特集 2018年7月14日
 

蛍の光で勉強はできるのか?

ほ〜た〜るのひ〜か〜り〜♪
ほ〜た〜るのひ〜か〜り〜♪
閉店の音楽としてお馴染み「蛍の光」という歌。

この歌詞には由来がある。「昔、中国に車胤(しゃいん) という人がいた。夜に勉強をするため、蛍を集めてカゴに入れ、その灯りで勉学に励んだ」という逸話があるらしい。

ええ!?本当に蛍の光で勉強なんてできるの?試してみよう!
岡山出身・東京在住。本業はマーケティング。登山・ランニング・レザークラフトが趣味。ホラー、オカルトが好物。1,000円超えるとなんでも美味しくなる舌を持つ。

> 個人サイト 私立ねお学園

蛍を探しに奥多摩へ

どこか不安げな様子。
どこか不安げな様子。
やってきたのは奥多摩「鳩ノ巣駅」

この駅のすぐそばを流れる小川に蛍が生息しているらしい。

しかし、いざやってきたものの、今回の企画は自分でも無謀な気がした。
だって、蛍の光ってすごく儚いって知ってますか?それに、そもそも蛍が見れるかどうかも分からない。リスキーな賭けだ。

実は2年前、マレーシアのリバークルーズで大量の蛍を見たことがある。

ガイドさんが懐中電灯を点滅させると、まるで煙のようにぶわあっと寄ってくる蛍の群。サンバを踊っているようにうごめくおびただしい数の光は、確かに綺麗で明るかった。
inマレーシア。ちなみに蛍の写真はない。写真に収める技術が当時の僕にはなかった。
inマレーシア。ちなみに蛍の写真はない。写真に収める技術が当時の僕にはなかった。
その体験があったので、もしあのくらいの蛍がいれば勉強できるんじゃない?なんて軽く思ってしまったのが間違いな気がする。ここは日本だ。

しかし純粋に蛍を見てみたい…。これはダメ元でもやる価値はあるだろう。

宴会の横で自撮り

登山客で賑わう食事処。鳩ノ巣駅は「川苔山」などへの登山口となる。
登山客で賑わう食事処。鳩ノ巣駅は「川苔山」などへの登山口となる。
下山後はここのお店のビールがお目当ての人も多いはず。この日も登山客が楽しそうに賑わっていた。
その横で僕は自撮りしてたけど。
その横で僕は自撮りしてたけど。
駅に散策マップがあった。蛍が見れるであろうスポットまでそう遠くなさそう。
駅に散策マップがあった。蛍が見れるであろうスポットまでそう遠くなさそう。
蛍の生息地はここか。薬師様も気にはなる。
蛍の生息地はここか。薬師様も気にはなる。
本日は6月9日。例年ならば6月の下旬あたりが蛍の時期らしい。まだ若干、早いので蛍が活動しているのか不安が募る。

