特集 2018年10月15日

インドの発酵バターオイルで作るフライドポテトは1つ上いくうまさ

市販品のギー。ネットや輸入食材店等で買えます。
市販品のギー。ネットや輸入食材店等で買えます。
インドに発酵バターをゆっくり加熱して作られるギーというオイルがあります。そのままのバターと異なり、加熱ろ過することで水分、糖分、蛋白質などが除去され、腐敗しにくく、常温での長期保存が可能なオイルです。

ギーはアメリカのTIME誌の「最も健康的な食品50」に選出されているそうで、美容、健康の為に積極的に料理に使う人も多いのだとか。バターより軽い味わいながら、しっかりとしたコクがありかなり美味しいらしい。

調べてみると、家でも割と簡単にできるようなので作ってみました。そして、それで冷凍フライドポテトを揚げてみました。1つ上いくうまさになりました。
1972年生まれ。元機械設計屋の工業製造業系ライター。普段は工業、製造業関係、テクノロジー全般の記事を多く書いています。元プロボクサーでウルトラマラソンを走ります。日本酒利き酒師の資格があり、ライター以外に日本酒と発酵食品をメインにした飲み屋も経営しているので、体力実践系、各種料理、日本酒関係の記事も多く書いています。(動画インタビュー

前の記事:タイの発酵塩漬け魚調味料はAmazonで買えて洋食でもうまい

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ちびくろサンボの虎のバターはギー

まずは市販品を取り寄せてみました。アマゾンでも楽天でも、色々なメーカーの物が売っています。また、輸入食材店や都内の高級スーパーなどでも買えるようです。
オランダ産のギー。ちなみにこのギーは100gで約1200円。普通の揚げ油の40倍ぐらいのお値段。
オランダ産のギー。ちなみにこのギーは100gで約1200円。普通の揚げ油の40倍ぐらいのお値段。
ギーは発酵バターを加熱することで不純物を取り除いてつくられます。原材料もバターのみ。以前、高級バターでバター醤油ライスなんてネタをやりましたが、バターを原材料にしたオイルなので、価格は高級バターの上をいく、なかなかのいいお値段です。
日本の常温程度だと白く固まるようです。
日本の常温程度だと白く固まるようです。
ビタミンが豊富だとか、コレステロールを下げるとか、美容にいいとか色々いい点があるようです。それはそれとして、味としてはバター由来の甘味や旨味を強く感じるものの、かなりサラサラとした口当たり。後味にフワッとバターの香りを感じますが、言われなければ元がバターなのか分からない程度の風味です。
オリジナル版のちびくろサンボ。つづりは違いますが、舞台がインドなので同じ物と思われます。こちらの記事より。
オリジナル版のちびくろサンボ。つづりは違いますが、舞台がインドなので同じ物と思われます。こちらの記事より。
絵本の「ちびくろサンボ」では、虎がグルグル回りバターになってしまい、それでホットケーキを焼く話があります。あのバターはどうやらこのギーのようです。インドでは、カレーに入れるなど料理に使われる事はもちろん、宗教儀式にも多く使われます。かなり身近なもののようです

ギーで野菜を炒める

それでは入手したギーを使って料理を作ります。
使い方は普通のバターと大体同じ。
使い方は普通のバターと大体同じ。
カレーに入れて煮込んだり、炒め物の油としてつかったり、使い方は普通のバターと変わりません。コーヒーに入れてバターコーヒーとして飲むなんて使い方もあるようです。
サッと炒めて塩コショウで味付け。
サッと炒めて塩コショウで味付け。
ここはシンプルに野菜炒めに使ってみます。フライパンにギーを入れ、パプリカとブロッコリーを炒めます。ブロッコリーは軽く下茹でしてあります。味付けは塩コショウのみ。
ほんのりバターの香り。
ほんのりバターの香り。
出来上がりがこちら。加熱することで、ギーからバターの甘い香りがほのかに立ち上ってきます。
こりゃうまいね!
こりゃうまいね!
食べてみると、バターで炒めた時よりもアッサリとした口当たりなのに、コクがあって野菜の甘味が増したように感じます。それでいて、しつこくなく、油のべたつきがあまりない。とてもうまいです。
日本酒にも合うね。
日本酒にも合うね。
ギーはラードやオリーブオイルとも違い、バターそのものとも違う美味しい油でした。「自宅で肉屋のコロッケを作る方法」という記事で出来立てのラードのうまさについて書きましたが、やはりいい油は食材の旨味を引き出します。値段はあれでそれなんですが、ここ一番で何か!という時にちょっと使うと、一段上の味となるでしょう。

