●かなしい名前にシンパシー感じて
あまりにむごい名前を負わされたヘクソカズラ。調べてみると万葉集にも詠まれている花でもあるそうで、その汚名の歴史は長い。
本来なら割とそこら辺に生えている雑草のような植物らしいのだが、素人ということもあって私には見つけられなかった。そこで今回は、内山グリーン株式会社・君津グリーンセンター様にお願いして、実際にそこで生えているものを見せてもらえることになった。
案内してくださったのは、そちらにお勤めの小池英憲さん。樹木医であり、また森林インストラクターでもある森のプロフェッショナルだ。
「ハチに刺されたとき、ヘクソカズラの葉を揉んですりこむと効くと言われているですよ。」
いきなりヘクソカズラの豆知識を教えてくださった小池さん。くさいくさいと嫌われている植物ではあるが、そういった民間療法もあるらしい。
刺された痛みこらえるか、くさい植物をなすりつけるか。
微妙な選択肢ではあるが、私だったらたぶんヘクソカズラをなすりつける方を選ぶと思う。小池さんも実際にやったことがあるそうだ。
●いざかいでみる
説明を事務所で聞き終え、いざヘクソカズラを求めて広大な園内へ。様々な植物について小気味よい説明を聞きながら歩いていくと間もなく、小池さんが「あれです」と指差した。
どうやら他の植物にからみついているのがそうらしい。確かに図鑑で見たのとおんなじだ。
ちょうど開花の時期であったらしく、白と赤のかわいい花も咲いている。さっそく葉っぱを何枚か拝借……と思っていたら、小池さんが蔓ごとひっぱり上げて渡してくださり、持参のビニール袋は山盛りのいっぱいになった。
どうやらそういう単位で取ってしまっていいらしい植物のようだ。これだけあればいくらハチに刺されても大丈夫という量をいただいた。
見る限りは特にこれと言って邪悪な感じのする植物ではないのだが、これが屁糞蔓。
漢字で書くとやはりひどすぎる名前だと改めて感じる。そのままの状態でもなんとなく青くさいようなにおいが漂ってきたが、よくもむとその真価をはっきりするらしい。
そういうわけで、やってみた。もみもみモミモミ、くんくん……。
うーん、どうだろう、確かに少々個性的なにおいではあるかもしれないが、個人的には屁とか糞とかいう感じではないのではという感じがした。
「そう言う人もいます。」
私の感想を聞いた小池さんはそう言ってくれた。言葉のニュアンスからして少数派ではあるようだが、私のような人もいるらしい。実は小池さんもそれほどくさいとは思っていないようだ。ですよね、そうですよね。
実際、私の屁や糞はこんな甘っちょろいにおいではない。
とは言え、そうした感想はあくまで私の個人のものであるだけ。客観的ににおいの強さを判断するためにも、持参したにおい測定機で計測してみる。…出てきた数値は859。
これまでいろいろなにおいをこの機械で測ってきたが、859というのはなかなか高い数値と言っていいだろう。他の植物ではここまでの値はでないかもしれない。
実を言うと以前、この機械で自分のおならを測定したことがある。その測定値は1900。
他人のを測定したことがないので、私のおならが極端にくさい可能性は否めないが、少なくともヘクソカズラは私の出した屁よりはくさくない。
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