特集 2018年7月30日
 

小麦粉の澱粉から『凉皮』を手作りしたい

小麦粉から澱粉を取り出して『凉皮』を作り、余った生地もおいしくいただいた。
小麦粉から澱粉を取り出して『凉皮』を作り、余った生地もおいしくいただいた。
小麦粉を捏ねて麺を作るのが好きなのだが、生地を伸ばして切るのとはまるっきり別のアプローチで作る、細長い麺状の食べ物を中華料理の店でいただいた。

これがツルンとしていてうまい。そして教えていただいた作り方がおもしろい。「え!そっちを使うの!」っていう製法なのである。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。

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凉皮ってなんだ

その料理を知ったのは、友人達と訪れた池袋の中華料理店。おいしい蘭州ラーメンを出す店で、そこの店員さんから前菜にと勧められたのが凉皮(リャンピー)だった。

メニューの写真を確認すると、見た目はきしめんみたいである。このあとラーメンを食べるのに、前菜できしめんを薦めるとはどういうことだろう。
さんずいの『涼』じゃなくて、にすいの『凉』だということに今気が付いた。意味は一緒らしい。
さんずいの『涼』じゃなくて、にすいの『凉』だということに今気が付いた。意味は一緒らしい。
凉皮とは何かと聞いてみたところ、小麦粉を捏ねた生地を水の中でよく揉んで、生地ではなく水に沈殿したものを蒸したもののようだ。え、そっち!

なるほど、小麦粉の澱粉を使うのか。ってこの説明でなんとなく理解できたのは、前に葛の根から葛餅を作ったりしているから(この記事)。

おもしろそうなので、その凉皮とやらを注文してみよう。
キュウリとピリ辛のタレで和えられた凉皮。うまい。
キュウリとピリ辛のタレで和えられた凉皮。うまい。
なるほど、これは涼しげな食べ物だ(食べたのは冬だったけど)。見た目はきしめんそっくりだけど、食べてみると普通の麺とはまるっきり違う食感。プルンプルンのクニュンクニュン。

麺というよりは、葛切りとかマロニーちゃんに近い食べ物で、これが小麦粉から作られているというのがおもしろい。

涼しい食べ物が欲しくなる季節になったことだし、手さぐりで自作をしてみよう。

材料は小麦粉と水だけ

凉皮の作り方だが、店員さんから詳しく聞いてきた訳ではないので、推測と経験だけで進んでいく。

まず肝心なのが小麦粉選びだろう。含まれているたんぱく質の量で、強力粉、中力粉、薄力粉と呼び名が変わるが、ここで必要なのは小麦粉の7割以上を占めている炭水化物=澱粉である。

いつも小麦粉はたんぱく質の割合しか気にしていなかったのだが、今更ながら炭水化物の塊なんだなと理解した。
天麩羅やクッキーなどで使う薄力粉。
天麩羅やクッキーなどで使う薄力粉。
たんぱく質は8%、炭水化物は76%。
たんぱく質は8%、炭水化物は76%。
パンや中華麺で使用する強力粉。
パンや中華麺で使用する強力粉。
たんぱく質は12%、炭水化物は72%。
たんぱく質は12%、炭水化物は72%。
凉皮に必要なのは澱粉だけなので、炭水化物の比率が高い薄力粉の方が多く作れる計算だ。粉自体の値段も安いし、薄力粉が正解だろう。

薄力粉500グラムに対して、水200グラムを加えて生地を作る。なんとなく塩を入れたくなるが、とりあえず無しとした。純粋に粉と水だけの生地である。
薄力粉に水だけ。塩やかんすいを入れたくなるけれど我慢。
薄力粉に水だけ。塩やかんすいを入れたくなるけれど我慢。
粉に水を入れたら、いきなりグイグイと捏ねるのではなく、まずは均一に水が行き渡るよう、力を入れずにオカラ状を目指す。このあたりは一般的な麺作りと同じ工程でいいはず。

そういえば前に、ちびっこ相手に麺の作り方を教える機会があったのだが、オカラの存在を彼らがまったく知らなくて、オカラ状が伝わらなくて困ったことがある。
オカラ状としか言いようがない状態なんだよね。なんて説明すればよかったんだろ。
オカラ状としか言いようがない状態なんだよね。なんて説明すればよかったんだろ。

