特集 2018年7月24日

これがオカルトのカードダスだ

オカルトのカードダスがあったことをあなたは知っていますか?
オカルトのカードダスがあったことをあなたは知っていますか?
びっくりマンシール、キン肉マン消しゴム、ポケモンのカードなど、幼少の頃に熱中して集めていた人もいたと思う。自分の頃は、遊戯王というカードゲームが流行っていたが、そんな中、個人的に集めていたカードがある。それがオカルトのカードダスである。
1988年神奈川県生まれ。普通の会社員です。運だけで何とか生きてきました。好きな言葉は「半熟卵はトッピングしますか?」です。もちろんトッピングします。(動画インタビュー)

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あの頃、僕しか集めていなかった

おもちゃ屋がまだまだ町にあふれて、放課後や休日には子どもたちが押し寄せていた2001年、私は小学校6年生、クラスではコロコロコミック派よりも週刊少年ジャンプ派が多くなってきた、大人の階段を登りはしめた頃の話である。

クラスの男子全員が遊戯王というマンガ原作のカードゲームに熱中し、おこづかいの全てをカードダス(ガチャガチャの1回100円で5枚ぐらい出てくる)に使っていたとき、どうしてもとなりに置いてあったオカルトのカードダスに興味出てしまった。

それから2カ月間ぐらい頑張って集めていたが、急にそのカードダスがなくなってしまった。どうやら人気がなくて撤去されてしまったようだ。終わりは突然である。
ただ、26枚なんとか集めることができた。今計算したら、数が合わない。これも怖い話です。
これが集めたカードたち。
これが集めたカードたち。
発売元のバンダイのページによると、第二弾まで出ており、正式名称は「U.M.F. 未確認ファイル」。紹介文には「世の中の科学では証明しきれない、未確認なものをファイリングしたカードダス」と説明されており、「U.M.A」「宇宙」「現象」「建造物」「伝説」「オーパーツ」「ゴースト」7カテゴリーで、カードは全部で84種類出ている。内容としては表には写真、裏には紹介文が掲載されている。

発売日は第一弾が2001年3月上旬、第二弾が2001年10月中旬だったらしい。近所では第二弾を見ることがなかった。もっと、目を向けてほしかった。
ちなみにレアカードもある。火星の人面岩とミステリーサークルがレアです。
ちなみにレアカードもある。火星の人面岩とミステリーサークルがレアです。
詳しくどんなのがあるか見てみよう。まずはUFOの写真が載っているカード。
メキシコで撮影されたUFOの写真。
メキシコで撮影されたUFOの写真。
UFOの聖地、メキシコで撮られた写真。遠くて何がなんだかわからないもの、だた光っているだけの写真が多い中で、ここまではっきりと形がわかる写真があったことが少年だった自分には衝撃だった。
そして、マチュピチュ。どうやって作ったのかいまだに謎だ。
そして、マチュピチュ。どうやって作ったのかいまだに謎だ。
持っている数は少ないが好きなカードもある。エクトプラズムのカードである。
魂が出ちゃっている。
魂が出ちゃっている。
エクトプラズムとは、みんな大好きウィキペディアによると「霊の姿を物質化、視覚化させたりする際に関与するとされる半物質、または、ある種のエネルギー状態のもの」とのことだ。要するには人の魂や霊が物質化したものだ。
こういうことです。
こういうことです。
魂が出てしまったと思っている方もいるかもしれない。しかし、安心してほしい。冷凍したタオルを口で噛めば、エクトプラズムのようになる。もしかしたら試したい、もしくは魂みたいなものを出したいときに是非ともお試しください。
立ちながらタオルを噛むと頑張ったが何かが結局出てしまった人になるので注意してください。
立ちながらタオルを噛むと頑張ったが何かが結局出てしまった人になるので注意してください。
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詳しい人にも聞きたい

