特集 2018年8月28日

あのフタ付きのカップからコーヒーを飲む特訓

熱い熱い言う記事です。
熱い熱い言う記事です。
恵まれた環境で毎日楽しく暮らしているが、それでも不意に絶望することがある。例えば、喫茶店でフタのついたカップのコーヒーを飲もうとする時である。

怖くて飲めないのだ。

克服するべく特訓してみたら、いい方法が見つかった。
1987年東京出身。会社員。ハンバーグやカレーやチキンライスなどが好物なので、舌が子供すぎやしないかと心配になるときがある。だがコーヒーはブラックでも飲める。動画インタビュー

前の記事:セブンイレブンのチョコミントわらびはもっとかわいくなれる


フタからコーヒーを飲む姿がスマートだ

筆者をしょっちゅう絶望させるフタのついたカップがこちらである。
これだ。
これだ。
フタに穴が開いていて、そこから飲めるようになっている。
フタに穴が開いていて、そこから飲めるようになっている。
フタからコーヒーを飲む姿はスマートだ。
フタからコーヒーを飲む姿はスマートだ。
できるビジネスマンに見えるのだ。課長に昇進できる条件の中に『コーヒーをフタから飲める』という項目があるのかもしれない。

しかし僕はできなかった。熱々の液体がいつ口に到達するのか判然としない恐怖、いざコーヒーが口に注がれた時にどう処理したらいいか分からない恐怖、そういう工程ごとにいちいち存在する恐怖により、あのフタからコーヒーを飲めずにいたのだ。
恐怖一覧。
恐怖一覧。
しかしコーヒーが冷めるまで待ったり、フタを開け、口を尖らせてコーヒーをすするのはなんだか逃げている感じがする。やはり買ったその足でスパッとフタからコーヒーを愉しむ姿がスマートだと思うのだ。

コーヒーをフタから飲む特訓をしてみた。
できるビジネスマン。若くして課長。
できるビジネスマン。若くして課長。

熱いものを飲む工夫、というものがある

インターネットで調べると、熱いものを食べたり飲んだりするための工夫が見つかった。今回はそれと、筆者が考えたオリジナルの工夫をいくつか試してみたい。自分にぴったりのものを見つけて集中して練習すれば、あの恐怖を克服できるだろう。
河原に来た。
河原に来た。
ここで色々な飲み方を試して、
ここで色々な飲み方を試して、
こういった感じで評価していきます。
こういった感じで評価していきます。
試した飲み方は8種類。8種類もあれば、自分にぴったりの飲み方と出会えるだろう。
ちなみに、今回水筒に入れて持ってきたコーヒーの温度は83.8度。
ちなみに、今回水筒に入れて持ってきたコーヒーの温度は83.8度。
後日テイクアウトして計ってみたベローチェのコーヒーの温度は73.8度、自販機で売っていた「あったか~い」の缶コーヒーは58.3度だった。

だから、今日持ってきたのはバカがいれたコーヒーだということが分かる。コーヒーは朝、自分でいれた。

1杯で何通りかの飲み方を試し、温度が下がってきちゃったな、と思ったら全部飲んで水筒から入れ直す。一番低い時で70度だったので、だいたい70度から80度くらいのコーヒーを飲んでいると思ってご覧ください。

工夫1<舌の先を歯茎の裏に隠す>

まずはインターネットで見つけた方法である。

人間の、舌の温度を感じる機能自体は、訓練でコントロールできるようなものではないらしい。しかし舌の温点(温度を感じるところ)をうまく避けるテクニックはあるようだ。
温点は舌の先に集中していて、逆に舌の中央は少ないらしい。
温点は舌の先に集中していて、逆に舌の中央は少ないらしい。
つまり舌の先をこうやって隠してしまえば、熱さを感じにくくなるのだ。
つまり舌の先をこうやって隠してしまえば、熱さを感じにくくなるのだ。
なるほど。いい感じがする。やってみよう。

持ってきたカップにコーヒーを入れて、口に近づけてゆっくり傾ける。
怖い!!
怖い!!
怖い。普通に飲む時の3倍は怖い。舌の真ん中が怖がってプルプル震えているのが分かる。突然、牛タンのスープが脳裏に浮かぶ。
牛タンのスープ。
牛タンのスープ。
「大丈夫だ、お前、温点が少ないらしいぞ!」と励ましても舌の真ん中は聞く耳を持たない。無理もないだろう。今までおっかないものに最初に触れるのは舌先の役割だったのだ。

