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勉強しないと売ってくれないの? |
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看板考案者の奥さま |
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看板考案者の息子さん |
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写真5:息子さんの看板はシンプル |
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看板考案者のお孫さん。お店を継いでいる |
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勉強しなくても買えます |
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平日の午前中、強気な看板のスズキサイクルにやって来た。まだ店は開いていない。
2階が住居になっている様だったので、玄関のベルを鳴らした。
中から出てきたのは、感じのいい初老の女性だった。ちょっと面倒臭いオジサンが出てくるに違いないと思っていたので少し安心。
「あれは、亡くなった主人が作ったんですよ」
ご主人は7年前に亡くなっていた。今はお孫さんがお店を継いでいるらしい。
「バスからこの看板を見て、次のバス停でわざわざ降りてくる人もいます」
僕もここを通る度に気にかかっていました。
「隣の理髪店は息子の店なんです。孫が来るまでそっちで話を聞いてみたらどうですか?」
自転車屋さんの隣りには「ヘア−サロン・カモメ」という理髪店があった。そこでは息子さん夫婦が働いている。
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「この看板を作って20年くらい経つと思います。結構インパクトが強いみたいですね」
と息子さん。
もしかして、この息子さんがあまりにも勉強しなかったから
「勉強しない学生には売らないよ」
って思い付いたんじゃないだろうか?広く「学生」と呼びかけている様で、実は自分の息子だけに向けたプライベートなメッセージなのでは?
聞いてみた。
「はははは。どうだったかなあ、まあ、あまり勉強は好きな方じゃなかったけど」
失礼な事を聞いてすみません。
「この前も、偶然この前を通りかかった多摩ニュータウンの人から、この看板を見て注文が入りましてね、多摩まで配達したそうですよ」
「わざわざ多摩まで、ですか」
「ええ。そういった意味でもこの看板の効果は大きいですよね。父から、看板の大切さを教わりました」
という息子さんのお店「ヘア−サロン・カモメ」の看板は、シンプルでモダンだった(写真5)。
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お昼をまわった頃、ようやくお孫さんがやって来た。
鈴木俊一さん、29才。タンクトップ姿のワイルドな青年だった。長髪を後ろで束ねている。
19才の時からこの店に立ち、しばらくはおじいさんと一緒に働いていた。おじいさんが亡くなってからは1人でお店を経営している。
「おじいちゃんは凄く頑固だったんです。だから、この看板の文句もピッタリだったんですけど、この看板で店にいるのが僕だとあんまりしっくりこないんですよね」
昔は、悪い事をしている子供がいたら近所の大人たちが叱りつけたものだ。なんて話を良く聞くが、「勉強しない学生には売らないよ」もそういった類いのメッセージだったようだ。書体はポップだけど。
「そろそろお店も古くなったんで、改築したいと思っています」
と俊一さん。その時には、この看板も張り替えてしまう予定だという。
あっ、ちなみに勉強しない学生でも自転車は売ってくれるそうです。
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