特集 2018年7月2日
 

大阪のホルモンうどんを遡ったら沖縄の中身汁に辿りついた

大阪の新世界周辺でのみ食べられているというホルモンうどん、そのルーツを探ってみた。
大阪の新世界周辺でのみ食べられているというホルモンうどん、そのルーツを探ってみた。
東京在住の友人達が、大阪に行くと必ずホルモンうどんを食べている。焼きうどんタイプではなく、丼に入った汁うどんである。大阪で『ホルモン+うどん』という組み合わせ、それ絶対にうまいやつだろう。

俺にも食わせろと旅に出て、何軒か食べ歩いてみたところ、ホルモンうどんは沖縄と大阪の食文化が融合して生まれた、この土地だけのソウルフードであることがわかった。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。

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ぶらりスズキナオとの旅

ホルモンうどんを食べるためにやってきたのは、大阪の新今宮駅。目指すは線路の南側、西成区だ。あいりん地区や釜ヶ崎とも呼ばれるエリアである。

新今宮駅前の巨大な空き地に、星野リゾートのホテルが建つということで気になっていたのだが、完成は2022年の話らしく、まだ特に変わった様子はなかった。
1000円台で泊まれる格安ホテルが並ぶエリアに高級リゾートホテルができるらしいぞ。
1000円台で泊まれる格安ホテルが並ぶエリアに高級リゾートホテルができるらしいぞ。
さて大阪の旅といえば、在阪ライターのスズキナオさんということで、今回も同行いただいた。

この旅は今までに書いた大阪のホルモンやうどんの記事とリンクしてくる部分が多々あるのだが、それは最後にまとめて貼らせていただく。
昨日の酒が抜けていない感が心強いスズキナオさん。
昨日の酒が抜けていない感が心強いスズキナオさん。
めざすホルモンうどんの店は、西成警察署のすぐ近く。ナオさんは何度か訪れたことがあるそうで、慣れた足取りで案内をしてくれた。

この街には私も何回か来ているのだが、何回来ても緊張する。路上で話しかけられる機会が多いくらいで、なにかあったということはないのだが。
缶コーヒーは50円、日本酒は100円から買える自販機がたくさんある街。
缶コーヒーは50円、日本酒は100円から買える自販機がたくさんある街。

それなりに緊張する店、きらく

ふらふらと寄り道しながらやってきたのは、どっからどうみても歴史を感じない訳にはいかない、きらくというお店だ。

入り口のドアはフルオープンなのだが、その先は昼間なのに真っ暗。外から店内の様子が全く見えないため、全然気楽に入れない。
「ここっす」と平熱で案内してくれるナオさん。「この街は怖いっていわれるけど、なにかあればどこも一緒ですから。ただ役者は揃っていますけど」とのこと。
「ここっす」と平熱で案内してくれるナオさん。「この街は怖いっていわれるけど、なにかあればどこも一緒ですから。ただ役者は揃っていますけど」とのこと。
なんでだろう、昼間なのに中が全く見えない。
なんでだろう、昼間なのに中が全く見えない。

タバコの煙が充満する喫茶店に入る中学生くらいは緊張しつつ、店名が染め抜かれた暖簾をくぐると、ちょっと甘い匂いがした。

店内は意外と広く、そして明るい。朱色の丸椅子が並ぶ8席ほどのカウンターに、小さめのテーブル席が3つ。厨房は完全なるオープンキッチンで、首にタオルを巻いたおじさんが一人で切り盛りしている。

空いていた入り口寄りのテーブル席に座り、とりあえずセルフサービスの水をいただく。
コップがワンカップ。
コップがワンカップ。
メニューはとてもシンプルで、ホルモン1皿120円、そしてホルモンうどん・そば・中華そばが1玉300円、2玉なら350円。そしてご飯が150円で、あとは酒類のみである。

麺類はホルモン入りのみ。かけうどんも存在しない。その理由は作っている様子を見て、すぐに理解できた。
ホルモン、四百二〇円かと思ったら、一皿百二〇円じゃないか。安いな。
ホルモン、四百二〇円かと思ったら、一皿百二〇円じゃないか。安いな。
常連さんらしきお客さんが、「ホルモンのダブルと酒」、「うどんを二玉」といった注文をしている。我々は何を頼もうかと作戦を練っていると、カウンターでお会計をするお客さんと店主の会話が聞こえてきた。

店主:「おつり、まず9000円ね」
お客:「はい(すぐ財布にしまう)」
店主:「おつりを見んと?(数えなくて大丈夫か)」
お客:「いいよ、それで人生変わる訳でもないから」

