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コネタ


コネタ214
 
京都の負の遺産「モヒカン山」に登ってみる
京都の負の遺産「モヒカン山」

観光ガイドには決して載らない、京都の隠れた名所のひとつに「モヒカン山」がある。

正式名称は「一条山」であるが、その風貌がモヒカン頭にそっくりなので、地元の人々からはこのように呼ばれているのだ。

で、なぜ観光ガイドに載らないかといえば、それが京都の「負の遺産」だから。そもそも普通の山だったのが、業者による違法な土砂の採掘によって、こんな パンクなと相成ったわけである。

住民たちは「これ以上の違法開発は断固反対!」「教訓として今の現状を残すべき!」と唱え始めた。それで再開発は凍結され、素敵なモヒカン姿を20年以上も保ち続けているというのがコトの次第。

ぼくはこんなモヒカン山が大好きだった。 教訓とかシンボルとかはさておいて、ただ単純に「モヒカン」+「山」という馬鹿馬鹿しい豪快さが。

しかし最近、ショックな記事を目にした。京都市が一条山への再開発を許可したというのだ。早ければ今年度末にはモヒカン山が姿を消してしまうのだト。そんなァー!!

そこで今回は、別れを告げる意味もこめて、モヒカン山に登ることを決意したのでした。

(text by ステッグマイヤー名倉

言われるままに来てみたら

地元の人に道を尋ね尋ね

高校時代に一度見に行ったことがあるので場所はすぐ分かるだろう。

…とタカをくくって、地図も持たずに自転車で出向いたら迷子になってしまった。やむなく道行く通行人に教えを乞う。

 「あのう、一条山はどちらでしょう」
 「ああ、アレね…。向こうのほうだけど何か?」

人々の対応が妙に冷たくよそよそしい。自分たちの恥部に触れられたような感覚なんだろうか。

それでも言われるままに道を進んでみる。こんな意味不明な道路標識にクラクラしながら。


いきなり全貌を現したモヒカン山

いきなり出現!!

…と油断しながら自転車をこいでいたところ。

モヒカン様は突如、その姿を現したのでした。うわっ! ああ、これだこれ。

以前に見たことがあっても、やはり面食らう迫力がある。つくづく雄大なモヒカンですな。

それにしても。もともと普通の山だったのが、これだけの姿に形を変えたのが何よりすごい (原型はおそらく赤線のような感じだったと思われる)。

しかし、ここで問題が勃発。いざ登ろうにも、人が入れないよう厳重な囲いが設けられていて中に入れないのだ。


閉鎖された入口ゲート。

「立ち入り厳禁」の告示が…

途方にくれながら付近をウロウロしていたら、入口らしきゲートを発見。

ただ、草木に埋もれているうえ、「立ち入り厳禁」の立て看板が。おまけに、「許可なく入った場合、警察に通報されます」云々とまで書かれている。

ううむ困った。モヒカン山は一度も登らないまま姿を消してしまうのか…。


「なんとなく登山道っぽいもの」を発見。

裏道を探してみたら発見

どうしても登りたい一心で反対側に回りこんでみる。ひょっとして裏道があるかもと思ったのだ。

すると…ありましたありました!! 山道というには弱い気もするが、とにかく入山してみようじゃないか。

それにぼくはワンダーフォーゲルの経験があるので、ルートファインディングには多少の自信もある。

ようし! と、靴ヒモを固く締め直す。


小枝に赤ペイントが。

道なき道をひたすら進む

…と大見得を切ってはみたものの。

実情は、お世辞にも登山道とは呼べない代物だった。枝を踏み分けながら歩いてたら転倒しそうになるし、かと思えばクモの巣が顔面に付着するしで。

それでも所々に赤いマーキングが施されていた(登山業界でルートを示すサイン)。なんとも頼りないペイントだけど、いま頼れるのはコイツだけ。

勇気ある先達に感謝しながら、マーキングを頼りに道なき道をひたすら突き進む。待ってろよモヒカン!!

そうこうして登ること十五分少々、ついに稜線の光が目に飛び込んできたのでありました。


なぜか道端にラブチェアが。いったい誰が何のために!?
稜線の光が見えてきた!

同志の青年を発見

まだ中間地点だった

尾根に着いたのかと思えば、さにあらず。

山の中間地点まで来ただけだった。この先がいよいよ「モヒカン部分」である。

ふと前方を見ると、一人の青年がデジカメを構えていた(写真左下)。どうやら志を同じくする先人のようだった。

ぼくの気配を感じた青年は、振り向くと笑顔で話しかけてきた。「あ、モヒカン山を見にきたんですか?」

反射的に作り笑いで会釈するぼく。「当たり前やんけ」と心の中でつぶやきながら。


なんで縦位置で撮るかねえ…。

同志の男性と雑談、そして記念撮影

 青年:「いい写真、撮れましたかー」
 ぼく:「ええまあ。天気もいいですし」
 青年:「あっ、僕のと同じデジカメ!?」
 ぼく:「ええと…メーカーは同じかな」

のっけから今ひとつよく分からない会話である。

ちなみに、彼にお願いして撮ってもらったのが左の写真。帰宅してから分かったのだが、縦位置で撮られていたのでした。この写真だけ縦長でもっさいことこの上なし。

記念撮影をすませた後、青年と一緒に山頂をめざすことになった。



モヒカン山の頂上。360度このパノラマ。

気まずい山頂

登山の醍醐味はなんといっても山頂に尽きる。

登頂したときの達成感、そして眼下に広がる雄大な光景。これがあるから登山の苦しさを忘れられる、という人は多い。

しかし、モヒカン山の山頂はこんな光景なんでありました。360度どこを見回しても雑木、そして雑木。崖まで行ってみたかったが、密生した樹木に阻まれてとても進めない。

 青年:「…やっと着きましたね」
 ぼく:「え、ええ。山頂、ですね」
 青年:「……」
 ぼく:「えらく緑が多い…ですね」
 青年:「そろそろ帰りましょうか」

モヒカン山はいざ登ってみると、びっくりするくらい楽しくなかった。「ロマンとはこういうものなんだ」と何度も自分に言い聞かせながら早々の退散を決める。


「来たときよりもタイヘンな気が……」

ますます大変だった帰途

登り道が大変だったことを青年に話すと意外な顔をされた。「そうなんっすか? 僕は反対から登ってきたので楽勝でしたよ」

そこで帰りは青年が案内してくれる道を下ることにしたわけですが。

道を進むにつれて、どんどん草が深くなってくる。確かに木は全然生えてないけど(搬送用のトラックが当時通行していた のだろう)、それにしても。

 青年:「あ。道、間違えちゃったみたいです」

ますます気まずい雰囲気になりつつ、なんとか下山した我々。

そしてお互いあっさりと別れを告げ、めいめいの帰路についたのでありました。




全身に大量にの「くっつき虫」が。

こうして無事に終えた今回の登山。

あこがれだったモヒカン山、消えゆく運命のモヒカン山の地を一度でもいいから踏んでおきたい。…という思いだけで登ってみたのだが、その実情は、ささやかな感傷すら許されない「厳しい」ものだった。

ただ、それでも、モヒカン山が消えてしまうことには一抹の寂しさを禁じえない。こういう「無駄でよく分からないモノ」が存在を許されているという事実に、なんとなくホッとするような心地よさを感じていたから。

…と、ほんのり感傷に浸っていたところ、全身に大量の「くっつき虫」が付着してることに気がついたのでした。うわー。

一粒ずつチマチマつまみ取っているうちに、ささやかな感傷はすっかりどこかに吹き飛んでしまいました。ちぇっ。



 

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