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コネタ


コネタ210
 
自宅で湯巡りツアー(徹夜編)
今回はこの中の5種類を試します。

かなり思いがけないことであるが、我々はおふろに対してかなり無知だ。筆者自身、確かに頻繁に入ってはいるが、おふろやそれを取り巻く環境、ひいてはおふろという物が一体どういう意味を持つものなのか、そのような事を考えたことは一度もなかった。

今回は「入浴剤」を足掛かりに、未だ知られざるおふろについて考える機会を持ちたい。その為に今回は入浴剤5種を用意し、順番に入ってみることにした。言うなれば「自宅で湯巡り」である。筆者の場合は入浴する時間帯が夜なので、結果 的に徹夜ですることになった。

(text by 宮崎 晋平

これが世間を騒がせたあの入浴剤。

きっかけはあの入浴剤だった

 そもそもの発端は、一週間ほど前、林氏からもらった、半透明の茶色い液体の入ったボトルだった。パッケージをみると入浴剤らしいが、その時はあまり気にかけずにいた。しかしその後、この茶色い液体はつい先頃ニュースなどでも騒がれていた、白骨温泉に混入されていたものと同じものだというのだということを知る。
 そう知って俄然興味が沸いてきたものの、ボトルをよくみると「釜を備える浴槽や、ホーロー製の浴槽には使用しないでください」の文字が。 自分の家の風呂が何製かなど今まで一度も気にしたことがなかったが、なんとなく使ったらダメな感じがしてそのまま放置していたが、せっかくだからこの際市販の入浴剤も購入してきて、比較しながら自宅で湯巡りと洒落込むことにしようか。そんな甘いもくろみの元、この企画はスタートしたのだが……。
とりあえず、そろそろ「湯巡りツアー」に出発することにしよう。


まるで粉ミルクみたいなパッケージが嫌が応にも期待を高める。

PM11:00 ミニバス ミルク
(オール日本スーパーマーケット協会)

粉ミルクみたいなパッケージと甘い香りに期待をかけるも、実際に入れてみるとほとんど香りがしないため、入浴剤を入れているような気がしない。規定量の二倍を入れたらそれらしくなったものの、変わったのは色のみでといった感じだ。湯上がり直後も普通のおふろと同じで、遠くの方で入浴剤の匂いがする、といった程度。 ちなみにこのおふろに入ったのは23時頃から訳30分程度。このペースでいけば、余裕綽々といったところだと踏んでいたのだが……。


浴槽内はなんとなく白っぽいものの、掬ってみるとこの通り。肩透かしを食った気分だ。
規定量の二倍をいれると、なんとかサマになったようだがその入り心地は……。

クレイ重曹炭酸湯。恐らく自然界には存在しないであろうネーミングである。

AM1:00 きき湯 (ツムラ)

“クレイ重曹炭酸湯”というネーミングが、なんだかよく分からないながらも21世紀の訪れを感じさせる。入浴剤をいれた直後は発泡するのが心地よかったが、発泡が終わると途端に飽きてくる。香りは普通 の入浴剤だが、肌への刺激がとても強い。さすがは「自然と健康を科学する」とコピーに掲げているツムラだけある、いかにもケミカルな入浴剤だ(マウスオーバーでお湯の状態が分かります)。
こういった発泡系の入浴剤は、入り心地云々よりも発泡する事を愉しむことが目的のような気もする。 ちなみにこのおふろから出た時点で深夜1時を回っていたが、この時はまだなんの疑問も抱いていなかった。


パッケージからなにから、全て「穏当かな?」と思わせるということは、実力の裏返しでもあるということだ。

AM2:30 薬用入浴剤 白濁(旭ケミカル)

