ソバが好きだ。 おいしいのはもちろんのこと、サッと手軽に食べられるし、なんとなく体にいい物を食べている気になるし、ついでにお酒も楽しめる。ソバ屋は、女のひとり酒を誰も珍しがらない貴重な場所だ。
ソバを食べたら“ソバ湯”で締める。 「そういえばソバ湯って、店によって濃さも味も違うなぁ…」 というわけで、立ち食い店から高級店まで、ソバ湯を飲み比べてみました。
(高瀬 克子)
始める前に
ソバ湯は通常、湯桶(ゆとう)というソバ湯専用容器に入れられて出てくる。濃さを比べるに当たり、公平を期すため「湯桶を10回まわしてからコップに注ぐ」という自分内ルールを作った。
さて、それでは行ってみますか。Myコップ持参で。
●そじ坊(チェーン店)
いきなり薄い。いつもソバつゆにドドドドと注いでいるので、これほど薄いとは思わなかった。色付きのお湯といった感じ。上澄み部分を出す方針なのかもしれないし、たまたまだったのかもしれません。
●安曇野(世田谷区三軒茶屋)
色が濃いわりにはサラリとしています。飲みやすい。ソバの風味が残っていて、これで焼酎を割ったらウマイだろうな、と思わせます。底にたまったドロリとした部分が特に美味。
●きたはま心月(世田谷区二子玉川)
薄いです。うーん、あれですかね、ずっと同じお湯で茹でているわけではないでしょうし、もしかしてお湯を替えた直後だったのかもしれませんね。あ、ソバ湯に入れて楽しもうと取っておいたネギを持って行かれてしまいました。
●福楽(文京区湯島)
濃いとか薄いとか言う以前に、黄色っぽいです。そしてトロみと少しの塩気がありますが、これはたぶんウドンも一緒に茹でているせいだと思います。でも、ここはこれでいいんです。量で勝負の店なのです。
●ゆで太郎(チェーン店)
激安店(220円)なだけにまるで期待してなかったのですが、値段のわりにはソバの風味が残っています。そういえば客の注文を聞いてから茹でてました。良心的だと思います。
●ふみや(文京区湯島)
昼食時、食券機の前にはサラリーマンの列が出来てました。ここはソバ湯が電気ポット入りです。初のセルフサービス。サラリ系のソバ湯なのは、濃いとポットが詰まるからでしょうか。
●松翁(千代田区猿楽町)
ソバ湯がどどーんと鉄瓶で登場。そして濃い。とにかく濃い。ポタージュ状というか葛湯というかネクターというか。あまりのウマさに泣きたくなった。これを肴に日本酒でもやりたいと思わせる「一品」的存在。
●よしひろ(台東区御徒町)
薄い。ためつすがめつゴクゴク飲んでいると、店の人に「おかわり持ってきましょうか」と言われてしまった。いえ、ありがたいですが、もう十分です。
ほんとうにいろいろでした
全体的に薄いソバ湯を出す店が多かった。昔は「ソバ湯が濃い店は頻繁にお湯を替えないからマズい」と言われていたらしいが、サラリ派が多かったのは「ウチはそんなことありませんよ」という表明なのだろうか。でもいちばん濃い店のソバが群を抜いて美味しかったし、うーん…訳がわからなくなりました。
最近では茹で汁を出さずに、わざわざソバ湯を別に作る店もあるそうで、いやーなんだか思った以上に奥が深い世界です。
栄養満点
ところで皆さん、ソバ湯飲んでますか? ソバを茹でた後のお湯には、ルチンやビタミンBといった栄養分が溶け出しているそうですよ。これは飲まないと!
もともとソバ湯はサービスの飲み物。これからも「どんなソバ湯が出てくるかな」と、一杯飲みながら楽しみにすることにします。