ただ、もっているカードを延々と見せられてもお互い大変だと思うので、解説を聞きながら見ていきたい。そこで以前、「オカルト今昔物語」でお世話になったオカルト古書店ナインブリックスの店長、橋本さんに聞いてみた。
記事とは関係なく個人的に月1ぐらいで行っている。
記事とは関係なく個人的に月1ぐらいで行っている。
余談ではあるが、橋本さんはライター加藤まさゆきさんの大学の後輩である。結婚式にも参加したそうで「率直な感想としては、「よかったなぁ!」です。加藤さんは人望のある、本当に良い先輩なので、 恋愛、結婚面でも幸せになって欲しかったと思っていました。式の雰囲気も良かったです。」

ちなみに加藤さんの担当編集である編集部安藤さんが「忙しくなったので月1にしてください!と言っていたのに、段々と書かなくなって、気がついたら新聞で連載を持っていて悲しくなった」と言っていたのは、ここだけの話にしてください。
持っているカードで見てもらいながら話してもらった。
持っているカードで見てもらいながら話してもらった。
色々と話を聞いたが、特に面白かった話を3つ紹介しようと思う。まずはバミューダトライアングルについて。
※今回聞いた話には諸説あります。
魔の海域と呼ばれるバミューダトライアングル。
魔の海域と呼ばれるバミューダトライアングル。
掲載されている紹介文は、「フロリダ半島の東側「死のバミューダ三角海域」誰しも耳にしたことのなる呼び名だろう。

その海域に侵入した飛行機や船舶はレーダーがきかなくなり、何の痕跡も残さず「消滅」してしまうという。
原因としては「時空の歪み説」が有力視されているが、1840年の「ロザリエ号事件」では、乗員だけが消え去るという不可思議な事件も起きている」

怖い。家の近くにあったら、遠回りして帰る。そんな中で聞いた豆知識はこちら。

バミューダトライアングルを見つけたのは英会話教室「ベルリッツ」の孫

人物の名は言語学者チャールズ・ベルリッツという人だ。日本でも有名な英会話教室の「ベルリッツ」(元々1878年にアメリカで生まれ、色々な語学を教えていた学校)の創立者マキシミリアン・ベルリッツ(62カ国語話せたらしい)の孫で、宇宙人や古代文明などにも関する書籍を出している。

そんな彼だが、1974年に出版した「謎のバミューダ海域」が世界20か国語に翻訳され、世界的ベストセラーとなった。これをきっかけにバミューダトライアングルという場所が有名になった。
バミューダの謎ではないがチャールズが書いた本。これも面白い。
バミューダの謎ではないがチャールズが書いた本。これも面白い。
だが、最近「バミューダトライアングル」という言葉を聞かない。その真相も聞いてみた。

「時代が進み、起こった事故を検証して見ると「その海域で起こった事故」ではなかったり、「失踪事故」と言われているが実は転覆事故だった、もしくは事故そのものが創作だったということがわかったみたいです。バミューダトライアングル内で起きて、原因が特定できない事故もあったみたいですが、調べると他の海域でも日常的に原因不明の事故は起きていたそうです。」

調べた結果、ここだけ統計的に多いというわけでもなかったそうだ。ここの海域に飛んだ飛行機が乗員だけが消え去るという事件もあったが、これもあとになって創作だとわかった。これがバミューダトライアングルの真相である。

妖精は絵本の切り抜きだった

妖精が飛んでいる。
妖精が飛んでいる。
海外の童話などで物語で出てくる妖精。日本にも座敷わらしや北海道に伝わるコロボックルなど世界中にいると言われている妖精だが、その中でもイギリスで起こった有名な事件がある。それが「コティングリー妖精事件」だ。

年については色々と本によって違いがあるが1916年頃に、エルシー・ライト(16歳)と彼女のいとこのフランシス・グリフィス(9歳)が起こした事件である。この二人は周りに「私たちは妖精と遊んでいる」と言っており、最初、父親は信じていなかったが、ある日、妖精と遊んでいる写真を撮ってきた。