ふれあい広場にいる気性の荒いヤギを撫でる時、肘から触れようとしているようなものなのだ。そんなの怖い。無理だ。
罰ゲームとしか思えない。
罰ゲームとしか思えない。
それでもなんとか飲む。なるほど熱さはそこまでじゃないかもしれないぞ、と思う。
それでもなんとか飲む。なるほど熱さはそこまでじゃないかもしれないぞ、と思う。
でも結局唇は熱いし、なによりすごく怖い。一口ごとに崖から飛び降りるような勇気を要求される。インターネットで得た情報も、いざやってみると意外な落とし穴がある。
すごく怖かったです。
すごく怖かったです。
でもこれ、そもそも舌の先で熱いものに触りたがる僕の方に問題がある。この習慣をなくせば、と思うのだがこれが難しい。変えようと思ってもなかなか変えられないのが、よく使うサイトのパスワードと習慣である。どうしたらいいんだろう。

工夫2<舌を巻く>

これも同じくインターネットで得た情報である。
舌の先がコーヒーに触れないので熱さを感じにくい。
舌の先がコーヒーに触れないので熱さを感じにくい。
舌の付け根が怖い!!
舌の付け根が怖い!!
舌の付け根が焼けてしまうんじゃないかと思う。舌の付け根なんて絶対に焼かれたくない。そんなのってもう拷問じゃないか。
飲むと、まあそんな熱くもない気がする。というか、パニックでよく分からない。
飲むと、まあそんな熱くもない気がする。というか、パニックでよく分からない。
工夫1と同じく、すごく怖いが飲んでみると確かに熱くないかも、と思う。でも確かに熱くなかったぞ!と思いながらコップを傾ける二口目もすごく怖い。いつ慣れるんだろう。
<歯茎の裏に隠す>より熱く感じた。
<歯茎の裏に隠す>より熱く感じた。

工夫3<歯を食いしばる>

ここから、以上の情報をもとに自分で考えた工夫である。
歯を食いしばる。
歯を食いしばる。
コーヒーが口の中に入ってくる前に、一度唇と歯の間で受け止める。虫歯になりそうな作戦だが、なにしろ舌に触れないので熱くないはず。万が一熱くても、最初から歯を食いしばっているので便利。
歯を食いしばりながら飲む。熱くない!
歯を食いしばりながら飲む。熱くない!
これは思いのほか良かった。唇が熱いのさえやり過ごせればその後はかなり快適である。ただ一口ごとにビンタされる準備の顔をしないといけないので大変。
怖さが減るのがとてもありがたかった。
怖さが減るのがとてもありがたかった。

工夫4<思い切りすする>

空気を一緒に含むようにしてすすって飲むと、熱さが和らぐそうだ。
空気を吸う人の図。
空気を吸う人の図。
むせた。
むせた。
一緒に吸った空気でコーヒーが冷めやすくなるのだろうか。舌先も自然に避けて口の中に入るのでよかった。ただむせるしうるさい。あまりかっこよくない気もする。そもそもスマートに飲みたいという話なので、手軽にかっこよく飲めないならばいっそ冷まして飲んだ方がいいだろう。
ほどほどにやればとてもいいと思った。
ほどほどにやればとてもいいと思った。

工夫5<氷を含んでおく>

熱いのが嫌なら何しろ冷やせばいいのだ。頭の悪そうな作戦だが、こういうのが案外良かったりするのだ。
こういう図で「氷」ってあまり見ませんね。
こういう図で「氷」ってあまり見ませんね。
水筒に氷を入れて持ってきた。
水筒に氷を入れて持ってきた。
うん。なるほど。
うん。なるほど。
冷たさと熱さのヒリヒリが口に点在している。全体としては熱いんだか冷たいんだかよく分からない。熱くてたまらない、という感じではないのである意味成功である。そしてコーヒーが全然おいしくない。
氷が近くにない状況もたくさんあると思うので、手軽さは星1つ。
氷が近くにない状況もたくさんあると思うので、手軽さは星1つ。
この工夫の派生として「水を含んで飲む」というのもやってみた。
唇が熱さを感じた瞬間、びっくりして水を飲んでしまう。氷の方がいいだろう。写真は近くに咲いていたコスモス。
唇が熱さを感じた瞬間、びっくりして水を飲んでしまう。氷の方がいいだろう。写真は近くに咲いていたコスモス。

工夫6<距離を空けて飲む>

コーヒーはすぐ飲みたい。ただ口に入る時には冷めていてほしい。このわがままを叶えるのだとしたら、飲む動作の一瞬のうちに冷ますしかないだろう。そこで距離を空けて上空から口にコーヒーを注ぐ作戦である。
いよいよこの図の意味がない。
いよいよこの図の意味がない。
もうこれしかない。
もうこれしかない。
怖い…!
怖い…!
カップのフタが透けて黒い液体が迫ってくる様子が分かる。
熱い!
熱い!
アゴが熱かった。口の中は全然熱くなかった。熱い場所はその時々によって変わるだろう。不思議なことだけど。
他の方法となんか違う感じがしたので星では評価できませんでした。
他の方法となんか違う感じがしたので星では評価できませんでした。