普通の入浴剤の匂いに、いたって普通な入り心地。無難と言えば無難な入浴剤だが、その無難さ故に、入浴剤の基準になっているともいうこともできる。入っているのが当たり前、でも入ってないとちょっと寂しい。そんな入浴剤の代表格だろう。それよりも、この頃になると一晩で何回もおふろを沸かしたり入ったりするのはとても大変だということが分ってきた。ちょっぴり後悔し始めた瞬間である。


「温泉」というジャンルから完璧に逸脱し、新しく“牛乳風呂”という地平を開拓しようとする、フロンティア精神溢れる入浴剤だ。

AM3:30 牛乳風呂(牛乳石鹸共進社)

溶けていく様子が見事にケミカルなこの牛乳風呂。普通の入浴剤よりも若干甘い匂いがし、その香りは入浴後にも強く残る。お湯的には「白濁」と「きき湯」のちょうど中間くらいの刺激の強さ。個人的にはちょうど良いが、このおふろも抜かなくてはいけないと思うとだいぶうんざりしてきた。もうすぐ夜が明けるというのにおふろを出たり入ったり、いったいなにをやっているのか。他のライターの方だったら、毎日ひとつづつ入って撮り貯めるとか、もっと要領よくやるはずだ。夏休みの宿題を最後までやらない癖が、こんなところにまで影響しているとは……。湯船に浸かりながら内省と後悔の間を行き来している間に、なんだかちょっと湯当たりしてきたような気もする。……しかし、いよいよ次で最後だ。気を引き締めて湯巡らなければならない。


明らかに他の入浴剤とは一線を画す「草津温泉ハップ」。現在は倫理的な理由により発売中止とのことだが、こんなに優れた入浴剤なのに勿体ないと思う。

AM4:30 草津温泉バップ
(草津温泉浴剤製造所)

さて、最後を飾るのは冒頭の入浴剤。茶色の液体をキャップに一杯ほど浴槽に入れると、不思議と徐々に白くなっていく。湯気の中から立ち昇るのは間違いなく温泉の匂いで、お湯の方もまさに温泉そのものといっていい程のクオリティだ。これが温泉に混ざっていたからといって、それがどうかしたというのか? などと怒られそうな事をつい口に出したくなるほど、かなり本物の温泉に近い入り心地だ。注意書きには「浴槽を傷める」と書いてあったが、浴槽の内側の側面 がなんだかボコボコしてきたのは恐らく関係ないだろう(と思いたい……)。ちなみにこの後気分が優れなくなり、しばらくの間横になっていなければならなかったのは、入浴の回数のせいでこの入浴剤のせいではない。




ということで、計5種類の入浴剤を入り比べてみた。種類を増やしたことで軸がちょっとブレてしまったが、やはり白骨温泉で使われていたものは、他の家庭用入浴剤と比較にならないくらいのクオリティだった。なんだかあの温泉が弾劾されていたのが気の毒になるほど、気持ちのいい入浴をすることができた。
また、他の4種類もそれぞれ個性があることが分かった。

今回の湯巡りツアーを通して筆者が導き出したのは、入浴剤の入ったおふろはとても気持ちがいいということだ。当たり前と言えば当たり前すぎる結論だが、不安定な社会情勢や長引く不況の中、つい気を抜くと内面 を見つめてしまいがちな状況の中で、ほんのつかの間だが感覚をフィジカルな方に向けてくれるおふろという装置を、ただ習慣的に入浴をする場所として片づけるには、少しもったいないような気もする。
あなたも自分のお気に入りの入浴剤をみつけて、おふろを1日の中で特別なものとして捉えてみてはいかがだろうか。そうすることで、誰かがでっちあげた有り体の「癒し」なんかとは違った、ささやかだけど小さな新しい幸せが、そこに見つかるかもしれない。

ただしもちろん、一晩で五回もお湯を張り替えるのは、無駄だしとても疲れるので辞めた方がいい。それが、今回の湯巡りを通して得た、たったひとつの結論である。

入浴剤では飽き足らなくなったら次に持ち込むのはコレでキマリ。



 

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