特集 2018年7月26日
 

ヘボコン2018レポート〜ロボットが貝塚になった日

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去る2018年6月30日、技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)2018を開催した。
ヘボコンはロボットバトルの大会であるが、名前のとおりロボットを作る技術力のない人のためのイベントである。「技術力が低い方がよい」「無様に負けるほど高評価」という倒錯した大会だ。

この記事ではそのイベントレポートとして、印象に残った試合8試合の紹介と、受賞ロボットの発表、そして全出場ロボットを紹介させてほしい。

イベントの映像はニコニコ生放送で見られます

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次回イベントは8/4〜5、Maker Faire Tokyoにて「和ヘボコン」
インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変な音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。

前の記事:「8/4〜5はMaker Faire Tokyo!ヘボコン、デカ顔、記事で作った工作展示など」
人気記事:「チーズ across ハンバーグ」

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試合の紹介にあたってルール説明

・土俵(長方形の板)から出たり、倒れたりしたら負け
・制限時間は1分。時間切れの場合は果敢に攻めたほうが勝ち

1回戦 第15試合

透明なロボット
(しゅろっと)
vs
モースとイン・ザ・シェル
(こやしゅん)
さっそく1回戦の試合から紹介していこう。「透明なロボット」は透明である。
見えるが。
見えるが。
これまでヘボコンにはいくつかの「透明」を主張するロボットが登場してきた。その根拠はさまざまで、例えばクリアカラーの素材を使っていたり、全面鏡張りになっていたり。その中ではかなり現実的な透明度が高いと思われるこの「透明なロボット」。透明な理由は、こちらだ。
後ろについたカメラの映像が正面に映る
後ろについたカメラの映像が正面に映る
後ろの映像が前に投影されるので実質透明、という理屈である。完全に見えてはいても、理論上の透明、あるいは広義の透明といってもいいだろう。

対するモースとイン・ザ・シェルは、本人が最近住み始めたという大田区の大森をモチーフにしている。
カラフルに塗られた貝殻に注目
カラフルに塗られた貝殻に注目
大森は貝塚(縄文時代に貝殻を捨てた跡)が発見されたことで有名。それにちなんでボディに貝殻を張り付けるなど、機体には大森要素をふんだんにちりばめた。
なお、ちりばめられた貝殻は大森産だが、天然の貝が見当たらなかったので大森の居酒屋で貝料理を食べ調達した。

そんな「広義の透明」と「広義の大森産」がぶつかり合う広義対決。試合展開は動画で見ていただこう。
試合開始と同時にほら貝を吹き鳴らす、こやしゅんさん。ほら貝から出る呼気の風力でロボットは動く。
試合開始と同時にほら貝を吹き鳴らす、こやしゅんさん。ほら貝から出る呼気の風力でロボットは動く。
もちろんそれで動くはずがなく、あっという間に土俵際に追いつめられる
もちろんそれで動くはずがなく、あっという間に土俵際に追いつめられる
他にも動力に電動ミニカーを積んでいたのだが、結局馬力が全然足りずそのまま場外へ落下
他にも動力に電動ミニカーを積んでいたのだが、結局馬力が全然足りずそのまま場外へ落下
わざわざ動画の再生ボタンを押していただいたのが申し訳なくなるほどの瞬殺ぶりであった。が、ほら貝のおかげで音声だけは勇壮だった試合である。

なお、この試合でテーブルから落下したことにより、モースとイン・ザ・シェルは大破。貝塚をモチーフにしたロボットが粉々になり、貝塚そのものになってしまった。
僕たちの大森貝塚。貝が積みあがったビジュアル的にも、(太古の)ごみ捨て場であるという意味的にも
僕たちの大森貝塚。貝が積みあがったビジュアル的にも、(太古の)ごみ捨て場であるという意味的にも
一方で透明ロボットはこのあともどんどん勝ち進むが、試合のたびにiPhoneが壊れるリスクに客席が湧いた。
2試合目、乱戦でもみくちゃにされるiPhone
2試合目、乱戦でもみくちゃにされるiPhone

1回戦 第11試合

サッカー日本代表がんばれ
(みっく)
vs
歯磨き上手かな2
(S川)
「サッカー日本代表がんばれ」のベースは市販のサッカーロボ。
申し訳程度の小さいボールを発射することができる
申し訳程度の小さいボールを発射することができる
その上にヘリコプターのおもちゃを横倒しで2台搭載。回転ブレードで相手を切断する作戦だが、そのせいでサッカーロボの機動力も落ち、部品それぞれの良さを打ち消しあったロボットが完成した。

そして「歯磨き上手かな2」は、2015年のイベント、西ヘボコンに出場した「歯磨き上手かな」の次世代機である。
この形相で歯磨きを迫ってくる
この形相で歯磨きを迫ってくる
前モデルは妙に生き物っぽくて気持ち悪い動きだったが
前モデルは妙に生き物っぽくて気持ち悪い動きだったが
今回は歯ブラシがドリルのように回る
今回は歯ブラシがドリルのように回る
歯磨きというより掘削されそうなマシン。これだけ凶悪な動きでありながら、受ける印象が「迫力」ではなく前回の「キモイ」なのは、やはり才能なのだと思われる。

そんな2体の戦い、これがアツかったのでぜひ動画で見てほしい。
試合開始と同時に歯磨き上手かな2の頭部が落下
試合開始と同時に歯磨き上手かな2の頭部が落下
ベースに使用していたオフロードカーだけが頭部を乗り越えて躍り出た!
ベースに使用していたオフロードカーだけが頭部を乗り越えて躍り出た!
そのままドリフト走行を続け、敵機の脇を抜け
そのままドリフト走行を続け、敵機の脇を抜け
そのまま場外へ…
そのまま場外へ…
ヘボコンにおいて部品が外れるのは日常茶飯事なので、今回のように大部分が外れてしまってもOK。しかし残った車体がそれを乗り越えて、さらに敵機まで乗り越えて場外へ走り去るとは。まさに爆走。オフロードカーの実力を思い知る試合であった。