ギー、うまいです。

ギーを作ってみる

それではギーを自作してみます。市販品のギーは結構な値段ですが、自分で作ればそれと比べてかなり安くできます。作り方もそれほど難しくありません。
業務用発酵バター900g。約2000円。
業務用発酵バター900g。約2000円。
まずは無塩の発酵バターを用意します。インドではマカーンと言うそうです。本来はインドの伝統的な「チャーン製法」とやらでつくられた発酵バターを使うそうですが、そこは日本なので普通に業務用の発酵バターです。製菓材料店などで買えます。

(追記:よつ葉の発酵バターはチャーン製法で作られているそうです。うっかり本格的な材料使っていました。)
ちょっともったいない気もするが、まとめて加熱。
ちょっともったいない気もするが、まとめて加熱。
作り方は、発酵バターを鍋にいれて加熱。最初は中火ぐらいゆっくりとかし、全部とけたら出来る限り弱火にします。
慌てず加熱し続ける。
慌てず加熱し続ける。
あとは時々かき混ぜながらゆっくり加熱していきます。急激に加熱すると焦げて茶色くなってしまうので、火加減には十分注意してください。
アクは最後にまとめて取り除いてもいいようです。
アクは最後にまとめて取り除いてもいいようです。
加熱を続けるとアクが出てきます。軽くアクを取り除きながら加熱を続けます。
加熱に約1時間。ここから先も長い。
加熱に約1時間。ここから先も長い。
加熱をつづけていくと、やがて泡が小さくなり、鍋底が透けて見えるぐらいに溶けたバターが澄んできます。ここまできたら加熱終了。
コーヒーのペーパーフィルターだと目が細かすぎてやや時間がかかります。
コーヒーのペーパーフィルターだと目が細かすぎてやや時間がかかります。
全体のアクをすくったあと、冷まして濾していきます。コーヒーのペーパーフィルターやキッチンペーパー、サラシなどで濾します。あまり目の細かいものだと時間がかかりますが、そのぶん澄んだ色になります。
ギー完成。綺麗な黄金色。
ギー完成。綺麗な黄金色。
450gぐらいの発酵バターから350から400g程度のギーができました。市販品の4分の1から5分の1程度の費用で作れます。自作の食品は、大体市販品よりかなり高くなるものですが、これは自作の方がかなり安くなります。
日本の室温だとすぐに白く固まる。
日本の室温だとすぐに白く固まる。
ギーは酸化しにくい油だそうで、常温で1年ぐらいは保存できるそうです。これでしばらくはギーを使った色々な料理が楽しめるでしょう。

ギーで冷凍フライドポテトを揚げる

こうしてギーができました。健康にいい油が沢山出きたので、これでジャンクフードと言われるものを健康な方向に持っていこうと思います。ということで用意したのがこちら。
ビールのお供にどうぞ。
ビールのお供にどうぞ。
冷凍フライドポテトです。ジャガイモはビタミンCが多いし、熱でもそのビタミンが壊れにくい。保存性もいいので、昔は船乗りがビタミン不足でなる病気予防に食べた食材。ビタミンと炭水化物と、生命活動に必要な塩分を合わせてとれる理想的な食材ともいえるフライドポテトですが、ジャンクフードと言われることも多い。