だが今日は雨降り前でチャンスなのだ。蛍が出やすい条件として、湿度が高く蒸し暑いという事がある。今日を逃す手はない。

しかし残念ながら僕は運が悪いことで有名だ。

僕だけ注文した料理が来ない、最近犬のフンも踏んだ。足繁く通っていたラーメン屋さんも潰れた…などなど、数えるとキリがない。

果たして僕は蛍に出会えるのか…。ああ、未来が見えないな。

さすが奥多摩…。期待できるぞ、蛍。

先ほどの看板に記されていた場所を目指す。
線路をくぐる。写真右奥は駐車場。車の場合はそこへ。
線路をくぐる。写真右奥は駐車場。車の場合はそこへ。
ふと横をみるとすでに川沿い。これが蛍のいる川か。
ふと横をみるとすでに川沿い。これが蛍のいる川か。
小さい川だが、水はとても澄んでいる。たしか蛍は水が綺麗な場所でしか生息できなかったはず。申し分ない。
草も多く、蛍にとっては一等地の高級住宅街なのだろう。
草も多く、蛍にとっては一等地の高級住宅街なのだろう。
多分、着いた。ここのはず。しかし工事中だ…。
多分、着いた。ここのはず。しかし工事中だ…。
これは、入っていいものなのか戸惑った。しかし、よく見ると矢印の方向に降りれるようになっている。進んでみよう。
木製の吊り橋があった。
木製の吊り橋があった。
これ、工事中でなければさぞかし味わい深い風景のはずなんだけど…。
橋から小川を見下ろしてみる。客観的にみるとフランダースの犬みたいだ。
橋から小川を見下ろしてみる。客観的にみるとフランダースの犬みたいだ。
いや、違う。川に映った自分に吠えて、くわえてた骨を落としたのはパブロフだ!なんて自信満々に書いていたら、正解はイソップ物語と編集部から指摘を受けた。

僕はグチャグチャな雑学を身につけて大人になっている。
蛍のいる気配がプンプン。ここにいなくてどこにいる。
蛍のいる気配がプンプン。ここにいなくてどこにいる。
まさに蛍をみるためのスペース。
まさに蛍をみるためのスペース。
橋を渡ると開けた空間があった。おそらくここが蛍の生息地のはず。

しかしまだまだ外は明るい。

おそるべし吸血ブヨの襲来

実は先日、英検2級に落ちたのだ。改めて勉強したい。
実は先日、英検2級に落ちたのだ。改めて勉強したい。
暗くなるまでまだ時間がある。こんな時、車胤さんだったら1秒でも惜しんで勉強するはず。僕も見習うべきだろう。


今37歳。見なかったことにしよう。
今37歳。見なかったことにしよう。
ふむふむ。isはbe動詞なのか…。
ふむふむ。isはbe動詞なのか…。
自然の中で優雅に勉強。なんだかとても贅沢な気がする。これはいつもより勉強もはかどるはず。

しかし・・・
あああっ!かゆいっ!
あああっ!かゆいっ!
水があって草がある。そう、つまりここには虫がいるのだ。とりわけ蚊よりたちの悪い虫にやられてしまった。
血を吸われた跡。
血を吸われた跡。
これは「ブヨ」という虫のしわざ。なんと血を吸うのだ。

以前、山でブヨに刺された経験がある。ほっといても治るだろうとタカをくくっていたら痒さとひどい腫れで、結局病院へ行った。甘く見てはいけないやつだった。

そのブヨに数カ所やられてしまった。

ああ、なぜ僕は短パンで来たのか。なぜ虫除けを持ってこなかったのか。

とにかくこの場を離れなければ。一旦、駅へ戻ろう。
お店ではまだ宴会の最中だ。いいな。
お店ではまだ宴会の最中だ。いいな。
まったく。こっちは脚がかゆくてたまらないというのに。

・・・ああ、混ざりたい。

いよいよ日没。再び蛍を目指す。

いい雲が出てきた。
いい雲が出てきた。
だいぶ薄暗くなってきた。そろそろ頃合いではないだろうか。

蛍の生息地へもう一度向かう。正直、ブヨが怖い。

しかし、こうなったらもう覚悟を決めよう。すでに刺されていることだし減るもんでもない。左の脚が刺されたら右の脚も差し出してやろうではないか。
戻って来たら、ちょうど良い暗さに。
戻って来たら、ちょうど良い暗さに。
ここで小さい子を連れた若い夫婦と出会った。おそらく蛍が見れなかったので帰ろうとしていたのだろう。
蛍は一日のうちに何回か活動する時間帯があって、最初がだいたい19時から21時くらい。まだ少し早い。

「たぶん蛍が出るとしたらこれからですよ。もう少し粘ってみては?」と声をかけ、一緒に蛍を探すことに。

でも、よく考えたら撮影する時に人がいたら恥ずかしいじゃないか。声をかけたの失敗だったかな…。

蛍は現れるのか…!?