ただしその実力というのがあくまで本業の「走行」の方であり、ロボットバトルの実力ではなかったのが残念であった…。

1回戦 第7試合

DXM01ケロべロス
(秘密結社デウス・エクス・マキナ)
vs
私の妹ロボット 佐藤八海
(佐藤家)
さて、実は今回のヘボコンではもう1体、マネキンの頭を搭載したロボットが登場。それがこの、私の妹ロボット 佐藤八海である。
ウサギ耳、頬のチーク、赤毛、と一つ一つの要素は全部かわいいのに、トータルではこの怖さ。
ウサギ耳、頬のチーク、赤毛、と一つ一つの要素は全部かわいいのに、トータルではこの怖さ。
このロボット、名前のとおり、テーマが「妹」。
制作者が持参した設計図
制作者が持参した設計図
「一人っ子なので妹を作りたいんです」という夢のある制作動機、そしてこんなにかわいいイラストなのに、しかし実際に登場したのは養生テープでさるぐつわをされた猟奇的なマシン。
しかも口からなんか出てる…
しかも口からなんか出てる…
この不穏さ、フランケンシュタインどころではない。もちろん会場は騒然である。

いっぽう、対戦相手のDXM01ケロべロス。武器は前部に搭載された超音波シェーバー。確かに刃物ではあるが、肌に優しい刃物。戦闘には向いてなさそうだ。
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このチーム、むしろ注目は製作者の方で
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ノートPCに筋電センサ付きスーツ、スマートフォンと、ハイテクてんこ盛りだ。なお、すべてただの衣装である。
(一応PCはバッテリの充電用にも使えるそうだ。充電…!)

試合の様子はこちらだ。
試合開始と同時に頭をうつむかせ、スライムを吐き出す妹
試合開始と同時に頭をうつむかせ、スライムを吐き出す妹
しかしタイミングが早すぎたためケロべロスには当たらず、土俵端での押し合いへ
しかしタイミングが早すぎたためケロべロスには当たらず、土俵端での押し合いへ
押し合いが長引くにつれ、次第に自分の吐いたスライムに足を取られ始める妹
押し合いが長引くにつれ、次第に自分の吐いたスライムに足を取られ始める妹
しかしキャタピラの馬力で最後は押し切り、ケロべロスは場外へ
しかしキャタピラの馬力で最後は押し切り、ケロべロスは場外へ
妹がスライムを吐いた瞬間にはあまりの絵に客席から悲鳴が漏れたが、攻撃としては特に効果もなく、素の馬力で勝利した形だ。妹、けっこう実力派である。

1回戦 第13試合

ポプテジェラ
(せいゆう)
vs
グレイトアゲイン
(淺野義弘)
このイベント当日の2日ほど前、出場者の一人から問い合わせのメールがあった。
「ロボットは1チーム1体なのでしょうか。2体作ってしまったのですが…」

トーナメント戦なので1体に決まっていると思うのだが、2体作ってしまったものは仕方がない。幸いヘボコンのロボットは縦横のみサイズ制限があり、高さ方向は無制限。「縦に積んでみてはいかがでしょうか」という返事をした。(我ながら雑な返事である)

そして、当日、本当に縦に積んで登場したのがこの「ポプテジェラ」である。
下半分の車と、上半分の巨大な角のついたロボ、それぞれ分離して単独のロボとして戦える
下半分の車と、上半分の巨大な角のついたロボ、それぞれ分離して単独のロボとして戦える
分離して、というか単に上に乗っかってるのが落ちてくるだけなのだが、なんにしろこういったダイナミックな分離型ロボというのはヘボコン史上初だと思う。

対するグレイトアゲインはアメリカの偉い人をモチーフにしたロボットだが
顔の形がどことなく不定形で、クトゥルーっぽいのだ
顔の形がどことなく不定形で、クトゥルーっぽいのだ
そういった不気味さもたたえつつ、攻撃方法は「紙コップからアルファベットをばらまき、日本人の英語コンプレックスに訴えかける」。果たしてそれがロボットに効くのかという疑問もあるが、とにかく試合の様子を見ていこう。
試合開始と同時にポプテジェラが分離。その勢いでポプテジェラ(上)が突進
試合開始と同時にポプテジェラが分離。その勢いでポプテジェラ(上)が突進
一切の抵抗ができないまま、グレイトアゲイン、場外へ…
一切の抵抗ができないまま、グレイトアゲイン、場外へ…
試合の様子は画像4枚ずつで紹介していくつもりだったのだが、あっけなすぎて2枚で終わってしまった。

1体でこの威力だったポプテジェラ、2体で戦うとどうなってしまうのか…と思われたが、実はポプテジェラ(下)は機動力に劣る。2回戦目では(上)が健闘している最中に、身動きが取れない(下)が押し出され負けた。2機で攻めるというより、むしろ1機丸ごと弱点だったわけである。

さて前半4試合の紹介が終わったが、ここまでで勘のいい人は気づいたかもしれない。今回、圧倒的にストレートな押し出しで決着する試合が多かったのだ。所要時間15秒くらいで終わるやつ。史上最もバトルしていなかったロボットバトル大会といってもいいかもしれない。

あと必殺技を搭載したマシンは、タイミングを見計らず試合開始後すぐに技を出してしまう(またはうっかり出てしまう)のも今大会の特徴だった。

2014年に初回大会を開催してから4年。作る方の技術はさておき、操作する方の技術がどんどん退行していくヘボコン。
次ページではまた4試合、ご紹介しよう。

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