こいつをギーでヘルシーに揚げてみます。
ヘルシーの為だから自作ギーを惜しみなく使う。
ヘルシーの為だから自作ギーを惜しみなく使う。
作ったギーの半分を揚げ用の中華鍋に投入。180度に加熱して細切りポテトを揚げていきます。
この油ならフライドポテトで健康になっちゃうなー。
この油ならフライドポテトで健康になっちゃうなー。
3分ほど揚げて油を切り、塩を振ってギーフライドポテトの出来上がりです。
揚げたてフライドポテトのいい香り。
揚げたてフライドポテトのいい香り。
出来上がったギーフライドポテトは、やや揚げ色が濃いというぐらいで、香りなどは変わりません。表面もパリッとしています。
なんだこりゃ。今まで食べた事のないうまさのフライドポテトだ!
なんだこりゃ。今まで食べた事のないうまさのフライドポテトだ!
ギーフライドポテトは、後味にコクがあり、ジャガイモの甘味などがより前に出てくる感じがします。高級感というか、今まで食べた事のないフライドポテトのうまさです。バター由来の甘味のある香りがして、それがコクにつながるといいましょうか。

スーパーの特売で買ってきた冷凍フライドポテトが、1つ上をいく何か別の料理になったようなうまさです。これはいい。
比較せねばなるまい。
比較せねばなるまい。
試しに同じ冷凍フライドポテトを、普通に売られている揚げ油で揚げてみました。
こちらも揚げたてのいい香りはするけどね。
こちらも揚げたてのいい香りはするけどね。
先ほどと比べると若干白い見た目。いや、でもフライドポテトならばこんなものでしょう。
こちらも十分うまいよ。
こちらも十分うまいよ。
食べてみると、こちらもサクサクで、ジャガイモの甘味があって美味しいです。ただ、ギーで揚げたものと比べるとかなりあっさりしている。ジャガイモの味も軽いです。ケチャップとか、何かディップ的なものが欲しくなる軽快さ。

これはこれで十分美味しいです。ギーで揚げたものとは別の方向性。好みの問題はあると思いますが、少なくともギーで揚げたものは、風味や旨味は通常の油より1つ上をいくうまさです。
どちらもビールに合う事は間違いない。
どちらもビールに合う事は間違いない。
そして、どちらにも共通して言えることは、フライドポテトはビールに合うということ。通常の油で揚げたものは日本の軽快なビールでも、しっかりとした味わいの海外のビールでもオールマイティに合わせられる万能な味。ギーフライドポテトは、ベルギービールなど、ちょっと濃い目のビールをゆっくりと飲むときにいいかもしれません。
ビールとフライドポテト最高!
ビールとフライドポテト最高!
ギーフライドポテト。一度はやってみる価値あります。購入品では難しいかもしれませんが、自作ならなんとかなるかもしれません。是非試してみてください。

超高級フライドポテト

ギーで作るフライドポテトは、自作でも単純計算で市販の揚げ油を使うよりも10倍程度費用がかかります。手間もかかりますが、その差を埋めるだけのうまさはあると思います。超高級フライドポテトです。

そして、フライドポテトを揚げたあとのギーはまだ使えるので、それで野菜や肉を素揚げして、ギーフォンデュをすると最高にうまいです。おいしい物はだいた油と塩と糖で出来ています。

油を恐れてはいけません。悪いのは油ではなく、変えないといけないと思っているのに怠惰な生活を許しているあなたの心です。食べ過ぎたら動きましょう。それだけで悪は善に変わります。動けよさらば開かれん。
ギーで、ちびくろサンボのホットケーキを作ってみました。バターとは違ううまさでした。またギーを作ろう。
ギーで、ちびくろサンボのホットケーキを作ってみました。バターとは違ううまさでした。またギーを作ろう。
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