キャリア45年の実力
実は、筆者は二年ほど前にも一度このお店を取材しているのだが、今回は顔出しはNG。過去に出店していた有名店のことなども一切書いてはダメだという。
23歳の時に独立し、一時は雑誌に載るなどして、行列をつくりだした程の腕前の持ち主なのだが、なぜかその話題に触れるのを執拗に拒否する。
「今回はお寿司一本に絞って、他の話は載せないでください。もちろん名前も伏せてください。」
そんな風に口にする花ずしの旦那だが、いったいどのような心境の変化があったのだろうか?
「やっぱり過去を引き合いにだすと、それをみて落ちぶれたって思う人もいる訳ですよ。だから過去にやっていたこと云々じゃなくて、今握っているお寿司で判断してもらえればそれでいいんです。このお寿司を食べてもらって、気付く人もいるとは思います。
だから、幻のすし屋が阿佐ヶ谷にある、そう書いておいてください」
そう口にする旦那の顔に、迷いの色はない。これまでの自分が生きてきたその課程を反故にしてまで、握り続けているその寿司は、いったいどんな味がするんだろう。
ということで、早速握ってもらうことにした。
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