父親は最初、イタズラだと思い信じなかったが、2ヶ月後に2枚目を撮ってきたとき、念のために他の人にも相談してみることにした。
その相談した人物の名がこの本に載っている。
その相談した人物の名がこの本に載っている。
A・コナン・ドイル。コナンってまさか、あの?
A・コナン・ドイル。コナンってまさか、あの?
相談した人物とはシャーロック・ホームズの作者で有名なコナン・ドイルである。コナン・ドイルは心霊研究家としても有名で心霊の書籍もいくつか出している。

コナン・ドイルは姉妹が撮ってきた写真を見て「これは本物だ!」と鑑定し、信じたというのもあって、この事をきっかけにイギリスでは妖精が話題になった。

しかし、その60年後に真相が明らかになった。フランシス・グリフィスが「あれは嘘です!」と言ったそうだ。絵本の切り抜きに羽を描き加えて、ピンで木や葉っぱなどに固定して撮影したと証言をしたのだ。
そう言われると紙に見える。
そう言われると紙に見える。
事件が起こった当時も他の部分よりハッキリ写りすぎていたりなど、当時から写真が偽物だというものも多かったが、この発言をきっかけに事件は明らかになった。子どもの嘘がイギリス中を巻き込んだ話である。こういう大胆なこと我々もしていきたい。

連れ去れた宇宙人はエイプリルフールの企画だった

最後に紹介するのはこちらだ。
家族のほのぼのした画像に見えるかもしれないが真ん中にいるのは宇宙人です。
家族のほのぼのした画像に見えるかもしれないが真ん中にいるのは宇宙人です。
見たことがある人も多いと思うが、カードに掲載されている説明文を見ると、

「この写真こそ1950年代、西ドイツの新聞に掲載されるや世界中で大論巣を巻き起こした宇宙人の姿である。
その記事によると、生死すらわからないこの宇宙人はメキシコシティ付近に墜落したUFOの残骸の中から発見されたという」

うちの地元にUFOが墜落したらこの写真を撮りたい。
「でも、この写真には真相があったのです」
「でも、この写真には真相があったのです」
実はこの写真には不可解なところがある。
赤枠の部分を見てほしい。真ん中にいる女性の足がない。
赤枠の部分を見てほしい。真ん中にいる女性の足がない。
そして、よく見ると宇宙人の顔の横部分に切れ目が入っている。これはどういうことか。
「これがエイプリルフールの企画で作られたコラージュ画像だったんです。」
「これがエイプリルフールの企画で作られたコラージュ画像だったんです。」
不思議な写真の検証などを行っているドイツのサイト「forgetomori(フォゲットモリ)」によって発覚したそうだ。

サイトによると1950年4月にドイツの週刊誌「Neue Illustrierte(ノイエ・イルストリーアテ)」に掲載された「エイプリルフール記事」だったらしい。
翌週発売の1950年4月5日号で「本誌は3月29日の4月号において、読者に対してイタズラをしました。」とネタばらしがされたという。

そうかエイプリルフールの企画だったのか。いい話を聞いた。飲み会などで使っていこうと思う。
今度、天狗のミイラの背中の写真というのがあるらしいので入荷したら見に行こうと思う。
今度、天狗のミイラの背中の写真というのがあるらしいので入荷したら見に行こうと思う。
だが、このカードダスの話はこれで終わらなかった。なんと、ほぼコンプリートした人に会うことができたのだ。
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オカルトのカードダスをほぼ集めた男

それは7/14に行われた「デイリーポータルZの怖いはなし」でのことだ。このオカルトのカードダスのプレゼンを行った後である。自分のブースにいたところ、一人の男性に話しかけかれ、「このカードを自分も集めてました。もしかしたら、コンプリートしているかもしれません」。