生地を水で捏ねるという背徳感

この乾燥マッシュポテト風のもの(でピンとくるのか謎だ)をグイグイとまとめ上げ、しばらく休ませて、ちょっと捏ねなおしたのが凉皮を作るための生地となる。

たんぱく質の少ない薄力粉で作ったため、粘りと弾力がなく、生地というよりも粘土っぽい。
いつも作るうどんや中華麺とは違う生地ができた。
いつも作るうどんや中華麺とは違う生地ができた。
ここから先の工程が未体験ゾーン。この生地を水の中で揉んで澱粉を絞り出すのだ。

生地の置かれたボウルに水を1リットルほど注ぐと、生地を取り出す前に洗い物をはじめちゃったのではと、この段階でもう脳が混乱しはじめる。
ドキドキしながら水を入れた。間違ったことをやっている感がすごい。
ドキドキしながら水を入れた。間違ったことをやっている感がすごい。
水の中で生地をグイッと掌で押してみる。すると素直にニュイーンと変形して、力の加わった場所から白い霧状のものが現れた。

おお、これが小麦粉の70%以上を締める澱粉か。それにしてもこの作業、手の皮が涼しくて気持ちいい。なるほど、凉皮は作る段階から凉皮なのか。
ニュイーン。せっかく作った生地を水で揉むという謎の行為。
ニュイーン。せっかく作った生地を水で揉むという謎の行為。
フワフワと澱粉が水に溶けていく。
フワフワと澱粉が水に溶けていく。
汚れた衣類を洗うように、何度もザブザブと生地を揉んでいるうちに、薄力粉の少ないたんぱく質でなんとか結ばれていた生地が、だんだんと崩壊してきてしまった。
生地にはタンパク質=グルテンが残り、水には炭水化物=澱粉が溶けていく。
生地にはタンパク質=グルテンが残り、水には炭水化物=澱粉が溶けていく。
どこまで捏ね続けるべきかがよくわからないが、あまりやりすぎると生地が砕けて澱粉以外の成分も溶けだしてしまい、結果としてただの水で溶いた小麦粉になってしまう。適当なところで終了としよう。

気が付くと、そこらじゅうに水が飛び散っていて、白いカピカピができていた。
生地がボロボロになったので終了。
生地がボロボロになったので終了。
ザルに上げて生地から水を切る。滴り落ちる水が必要なのだ。
ザルに上げて生地から水を切る。滴り落ちる水が必要なのだ。
この白い水の中に澱粉が沈殿したら、まずは前半戦の成功である。

わかっていてやっているのだが、凉皮に使うのが残った生地ではなく、普通なら捨てそうな濁った水というのがおもしろい。

凝り固まった固定概念を覆してくれる、なかなか良い脳トレ体験だった。

強力粉で作るのが正解だったかも

ところでさっきは薄力粉で生地を作ったが、あの最後のボロボロになった状態がなんだか気になる。あれは正解なのだろうか。

もしかしたら強力粉で生地を作り、豊富なグルテンで強固につなぐことで、より良い結果となるのでは。

そこで強力粉500グラム、水250グラムで生地を作りなおしてみることにした。
強力粉は粘りが強いので、さっきよりも水を多くした。また捏ね時間も長めにしてみた。
強力粉は粘りが強いので、さっきよりも水を多くした。また捏ね時間も長めにしてみた。
この生地の揉み心地がとてもよかった。水の中でいくら揉んでもバラバラにならず、生地同士のくっつこうとする力が強いので、最後まで一塊の状態を保ってくれたのだ。

今回は脇役であるグルテンの存在が、主役である澱粉を引き立たせるために必要だったのである。
ここまで揉んでもバラバラにならない!
ここまで揉んでもバラバラにならない!

とはいっても、本来の目的である澱粉入りの水である。その出来栄えは薄力粉も強力粉もあまり変わらないようだ。

ただ個人的には作り心地の良さという点で、ちょっと高くても強力粉をお薦めたいところである。
薄力粉を揉んだ水。
薄力粉を揉んだ水。
強力粉を揉んだ水。
強力粉を揉んだ水。

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