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コネタ


コネタ155
 
「引田天功マジック」と「あんみつコーヒー」の喫茶『邪宗門』
問題の喫茶店、邪宗門。

こんばんは。梅田です。やたら鼻がムズムズする。なんだろう? 風邪でもひいたのかと思ったら花粉症でした。秋にも花粉症があるんですね。東京では今週あたりからキク科植物の花粉が飛んでるみたいです。皆様、ご注意を。

僕の住んでる近所の喫茶店には妙なうわさがある。やたらマジックのうまい店主が居るお店。コーヒーそっちのけでマジックをがんがんに見せびらかしてくるらしい。店主はなんと初代引田天功(男のほうです。笑っていいともに出てるほうじゃないですよ)の一番弟子らしい。ほんとかな? 日本一のマジシャンの一番弟子がそんなに簡単にマジックなんか見せてくれんだろうか? ちょっと確認してきました。

梅田カズヒコ

 

ひっそりとした店構え。営業してるのかな。。

所狭しとさまざまな骨董品が並ぶ純喫茶。

古い柱時計なんかがある。いいですよね、こういう喫茶店。

古い電話。ちなみに左に置いてあるマンガは『翔太の寿司』です。関連性がわからない。

下北沢のはずれにある『邪宗門』

下北沢駅には出口が3つある。北口と南口と西口だ。その中でもっとも地味な西口改札を出る。
よく下北沢駅を利用する人でも「え? 改札二つじゃなかったっけ?」ってぐらい存在感のない西口改札。人影もまばらなんですが、若者の街“シモキタ”とはまた違った雰囲気のゆったりとした下北沢が楽しめるので興味があったら一度寄っていってください。
改札のすぐそばを通る鎌倉通り(これまた小さな通りです。でも交通量は意外と多し)を10分少々歩く。本当にあるんだろうか? と不安になりはじめたあたりで『邪宗門』が顔をだします。かなり分かりにくく見逃してしまいそうだ。

いかにも地元感が漂っている。こっそり中を覗く。7〜8人のお客さんが居る。しかも全員おばちゃんだ。喫茶店によく居るおばちゃんを想像してほしい。そう、あなたの想像通りの普通のおばちゃんです。僕はここに入って大丈夫か? デイリーポータルのネタ的には大丈夫か? いろいろひっくるめて大丈夫か、僕? しかしここまで来たら後戻りは許せないと意を決して中に入る。おばちゃんの会話が一瞬止まるのがわかる。


店長おすすめの『あんみつコーヒー』

とりあえず一番端っこの席に座って様子をうかがう僕。店内は普通の純喫茶でした。年代ものの骨董品がところ狭しと並んでいる。こういうアンティークものって、明らかに自分が生まれる前のものなのに、どこか懐かしいのはなんでなんだろう?

マスター 「いらっしゃいませ。今日はね、あんみつコーヒーがおいしいですよ」
梅田 「あんみつコーヒーですか?」
マスター 「ええ、あんみつのうえにコーヒーがかかっているんです」
梅田 「変わったメニューほかにありますか?」
マスター 「ええ、いろいろありますよ。でも今はやっぱりあんみつコーヒーですね」
梅田 「あんみつコーヒー以外には何かありますか?」
マスター 「あんみつコーヒーホットもありますが」
梅田 「……じゃああんみつコーヒーの冷たいやつでお願いします」

店長のあんみつコーヒー一点推しに負け、あんみつコーヒーを頼む。なんだ、あんみつコーヒーって。




これが店長自慢のあんみつコーヒー。涼しげな雰囲気がイカす。


かき混ぜて食べる。うまい。

引田天功のポスターが額に。ちなみにプリンセス・テンコーはこの人から名前を襲名したんですね。知ってました?