集めていた方が自分以外にもいたのか。なぜ、集め始めたのか、色々と聞きたい。伺ってみることになった。
大室さんという方である。
大室さんという方である。
お時間を頂戴し、インタビューに成功した。もしかしたら、大室さんを見たことがある方がいるかもしれない。以前、編集部の林さんの「もうひとつの人生ごっこ」で登場した方だ。
ノンスポーツのファイルには様々なカードが集められている。
ノンスポーツのファイルには様々なカードが集められている。
まずは話を聞く前に見せてもらった。見たことのないカードばかりで興奮しすぎたのか、口がカラカラになり、アイスコーヒーが到着して30秒でなくなった。
持ってないカードばかりだ。これでもコンプリートまで5、6枚足りないらしい。
持ってないカードばかりだ。これでもコンプリートまで5、6枚足りないらしい。
イースター島のモアイ像もレアカードである。有名なやつがレアカードの傾向がある。
イースター島のモアイ像もレアカードである。有名なやつがレアカードの傾向がある。
きちんと怖い幽霊の画像もある。真ん中のやつとかおしっこが漏れる。
きちんと怖い幽霊の画像もある。真ん中のやつとかおしっこが漏れる。
ずっと見ていられるが、話も聞きたい。集めたきっかけを聞いた。

――他にも持っている人がいるんだとびっくりしました。なんで、集め始めたんですか?

「元々、オカルトそのものに興味があって、昔からオカルト雑誌のムーやとトワイライトゾーンなどを読んでいました。
大学を卒業し、社会人だったので学生のときなどに比べて、興味のあるものにお金を使うことができた中で見つけたのがこのオカルトのカードダスでした。ロマンがありますよね」

――大体どのくらいの期間で集めたんですか?

「集中して集めたので半月ぐらいですかね。2000円分を一気に買って、束で持って帰ってました」

――大人の力だ・・・。
池袋で集めたそうだ。藤沢にはなかったが池袋にはあったのか。
池袋で集めたそうだ。藤沢にはなかったが池袋にはあったのか。
このカードが発売されたのが2001年。1997年にノストラダムスの大予言があり、人類は滅亡するとかしないなどで、オカルトが盛り上がった。そして、4年後、ブームとしては一段落したが、テレビでは新しいオカルトの番組が始まったりなど根強い人気はいまだに続いていた。

その中で発売されたオカルトのカード。大室さんも興味があって集めだしたが、途中で熱がさめてコンプリートしないまま時が流れた。しかし、今では「コンプリートしておけばよかったと後悔しています」と漏らしていた。
ちなみに好きなカードを聞いたところ「ビックフットやシーサーペントなどの昔ながらのUMAが好きですね」
ちなみに好きなカードを聞いたところ「ビックフットやシーサーペントなどの昔ながらのUMAが好きですね」
敬意を持ってビックフットが逃げるところを再現した。
敬意を持ってビックフットが逃げるところを再現した。
大室さんが集めているのはオカルトのカードだけではない。その一部を見せてもらった。
「メビウスというフランスのコミックアーティストが描いたマンガのワンシーンのカードです」
「メビウスというフランスのコミックアーティストが描いたマンガのワンシーンのカードです」
「このイラストにグッときて集めだしたんです」と言っているが、すごくわかる。SFチックな世界観が男心をくすぐるかっこよさだ。ドラゴンボールの鳥山明や、AKIRAの大友克洋もこの世界観に影響されたという。一度、マンガを見てみたい。

このメビウスのカードをきっかけにして色々なカードを集めて出したそうだ。他にも様々なカードがある。
「ワーナーブラザーズのキャラクターと海外のアスリートが載っているカードです」
「ワーナーブラザーズのキャラクターと海外のアスリートが載っているカードです」
「アメリカ大統領のカードとかもありますね」
「アメリカ大統領のカードとかもありますね」
大室さんは別にコレクターではない。完全にそろえるという熱心さはなく、自分の目当てのもの、好きなものが出れば満足だという。その気持ち、わかる。
貴重なものをありがとうございました。
貴重なものをありがとうございました。

カードをもらえました

この取材終了後、大室さんが集めていたオカルトのカードをなんとゆずっていただけることになった。「え、いいんですか?本当に大丈夫ですか?」と何度も念押ししたが「大丈夫です」とのことで本当になんかすみません。コンプリートを目指したいと思います。
うれしすぎてどや顔をしてしまった。
うれしすぎてどや顔をしてしまった。
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