特集 2018年7月31日

筋トレをすると芸風が変わる説は本当か

一発ギャグをやりました。芸風が変わるか調べなきゃいけないので。
一発ギャグをやりました。芸風が変わるか調べなきゃいけないので。
お笑い番組が好きなのだが「筋トレをすると芸風が変わる」という説を聞いたことがある。運動の効果でポジティブな性格が強まり、その影響で芸風も変わるというのだ。

興味があったので自分で試してみたら、確かに何かありそうだな、という感じはした。裸足になる一発ギャグを考えていたのだ。レポートします。
1987年東京出身。会社員。ハンバーグやカレーやチキンライスなどが好物なので、舌が子供すぎやしないかと心配になるときがある。だがコーヒーはブラックでも飲める。動画インタビュー

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ポジティブな芸風を手に入れました

運動をすると気持ちがポジティブになって芸風が変わる。

この記事は、筆者が上の説を実際に試してみた記録である。結果からお伝えすると、3日間の筋トレとランニングで、裸足になり声を張った一発ギャグをやるようになった。気持ちがポジティブになったからだ。
イメージですが、こうなった。
イメージですが、こうなった。
それでは、詳しく説明させてください。

「筋トレをすると芸風が変わる」

お笑い番組が好きで芸人さんの動向にも興味がある方なのだが、「筋トレをすると芸風が変わる」という説を聞いたことがある。日頃の運動は体への影響だけでなく、気持ちをポジティブにしてくれる効果もあり、特に芸人さんの場合は、それが芸風に影響するというのだ。

最近ライザップやゴールドジムがテレビでも取り上げられて、肉体改造に取り組む芸能人の方が多い。そして筋肉のついた立派な体をしている芸人さんと言うと、その体を活かしてポーズを取って叫んだり、コミカルな動きをする方が何となく思い浮かぶのだ。明るくて華やかである。ポジティブだ。

具体的にいうと、品川庄司の庄司さんやオードリーの春日さんなどが思い浮かぶ。
ポジティブな芸人さんのイメージ。ジムに行ってそうだ。
ポジティブな芸人さんのイメージ。ジムに行ってそうだ。
でもそのポジティブな芸風がトレーニングの精神面への影響なのか、というとこれはちょっと分からない。たまたま筋肉があったからそういう芸風を選んだだけかもしれないのだ。さっき挙げた芸人さんも、体を鍛え始める前の芸風は確かに今とは違ったかもしれないが、それが筋トレの影響だと一概には言えないだろう。

これは気持ちの問題なので本人でないと分からない部分が大きい。だから自分でやってみることにした。

一発ギャグで調べることに

調べ方はこうだ。

まずデイリーポータルZの編集部の皆さんに、日頃運動をしていない筆者の一発ギャグを見てもらう。そして3日間筋トレやランニングをして、運動をするようになった筆者の一発ギャグをあらためて見てもらう。ビフォアとアフターを比べてポジティブな芸風になったかどう判定してもらうのだ。

「一発ギャグやるの?大丈夫?」と思われたかもしれない。そうなのだ。でも筋トレによる精神面の変化を調べようと思ったら、自分でやるしか方法はない。
「一発ギャグ…」と思った。
「一発ギャグ…」と思った。
あと、3日間の筋トレ、という部分である。運動ってもっと長期的にやらないと目に見えるような変化はないんじゃないかとも思ったが、1回のランニングでも気持ちがリフレッシュしたりすることもあるだろう。たった3日間でどれだけ影響が出るのか、という点にも興味があったので、やってみることにした。
検証にあたって、日記をつけることにしました。考えていることを残しておく。
検証にあたって、日記をつけることにしました。考えていることを残しておく。
まだ運動をしていない1日目。なんか文句言ってる。
まだ運動をしていない1日目。なんか文句言ってる。
2018年7月23日

明日一発ギャグをする。なんでこんなことになってしまったのか。一発ギャグってなんだろうか。何が「一発」なのか。「一発」ってなんだ。なんでそんなに軽い言い方をするのか。誰がそんな名前をつけたんだろう。
素人なのに一発ギャグを考えた。思いのほか楽しかった。
素人なのに一発ギャグを考えた。思いのほか楽しかった。
面白いかどうかは置いておくとして、一発ギャグは1時間程度グダグダしていたら3つできた。

