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コネタ


コネタ071
 
“境目”にあるマンション

このガラス張りの渡り廊下の意味は?
全国の“境目”フェチの皆様こんばんは。
あなたが今住んでるのは何区ですか? 何市? あるいは、何町? みんな普通に答えられるはずです。中には道路を一本またいだら○○市になる、と言う境目の近辺に住んでらっしゃる方も居るでしょう。しかし今日紹介するマンションはマンションの入り口側と奥の部屋で区市が変わってしまうというちょっと不条理なマンションだ。何の変哲のない路地裏にも、住居の僅かな隙間にも、公園の中にだって区境は存在する。不条理に。
2つの区市にまたがってしまった数奇な運命のマンションをリポート! えー、地味ネタです。

梅田カズヒコ

小田急線喜多見駅

小田急線喜多見駅からスタート。
今回の目的地のマンションは世田谷区と狛江市にまたがったマンションです。
小田急線喜多見駅をスタートし、そのマンションを目指します。喜多見駅はちょうど世田谷区と狛江市の“境目”に在る駅。つまりここから境界線上をずっと歩いていけば例のマンションにたどり着けるという寸法なのだ。

と、言うわけで境界線上を歩いていきます。DPZ名物の“安い赤線”と一緒にお楽しみください!

小田急喜多見駅は世田谷区より。だから…
ほら、駅前は世田谷区。(マウスオンしてください)

駅の側道をスタート。どうやらあの白い看板に狛江市と書いてあるので、ここが境目の道です。
なんのへんてつもない、路地裏ですが境目はちゃんと存在する。右が世田谷、左が狛江。

よーく見てください。道路の右、世田谷区の方だけに点々と駐輪禁止のマークがあります。つまりこの道路の左側に自転車を停めておけば撤去されません。少なくとも世田谷区からは。狛江市の人には撤去されるかもしれません。

狛江市の住所表記の看板と世田谷区の道路ミラーが一緒に写真に写りこんでしまいました。しかしご安心ください。
どうやら道路ミラーが僅かに道路側にあります。この僅かな隙間が境目のようです。

手前右のマンホールには狛江市のマーク。後方左のマンホールには世田谷区のマーク。つまり境目はこの間。
と、ここで境目が突如住宅地を突っ切っていく。路地どころか道ですらない境目です。右の家は世田谷、左の駐車スペースは狛江。

どうやらこの家の間が境目です。いよいよ混迷を極めだす、境目。なぜこんなとこに境目があるのでしょう。右の家は世田谷、左は狛江、シュールです。真ん中の木は狛江側に生えていました。都会の罠です。
この僅かな隙間が境目。左(狛江市側)の木が生い茂っていて世田谷区に入り込んでいます。

なんの変哲もない駐車場ですが…(マウスオン)ここに境目を示す標識が。
かなり難易度高いですがちょうど日影の部分が世田谷区で日向の部分が狛江市です。つまり、この“1”に停めてる方、車を停める場合右輪は世田谷区、左輪は狛江市に停める事になります。

やっと境目がちゃんとした道にでる。
と、思いきや、どうやらここが境目。真ん中の緑はどちらの区にも属さない非武装地帯です。(←違います)

そうこうしてるうちに狛江市側から公園へ。と思いきや(マウスオン)例の境界を示す標識。公園を一歩またぐと世田谷区です。
えっと、公園の中のこのくねくねした道がどうやら境目です。

川べりに出ました。なんとこの風景、すべて世田谷区なのです。23区内にもこんな自然が残っているんですね。ここが那須だと言ってもみんな信じそうです。

対岸の公園に来ました。この写真の芝生の真ん中にちょっと灰色で、ゴルフのカップみたいになってるのが(マウスオン)そう、例の境目表記です。しかも両区市揃い踏み。
えー、ここにもポイントが。手前と奥のポイントわかりますか?この木は微妙ですが直線をひくとギリギリ世田谷区側です。

子供が遊ぶ公園のいたるところに境目の表記が。この公園は子供のかわいいゲームと大人のせめぎあいのゲームが両方見られる公園です。
やっと公園の外に出る。

道路の舗装具合ですぐわかる。左が狛江
道路を渡り終えるととうとう問題のマンションへ。

ついにたどり着いた! またがったマンション
境目にあると思われるこの消火栓には区の表記がない。きっと両市区友好の証だ。

このマンションの狛江側のエントランス。
えっとこの場所は狛江市の土地の上に立てられた世田谷区のマンションという事になります。

いよいよ、最終目的地へ。

このマンションには、ちょっと数奇なエピソードがある。この団地は、全部で8棟からなる世田谷区の集合型マンションだ。ところが、この8棟のうち2棟が狛江市の境界線にかかってしまった。別に問題はないと思うだろう。
もちろん、問題はない。ただ、かかってしまったマンションの住所が狛江市という事になれば、住宅の価格が下がってしまうそうだ。やはり世田谷区内と聞くと便利なイメージで人気があがると言う事だろう。
そこで考えた結果、この2棟のマンションの出入り口を世田谷区側につけ、郵便ポストも世田谷区側に設置した。郵便物が届く場所がその人の住所になるわけだから、郵便ポストを世田谷区側につけてしまうと言うわけだ。
そのため一風変わった造りになったマンションです。

上の写真はこの図の赤字の部分から撮影しています。GIIとGIと書かれたこの不思議な形のマンション、このGIが狛江側、GIIが世田谷側です。そして両者を結ぶ細い部分、それが…
GII の郵便ポスト

この渡り廊下です。ここに本来なら境目が存在します。
いくら渡り廊下とはいえ、同じ建物の一部である事は変わりないのである。

渡り廊下のこっちが狛江(であったはずの場所)。
こっちが世田谷。

高級マンションらしい素敵な造りです。
ちなみにこのマンションの裏側の緑地にはこんな表示が。とここで突然調布市の文字。そうこの辺りは世田谷・狛江・調布3区市が錯綜する地帯なのだ。

ずっと境目を追ってきましたが…

このマンションを見て思った。境目なんてどうだっていいんじゃないか。いちいちこっちが○○区だとか、ここは○○区じゃないと言い合って何になる。そんな事どうだっていい。問題なのは、今住んでいるその場所が自分にとって幸福な場所であるかどうかじゃないか、と思う。そんな事をいちいち調べるより、自分の人生をどう生きるかを考えたほうがよさそうだ。

そう、このお店のように。でたらめでいいんだ、場所なんて。

本日のおまけ

成城の駅前の料理屋の前の看板。上からNAPORI、屋久島永田岳、犬吠岬、富士山頂、大雪山旭岳と各地点への距離が示されている。で、何がいいたいんでしょう。わからない。でも、なんだかほほえましい。
 

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