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コネタ


コネタ196
 
まぼろしのクリーニング寿司を求めて
「質素」という言葉を可能な限り実現したかのような店構えに、思わず気が付かずに通 り過ぎてしまいそうだ。

阿佐ヶ谷にまぼろしのお寿司屋さんがある。

……と書けと花ずしの旦那に言われたのでその通りに書いたが、このお店は年中無休で、行けば必ずお寿司をにぎってくれるのだから、別 にまぼろしでもなんでもないんだった。

元々はクリーニング屋だったという物件をほとんど居抜きで(!)営業しているこの花ずしは、500円で10貫という低価格の寿司が魅力。

とりあえず、美味しいお寿司を食べながらお話を伺ってきました。

(text by 宮崎 晋平


ドアに張られた看板(?)。これも質素だ。
かと思えばお店に不釣り合いな(失礼!)電飾が光る。これを目印にすると良い。
雑然とした店内。壁にはよくみれば「新潟産のコシヒカリ」の文字が。

キャリア45年の実力

実は、筆者は二年ほど前にも一度このお店を取材しているのだが、今回は顔出しはNG。過去に出店していた有名店のことなども一切書いてはダメだという。

23歳の時に独立し、一時は雑誌に載るなどして、行列をつくりだした程の腕前の持ち主なのだが、なぜかその話題に触れるのを執拗に拒否する。

「今回はお寿司一本に絞って、他の話は載せないでください。もちろん名前も伏せてください。」

そんな風に口にする花ずしの旦那だが、いったいどのような心境の変化があったのだろうか?

「やっぱり過去を引き合いにだすと、それをみて落ちぶれたって思う人もいる訳ですよ。だから過去にやっていたこと云々じゃなくて、今握っているお寿司で判断してもらえればそれでいいんです。このお寿司を食べてもらって、気付く人もいるとは思います。
だから、幻のすし屋が阿佐ヶ谷にある、そう書いておいてください」

そう口にする旦那の顔に、迷いの色はない。これまでの自分が生きてきたその課程を反故にしてまで、握り続けているその寿司は、いったいどんな味がするんだろう。

ということで、早速握ってもらうことにした。


上の写真のお寿司が10貫で¥500ナリ。確かにチェーン店のお寿司なんかよりも全然美味しい。


500円でインドマグロのトロをみっつも食べれるのは他に類をみないのだそう。

まぼろしの寿司のひみつ

「インドミナミマグロのトロがみっつ入るっていうのはね、画期的なことなんですよ。普通は1,000円でもひとつ入るか入らないかって位だから。やっぱり良いトロは甘みが全然違う。これは食べ込んでみれば分かります。」

そう言われて、筆者はその握りを口にしてみた。もぐもぐ。うん、旨い。上質のトロだけに、口の中でトロけるようだ。筆者はグルメライターではないので気の利いたことは書けないが、同じ値段くらいの、スーパーマーケットやチェーン店のお寿司では、こうはいかないと思う。

「こんなのは利益が上がらないからって誰も手を出さない。これが出せるっていうのは、私が3年くらい前に編み出した方程式だから、本当なら行列が出来てもおかしくないんだけど。ただ、こんなバッタ屋みたいで訳がわからない店構えなんであまり人は入らないけど、それでも毎日来る人もいます。」

「まな板と包丁と腕さえあれば、店構えが汚くてもお客はついてきてくれる、そう思っていますから」

そんな風に語る旦那の顔には、長年自分の腕だけで勝負してきた者だけが持つ、ある種の気高ささえ漂っていた。


最近では雑誌『散歩の達人』に取り上げられたり、あるウェブサイトで評価されたり(興味のある人は「花ずし 杉並区」で検索を掛けてみよう)と、じわじわと注目を集め始めているこの「花ずし」。
行列ができるにはまだちょっと時間がかかりそうだけど、その味は確かだ。近くを訪れた際には、ぜひ立ち寄ってみることをお勧めする。


花ずし
 東京都杉並区阿佐ヶ谷4-25-13
 Tel:03-3338-9870


 

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