筋トレ前の一発ギャグ

日頃運動をしていないだらしのない体と精神で一発ギャグを考えた。そして編集部の皆さんに見せに来た。
ガランとした広いスペースで、3個、一発ギャグをやった。見るのも大変だったと思う。ありがとうございました。
ガランとした広いスペースで、3個、一発ギャグをやった。見るのも大変だったと思う。ありがとうございました。
気持ちに余裕のある方から順にご覧ください。
電車に乗って編集部を訪ね、一発ギャグをやって、電車に乗って家に帰った。このエネルギーの使い方はなんだろう。家に帰ってから2時間ほど放心状態だった。

好きな人に告白して返事を聞かずに逃げるように帰ってきた、みたいな気持ちだった。「あー」と言いながら天井を眺めて、突然クッションに抱きついたりする、あれだ。
甘酸っぱい夏だ。
甘酸っぱい夏だ。
魂が抜けてしまったらしい。最後のところ、あまりにネガティブだったのでぼかした。
魂が抜けてしまったらしい。最後のところ、あまりにネガティブだったのでぼかした。
2018年7月24日

一発ギャグを見せるために電車に乗った。階段を降りてSuicaをタッチしてホームで電車を待って、電車では建っていて途中から座った。全部一発ギャグを見せるためだ。こんな移動があるのだな、と思った。
ギャグ自体は「けっこうポジティブなんじゃないの?」という評価をいただいた。しかしライター與座さん(右)のTシャツ、ティッシュだ。
ギャグ自体は「けっこうポジティブなんじゃないの?」という評価をいただいた。しかしライター與座さん(右)のTシャツ、ティッシュだ。
そうなのだ。人前で一発ギャグをやろうとする時点でかなり前向きな精神の持ち主だろう。いつもより大きな動きをしたり声を出したりすることになった。

これが運動をすると変わるのだろうか。

筋トレとランニング

ギャグ自体もそうだが、ギャグをやって家に帰った後の、あの自分の中で整理をつける時間をなくしたい。その日の夜から筋トレを始めた。
躍動感がすごい。「どうにかするぞ!」という意気込みを感じる。
躍動感がすごい。「どうにかするぞ!」という意気込みを感じる。
何してる写真か分からないな。
何してる写真か分からないな。
インターネットや雑誌で初心者がやるトレーニングを色々調べたが、精神面に効く筋トレ、というものは見つからなかった。仕方がないので知ってるトレーニングを一通りやる。腹筋、背筋、腕立て伏せ、スクワットをやった。初日は20回を3セットやったが、関節が全部痛くなった。
日記。「そんなにイヤではない」とのこと。
日記。「そんなにイヤではない」とのこと。
2018年7月25日

筋肉痛がある。でもそんなにイヤではない。あとすごくよく寝れた。暑い暑いをあまり言わなくなった。これはポジティブだろうか。明日の朝、皇居に走りに行くことにした。楽しみである。

体が痛い。こんなんでポジティブになるだろうか。おもしろい一発ギャグとはなんだろうか。筋トレしてる間って一発ギャグのことが何も考えられない。今日は、はじめっから3セット目の感触だったので2セットでやめた。気持ちの上では4セットやったことになる。
(腕立て伏せ、腹筋、背筋、20回×2セット スクワット20回×1セット)
皇居を走る、というのもやってみた。
皇居を走る、というのもやってみた。
早朝、皇居に行って走ってみた。1周5kmだというので何とかなるかな、と思ったが最後の4分の1周ぐらいは歩いてしまった。
1周回った後。写真が走る前と同じだ。でも確かに1周はした。
1周回った後。写真が走る前と同じだ。でも確かに1周はした。
カモも見れたし。
カモも見れたし。
最後の方は歩いていたので写真を撮る余裕があった。

筋トレやランニング中に良い一発ギャグが思いついたら、それこそ運動がもたらしてくれた新しいアイデアだなと思っていたのだが「あと何回」とか「いつ休もうか」とかそんなことしか考えなかった。ランニング中は「次イスがあったら休憩」しか考えていなかった。

もし日々の仕事がお笑いだったら、この時間にギャグやネタを考えたりするのだろうか。僕はこのままだと「次イスがあったら休憩」というギャグをやることになる。
イス。
イス。
ところで、皇居に走りに行く時、家から皇居まではどんな格好で皆さん移動するのだろう。荷物が増えるのが嫌で走る格好で家を出たが、ちょっと恥ずかしかった。(後で調べたら、ランステーションというロッカーやシャワーがある設備があるらしいです)