工夫7<他の感覚を閉ざして飲む>

小手先のテクニックに頼らず、自分の生来の反射神経を信頼してみるのはどうだろう。口の中の感覚が普段より鋭くなっていれば、熱いコーヒーも無意識のうちにうまく処理してくれるのではないか。口の中の神経を研ぎ澄ませるために敢えて視覚、嗅覚、聴覚といった他の感覚を閉ざして飲んでみる。
情報が0の図。ファイルサイズは24キロバイトあります。
情報が0の図。ファイルサイズは24キロバイトあります。
耳栓をして、鼻をつまみ、目を固く閉じて飲む。
耳栓をして、鼻をつまみ、目を固く閉じて飲む。
熱い!
熱い!
今までと同じだ。今までと同じ熱さ。それに加えて耳がキーンとなって慌てて耳栓を外した。急にたくさん息を飲んだからだろうか。危ないのでやらない方がいい。
何もしない時と同じなので全部星3つ。
何もしない時と同じなので全部星3つ。

工夫8<飲まない>

買ったコーヒーを熱々のまま、フタのまま飲むために、飲まない、というのはどうだろうか。
飲まない時の口の中の様子。
飲まない時の口の中の様子。
飲まないで、見る、という工夫。フタは何となく魅力的な立体をしているなと思う。
飲まないで、見る、という工夫。フタは何となく魅力的な立体をしているなと思う。
こういう形の公園の遊具があったら楽しいと思う。
こういう形の公園の遊具があったら楽しいと思う。
嗅ぐ。コーヒーのいい香りがする。
嗅ぐ。コーヒーのいい香りがする。
熱さは全然ないし無理な姿勢もしていないのでとても楽だ。いい香りもするし。
この方法が最高の星の数になってしまった。困る。
この方法が最高の星の数になってしまった。困る。
困ったところで、飲み方の工夫は以上だ。

飲み方のコツが見つかった

8種類試してみたが、どれも一長一短だった。
中でも<歯を食いしばる>が良さそうな気がして何回か試した。
中でも<歯を食いしばる>が良さそうな気がして何回か試した。
自分で考えたものだし愛着があったのだろう。アゴが疲れるけど飲みやすい。
克服する頃にはすごくたくましいアゴになっているかもしれない。
克服する頃にはすごくたくましいアゴになっているかもしれない。
と思ったら、繰り返すうちにあまり歯を食いしばらずに飲めるようになっていた。コーヒーが冷めたのだろうかと思って水筒から入れなおしてみるが、やっぱり最初ほど食いしばらずに飲める。

どうやって飲んでいるのだろうと、口の中に神経を集中してみると、舌の先を歯茎に押し付けて隠していた。
こういうことか!と思った。
こういうことか!と思った。
「舌の真ん中で受け止めるぞー」と思いながら飲むと怖いが、一度歯の手前でコーヒーを受け取り、そのあと舌先を避けて口の中に送り込むイメージで飲むと、自然に、そこまで熱がらずに飲める。
<歯をくいしばる>、<思い切りすする>、<舌の先を歯茎の裏に隠す>の複合技。
<歯をくいしばる>、<思い切りすする>、<舌の先を歯茎の裏に隠す>の複合技。
有益な情報を発見してしまったんじゃないか、これは。工夫8<飲まない>とか言ってる場合じゃなかった。誰にでも当てはまるものじゃないかもしれないが、少なくとも僕はコーヒーのフタへの苦手意識がなくなった。やってみるものである。
後日、習得した技を試すために94.8度のコーヒーを用意した。
後日、習得した技を試すために94.8度のコーヒーを用意した。
いい方法が見つかって苦手意識もなくなった。最後に調子に乗って90度超えのコーヒーである。

「やっぱり熱いものは熱い!」で景気良く記事を終わろうと思ったら、もうどうしたって飲めなかった。飲みたくなかった。
まずもう、側面を普通に持てなかった。
まずもう、側面を普通に持てなかった。

工夫9<おいしく飲める温度で飲む>

撮影中は劇的に飲みやすい、という方法がなかなか見つからず、思いついた飲み方を手当たり次第に試していた。
これは<声を出しながら飲む>という工夫。飲めなかった。
これは<声を出しながら飲む>という工夫。飲めなかった。
これは<熱くないと思い込む>という工夫。思い込めなかった。熱かった。
これは<熱くないと思い込む>という工夫。思い込めなかった。熱かった。
今更ですが、熱いものの飲み過ぎは体に悪いらしい。かっこつけずにほどほどの温度のコーヒーを飲むのが一番おいしい。おいしいのが一番である。
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