「見れたらいいね〜」なんて話しながらみんなで暗闇に目をこらす。
「見れたらいいね〜」なんて話しながらみんなで暗闇に目をこらす。
しかし当たり前のように何も起こらないし、光らない。やっぱりそういう運命なのかな、僕は。

なんて思っていた矢先…
ん!?なんか光ってる?気のせいか…?
ん!?なんか光ってる?気のせいか…?
いや、光ってる!本当に蛍がいた!
いや、光ってる!本当に蛍がいた!
ああ〜!一匹でも見れてよかった!わざわざ奥多摩まで来た甲斐があった。

しかし、これだけでは終わらない。ふと、気がつくと…
「こっちにいますよ!」「ああっ!ほら、あっちにも二匹!」みんなテンションが上がる。
「こっちにいますよ!」「ああっ!ほら、あっちにも二匹!」みんなテンションが上がる。
なんだか蛍が楽しそう。光が文字になれば面白いのにな。
なんだか蛍が楽しそう。光が文字になれば面白いのにな。
どんどん光が増えていく。マレーシアの蛍とはまた違う情緒がある。あっちがサンバならこっちは演歌だ。
どんどん光が増えていく。マレーシアの蛍とはまた違う情緒がある。あっちがサンバならこっちは演歌だ。
乱舞状態。十匹くらいは飛び回っているだろうか。すげえ・・・。
乱舞状態。十匹くらいは飛び回っているだろうか。すげえ・・・。
あちこちに飛び回る幻想的な光は、ため息とともに目で追うことしかできない。

正直、ダメかもなと思い込んでいたのと、ブヨに刺されてテンションが下がっていたので余計に嬉しい。
本当に綺麗なんです。
本当に綺麗なんです。
いかん。見とれて本来の目的を忘れてはならない。僕はこの光で勉強しなければいけないのだ。

とはいえ、すぐそばに家族がいる。わけのわからない行動を自撮りする姿はちょっと恥ずかしい。

しかし、しばらくすると一緒に見ていた家族は、見れてよかったと言いながら帰っていった。さようなら。
しめしめ。一人なのでもう恥ずかしくないぞ。よし、これでこの素晴らしい空間が貸切りだ。
しめしめ。一人なのでもう恥ずかしくないぞ。よし、これでこの素晴らしい空間が貸切りだ。

蛍の光で勉強はできる!?

さあ、実際この蛍の光で勉強はできるのかやってみよう。果たして…?
無理っ!暗すぎ!
無理っ!暗すぎ!
そりゃそうだろう、という声が聞こえてきそうだ。写真はカメラの感度を上げているので明るく見えるが、実際はもちろん真っ暗。

蛍数匹の儚い光で文字なんか見えるわけない。

車胤さんのように蛍をカゴに集めれば、まとまった灯りになるかもしれないが、そんなかわいそうな事できない。

結論:分かっていたが蛍の光で勉強するのは無理だった。
分かってた…。分かってたんだよ…。
分かってた…。分かってたんだよ…。
ゆらゆらと漂う黄緑の光彩は、時を忘れさせる。気づくとあっという間に時間が過ぎていた。

帰りの電車時刻が迫る。奥多摩は遠いのだ。
名残惜しい。できることならずっと見ていたい。
名残惜しい。できることならずっと見ていたい。
というわけで、残念ながら蛍の光で勉強は全くできなかった。

でもいいのだ。こんな貴重な経験ができたのだから。 蛍が光った瞬間、ジャーンと流れる主題歌。見つめ合う僕とヒロイン…。甘酸っぱい恋愛映画の主人公になったような錯覚に陥っていた。

蛍が光るのは、求愛行動の意味があるらしい。その愛溢れる光に僕は侵されたのかもしれない。
まあ、一人っきりだったけどね。

♪〜。どこからかあの歌が聞こえてきた…。そろそろ閉店のようです…。

蛍に会えるかは自然条件によるのでホントに一か八かだった。実際に蛍が光ったあの瞬間の興奮は、きっと忘れないことだろう。

この鳩ノ巣のスポット、すぐそばに住宅がある。もし見学に行く際は、大声を出したり騒いだりしない、ゴミはもちろん持ち帰る、蛍を捕まえない。そういった当たり前のマナーに気をつけてほしい。
スタンドの光で勉強しても分からないものは分からない。
スタンドの光で勉強しても分からないものは分からない。
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