気持ちに影響がありそうだ

3日目の筋トレは1セットに減っていたが、やることはやった。ずっと関節が痛い。普段運動しないからだ。

精神面への影響はどうかというと、これが1つ、分かりやすく良かったことがあった。1日を終えて布団に入る時の達成感がすごいのだ。よく眠れるし寝起きもいい。
清々しい!
清々しい!
普段ほとんど室内にいてずっとパソコンに向かっている生活と比べると、毎日がすごく清々しい。そりゃそうだろう、という話なのだが、この気持ちの延長線上にポジティブな性格があり、そして華やかな一発ギャグがあるかもしれないな、と考えるとじわじわ実感が湧いてくる。「芸風、変わるかもしれないな」と思った。

筋トレ後の一発ギャグ

では筋トレ後の一発ギャグを見てもらおう。約束の日の前日に一発ギャグをまた3つ考えて、電車に乗って編集部に向かった。
オーディションみたいだった。
オーディションみたいだった。
筋トレ前の一発ギャグを見てもらっていない方もいるので、それをあらためてやってから筋トレ後の一発ギャグを見てもらった。
皆さん和やかな雰囲気で見てくれてすごくホッとした。
気になる感想だが、
「筋トレ後の方が、ギャグが分かりやすくなったかも」
「筋トレ後の方が、ギャグが分かりやすくなったかも」
「ガッツポーズのやつがよかった」
「ガッツポーズのやつがよかった」
など、やはり変化はなくはないぞ、という感じの反応をいただいた。
そうなのだ。自分でも、裸足になったところと、
そうなのだ。自分でも、裸足になったところと、
大きな声を出したところは、何となくポジティブだなと思った。(写真は、手前にいる筆者が声を張った時の様子です)
大きな声を出したところは、何となくポジティブだなと思った。(写真は、手前にいる筆者が声を張った時の様子です)
ちなみに何で裸足になったのかというと、一青窈さんのモノマネ、というギャグをしていたからだ。後で説明して「なるほど~」という反応だったので、残念ながら伝わっていなかったようだが、そのアグレッシブな姿勢は自分でも評価したい。

事前に妻に見せた時も「笑わせようとしてる感じがする」と言われた。恥ずかしいが分からなくはない。見る人に向けて前向きに考えるようになったのだと思う。
今回分かったこと。
今回分かったこと。
家に帰ってからも悶々と考え込むことはなかった。電車に乗って一発ギャグをやって、電車に乗って帰ってきた。それだけである。

芸人だったらどうだろう

これが芸人さんだとしたらどうだろう。サンプル数が1なので確かなことは言えないが、上の画像の「裸足になった」以外の3点は、芸人さんにとってとても望ましい結果が出ているのではないだろうか。筋トレをしてみて、良かったということだ。
皆さんの意見をまとめて、そういう結論になりました。オーディションみたいだ。
皆さんの意見をまとめて、そういう結論になりました。オーディションみたいだ。

面白いかどうかはまた別の話です

というわけで、筋トレやランニングなどの運動は芸風に少なからず影響を与えそうだ、ということが分かった。性格は変えられない、という話をよく聞くけど、体を動かすだけである程度の調整ができるのかもしれない、と思うと明るい気持ちになる。ポジティブな芸風もきっと手に入るだろう。

ただ、それが面白いかどうか、となると全然別の話だ。もう僕の手に負える話ではない。面白いとか面白くないとか、一発ギャグを考えだすとそういうのが分からなくなりますね。
考えた一発ギャグ、タイトルの遷移。
考えた一発ギャグ、タイトルの遷移。

皇居を走る、というやつにも興味があったのでこの機会にやってみたが、景色がどんどん変わっていっておもしろかった。

でもやっぱり皇居に行くまでが大変である。もう一回行こうかとも思うが家から皇居までの道のりを考えると腰が重くなる。ランナーの方がたくさんいたが、皆さんどうしているのだろうかと思った。
景色が突然開けたりする。写真を撮っているということは、この時歩いている。
景色が突然開けたりする。写真を撮っているということは、この時歩いている。
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