人を信じすぎるなと教える店主と、それでも店主を信頼するお客ということだろうか。なんだかよいものを見た気がする。

うどんと中華そば、そしてビールの大瓶を注文。ナオさん情報によると、大阪では大瓶を「おおびん」ではなく、「だいびん」と呼ぶそうだ。

これがきらくのホルモンうどんだ

厨房の様子を眺めていると、まずお湯の沸いた鍋で茹で麺を温めて丼に入れ、そこに塩を少々加えて、別の大鍋からスープと具のホルモンをよそってできあがり。

ホルモンうどんとは、鰹と昆布のダシ汁で具がホルモンなのではなく、ホルモンを煮込んだ汁そのものがスープなのである。
帰り際に見させていただいた大鍋。すごいパワーだ。
帰り際に見させていただいた大鍋。すごいパワーだ。
店の鍋は麺を茹でる用とホルモンを煮る用の2つのみ。だからこの店にはきつねうどんとかたぬきそばは存在せず、ホルモンの麺しかないのだ。

肉を煮た汁で炭水化物を食べるという構造は、牛丼が近いのかもしれない。
これがホルモンうどん。
これがホルモンうどん。
まずスープを一口すすると、口の中に液状の脂しか入ってこなくて驚いた。そして汁が結構甘い。普通のうどんっぽい見た目と実際の味がまったく一致しないのだ。

よく見れたスープの上に5ミリほどの脂の層がある。寒い地方のご当地ラーメンみたいだ。きっとホルモンから染み出た脂なのだろう。

ビールを飲んで舌を落ち着かせ、牛の肺と腸だというホルモンをいただく。きっちりしょっぱく、しっかり甘い、煮詰まった感じのない仕上がり。今までに食べたことのないタイプの煮込みの味だ。
脂たっぷりの腸がうまい。
脂たっぷりの腸がうまい。

友人達が食べにくる理由が分かった気がする

煮込んだホルモンの脂肪分、塩分、糖分に、麺の炭水化物という組み合わせ。そこにアルコールを添えれば、肉体労働者が欲する5大栄養素は完璧だ。

私は全然体を動かしていないので少し胃がもたれたけど、このソウルフルな味こそが昔ながらのホルモンうどんなのだろう。もうちょっと人生がんばろうかなという気になった。
ビールのコップもワンカップ。
ビールのコップもワンカップ。
こちらはナオさんのホルモン中華そば。ラーメン用というよりは、細いうどんといった感じの麺。
こちらはナオさんのホルモン中華そば。ラーメン用というよりは、細いうどんといった感じの麺。
おじさんのしゃべり方は大阪弁ではなく、具志堅用高さんに通じる沖縄っぽさがあるように聞こえる。

ナオさんが前に来た時は、おじさんのおかあさんらしき人が店番をしていて、沖縄出身だみたいなことをいっていたそうだ。

ホルモンうどんと沖縄、なにか関係があるのだろうか。
ナオさんの丼が小さくて、なんだかお子様ラーメンみたいだ。
ナオさんの丼が小さくて、なんだかお子様ラーメンみたいだ。
ちょっと舌が飽きてきたところで、粗挽きの唐辛子を入れて味を変える。
ちょっと舌が飽きてきたところで、粗挽きの唐辛子を入れて味を変える。
隣のテーブル席に置かれていた2玉用の丼がかっこよかった。
隣のテーブル席に置かれていた2玉用の丼がかっこよかった。
「またよろしゅう」

お会計をすませて大満足で店を出る。金額ちょうどで払ったから、おつりを数えることはなかった。

ホルモンうどんを出す店はここだけではなく、この近辺に何軒かあるようなので、せっかくなのでハシゴをしてみよう。
「紙コップタイプで安い自販機は初めてだなー」と、記念に50円のコーラとバナナラテを買った。
「紙コップタイプで安い自販機は初めてだなー」と、記念に50円のコーラとバナナラテを買った。
確かに行き止まりだった道。通りがかりの人が、「車、めっちゃ入って来るよ!」と教えてくれた。
確かに行き止まりだった道。通りがかりの人が、「車、めっちゃ入って来るよ!」と教えてくれた。
上に物を置けなくしたドラム缶。ここで飲み会をするなということだろうか。
上に物を置けなくしたドラム缶。ここで飲み会をするなということだろうか。
モーニング西成。よくみると酉成になってる。
モーニング西成。よくみると酉成になってる。

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