神棚にトランプ。やっぱりマジシャンでした。

美空ひばりのレコードが大量にありました。なんでも奥さんが大のひばりファンみたいです。

昔のジュークボックス。ひばりの曲が大半です。

火縄銃のコレクション。

雑誌の取材でマジックをするマスター。

あまり期待していなかったあんみつコーヒー。しかし、これがかなり美味。うまい! ベースはあんみつアイスなんですが、コーヒー独特のコクとうまみが加わって、味がぐっとしまっている。コーヒーをかけることによってアイスがいい具合に溶け出すのもすばらしい。

梅田 「うまいっすね、これ」
マスター 「ええ、ええ。おいしいでしょ。ちなみに今日フジテレビのスーパーニュースであんみつコーヒー取り上げてくれるんですよ」
梅田 「え、そうなんですか?」

引田天功の謎に迫る。

梅田 「マスター、こんなとこに引田天功のポスターがありますね」
マスター 「うん。実は僕マジシャンだったの」
梅田 「うわさでは引田天功の一番弟子だって聞いたんですけど」
マスター 「よく知ってるね。一番弟子としてマジックを教わってたんだけど、喫茶店をやるのが夢だったんだ」

マスターは手際よくお店の作業をしながらにっこり微笑んだ。やっぱりうわさは本当だったんだ。引田天功と言えば大仕掛けの大脱出マジックで世界中に名を馳せた男。その一番弟子のマスターはイリュージョンなんか無視して、こうやってシモキタのはずれで小さな喫茶店を営んでいる。
なんだかいい話なのかそうでないのかわからない。
そうか、高名なマジシャンなのに喫茶店を開いてるっていうイリュージョンなのかもしれない。いや、きっと違う。

と、そのとき…

おばちゃんA 「○○さん、テレビ始まったわよ」
おばちゃんB 「早く、こっちで見ましょ」

見るとさきほど話していたニュース番組が始まっていた。おばちゃん5、6人とマスターと僕はテレビの前へ移動。みんなでテレビを眺める。なんだ、この雰囲気と、思いながらも郷に入っては郷に従えって事で同じように画面を見つめる。

おばちゃんC 「○○さん、若いねー」
おばちゃんD 「まー、レポーターの人きれいだわねー」
マスター 「丸一日ロケしていったのに、流れるのは2、3分なんだねー」

数分間のお店の紹介VTRが終わった。しかしマスターは不服そうだ。何があったんでしょう?

マスター 「あんみつコーヒー、ぜんぜんとりあげてくんなかった」

ニュースは店長のマジックを少し取り上げただけで店長おすすめあんみつコーヒーは取り上げてくれなかったのだ。

マスター 「チェッ! テレビなんかうそつきなもんだな」

マスター、落ち込まないで。代わりになれるかどうかわからないけえど僕は取り上げるよ。あんみつコーヒー。

マスター 「マジックももっとすごいのやったんだぜ。あんな地味なマジックばっかり流しやがって」

マスターはすっかり意気消沈してカウンターの奥に引っ込んでいきました。困ったな。これはマジック見せて! って言いにくい空気になってしまった。
このままじゃ帰れないなって雰囲気のまま2時間半店でねばった挙句、レジで会計を済ませると、ご機嫌が戻ってきたマスターはとっさにレジ横に置いてあるトランプを持ち出しあっと言う間に手品を僕一人のために披露してくれたのでした。マスター、写真撮らせてとお願いする間もなくあっと言う間の手品の連続にただ驚くばかり。慣れた手つきはさすが一番弟子って感じでしたよ。




邪宗門 世田谷店

世田谷区代田1−31−1
03(3410)7858
AM9:00〜  木曜定休


プチマジックグッズをもらっちゃいました。

「喫茶・邪宗門」は関東に8店ほどあります。しかしチェーン店というわけではなく本家の国立邪宗門からのれん分けで生まれたお店だそうです。それでもこの世田谷邪宗門も40年の歴史を数えるお店です。

お客様の中には作家の故・森茉莉さんや、テリー伊藤さんなどがいらっしゃいます。森茉莉さんは自作の小説の中にこの世田谷邪宗門を取り上げ、テリー伊藤さんは「アイスコーヒー好きの俺がほれ込んだこの邪宗門のアイスコーヒーは最高!」と自らのエッセイの中で語っています。

雰囲気もいいので下北沢に来た時にはぜひ寄っていってください。僕も通おうかな。マジック教えてくれるって言ってたし。



 

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