。
サンマの干物。元は1尾68円のサンマ。脂が美味しそう過ぎる。
大根おろしを用意してサンマを熱した焼き網に載せた。ジュッと音がして身が焼ける。脂が焼き網に落ちると白い煙が立ち上り脂の焼ける匂いが弾ける。

 焼き上がったサンマの腹は脂で素揚げ状態。サクサクと骨なんか全く気にならずに食べられる。身も皮も、まるで脂と旨味の結晶。それを大根おろしが信じられない相性で演出する。一言で言うと、

美味い!

のだ。

 味は結構オリジナルの干物に近い感じがする。これから先干物どうしよう、と思っていたがこれで自作の道が開けた。市販の干物はいまいち美味しくなくていつも実家の干物を食べていたのだ。

鯖の干物、アジの干物

鯖の干物は半身分。アジの干物も焼いてみた。
鯖の干物は半身分。アジの干物も焼いてみた。
鯖の干物は脂ののりがいまいちと感じた。煮物用の鯖だったのかも知れない。あと、身が厚かったので塩汁に漬ける時間をもう少し長くした方がよかった。干物作りは難しい。

アジの干物はかなりの出来映えだったように思う。これはサンマと並んで実家のアジに近い。成功と言えよう。

サンマみりん干し、イカみりん干し

この照りと色。これがみりん干しの魅力。
この照りと色。これがみりん干しの魅力。
みりん干しを焼くと独特の甘く香ばしい香りが漂う。ゴマ、醤油、砂糖の焼ける香りだ。どれも日本人が愛してやまない香りであり、大和民族のDNAに語りかける力を持っている。

 そんなサンマみりん干しが不味いわけがない。正直、あんなドロドロな砂糖醤油みたいなつけ汁で美味しくできるか半信半疑だった。が、食べてみて半疑は吹き飛び確信に変わった。

これだわ、完全にこの味。

 予想以上の出来だった。おー、おー、すげー、と思いながらあっという間に1枚食べてしまった。逆にイカみりんは失敗だった。

 なにが悪かったかって、イカの質が悪かった。半分乾いたような冷凍イカを使ったためか、半ばスルメの様な食感になってしまった。オマケに身に味が染みてなかった。

ブリのみりん干し

ブリのみりん干しは松本商店には無かった。僕オリジナルだ。
ブリのみりん干しは松本商店には無かった。僕オリジナルだ。
見た目はブリの照り焼きという風情だが、味も大体そんな感じだ。左の切り身は脂がまだ泡立っている。おわかりいただけるだろうか。

 これはかなり美味しかったが、あんまり干物である必然は無いかも知れない。普通にブリ照りにして食べる方が簡単で美味しい気がする。なんでもみりん干しにすれば良いって訳でもないのらしい。

 

 以上、失敗もいくつかあったけど概ね美味しい干物が、松本商店の干物が出来た。これからは干物をたべたくなったら自分で作ることにしようと思う。

干物は良い。なにせ美味い

レシピは大体わかった。と同時に、美味しい干物を作る大変さもわかった。これは大変な仕事だ。1年中、違う条件の中で同じ味を出し続ける難しさは、今回一度作ってみただけで判る。
鴨川市、亀田病院の前から見た夕焼け。
鴨川市、亀田病院の前から見た夕焼け。
「美味しい干物を作る」、ただそれだけを愚直に続けてきた父、母、さらにその先代達に思いを馳せると、違う職業に就いているけど自分も頑張らなくてはなぁと思わざるをえない。手抜きの誘惑に誘われることもあるけど、それが仕事である以上、クライアントや読者のことを考えて良いものを作っていきたい。

それが、実家のレシピを習って自分で干物を作って思ったこと。忘れ気味になったらまた干物を作って食べよう。きっと初心に戻れるに違いない。

 

 と、締めておいてなんですがちょっと続く。干物と一緒にいかの塩辛も作ろうと思ってレシピを聞いた。いかの塩辛も自家製で人気商品だったのだ。そしたらなんと、完成まで1年掛かると言われた。

えー。

という事で、松本商店三部作の三作目、いかの塩辛レシピは一年後になります。気長にお待ち下さい。それまでレシピは営業上のヒ・ミ・ツ。
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